1.甑岩町宅地造成地土壌汚染問題をめぐって
同土壌汚染問題への対応について
この問題について最初に報道があったのは昨年12月14日の神戸新聞でした。
記事は、甑岩町の住宅街にある約3400平方メートルの造成地の土壌から1グラムあたり650ピコグラムのダイオキシンが検出され、これは環境基準の1000ピコグラムを下回るものの、国が定める調査を必要とする基準250ピコグラムの倍以上のものであり、近隣住民が土壌の入れ替えや洗浄を求めて市に要望書を提出。「ダイオキシン類対策特別措置法」により指導、監督にあたる兵庫県が、土地の所有者である大阪の開発業者に再調査を要請した、というものでした。
報道された14日は12月議会厚生常任委員会の開催日であったため、私は早速この問題を質問しました。ダイオキシン検出に先立って、7月には同じ造成地から事業者による土壌調査で鉛が検出され、汚染土壌が除去されていたこと。さらにいったん土壌除去した地点の流出水を市が調査したところ環境基準の4倍近い0.039ミリグラムの鉛が検出されたことなどが、その後明らかになりました。
日本共産党議員団は重大な問題と受け止め、1月26日、つづき研二県会議員とともに現地に出向き、市と事業者、住民の皆さんから聞きとり調査を行ないました。
土壌はいったん汚染されると、有害物質が蓄積され、汚染が長期にわたるという特徴があり、人の健康への影響や農作物や植物の生育阻害、生態系への影響などが考えられます。鉛は、2003年2月に制定された土壌汚染対策法に規定される26項目の特定有害物質のうちのひとつです。高濃度の鉛による中毒症状として、食欲不振、貧血、四肢筋の虚弱などがあり、また動物実験においてガンの発生が報告されており、国際がん研究機関が人についても発ガン性があるかもしれない2B、という分類をしています。ダイオキシンについても発ガン性や生殖機能、甲状腺機能、免疫機能などへの影響がいわれている毒性の強い有害物質です。
また土壌は水や大気と比べて移動性が低く、土壌中の有害物質も拡散・希釈されにくいという特徴ももっています。汚染された土壌に人が触れることがないとか、地下水への溶出がなかったり、たとえ溶け出していても、汚染された地下水を飲んでいない場合は、土壌汚染による環境リスクは問題にならないともいわれています。
周辺の皆さんの話では、この土地には以前溜池があり、廃タイヤや野焼きした建築廃材などが捨てられていたとのことです。数十年経った今、この造成地も開発行為がなく公園のままであったなら、問題はなかった可能性が高いのです。掘り起こされ混ぜ返されたために眠っていた有害物質が起こされたのです。住民の方が「パンドラの箱を開けた」と表現されましたが、まさにそのとおりです。開発業者はあるいはそうしたことを知らずこの土地を購入し戸建住宅開発を計画したかもしれませんが、「パンドラの箱をあけた」責任が問われています。
現在、県と市は事業者を指導し、住民の意向も反映した調査が行われることとなり、2月はじめに資料採取を実施。3月中に結果が出て、分析結果が環境基準を超える場合は土壌の除去をおこなうことが確認されています。
質問、住民の皆さんの要望は、たとえ環境基準を超えなくてもこのようないわくつきの土を使ってくれるな、というものです。市は住民の立場にたった指導を事業者にすべきと考えるが、どうか。
教訓を今後の環境行政にどう生かすか
2つめに、まだ問題解決には至っていないわけですが、今回の問題からなにを教訓とし、今後の環境行政に生かすかを、お聞きしたいと思います。
今議会に現行環境保全条例を廃止し、新環境計画や環境学習都市宣言の理念を盛り込んだ、新たな環境基本条例その他の制定が提案されています。
環境基本条例案の第4条、5条、6条では環境問題に取り組む市、事業者、市民のそれぞれ責務がうたわれています。
今回の事例で市、事業者および市民の三者は、その役割、責務を果たしたでしょうか。
私は、周辺住民の皆さんは、「持続可能なまちづくりの推進に自ら努め、環境保全活動に参画し、協力し、」という立場でよく奮闘されたと思います。造成地を掘り起こすたびに出てくるおびただしいガレキ、強烈な異臭、異様な黒い土に不安を覚えた住民の皆さんは、事業者に再三調査と対処を求め、市に対しての要請行動、マスコミへのはたらきかけもおこなって、現在の結果をつくりだされました。
しかし、事業者はどうでしょう。
事業者が作成し1月8日の住民説明会に配布した経過報告書、その翌日に「この報告書は事業者の都合のいいようにつくられている」と反論した住民側の報告書、市がまとめた報告書などを見ると、事業者の態度は次のようなものです。
住民の再三の「においの原因は何か」「黒い土はどうするのか」などの質問要望に対して、事業者は「土壌、ガスについては調査の結果、問題ない。黒い土についてもいったんは処分するといったが、色は黒いがなんら問題はないので、当初の計画通りごみの選別をして埋め戻しに利用する」と回答。
住民の強い要望で実施したダイオキシン調査の結果、再調査を必要とする数値であるにもかかわらず、住民に対しては「環境基準内であるので問題なし」と強弁、さらに市の文書によれば、「市の見解を求めたので再調査を勧めたが、これを聞き入れず、なおも市の見解を求めてきたので、所管である県に行くよう指導した」とあります。
その後も不安を訴える住民に対して「問題なし」との態度に終始し、11月24日には事業者の言葉によると「交渉決裂」となり、住民によると「営業妨害で訴える」とまでいわれ、12月13日の住民の市への要望書提出にいたったわけです。
私は今回の問題でとった事業者の態度は、環境に対する事業者の責務を自覚したものとは到底思えません。事業者は、条例で言うと「自らの責任と自覚において事業活動に伴って生ずる公害を防止しなければならないし、環境保全活動に参画し、協力」しなければならないからです。
- 今回の事業者は大阪の業者ですが、西宮で事業活動をする以上、環境に配慮した行動をとるよう、指導をしていく必要があると考えます。新しくつくる環境基本条例案には、「環境に配慮する市民の育成」は、第3条でかかげられていますが、事業者の育成あるいは指導について言及がありません。これを明記すべきではないでしょうか。答弁を求めます。
- 今回廃止となる環境保全条例には、「生活環境の保全」という章の中で「公害の防止等に関する施策の推進」という節を設けて、「化学物質等による環境汚染の防止に、市は必要な措置を講ずるように努めなければならない」とはっきりと規定しています。
ところが、新環境基本条例ではこれらが集約されて、第28条、生活環境の保全として「市、事業者および市民は、市民の健康を守り、生活環境を保全するため、大気の汚染、水質の汚濁、騒音、振動その他環境保全上の支障の抑制に努めるものとする」とあります。
公害問題は、市や事業者が問題の原因者、加害者であり、市民が被害者です。その逆はありえません。この規定では三者の「参画と協働」を強調するあまり、公害においての事業者と市の役割や責任が薄められてはいないでしょうか。旧環境保全条例の規定のように市の役割を明記すべきです。お答えください。
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