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2007年予算要望書
2006年11月30日

教育委員会


  1. 安倍首相は5年以内に憲法を改正するとし、日本を再び「戦争する国」にするために、日本国憲法第9条「改正」の動きを急ピッチで進めている。あわせて教育基本法の改定も行なおうとしていることは重大である。アジア太平洋戦争で、日本軍国主義が行なった侵略行為により、アジアの2000万人もの命を奪い、310万人の国民の犠牲の上に、2度と戦争をしないと世界に誓ったのが日本国憲法であることは忘れてはならない。いまこそ、憲法や教育基本法を基本にすえた平和教育、民主教育こそ必要である。
    1. 子どもの権利条約や教育基本法を基本にすえた教育行政、教育活動を行うこと。

    2. 「日の丸・君が代」を教育現場で強制、押し付けは憲法違反であるという判決が東京地裁で行なわれた。この立場を尊重し、各学校長、現場に対して「学習指導要領」に基づく強制調査や管理指導は絶対行なわないこと。

    3. いま、とくに日本の近現代についての歴史認識が国政の場で大きな問題となっている。日本軍国主義がアジア諸国に侵略戦争を拡大した事実を、「正義の戦争」だったとする靖国史観は世界各国から批判の対象となっており、皇国史観、侵略戦争美化の「新しい歴史教科書をつくる会」の激しい策動も失敗を重ねている。 
      これは子どもたちに真実を伝えたいとする国民の良識の表れであった。引き続き教科書の採択については、政治的な策動に揺らぐことなく、公正に行なうこと。

  2. 一人ひとりの子どもに行き届いた教育をするために
    1. 義務教育全期間にわたり、30人学級の実施を強く国に要求すること。また、それが実施されるまでの間、小学1・2年のみで実施している35人学級を義務教育全学年に拡充するよう県に求めること。

    2. 市の開発政策の誤りにより、西宮市の人口、特に児童が急増し、一部の学校ではプレハブ教室での対応を余儀なくされている。校庭も学童施設の増築等で一層劣悪な環境となっている。教育委員会として、これ以上のマンション開発を全市域で中止するよう市長部局との協議を進め、子どもたちの教育環境を守ること。

    3. 学力低下が大きな問題になってきており、授業時間確保が望まれている。そのためにも、県が一方的に決めた施策を全校一律に実施している、小学5年生の自然学校や中学2年生のトライやる・ウイーク、中学1年生のわくわくオーケストラなどの行事を見直すことが必要である。思い切って廃止するか、実施期間短縮など、学校ごとに子どもの状況や親の思いも踏まえて柔軟に取り組めるようにすること。一方的な押し付けや強制は絶対にやめること。

  3. 学校配分予算は、児童が激増するなか、反対にどんどん削減されている。とくに大規模校ではプリント用紙一枚にも苦労するなど、学校運営に支障が生じている。 

    これ以上の削減はやめ、新年度は大幅に増額し、「文教住宅都市」「子育てするなら西宮」にふさわしい教育を実施すること。

  4. 法期限が終了した「同和施策」は、各分野で一般施策に移行している。この中で、市教育委員会だけが事実上「同和教育推進」体制をつづけるのは間違っている。2007年度県予算への要望として、「人権に係る課題をもった児童生徒が多数在籍する」ためとして、教員の増員をもとめている。これは教育行政側からの差別温存であり、ただちに改めること。また、人権教育といいながら同和問題一色の“西宮市人権同和教育協議会”は廃止すること。

  5. クラブ活動の各種競技大会派遣経費(交通費補助)の基準を見直し、補助額を増額するとともに、特に北部の学校については“教育の機会均等”を基本に、市内大会についても旅費を支給すること。

  6. 障害児教育について

     新年度から特別支援教育の本格実施がはじまる。すべての子どもたちが等しく教育を受けられるようにするためにも、これまで障害児教育にあたって来られた教職員の意見を尊重することはもとより、施設整備やマンパワーの拡充が不可欠である。
    1. 適正就学指導を充実させ、ニーズに応じた教育ができるようにすること。

