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2006年9月議会 杉山たかのり議員の一般質問
2006年09月30日

2.障害者自立支援法について


 昨年10月、自民党公明党が数の力で押し切って成立した障害者自立支援法は、4月に施行され、5ヶ月が経とうとしています。このわずかな期間ですが、この制度が障害者と家族を直撃し、「自立支援ではなく、自立阻害だ」「看板に偽りあり」と、批判の声があがっています。
 福祉サービスに原則一割の応益負担が導入され、障害が重いほど負担が重くなるという事態の中で、負担増のため、サービスの利用を中止する障害者が続出をしています。
 特に、通所施設では、無料だった利用料負担が給食費を含めて月2万円から3万円もの大幅負担増となっています。このため、工賃収入をはるかに上回る利用料負担の支払いに、働く意欲をなくし施設利用を断念し、家に閉じこもる障害者が相次いでいます。あわせて、施設への報酬も激減し、経営の危機が危ぶまれる事態となっています。
 私が6月議会、請願第57号の紹介議員として厚生常任委員会で紹介させていただいた、名神あけぼの園に通うCさんについて、この場であらためて紹介させていただきます。

 Cさんは、今年の3月、15日間あけぼの園に通っています。収入については、工賃が2万3850円と加算227円、作業室手当てが3000円、支給総額2万7077円でした。
 名神あけもの園では、障害者自立支援法が施行された、4月に株式会社しるシルバーランドリーからの洗濯業務が中止となり、430万円の収入減となり、授産工賃等が大幅に引き下げられ、日額工賃が3月まで900円未満については400円に、900円以上については4月から600円に、次年度は500円、次々年度は400円にと引き下げられることになりました。
Cさんは、4月は、18日間施設に通っています。利用料が1日619円、18日間で11729円、食事代が1日650円、18日間で1万1700円、合計の支払い額が2万3429円となります。Cさんの場合、これまで日額単価が1590円だったものが4月から600円になり、990円も引き下げられています。18日間の工賃1万800円と加算340円、作業室手当て2000円、精勤手当て500円、と支給額が1万3640円となり、利用料と食事代が2万3429円ですから、9789円も支払うほうが上回ることとなったのです。3月までは毎月3万円前後を受け取っていたのに、4月からは1万円前後を支払う。Dさんのご家族は、「これからやめる人が出てくるだろう。」「小泉首相は、何を考えているのか」という趣旨のことを、怒りをこめて訴えられました。

 国会で日本共産党国会議員団が独自の実態調査にもとづく質問の中で、首相は「国としての調査をする必要がある」と答え、六月下旬、厚生労働省が実施した自治体アンケート調査が実施され、その中でも利用者負担増による退所者や利用抑制の事態が生まれています。
 大分県では8月2回目の影響調査結果がまとめられ、負担増を理由に福祉施設を退所したり、利用回数を控えた障害者は、43人増え、第1回調査(3月4月)から累計で、193人に上っています。施設別には、授産施設66人、児童デイサービスセンター50人、身体障害者デイサービスセンター46人で、授産施設が多い理由について「手取りの工賃より、支払う利用料が多くなり、勤労意欲が下がっているためでは」と分析、県としてなんらかの負担軽減策を検討したい」と県障害福祉課は具体的な対策をまとめる考えを示しています。
 三重県では、5月末各福祉団体などを通じて行った調査で、少なくとも27人が退所を余儀なくされ、36人がサービスの利用日数や回数を減らしていることが明らかになっています。
 滋賀県では、6、7月時点のアンケート回答で、通所施設の平均利用率が、実施前と比べて91.1%に減り、利用を控えた障害者が多数にのぼることが改めてわかりました。
 長野県では、5月に利用者の個別面談による聞き取り調査を行い、76人のうち、利用者負担が増えた人は73人で、サービスを止めた、または減らした人は17人となっています。また、事業者については、障害福祉施設30施設を抽出し、個別面接による聞き取り調査を実施、報酬単価の低下、日割り計算の導入により、大幅な収入源が見込まれ、経営の存続が難しいなど、経営軽費の項目で71件の意見要望。利用者負担が増大するため、送迎をどうするかが課題、自治体で負担軽減策をやるところも出てきて全国で格差が広がっている、など利用者負担の項目では70件の意見要望。障害程度区分では、知的・精神障害者は低めに判定されるなど20件の意見要望。という結果がでています。

