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定例議会

2005年3月議会

野口あけみ議員の一般質問
  1. 甑岩町宅地造成地土壌汚染問題をめぐって
  2. 阪急西宮スタジアム跡地問題
  3. 耐震診断ならびに耐震改修助成制度と市内中小業者振興について

1.甑岩町宅地造成地土壌汚染問題をめぐって

同土壌汚染問題への対応について

 この問題について最初に報道があったのは昨年12月14日の神戸新聞でした。
 記事は、甑岩町の住宅街にある約3400平方メートルの造成地の土壌から1グラムあたり650ピコグラムのダイオキシンが検出され、これは環境基準の1000ピコグラムを下回るものの、国が定める調査を必要とする基準250ピコグラムの倍以上のものであり、近隣住民が土壌の入れ替えや洗浄を求めて市に要望書を提出。「ダイオキシン類対策特別措置法」により指導、監督にあたる兵庫県が、土地の所有者である大阪の開発業者に再調査を要請した、というものでした。
  報道された14日は12月議会厚生常任委員会の開催日であったため、私は早速この問題を質問しました。ダイオキシン検出に先立って、7月には同じ造成地から事業者による土壌調査で鉛が検出され、汚染土壌が除去されていたこと。さらにいったん土壌除去した地点の流出水を市が調査したところ環境基準の4倍近い0.039ミリグラムの鉛が検出されたことなどが、その後明らかになりました。
  日本共産党議員団は重大な問題と受け止め、1月26日、つづき研二県会議員とともに現地に出向き、市と事業者、住民の皆さんから聞きとり調査を行ないました。

  土壌はいったん汚染されると、有害物質が蓄積され、汚染が長期にわたるという特徴があり、人の健康への影響や農作物や植物の生育阻害、生態系への影響などが考えられます。鉛は、2003年2月に制定された土壌汚染対策法に規定される26項目の特定有害物質のうちのひとつです。高濃度の鉛による中毒症状として、食欲不振、貧血、四肢筋の虚弱などがあり、また動物実験においてガンの発生が報告されており、国際がん研究機関が人についても発ガン性があるかもしれない2B、という分類をしています。ダイオキシンについても発ガン性や生殖機能、甲状腺機能、免疫機能などへの影響がいわれている毒性の強い有害物質です。
  また土壌は水や大気と比べて移動性が低く、土壌中の有害物質も拡散・希釈されにくいという特徴ももっています。汚染された土壌に人が触れることがないとか、地下水への溶出がなかったり、たとえ溶け出していても、汚染された地下水を飲んでいない場合は、土壌汚染による環境リスクは問題にならないともいわれています。

  周辺の皆さんの話では、この土地には以前溜池があり、廃タイヤや野焼きした建築廃材などが捨てられていたとのことです。数十年経った今、この造成地も開発行為がなく公園のままであったなら、問題はなかった可能性が高いのです。掘り起こされ混ぜ返されたために眠っていた有害物質が起こされたのです。住民の方が「パンドラの箱を開けた」と表現されましたが、まさにそのとおりです。開発業者はあるいはそうしたことを知らずこの土地を購入し戸建住宅開発を計画したかもしれませんが、「パンドラの箱をあけた」責任が問われています。
  現在、県と市は事業者を指導し、住民の意向も反映した調査が行われることとなり、2月はじめに資料採取を実施。3月中に結果が出て、分析結果が環境基準を超える場合は土壌の除去をおこなうことが確認されています。
  質問、住民の皆さんの要望は、たとえ環境基準を超えなくてもこのようないわくつきの土を使ってくれるな、というものです。市は住民の立場にたった指導を事業者にすべきと考えるが、どうか。