    2. さまざまな種別の障害児に対応できるよう、全校に必要な障害児学級を配置すること。

    3. エレベーターの設置をはじめ、施設整備をはかること。

    4. 十分な教育が保障できるよう、人的配置を充実させること。特に、コーディネーターや医療職員を配置すること。また、学校協力員については、ボランティアから正規職員にすること。

    5. 障害児学級はもちろん障害児が所属している普通学級に対して教員加配や介助員の配置を県に対して強く求めるとともに、当面市独自で実施すること。

    6. 市立西宮養護学校の介助員について、一律子ども2人に介助員1人と基準を決めて配置しているが、現場の状況から柔軟に対応すること。

    7. 市立養護学校に幼稚部を設け、障害を持つ子供の幼児教育の選択肢を拡大すること。また、公立幼稚園全園で、すべての障害児の受け入れを行なうこと。そのために必要な教員の研修やマンパワーの充実を行なうこと。

    8. 市立養護学校内に、健康福祉局とも連携して学童保育所を設置すること。

  7. 幼稚園教育について
    1. 4歳児で幼稚園に入園できない子供が多数にのぼる。市立幼稚園2年保育の募集定員を増やし、入園希望者を全員受け入れること。また、要望の強い「3年保育、延長保育、子育て支援事業」等々を充実させ地域に開かれた幼稚園運営を基本にすえること。

    2. 西宮浜(マリナ)地域に早急に公立幼稚園を設置すること。

    3. 公立幼稚園保育料については、市民税所得割が基準額以下の世帯はすべて免除となっていたが、生保・市民税非課税で母子家庭・父子家庭の場合以外は除外された。若い世代を応援するためにも、元の制度に復活させること。

    4. 私立幼稚園就園奨励助成制度における所得制限は撤廃すること。

  8. 2006年10月より、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律、いわゆる「認定子ども園」に関する法律が施行された。「認定こども園」は、?幼稚園・保育所双方の認可基準の切り下げ、認可外施設の公認化をすすめ、?保育所に直接契約制度、保育料の自由設定方式を導入し、憲法・教育基本法・児童福祉法に基づいて国と自治体が責任を負うべき幼児教育・公的保育制度の縮小、変質に道を開くなど、子どもの権利をないがしろにするものである。県に対し、多くの問題をはらむ「認定子ども園」について条例化を行なわないことを求めること。

  9. 高校教育について

    兵庫県教育委員会は、「県立高等学校教育改革第一次実施計画」に基づき、新年度から県立西宮今津高校を「総合学科」高校に改編し、また「複数志願制」の導入などを強行しようとしている。
    1. 高校教育を西宮の子どもたちに保障するために、市教委は二度にわたる市議会としての意見書を尊重し、“総合選抜制”を堅持するために力を尽くすこと。

    2. 「複数志願制」についての検討委員会が設置されている。今後の西宮の高校教育にとって重大な関心がある。委員会を全面公開すること。

    3. 県立今津高校を「総合学科」高校にする問題について、今津高校校長等が保護者に説明していると聞くが、議会等には全く詳細が明らかにされていない。全市の普通科の開門率等も含め、全ての情報を市民や議会に明らかにすること。

    4. 高校が北部にないなど、適正配置されていないため、校区が居住地から遠くなることが大きな問題となっている。市教委としての県への要望書で、北部地域の課題解決として、適正配置、自由学区の見直し、学区の統合をあげているが、とくに県教育委員会の責任を明確にして北部に高校を早急に設置するよう働きかけること。

  10. 就学奨励金については、所得制限を緩和し、保護者が一時期でも立替払いしなくてもいいように、年度当初から支給するとともに、申請手続きについては、直接教育委員会で行なえるようにすること。その際、給食費は、保護者の了解を得て、市教委から学校に振り込むよう、システムを変更すること。

    また、めがね購入費の補助(上限5000円)を復活させること。

  11. 奨学金制度の拡充を国や県に要求するとともに、市独自の制度も拡充すること。

  12. 2003年度から司書教諭の配置が義務付けられている。直ちに、学校図書館専任の司書教諭を全校に配置すること。当面は、臨時も含めて市の責任で専任司書を配置すること。また、予算を増額し、各校の蔵書数を増やすこと。特に中学校は遅れているので重点にすること。

