ただいま上程中の認定第16号2001年度西宮市一般会計および特別会計歳入歳出決算認定の件について、日本共産党西宮市会議員団は、反対をするものです。以下、その理由を述べ、討論を行います。
震災から8年を迎えようとする西宮市を取り巻く状況は、大変深刻なものといわなければなりません。自民党、公明党、保守党による小泉内閣が発足して、1年7ヶ月を過ぎましたが、国民の暮らしと日本経済の深刻さはこれまでにも増して異常な状況となっています。特に来年度は、医療・年金・介護・雇用の社会保障分野で新たに3兆円を超える負担が国民におしつけられます。また、竹中プランと呼ばれる不良債権処理の加速方針が実行されれば、民間シンクタンクの試算では、大手銀行だけで93兆円の貸し出し減が起こり、中小企業は相次ぎ倒産、332万人もの新たな失業者が生まれるとされています。これが、日本の金融と産業を米国の大手投資銀行の支配化におくためのアメリカによる圧力ですすめられていることは重大です。
日本経済の先行きも国民のくらしも、今後さらに厳しく深刻な状況に陥ることはまちがいありません。
このようなもとで、本来国の悪政から、市民のくらしをまもる盾になるべき地方自治体では、現在の自民党政治による害悪がますます深刻となり、「自治体が自治体でなくなる」というべき変質がすすみ、さまざまな矛盾がふきだしています。特に、財政危機と「地方行革」の名のもと、福祉とくらしへの責任放棄とういう事態が進行しています。
第一に自治体の独自の仕事を徹底して切り捨てる。
第二に、民間でできるものは民間にと称して、本来自治体でやるべき仕事をできるだけ民間まかせにする。
第三にこうして残った仕事にも民間経営の手法の導入がおしつけられる。
自治体の営利企業化は自治体そのものの存在意義を否定するものです。
しかし、一方で自治体らしい自治体をとの新しい流れも生まれています。徳島県や長野県、最近ではおとなり尼崎市が顕著な例となっています。
さて、2001年度決算ですが、一般会計、特別会計あわせて、歳入2523億3600万円、歳出2495億4700万円、翌年度に繰り越すべき財源2億6500万を差し引くと実質収支額25億4800万円であります。前年と比較すると、歳入で155億円、歳出で151億円の減額となっています。震災復興事業が終息期に入り、投資的経費が減少してきたことがその要因といえます。
歳入では、長引く経済不況により、市税は812億円と伸び悩んでいます。また、地方交付税は86億円、その他含めて市として使途の制約がない一般財源は、それでも1066億円と、他の自治体と比べれば大きなものといえます。
本来この豊かな財源を、市民のくらし優先に使われればどれだけの市民サービスが提供でき、市民生活が豊かになったことでしょうか。
ところが、西宮市はこの間、震災復興と称して大型開発に財源をつぎ込み、莫大な借金をつくりだしてきました。そして、今度は自らつくりだした財政危機を理由に、公共料金の値上げ、民間委託、市民サービスの徹底した切り捨てなどリストラを強行し、さらに開発事業に財源をつぎ込むという状況となっています。2001年度の決算は、まさにその姿勢が色濃く出た内容となっています。
西宮市の人口は現在45万人を超え、保育所や特養ホームの不足をはじめ、さまざまな矛盾がふき出しており、今こそ市民のくらしを最優先にする市政の転換が求められています。
その観点に立って日本共産党西宮市会議員団は、2001年度決算には反対をするものです。
以下、主な反対個所、および問題点について述べます。
第1に、財政危機とその原因である大型開発についてです。
震災復興事業と称して取り組んできた土地区画整理事業や再開発事業は終息の時期を迎え、開発のための事業費は、全体としては減る傾向にあるとはいえ、区画整理事業では、西宮北口北東地区で15億4000万円、北口南地区で7億6400万円、再開発事業では北口北東地区で12億6100万円、阪神西宮駅南地区で2億2500万円など、多額の財源がつぎ込まれています。
その他、阪神連続立体交差事業や山手幹線、市役所前線など街路事業を推進、大型公共事業優先の姿勢そのものは緩まっていません。
2001年度末の市債残高は一般会計で2832億円、特別会計をあわせると4017億円で、長期にわたって返済していかなければなりません。
これまでの大型開発の借金返し、つまり公債費は、2001年度では一般会計だけで293億3300万円となり、公債費比率は20.3%と前年より1.1ポイント悪化し、財政危機を深めています。
2001年度は、北口北東地区再開発ビル「アクタ西宮」がオープンした年です。都市基盤整備公団の過大な事業費による、莫大な保留床の買い取りは、144億円にもおよび、北口図書館や保健福祉センターなど市民のためのものもあるとはいえ、債務負担にかかる事業として長期にわたって返済をしていかなければなりません。特に、当初取得予定のなかった北口駐車場は45億2500万円という高い買い物となりました。
また、JR西宮駅南地区再開発ビル「フレンテ」の西宮都市管理株式会社、これは西宮市と民間企業が出資している第三セクターですが、引き続き11億3000万円の年度内短期貸付を行ない、支援をしています。決算審査中でもまだしばらく貸付は続けることを明らかにしていますが、開発によるツケで、貴重の財源を市民サービスに使えない事態は大きな問題です。
第2に、市民サービス切捨てとリストラについてです。