教訓を今後の環境行政にどう生かすか

 2つめに、まだ問題解決には至っていないわけですが、今回の問題からなにを教訓とし、今後の環境行政に生かすかを、お聞きしたいと思います。
  今議会に現行環境保全条例を廃止し、新環境計画や環境学習都市宣言の理念を盛り込んだ、新たな環境基本条例その他の制定が提案されています。
  環境基本条例案の第4条、5条、6条では環境問題に取り組む市、事業者、市民のそれぞれ責務がうたわれています。
  今回の事例で市、事業者および市民の三者は、その役割、責務を果たしたでしょうか。
  私は、周辺住民の皆さんは、「持続可能なまちづくりの推進に自ら努め、環境保全活動に参画し、協力し、」という立場でよく奮闘されたと思います。造成地を掘り起こすたびに出てくるおびただしいガレキ、強烈な異臭、異様な黒い土に不安を覚えた住民の皆さんは、事業者に再三調査と対処を求め、市に対しての要請行動、マスコミへのはたらきかけもおこなって、現在の結果をつくりだされました。
  しかし、事業者はどうでしょう。
  事業者が作成し1月8日の住民説明会に配布した経過報告書、その翌日に「この報告書は事業者の都合のいいようにつくられている」と反論した住民側の報告書、市がまとめた報告書などを見ると、事業者の態度は次のようなものです。
  住民の再三の「においの原因は何か」「黒い土はどうするのか」などの質問要望に対して、事業者は「土壌、ガスについては調査の結果、問題ない。黒い土についてもいったんは処分するといったが、色は黒いがなんら問題はないので、当初の計画通りごみの選別をして埋め戻しに利用する」と回答。
  住民の強い要望で実施したダイオキシン調査の結果、再調査を必要とする数値であるにもかかわらず、住民に対しては「環境基準内であるので問題なし」と強弁、さらに市の文書によれば、「市の見解を求めたので再調査を勧めたが、これを聞き入れず、なおも市の見解を求めてきたので、所管である県に行くよう指導した」とあります。
  その後も不安を訴える住民に対して「問題なし」との態度に終始し、11月24日には事業者の言葉によると「交渉決裂」となり、住民によると「営業妨害で訴える」とまでいわれ、12月13日の住民の市への要望書提出にいたったわけです。
  私は今回の問題でとった事業者の態度は、環境に対する事業者の責務を自覚したものとは到底思えません。事業者は、条例で言うと「自らの責任と自覚において事業活動に伴って生ずる公害を防止しなければならないし、環境保全活動に参画し、協力」しなければならないからです。

  1. 今回の事業者は大阪の業者ですが、西宮で事業活動をする以上、環境に配慮した行動をとるよう、指導をしていく必要があると考えます。新しくつくる環境基本条例案には、「環境に配慮する市民の育成」は、第3条でかかげられていますが、事業者の育成あるいは指導について言及がありません。これを明記すべきではないでしょうか。答弁を求めます。
  2. 今回廃止となる環境保全条例には、「生活環境の保全」という章の中で「公害の防止等に関する施策の推進」という節を設けて、「化学物質等による環境汚染の防止に、市は必要な措置を講ずるように努めなければならない」とはっきりと規定しています。
      ところが、新環境基本条例ではこれらが集約されて、第28条、生活環境の保全として「市、事業者および市民は、市民の健康を守り、生活環境を保全するため、大気の汚染、水質の汚濁、騒音、振動その他環境保全上の支障の抑制に努めるものとする」とあります。
      公害問題は、市や事業者が問題の原因者、加害者であり、市民が被害者です。その逆はありえません。この規定では三者の「参画と協働」を強調するあまり、公害においての事業者と市の役割や責任が薄められてはいないでしょうか。旧環境保全条例の規定のように市の役割を明記すべきです。お答えください。
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2.阪急西宮スタジアム跡地問題

