1.すべての障害児に能力発達と地域交流の保障を
春の一斉地方選挙の後、私はわかば園に4歳児を通園させておられるお母さんから相談の電話を受けました。内容は昨年、通園中のわかば園から「子どもさんには地域の幼稚園で、健常児とふれあい交流を」とお話があり、お母さんもかねてから地域での交流をと思っておられ、公立幼稚園の2年保育の願書を提出。教育委員会からは「くじ引きもしてください」と指導。しかしその後、適正就学指導委員会が「この子どもさんは、公立幼稚園よりわかば園通所が望ましい」と最終的結論を出したということでした。特に教育委員会は抽選まで受けさせておいて、結局受け入れしなかったことは納得がいかないといっておられました。
この話を聞いていて、障害をもって生まれたわが子が、少しでも地域の子どもたちと触れ合える機会求めたお母さんの気持ちが、結果的にはわかば園を所管する健康福祉局と教育委員会の、両者の障害児を捕らえる基準や視点の違いで「振り回されてしまったな」と私は思いました。
少なくとも、両者(健康福祉局と教育委員会)がここに至るまでに該当する子どもさんについて、共同で状況把握と今後の方針について観察・協議をし、子どもさんの発達保障と地域での交流促進について、最善の方向を共通の立場でお母さんに伝え、理解を得る努力をすべきだったと思います。
ちょうどその頃、文部科学省が「21世紀の特殊教育のあり方に関する調査研究協力者会議」を設置・検討して、今年の3月に「今後の特別支援教育のあり方について(最終報告)」を取りまとめていたことを知りました。この背景には、年々、重度・重複障害のある児童生徒が増加するとともに、学習障害児・LD、注意欠陥多動性症候群・ADHD、高機能自閉症児など、これまで特殊教育の対象とされてこなかった、特別な教育的配慮を要する子どもたちも増加の一途であることなど現状分析がなされています。最終報告はこれらの現状をふまえ、今後について (1)障害の種別と程度に応じて設置されていた盲学校、聾学校、養護学校などがこの種別の枠を取り払い、特別支援学校として地域における教育的支援のセンター的役割を担っていくこと。(2)地域の通常学校にある、障害児学級(なかよし学級やのびのび学級などという名称になっている)がなくなり、障害のあるなしにかかわらず、すべての子どもたちは、通常学級に在籍する。(3)これまでの障害児学級に代わり、新たに位置付けられる「特別支援教室」には、障害をもった子どもとあわせて、全国平均で6%、1校に20名程度といわれる、LD、ADHD等の子どもたちも通ってくることになる。などあげられていました。
今回の最終報告は、学習障害のLDなどの子どもたちに焦点をあて、支援をしていこうとすることや、地域の中で障害のある子ども一人一人に、生涯にわたる支援計画を作成して向き合おうとすることなど、大事な観点があります。しかし問題点は、必要な財政保障もマンパワー等の裏付けなしに進めようとしていることです。学級定数は40人のままで、新たな人的加配もないまま、さらに、エレベーターやなど学校のハード部分の改善をしないままでは、いくら地域の中で、一人一人の教育ニーズに応じた発達保障をといってみても、現場では困惑と混乱が避けられないのではないでしょうか。障害児教育にあたってこられた先生からも、「これまで培ってきた障害児教育の成果を発展させるためにも、何よりマンパワーの拡充は不可欠」との声があがっているところです。
いずれにしても、いま障害児教育が大きく変わろうとしていること。こんな中で、西宮ではなにがどう変わろうとしているのか、具体的に質問いたします。
- 文科省の最終報告にもとづくと、障害の種別を越えてすべての重度・重複障害をもった子どもたちも地域の学校の通常学級に在籍することになりますが、エレベーターの設置などハード面で支障はないのか。また、LD児など学習障害の子どもたちが特別支援教室に通うことになりますが、養護学校も含めて、教師・マンパワーの配置基準はどうなるのか。
- 西宮市では来年度公立幼稚園で、これまでの拠点園から全園で障害児の受け入れを実施すると聞いています。障害の種別や程度で線を引くことなく、地域での交流をひろげる点でいい機会です。受け入れ人数や教諭の態勢等どうなるのか。
- 先ほど紹介した子どもさんの事例では、西宮市教育委員会と健康福祉局が協議して対応していれば、いわゆる「保護者が振り回される」ことにはならなかったのではないかと思われます。この点についての見解はどうか。また今後についての考え方をお聞かせください。
- 今回の質問にあたり、肢体不自由児通所施設のわかば園を見学し、お話を伺いました。昭和42年に建設され雨漏りもするなど老朽化が進み、エレベーターもない使い勝手の悪い施設ですが、職員のみなさんは、懸命に障害児の保育や訓練を行なっておられます。いま、肢体不自由児だけでなく自閉症など精神発達障害の子どもさんも多数受け入れておられるとのことでした。
- 施設の更新は、平成21年度以降と聞いています。本当にそれでいいのでしょうか。一日も早く新増築を行なうため、計画を前倒しにすべきだと思いますがどうか。
- 当面の問題として、早急に精神発達障害の幼児を受け入れる施設と専門医師の配置が必要だと思うがどうか。
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