現在西宮市は、財政危機を口実にして第2次行財政改善実施計画の名による大規模な市民サービスの切捨てが強行されています。2001年度も、約20億円の効果をあげよと取り組まれ、結果としてそれを上回り30億円以上となっているとのことです。
その最大のものとして、職員数114人もの減員を強行しました。これだけの職員を減らせば市民サービスや事務執行にも支障が生じ、将来の職員構成にも影響が出ます。また、雇用悪化にもつながります。特に消防職員の6名減については、国に定める基準の59.8%という充足率からも、市民の命を本当に守れるのかと予算でも指摘しました。この職員数の減員は大問題です。
次に、民営化、民間委託が拡大したことです。
保育所の待機児解消の名目で、公立甲東保育所を民営化、市営住宅や改良住宅等の維持管理業務を都市整備公社に委託、また学校給食の民間委託を目論んでの学校給食検討委員会を立ち上げたのも2001年度であります。特に、都市整備公社への委託については2002年度には市営住宅等の募集・使用料徴収などの管理業務も委託しましたが、市営住宅の募集事務や滞納対策で特定の人物に便宜を図るという不公正な事務執行が行われ、助役をはじめとした関係職員の処分、滞納対策などの業務が公社から市に戻されるという事態も生まれおり、民間委託化は問題ありとしたわが党の指摘が事実となりました。
次に、施策の切り捨てです。
公共料金等の値上げでは、保育所保育料、高等学校の授業料、入学金が引き上げられました。また、就学奨励金では、中学校の新入学生徒通学用品費を年3万円から2万6300円に引き下げ、私立幼稚園就園奨励助成金では在園する4、5歳児についての保護者の所得が800万円以上は廃止するなど、少子化対策がいわれる中、新たな負担を課すことになります。
第3に、特別会計についてです。
まず、国民健康保険特別会計について反対します。繰入金が3億3900万円減少し、財政安定化基金が設置され、保険料引き下げの財源とされてきた繰越金が基金につみあげられ、保険料は一人当り1973円引き上げられました。保険料はすでに負担に耐えかねるほど高騰し、滞納も急増しています。特に市当局による滞納対策として保険証の取り上げと資格証明書の交付が強化され、市民の命と健康がおびやかされています。
次に、食肉センター特別会計に反対します。
食肉センターの支出総額は約6億2000万円です。これに対して、解体業者等の使用料は約1億1800万円、後は一般会計からの繰入と起債を充当しています。ほとんどが市民の税金でまかなっていると言わなければなりません。その解体した牛肉が市内に流通しているのは全解体量のわずか2.5%のみです。多額の税をつぎ込みながら市民の利益には全くなっていません。一部の企業、業者の利益を守ってやっているといっても過言ではありません。食肉センターからの撤退に踏み切るべきだと思います。
いま、食肉センター運営改善委員会を開催し、来年度早々には第三者による検討機関を設け、抜本的な検討を行うとしていますが、撤退も視野に入れた検討を真剣に行い、早期に結論を出すことを強く要望、指摘をしておきます。
下水道事業特別会計では、ほぼ100%の普及にもかかわらず、なお受益者負担金を課し続けています。公共用地買収事業特別会計では、不要不急の街路事業用地の買戻されました。これらについても反対をするものです。
最後に、その他の問題について指摘をしておきます。
まず、阪急甲陽線地下化事業についてです。2001年度は、西宮市としてこの事業には1円の予算も組みませんでした。ところが、実際には鉄道の詳細設計に必要な土質調査や、地元住民との話し合いに使用する資料等の作成業務が実施されました。地元住民の皆さんは市の予算がないのに事前調査がなぜできるのか不思議に思っておられます。
市当局の説明によれば、まず県が予算を出し、将来事業認可が下りた時点で、兵庫県、西宮市、阪急電鉄の3者で基本協定を結び、その時点で精算するとの覚書を結んでいるから問題はないとしています。
問題なのは、調査は行われているが予算がついていないため、議会で審査されないこと、また、精算時に市の支出が発生したとすれば、過去の執行をさかのぼって支出することとなり、こんな不自然な予算措置は認められません。少なくとも債務負担行為の議決をしなければならないのは当然です。
このような説明のつかないことまでして、阪急甲陽線地下化を強行することは認められません。
次に、予算執行について指摘をしておきます。
決算審査を通じて不適切な予算の流用が行われていたことが明らかになりました。児童福祉総務費や保健総務費など30の科目の中の給料に不足が生じたため、款をまたがった予算の流用が行われていたのであります。給料の遅配をさけるための緊急避難的な処置としていますが、どんな理由にせよ不適切な予算の流用は厳に慎まなければなりません。今後は法の趣旨にもとづいて適切な予算の執行に努めるよう強く指摘をしておきます。
以上、日本共産党西宮市会議員団の2001年度決算認定に対する反対理由と意見を述べました。
現在西宮市は、あきらかに本来あるべき自治体の姿を失う事態が進行しています。開発優先、福祉くらし切り捨ての市政は、いずれは、西宮市民に見捨てられる時期がやってくると予測されます。尼崎市ではすでに自治体の本来の姿をとりもどす取り組み、新しい政治の流れが始まっています。
日本共産党は、国政でも、また地方政治の場でも、政治の転換のために全力をあげるとの立場を表明して、反対討論といたします。
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