 まず、阪急の計画の公表とスケジュールについてです。
 スタジアムの解体撤去はどんどん進んでいます。肝心の開発計画について、阪急の当初予定では2004年秋に具体的な施設計画をとりまとめ、今年2005年秋に着工、来年秋には開業というものでした。もうすでに2005年3月、具体案を示すとした時期から1年近くたっていますが、いまだに正式な計画案は示されていません。
  昨年12月17日に地元深津協議会に示された阪急の見解は、「2004年秋にプランをお見せできないことについては申し訳ない。しかし、公式にはこれまでどおりのスケジュールで進める、(今年秋には着工)今年度中に計画素案をまとめたい。県への立地法申請前に説明したい」というものです。
  これに対し住民の皆さんは、具体的な施設についての要望を示し、「早く計画を示してほしい」「その上で意見を言いたい、取り入れてほしい」「どの程度住民の意見を取り入れてくれるのか」ということも阪急側にはっきりと言われています。また交通アクセス問題も心配されておられます。
  今年秋には着工となれば、計画公表が遅れれば遅れるほど、意見が取り入れられる余地がなくなり、阪急の言いなりの計画で進んでいくのではないか、という不安があるわけです。
  議会の意見としても「阪急は早く計画案を示し、市民、議会の意見もとりいれてほしい」「計画案を変更できる段階での話し合いを」というのは共通しています。
  具体的な質問です。今は地元深津協議会への阪急の説明会という形でこうした話が行なわれていますが、3月中に計画が公表されたとしても秋着工まであまり時間がありません。住民の意見・要望を反映させるためのしくみを、市がイニシアティブを発揮してつくるべきだと考えますが、この点での考え方はどうか、具体的な準備はしているか、お答えください。
  また、総合企画局長は1月19日のまちづくり調査特別委員会のなかで「年度末までに計画がまとまるかどうか疑問視している」と発言されていますが、仮に3月末までに計画が公表されなければ計画を検討する時間がありません。今年秋着工の予定は当然変更し、遅らせる、そのことをはっきりと知らせるよう求めるべきですが、いかがですか。

 2点目は阪急今津南線の高架化についてです。
 この問題は西宮スタジアム跡地利用の中で、整理すべき課題のひとつとして市の側から阪急へ申し入れ、協議中としています。このことは、市長の行政方針でも述べられています 
  まちづくり特別委員会の議事録によれば、市はすでに阪急電鉄に対し「大規模な商業展開をするにおいて今津南線の高架化は不可欠だ」という話をしているとのことです。
  それにとどまらず、(1)高架化の時期について、開発施設完成時に高架ができているというのが理想だが、開業後できるだけ速やかに高架化する段取りが必要、(2)費用については一定のルール以上の負担を阪急に求める、(3)場合によっては他市での例はないけれども阪急に代替施行をしてもらう、C整備手法も街路事業の一種である限度額立体交差事業でどうか、このような議論を進めている。というのがまちづくり委員会でのわが党上田議員への都市局長答弁でした。
  市は、今津南線の高架化について第3次総合計画の2008年度までに着手する事業、ただし本格的には2009年度以降としていますが、私達は不急事業=急がなくてもよい事業だと考えています。
  なぜなら、市民にとっての緊急性がまったくないからです。
  第一に、92年から進めている北口南地区区画整理事業のなかで、道路交通の安全化、円滑化のため高架化事業も関連事業として位置付けていたとのことですが、この南地区地域の計画は、阪急やサティの再開発、県芸術文化センターも当初の計画から変更に次ぐ変更で、人や車の集中は大幅に縮小されたものになっています。
  第二に、実際に、阪急今津南線と球場前線との交差踏切の交通量は、昨年7月時点で平日12時間、2600台に過ぎません。例えば、今とりくまれている小曾根線の阪神電鉄踏み切りの立体交差は、5年前の交通量調査で、13000台の通過車両がありますが、これと比較しても、市内のどの道路と比べても格段に交通量は少ないのです。
  現状では、球場前線は西は今津西線につきあたり、東はスタジアム跡地につきあたるため、渋滞など交通問題が起こる可能性はきわめて少ないと思われます。
  代表質問でわが党杉山議員が指摘したとおり、今つくられた数字で、赤字再建団体に陥りそうだからと、第3次行革をおこない市民サービスを切り詰めているさなかです。
  このような大型公共事業を、市民にとって本当に必要か、充分吟味することなく当然視し、阪急という民間の開発にとって不可欠だからと行なうというのは、民間開発のために公費を投入するようなことにもなり、到底市民の理解を得られるものではありません。阪急が不可欠だと考えるなら自分で行なえばいいのです。
  質問です。都市局長が公式の場で、「阪急が大規模な商業展開をするのに高架化は不可欠」と発言されたことは事実ですから、あらためて高架事業の必要性についてどう考えているのか、お答えください。
  議案とともに配布された「総合計画の実施計画」の中に、08年度までのとりくみとして、今津南線高架化事業に4億4000万、そしておそらく初めて球場前線の東伸(東に伸ばす)と北口線拡幅に16億4000万をあげているが、その内容は何か。不急事業として実施時期を遅らせ、見直すべきだと考えるがどうか。

