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2007年3月議会 上田さち子議員の代表質問
2007年02月28日

財政問題と福祉切り捨ての「第3次行財政改善実施計画」いわゆる「第3次行革」について


安倍内閣がはじめて編成した2007年度政府予算案は、史上空前の利益を上げている大企業や大資産家には大盤振る舞いで減税をばらまき、一方で、定率減税の廃止や生活保護の削減に見られるように、庶民への負担増と給付切り下げは無慈悲に継続・推進する、社会的格差と貧困をさらに拡大するものとなっています。
西宮市でも高齢者を狙い撃ちにした増税は、介護保険料や国民健康保険料の負担増、市営住宅や県営住宅の家賃値上げなどにまで連動し、市民に耐え難い負担を強いています。自民党・公明党が強行した、年金課税強化による増税は、2008年度までつづき今年は2年目、定率減税全廃により、昨年をうわまわる抗議の声が起こることは必至です。さらに消費税率の二桁引き上げも画策されており、大変な事態です。
また、規制緩和の名のもとに労働法制が改悪され、「働いても、働いても、貧乏」という、いわゆるワーキングプアといわれる労働者が増え続けています。とくに青年や女性の二人に一人がパートやアルバイトなどの非正規雇用で、西宮市内でもこのような人達が増えており、生活設計も立てられず将来への展望ももてなくなっていることは深刻です。
社会保障切り捨てと格差拡大の実態は、西宮市における生活保護率でみると、1995年度に0.73パーセントが、2007年、今年の1月末では1.228パーセントにもなっており、全国的には保護率上昇が止まる傾向にあるのに、西宮はまだ伸び続けていること。就学奨励金受給世帯は、2001年度と2006年度の比較で、小学校で1%、中学校では3.6%も増え、地域によっては57%と、生徒の二人に一人が受給している学校もあり、地域間格差の広がりも数字の上からも顕著で、市民の厳しい暮らしの実態が浮かび上がっています。 
日本共産党西宮市会議員団が昨年8月に実施した市民アンケートにも、たとえば「以前より暮らしが良くなった」はわずかに4.5%、「変化無し」が24%、「悪くなった」が70.6%にもなっているのです。
重大なことは、格差と貧困がひろがるなかで、生活保護の給付水準の引き下げや、介護保険法「改悪」、応能負担から一律一割負担導入の障害者自立支援法の実施などで、本来、社会保障で生活権が保障されるべき人たちが、逆に社会保障から締め出される事態を広範に引き起こしていることです。
こうした市民が置かれているきびしい生活状況を、放置するのか改善していくのかが、いま自治体や議会、政党に厳しく問われています。いまこそ市民の声をしっかり受け止め、地方自治体の本旨である、福祉の増進に全力で取り組み、市民のくらしを守る市政への転換を求めるものです。

さて、西宮市の2007年度予算案は、一般会計1486億1950万円、前年度比6.1%減。特別会計は、下水道事業が新年度より企業会計に移行したため、前年度比10.4%減の991億6292万円。企業会計は434億3998万円で前年度比101.2%増、総計では、前年度比0.3%増の2912億2241万円にのぼる予算案となっています。
 その内容は、一般会計の消費的経費では、人件費で退職手当の増、貧困が深刻になる中で生活保護扶助費の増、児童手当や、福祉医療費は対象者の増による増額となっています。しかし、重度障害者や一人親家庭などの児童に支給されていた市民福祉金が「第3次行革」で、新年度は全廃となり4億200万円の減額をはじめ、原爆被爆者扶助費の全廃、特定疾病患者見舞金の減額等、情け容赦のない福祉切り捨てが続行されています。 
 投資的経費では、津門小学校など教育施設の増改築や公園整備、仮称山口地区センター整備事業などで増額となっています。また、阪急電鉄が西宮スタジアム跡地に超大型ショッピングセンターを開発するのにあわせて、まったくの不急事業である阪急今津南線高架事業に着手する予算が、西宮北口駅舎改善支援事業と県事業の地元負担金の二本立てで計上されていることは問題です。また、事業計画もない中で、突然JR西宮駅北東の土地を4億2000万円で購入する予算が計上され、他に企業会計に移行した下水道事業の運転資金として9億円の貸付が行なわれています。
 歳入では、定率減税の廃止や税源移譲等により、個人市民税が38億円増など、市税全体では、昨年に比し、49億円増の835億6900万円を見込んでおり、財政基金・4億9000万円取り崩しを除く一般財源は、昨年を21億7400万円上回って、1046億4800万円となっています。