 これら影響調査からも、利用者負担や障害者施設の経営の問題など、法の見直しが必要だということは明らかです。
 10月からは障害者自立支援法は本格的実施となり新たに、補装具、障害児施設にも応益負担が導入され、障害者と家族の負担は増加します。
 障害程度区分の認定とそれに基づく支給決定、地域生活支援事業もはじまります。小規模作業所については、補助金水準の低い地域活動支援センターの事業に移行した場合、現行水準が大幅に後退しかねないと危惧の声があがっています。
 今、自治体として独自の軽減策に取り組むことが求められています。

 3月議会で、わが党議員団のたてがき議員が、京都市や横浜市の独自軽減策について明らかにし、西宮市として取り組むよう求めましたが、きょうされん(障害者関連施設でつくる全国組織)による今年春の全国調査でも8都府県、242市区町村で利用者負担軽減や事業所補助のために独自の施策が行われており、さらにこの間増加している。
 例えば、京都市では、サービス利用料などを市の独自策で引き下げることを決め、10月から地域生活支援事業のガイドヘルパーなど異動支援事業は無料となります。あわせて、障害児の受けるサービスも市独自策で大幅に引き下げることになります。障害児の福祉施設利用料について、上限制をとり、非課税世帯では上限1900円、市民税の所得割が2万円未満の世帯では3000円に、入所は通所の倍におさえられます。
東京都台東区では、通所授産施設の利用料を所得に関係なく10月以降無料にすることを決めました。また、10月から1割負担となる車いすなど補装具の利用については、住民税非課税世帯は半額の負担に、障害者の外出に付き添うガイドヘルパーは月20時間までは非課税世帯は無料、手話通訳も10回または40時間まで無料となります。
 仙台市では、サービス利用料の月額上限を今年度10月からは4分の1に、2007年度は4分の2、2008年度は4分の3に引き下げ、利用者の約65%が負担軽減になります。通所施設にたいしては、報酬給付が月額払いから利用日額払いになって、収入が激減したことを受け、運営補助を実施し、定員の95%に応じた給付と利用実績に応じた給付費との差額を上限に補助します。
 そのほかにも、岡山県倉敷市では居宅サービス利用料の3分の1負担に続いて、地域生活支援事業の一部無料を含めて、独自の負担軽減を図るとしていますし、長野県上田市では、小規模作業所など一部事業は無料に、事業によって住民税非課税世帯は無料にするなど、原則5%の負担とします。
 このように、自治体による軽減の努力がすすんできています。

<質問項目>
  1. 厚生労働省による自治体アンケート調査が、都道府県、政令市、中核市で行われ、一部の自治体の調査結果がでています。また、障害者団体なども実態調査を行っています。これらの影響調査の結果についてどのように受け止めているのか。兵庫県の影響調査はどうだったのか。市として、実態の把握とその分析はどのように行っているのか。市として、市内の利用者、事業者の実態調査を早急に取り組むべきだと思うがどうか。
  2. さきほど、他の自治体の独自軽減策を紹介しましたが、西宮市として、他自治体の独自施策の取り組みについて、どう調査・研究し、評価しているのか。これら独自施策を西宮市も取り組むべきではないか。
  3. (介護保険の認定は西宮市は厳しすぎるとの声もあるが)障害程度区分認定と支給決定については、障害者の実態や利用意向を十分に反映させて、支給決定を行うべきだが、必要なサービス支給が切り下げられることがないようにすべきだがどうか。
  4. 政府に対して、応益負担の撤回を求めるとともに、当面の問題として、
    1. 障害者自立支援法による影響を直接把握するための全国調査をおこなうこと
    2. 利用者負担の軽減措置を大幅に拡充すること
    3. 施設・事業者に対する報酬を抜本的に改善すること、を求めるべきではないか。