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2002年06月11日

西宮市の都市計画に関する基本的な方針についての修正を求める意見

 西宮市都市計画審議会
会長 稲鍵 雄康 殿

「都市計画に関する基本的な方針(素案)」(以下都市計画マスタープランとする)について、市長より都市計画審議会に対して意見をもとめる諮問が出された。都市計画マスタープランは、西宮市と市民にとって今後のまちづくりに重要なものである。議会選出委員としての意見を述べる。
  まず、この都市計画マスタープランについて、基本的な問題を指摘する。
 第一に、都市計画マスタープランの基本となる「第三次西宮市総合計画」が破綻している問題である。 1999年策定の「総合計画」について、日本共産党西宮市会議員団は、策定時、基本的な財政計画が初年度から大幅に狂っていること、開発優先で市民サービスを優先する内容になっていないことなどの問題点を指摘してきた。さらに、あらゆる前提となる人口予測では、当初43万7000人(ピーク時)という数値が、6月つまり今月にも推計人口が45万人にも達しようとしており、すでに大幅なズレが生じてきている。市は人口予測を見直したが、それにもとづき「総合計画」の「基本計画」の見直しを実施することを明言している。ところが、「総合計画」の見直し内容をいまだ明らかにしないまま、都市計画マスタープランを策定すれば、全く現状にあわないものにならざるを得ない。
 第二に、これまでの都市計画の評価が全くと言っていいほど行われていないという問題である。この都市計画マスタープランには、基本的な考え方についての章に都市計画の現状が、全体構想と地区別構想の章に「現況と課題」という項目が設定されているが、これまでの都市計画の評価とくに問題点は示されていない。
 北部地域は乱開発により緑地が大幅に減少した。震災後、顕著に現れた住宅地等におけるマンション建設ラッシュによる住環境の悪化をまねいた。また震災復興事業に名を借りたさまざまな土地区画整理事業や再開発事業、街路事業についてその必要性や性急なやり方も大きな問題点を生んだ。
 ところがこれらの事についてはなにも検証されていない。
 第三に、この都市計画マスタープランでは、開発中心のまちづくりとなっており、基本目標と具体的な方針とが整合性がない問題である。
 基本目標の“文教住宅都市を基調とする個性的な都市”の実現に向けての、「安心して暮らせる、心かようまち」や「環境にやさしい、うるおいのあるまち」、「安全でゆとりのある快適なまち」など6つの目標を掲げている。これらはいずれも西宮市の豊かな自然と優れた住環境を特徴とした文教住宅都市をめざす目標となっている。ところが具体的な全体構想や地区別構想の各方針をみてみると、それとは全く矛盾する都市再開発や幹線道路中心の街路事業など開発を前面にしたまちづくりとなっている。
 また、現行のまちづくり条例は、マンション開発の大幅な規制緩和をしたものであり、思いきった規制強化をはかるべきである。
 第四に、財政的な裏づけを全く持っていない計画となっている問題である。
 現在、西宮市は未曾有の財政危機である。その最大の原因は、震災後、復興の名を借りた土地区画整理、再開発、街路事業などの大型公共事業による先を見ない借金を作り出してきたことである。これは、都市計画の観点や震災復興を横において、とにかく大型公共事業というものであった。その後も行財政改善計画の名のもと、市民サービスは大幅に削りながら、さらに開発事業だけは推進するという姿勢を続けている。
 本来であれば財政的に中止または延期せざるを得ないようなものまでが、都市計画に組み込まれており、このマスタープランが全く財政計画を無視したものとなっている。
以上の4つの基本的な問題点を指摘しておく。

 その他の問題点について指摘する。

1)広域防災拠点の整備として西宮浜の沖の埋め立てが兵庫県によって計画されているが、環境面からも、防災の点からも不要な公共事業であり、市民の理解は得られていない。見直すべきである。
2)建石線と山手線の整備に合わせ阪急甲陽線との立体交差計画は、夙川の自然環境を破壊し、住民からの要望もない。現在の財政からみても中止すべきである。
3)阪神甲子園駅以東の連続立体交差事業は、財政危機のこの時期にあえて取り組む必要のない事業である。都市計画の推進を中止すること。
4)文教住宅都市をまちづくりの基本としてめざすのであれば、道路整備についても車中心の幹線道路整備を主とするのではなく、歩行者優先の道路整備へと転換すべきである。
5)甲子園競輪場の廃止に続き、西宮北口の西宮球場、阪神パークなどの施設が廃止されようとしている。これらの土地利用は、今後西宮市にとって大きな影響を及ぼしかねない。開発抑制の措置をとるべきである。
6)酒蔵地帯は、臨港線を中心に大型店が集中し、酒蔵イメージとなっておらず、それにふさわしい誘導が必要である。
7)西宮市の小売業全体における大規模小売店舗の出店面積は占有率は50%を大きく超え、商店、市場、零細小売業者の営業を圧迫している。住環境や交通、教育など地域への影響などを考慮し、大型店の出店規制をはかること。
8)JR新駅計画について、交通量の増大や騒音、駐輪対策など周辺住民の不安の声がある。環境対策など、市としての考え方を示すべきである。
9)武庫川の治水対策について、これまでのダム建設計画から総合治水対策に改められた。しかしこれはダム計画も対象とするものであり、この際思い切って「ダムに頼らない総合治水対策」にふみこむべきである。

 最後に、パブリックコメント制度についても、言っておきたい。
 パブリックコメント制度は、今回は試行ということであるが、実施の方針や方法も定まっていないもとで重要な都市計画マスタープラン等に試行した。市民の意見を聞いたという口実をつくる意図が感じられる。特に意見が集中した阪急甲陽線の地下化など、市民に意見を求めただけでそれを取り入れないというやり方は市民の不信を広げるものとなった。
 今後の本格的実施については、その実施方法や市民の意見の取り入れなどをよく検討するとともに、今回の試行については市民の重要な意見をしっかりと盛り込むこと。
 これら指摘した問題が、修正されなければ都市計画マスタープラン(素案)については、了承はできない。以上

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