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3.耐震診断ならびに耐震改修助成制度と市内中小業者振興について

 阪神大震災では、約24万棟の建築物が倒壊し、発生時刻が早朝だったこともあって犠牲者の87%、5500人が自宅の倒壊によってしかも地震直後、15分以内にほとんどなくなっておられます。
  こうした結果を受けて、兵庫県の震災検証担当委員の東京大学教授、目黒公郎氏はこうまとめておられます。「地震防災上の最重要課題は、既存不適格建築物の問題である。いかに優れた事後対応システムや復旧復興戦略を持っていたとしても、「被害抑止力」がなければ地震直後に発生する建築物被害と人的被害を減らすことはできない。」「事前の対策をとり建築物被害がもっと少なければ、仮設住宅、コミュニティ、ゴミ処理、被災者の心の問題、孤独死、地域の経済活動の低下等の大震災後の復興期のさまざまな問題は出なかった可能性が高い。」と。
  誰が考えても当然の指摘です。住宅が壊れてからのさまざまな施策より、いかに倒壊を防ぐか、に行政が力を入れれば、人的被害を防げるのはもちろん、経費も減らせるのです。
  県制度で、2000年から2002年度にかけて昭和56年5月以前着工の旧耐震構造基準住宅について、耐震診断が自己負担なしで実施されました。また2003年度からは「わが家の耐震改修促進事業」として耐震診断と耐震改修計画策定に対する助成と改修工事への助成制度が創設されています。2004年度からは計画策定費と工事費それぞれに設けていた補助限度額を一本化し増額しています。
  西宮における対象住宅は3万3千戸、簡易無料診断は677棟、1925戸が受けられ、うち9割が詳細な診断が必要または改修が必要という結果が出ています。そしてその後の改修補助を受けたのは2003年度に3戸、2004年度、この3月現在7戸、わずか10戸が改修にとりくんだにすぎません。
  市が現在おこなっているのは県制度の窓口業務のみです。もっと真剣な努力が必要ではないでしょうか。先日の答弁では、国の地域住宅交付金制度創設のなかで、民間住宅の耐震改修助成制度にこの交付金が受けられる可能性があり、その推移を見るということでした。現行県制度は上限50万円の助成ですが、横浜市は独自で上限600万の補助をおこなっています。国まちにならず、積極的に検討すべきではないでしょうか。

  1. なぜ県の助成制度の利用が少ないのか、その原因をどう分析しているか。
  2. 三鷹市では、耐震診断は市内在住の1、2級建築士及び7年以上の経験を有する大工で、市の「調査士養成講習会」を修了した調査士がおこない、また耐震改修も市内に本店・支店または主たる事業所を有する建築業者に発注することを条件として、市内の中小業者の振興も合わせ、めざしています。
    「わが家の耐震改修促進事業」や「人生いきいき住宅改造助成制度」など住宅改修関連事業に市内業者を利用する要件を加えてはどうか。
  3. 関連して、これまでもわが党は不況にあえぐ市内中小零細業者の救済、振興策として小規模工事等契約希望者登録制度の創設を要望、当局は検討を約束してきたが現在の検討状況は、どうか。
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