 全体として、議会の論議や市民の皆さんの運動もあって、新年度は乳幼児の医療費助成の拡大や障害のある4年生以降の学童受入、公立保育所での産休明け保育・延長保育が実施されることや、市民交流センターにエレベーターを設置することに向けた耐震診断実施、JR甲子園口横断地下道改良工事の調査などの予算が計上されています。一方で、保育所や学童、幼稚園の保育料引き上げ、高校授業料の引き上げなど、子育て世代を値上げのラッシュがおそっています。子育て支援というなら、今以上の負担を押し付けるべきではありません。さらに国民健康保険料の介護納付金賦課限度額の引き上げなど、財政状況が大きく改善されてきたにもかかわらず、市民生活を応援することなく、反対に市民のくらしを圧迫する予算案だといわなければなりません。単年度収支では、財政基金を4億910万円取り崩し、赤字解消だとしていますが、おそらく基金の取崩しも必要がなくなり、黒字決算になることは容易に予測がつく内容です。
このほど、西宮市の財政を考える(??4)が発表されました。4年前の2005年2月に策定された西宮の財政を考える(?-1)で、2008年度末の財源不足額は321億円と打ち上げました。それを根拠に第3次行革を強行し、市民の福祉やくらしの予算が次々と切られていく事になりました。それが翌年の2006年2月策定の(??2)では財源不足額は164億円に減少、昨年2月策定の財政計画(?-3)では71億円の財源不足へとどんどん減少し、ついに今年2月の(?-4)では、2008年度末の財源不足額はすべて解消、それどころか反対に38億円の財政基金積み立て確保、つまり貯金が38億円になったという内容です。さらに今後3回の決算ででる剰余金、少なくとも約60億円を考えれば、なんと100億円を越す財政基金・貯金の積み立てになることが明らかとなりました。その差421億円です。2年前に打ち上げた321億円の大赤字はどこへ行ってしまったのでしょうか。
職員の人件費等を削減し、市民の命綱の市民福祉金などを切り捨てる第3次行革による効果額は163億円であることを差し引いても、その差258億円は一体どこからどう出てきたのか不思議でなりません。結局、歳入はできるだけ小さく見積もり、歳出は最大限を見積もることで大幅な赤字を意図的に作り出し、「赤字再建団体に転落する」と市民を脅して、市民サービス切り捨て、「行革」を強行したのではないでしょうか。
いずれにしても、市の財政は誰の目にも大幅に改善されたことは確かであり、そうであるならば、財源不足を理由にした「行革」は直ちに中止し、これまで切り捨てた福祉やくらしの予算は復活させるべきです。 
  1. 行政方針には、いま問題になっている「格差問題」も、「貧困の広がり」も、まったく触れられていません。市長は、行施方針を策定する際、西宮市民の間にも格差と貧困の広がりあるとは思われなかったのでしょうか。市民生活の実態をどのように調査され、認識されたのか、山田市長に伺います。

  2. 2004年2月に「西宮市の財政を考える(?-1)」で、2008年度末には321億円の財源不足になるとしましたが、今年2月に明らかになった(?-4)では、逆に38億円の基金積み立てとなっています。まさにつくられた財源不足論だったといわなければなりません。一体この狂いはなぜおこったのか

  3. 財源不足はいつを以って解消されたとするのか

  4. 2008年度末の収支試算は決算剰余金等も見込むといくらになるのか

  5. 事業計画もないJR西宮北東用地の買収の理由は何か

  6. 財政状況が大幅に改善されたにもかかわらず、さらに第3次行革を新年度も続行する理由は何か