  13. 保健室登校の子どもたちの増加や被虐待児の増加、また、心のケアを必要とする子どもたちの増加など、養護教諭の果たすべき役割はますます重要になっている。このことを踏まえて、全校に複数配置すること。また、スクールカウンセラーについては増員し、全校に配置すること。

  14. 教師の過重負担をなくすための人的配置等について
    1. いま、専科の教員をはじめ、教員が不足している実態があると聞いている。必要な教員を確保し、子ども達に責任を果たすこと。

    2. 年休や出張時には県教育委員会の要領に基づき、代替教員等の配置を行なっているが、実態としては短期対応などで不十分な状況となっている。さらにきめ細かな補助員配置を要求するとともに、市独自でプール指導時の補助員の確保、事務職員の増員などを早期に実施すること。

    3. 県費教職員が50人を超えると労働安全衛生委員会の設置が義務付けられている。法に基づき、学校ごとに市として主体性を持って労働安全衛生委員会を設置すること。その際、教員50人未満の学校にあっても、準拠した委員会の設置を行なうこと。

    4. 教員の現職死亡や病休が増えている。教室不足のなか、教員の休養室がほとんど取れていない実態がある。早急に設置を進めること。

  15. 市立高校の市費教員の給料が引き下げられ、県費教員との格差が生じているため、市立高校の教員確保が困難になってきている。2007年度より格差を解消し、必要な教員の確保を行なうこと。

  16. 西宮東高校の視聴覚室に設置されているコンピュータ等のシステムが古く、使用に耐えなくなっている。最新のものに更新すること。

  17. 学校現場における個人情報保護について、個人情報の学校園からの持ち出しは行なわないなど、教育委員会としてすべての教職員に個人情報保護を徹底すること。学校園においては校長、園長が管理監督をすること。

  18. 地域公共ネットワーク整備事業等、小中学校等にパソコン整備が進められたが、教員の事務処理用などのパソコン配備は遅れている。必要数を配備すること。

  19. 市教委の県への要望に、普通教室への冷房設備設置にかかる補助制度の充実についてあげられている。国に対しても強く働きかけるとともに、市独自での設置も直ちにすすめること。また、災害時の避難場所となっている体育館へのエアコン整備も取り組むこと。

  20. 公立学校等の耐震診断が終了したが、その結果を受けて補強や改修の必要な施設については早急に行なうこと。 

  21. 学校のトイレは、改修や改善がすすんできている。引き続き、入り口のドアを取り付けるなど、外からトイレの中が見えないようにしたり、洋式便器を設置、増設するなど、子どもたちの人権を守るとともに、現代の生活様式に見合った改修・改善を早期に実施すること。また、高齢者事業団等に委託している清掃回数を増やし、臭気対策をとること。

  22. 学校施設の整備について
    1. 津門小学校では、老朽校舎の建替えがすすんでいるが、浜脇、用海、夙川、船坂小学校の老朽校舎についても早急に建替えること。また、老朽化のすすんでいる校舎等については改修をすすめること。また、各学校からの改修要望にはただちにこたえること。

    2. 水はけの悪い大社中学校のグランドを早期に改修すること。

    3. プール事故を防ぐために、点検を強化すること。また、各学校に温水シャワーを設置し、児童や教員がプールのあと使用できるようにすること。

    4. 新年度より特別支援教育が本格実施されることを受け、全校へのエレベーター設置を、緊急課題として取り組むこと。

  23. 県立(知的障害)養護学校を、新年度には阪神間に建設するよう県に強く求めること。

  24. 学校施設での安全対策として、学校各階各教室に“防犯ベル”
    “校内電話”等を現場の声も聞き早急に設置すること。また各校に警備員を配置すること。

  25. 児童保護者を含む、学校現場等でのセクハラ防止に向けて、市教委として、被害者のプライバシー保護を確保した上での相談体制を整備すること。また、職員の研修を強化すること。

  26. 学校園内でのいかなる暴力・いじめも許さないという毅然とした立場に立つよう学校を指導し、すべての教職員にも徹底すること。

  27. 教育委員会庁舎はエレベーターが未設置のままとなっている。建替える時期も考慮しなければならないが、多くの市民や関係者が訪れる施設でもあり、ただちに設置すること。

