2、介護保険について
介護保険が実施されて5年半が経過しました。また介護保険の改定が行われ10月から一部実施されています。その内容は、(1)現在の介護報酬から、施設等の居住費、食費に要する費用を削減する。(2)それぞれの施設・事業所ごとに、利用者との間で居住費・食費を決めて徴収する。の二つを柱にしています。西宮市でも、西宮市立デイサービスの食材料費が400円から食費600円に、老人保健施設すこやかケア西宮では、光熱水費相当の居住費として1日320円、食費日額1380円の新たな自己負担を求め、月額では居住費で約1万円、食費で約4万2000円の負担増になります。民間事業所では、それぞれの契約によるため、その負担は青天井と心配されています。介護保険見直しとは名ばかりの大改悪ではないでしょうか。
介護保険の導入時、政府はその目的を「家族介護から社会が支える制度へ(介護の社会化)、「在宅で安心できる介護へ」、「サービスが選択できる制度へ」などとさかんに宣伝しました。「老老介護」の広がりや、家族の介護のために職場をやめなければとされる女性を中心に、深刻な家族介護の実態を解決することが、介護保険制度にたいする国民の期待でした。今回の改定では、介護保険導入時に盛んに言われた、「介護の社会化」という言葉が姿を消し、「自立・自助」の方針が前面に出てきたことです。今までも、重い利用料負担によって、サービスの利用を控えざるをえない問題が、指摘されてきましたが、サービスの利用が、利用者の状態や必要性からではなく、経済的な負担能力によって決まってしまう事態が、いっそう広がっていくのではないでしょうか。
これは財界主導の「介護保険見直し」が具体化されてきたものです。日本経団連は、2004年4月に「介護保険制度の改革についての意見」を出し、社会保障の「高コスト構造」の「是正」と新たな介護市場の創出を要求しました。財界の要求に、政府は、年金、医療、介護を「総合化」させ、社会保障分野における公的財源のさらなる縮小と市場化をすすめる「改革」にむけて、その牽引役に介護保険を位置づけてきました。
本来、制度の見直しは、最低限必要な介護を受けられずに苦しんでいる人たちを救うためにおこなわれるべきものであり、その中心には、高齢者障害者をはじめとした「社会的弱者」がすえられなければなりませんでした。しかし今度の制度改定でも、多くの高齢者は自分たちの生活が、どのように変るのか知らされないままに決められたのです。
新たな利用者負担は、施設からの退所、サービス利用の手控えなど、利用者に深刻な影響をもたらしています。
そして、来年4月の第1号保険料の改定では、どこの市町村でも、大幅な値上げが予想されています。西宮市でも西宮市高齢者保健福祉計画・西宮市介護保険事業計画の素案で、保険料を第6段階と第7段階の2案を設定し、現行の保険料の基準額2934円が4200〜4300円と約1.43倍の値上げが示されていますが、低所得者に対する減免制度を拡充するとともに、国に対しても国庫負担の割合を30%に戻すように、市としても要求すべきではないでしょうか。
介護保険料は大幅に引き上げながら、介護サービスは食費・居住費の大幅負担増、軽度認定者はサービス利用が制限される、高齢者のなかには、「これでは保険料詐欺」だという声までおこっています。「介護保険で老後は安心」などという人は、いなくなりつつあります。
また、大幅な介護報酬の削減は施設・事業所の経営を直撃しています。施設入所者の重度化が、いっそう進行しているなかで、きびしい職員体制で、ケアの質の向上に、奮闘している現場の職員の努力に、何ら報いるものではありません。逆に、いっそう現場の矛盾を深め、施設経営にも困難をもたらすものです。西宮市内にある特養ホームの施設長も、「お年寄りには負担増、施設は報酬減で何も良いことはない、この先、施設が維持できるのか、正規職員をパートにしなくてはやっていけない」と、高齢者だけでなく、施設側にも不安が広がっているのが実態です。事業費用の大部分は人件費であることから、介護報酬の大幅な削減は、非正規職員の拡大を促進することにつながります。
在宅介護を支える、ホームヘルパーの圧倒的多数は、非正規労働者である「登録ヘルパー」です。ヘルパーは1件でも多くのケースをこなすため、昼食も公園のベンチや車中でとらざるを得ないような状況ですが、それでも月収10万円に満たないという人がほとんどで、仕事に比べて賃金が安いために、やめていく人が後をたちません。ヘルパーの多くは無権利状態に置かれたままで、今回の法改定でもなんら変りません。さらに社会福祉施設職員の退職金制度にたいする公的助成を廃止しました。
質問:
- 食費・居住費の自己負担を軽減するために、市独自の減免制度を設けるべきではないでしょうか。
- 食費・居住費の新たな負担で高齢者や家族のなかでは、利用料を払い続けることができるのかと、不安が広がっています、日本共産党は、9月29日山田市長に、市として、入所者の実態や具体的な影響を調査すべきではないか。と申し入れをしましたが、その結果はどうなっているのでしょうか。
- 来年度の保険料改定にあたっては、より所得に応じた負担とするために保険料段階を増やすとともに、低所得者の減免を拡充すべきではないでしょうか。
- 「福祉は人」といわれているように、介護労働者の労働条件や待遇の改善は、介護を受ける人が、幸福に生活できるようにするうえで不可欠の課題です。しかし、登録ホームヘルパーは、制度発足当初より、移動や待機時間、交通費が支払われずに、利用者の家に直帰、直行型が多く、介護時間のみの報酬しか払われず、低賃金の上、労働者としての権利が守られていません。福祉の仕事を志したにもかかわらず、あまりの労働条件の劣悪さに、辞めていく労働者が後を絶ちません。市としても労働者の実態を把握し、ひどい労働条件の改善をしていくために、支援が必要ではないでしょうか。
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