  28. 西宮市の小中学校での学校給食は、“直営自校方式”で実施されている。子どもたちの健康と成長をまもり、教育の一環としての学校給食という立場からも次のことを実施すること。
    1. 将来的にも「直営自校方式」を堅持すること。

    2. 正規調理員を基本とした人員を確保すること。

    3. 食物アレルギーを持つ子どもが増加していることを踏まえて、早急にアレルギー除去食を実施すること。

    4. 「米飯給食」については自校炊飯ができるところから取り入れること。

    5. 「統一献立」「食材一括購入」については、学校ごとの献立、野菜等地域の生産者から可能な限り購入するよう、可能なところから工夫して取り組むこと。

    6. 「給食費」については“光熱水費等の食材費以外の経費を含めるよう実施時期も含め研究する”としているが、これ以上の父母負担を増やすべきではない。給食費の値上げはしないこと。

  29. 財団法人・学校給食会への市補助金について、不正流用事件が発生した。元学校給食会調達主任らに対する補助金返還請求や、市教委の関係者に対し処分が発表されたが、これですべてが終わったわけではない。次の点に取り組むこと。
    1. 処分を発表したが、真相は未解明である。引き続き調査し、市民や議会に報告すること。

    2. 市教委として、事件発覚以来議会への報告義務を怠っていた。議会に真相を隠そうという体質を改め、透明性をはかること。

  30. 公民館について

    公民館は1中学校区地域に1公民館を基準として設置しているが、設置場所によっては使いにくい地域もある。また、地域集会施設とは違い、社会教育の拠点である公民館の充実のため、次のことを実施すること。
    1. 公民館は指定管理者制度を導入するのでなく、市直営を堅持すること。

    2. 第3次「行革」で強行した、公民館使用団体である登録グループの使用料の減免廃止を取りやめ、無料に戻すこと。

    3. 上ヶ原地域、甲陽園地域、広田地域に公民館を新設すること。

    4. 各公民館のバリアフリー化、洋式トイレの増設をすすめること。

  31. 図書館について
    1. 図書館については市直営を堅持すること。とくに越木岩など5分室について、開館日増や会館時間延長を行なうこととあわせ、民間委託する計画が進められているが、住民にとってもっとも身近な分室の運営が、毎年の入札で業者が替わり人も替わって継続性は保てない。引き続き直営で運営し、市民サービスを向上させること。

    2. 司書正規職員を増員し、適正な配置を行なうこと。 

    3. 拠点図書館について祝日を含め毎日開館すること。また開館時間についても、改善の方向は示されているが、北口図書館は勤労者が利用できるよう午後9時までとすること。そのために必要な人員を確保すること。

    4. 要望のある津門・今津、甲陽園地域に地域図書館を設置すること。

    5. 蔵書数を大幅に増やすこと。

  32. スポーツ施設の整備等について
    1. 市民要望の強い温水プールを再建整備すること。

    2. 厚生年金プール跡地に子どもたちが安心して遊べ、家族で憩える市民プールをつくること。

    3. スポーツ施設の整備については、青年のスポーツ要求にこたえ、バスケットやフットサル、スケートボードができるよう公園等に整備すること。

    4. 野球場の使用料は尼崎市に比して高い。利用者の要望にこたえ引き下げること。

  33. 中核市である金沢市では全国で3例目として、子どもをとりまく社会環境が変わる中で、子どもたちを市民みんなで育てていくことをめざして「子ども条例」(正式名称は「子どもの幸せと健やかな成長を図るための社会の役割に関する条例」)が制定されている。西宮市も「子育てするなら西宮」をキャッチフレーズにしていることからも、早急に「子ども条例」を制定すること。

    また、「子ども条例」の具体的施策の拠点として、例えば神祇官町の総合教育センターを活用し、総合的に子育てを支援する「教育プラザ」のような施設を建設すること。

  34. 阪急西宮スタジアム跡地で、奈良時代のものと思われる貴重な遺跡が発掘された。土地所有者の阪急は大型ショッピングセンター建設を急いでおり、10月末で調査を終了し、埋め戻すとしている。この件に関し、全域の発掘調査をし、その上で市として遺跡をどう残すのかもふくめ、早急に阪急との話し合いを行い、対応すること。