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野口あけみ議員の一般質問
2007年06月27日

多重債務者対策について


 昨年12月議会でもわが党、佐藤議員がとりあげました。
 生活苦がひろがるなか、簡単に借りることができるサラ金を利用し、返済のために次々借りついで、たちまち多重債務に陥る人々も増えつづけています。全国でサラ金利用者は1400万人、5社以上の多重債務者は230万人といわれていますが、多重債務の根本原因は「貧困」であり、誰でもがおちいる可能性のある問題です。
 いったん多重債務におちいれば将来に希望を見出すことができず日々を暮らすことになります。ストレスによる疾病、家庭崩壊、不登校、ホームレス、犯罪などの原因にもなっています。8年連続年間3万人を超える自殺者のうち、7000人?8000人は経済問題が原因、その多くが多重債務者と言われています。
 多重債務が社会問題化する中、ようやく政府も動き始めました。昨年12月には貸金業法が改正され、利息が引き下げられるなどします。また、今年4月、借り手救済対策として「多重債務問題改善プログラム」が策定されました。
 プログラムでは、(1)ていねいに事情を聞いてアドバイスをおこなう相談窓口の整備・強化 (2)セーフティネット貸付の提供 (3)予防のための教育の強化 (4)ヤミ金撲滅にむけた取締りの強化、これらを国・自治体及び関係者が一体となって実行すること等を定めています。

 国や自治体が多重債務者救済対策に真剣に取り組むことは、日本国憲法13条「個人の尊重と公共の福祉」の観点からも重要であり、また地方自治法第2条で定められた自治体本来の仕事、すなわち「住民及び滞在者の安全、健康及び福祉の保持」「未成年者、生活困窮者、…略…等を救助し、援護しもしくは看護し、または更生させること」にあたる仕事です。
 プログラムの中心は、「ていねいに事情を聞いてアドバイスをおこなう相談窓口の整備・強化」です。各種の相談窓口にたどり着くのは2割、残り8割の方の多くは、家族にも言えず一人で思い悩んでいるのではと推測されています。この2割の人たちを生活再建まで援助すること、8割の方たちを掘り起こし、解決することが重要であり、遅くとも改正貸金業法完全施行時(2009年末)までに、すべての市町村で適切な対応がおこなわれるようにとりくむことがもとめられています。
 現在市が消費生活センターでおこなっている相談は、事情は聞くものの、あとは弁護士会や司法書士会に紹介して終わりとなっている例が多く、生活再建まで解決できたかどうか確認さえできていない、と聞いています。プログラムが求めているものはもっと踏み込んだ相談です。しかし、それは熱意と専門知識を持てばむずかしいものではありません。  
 現に、全国でサラ金被害者の会などが手弁当で多重債務者救済にとりくんでいます。西宮でも民主商工会という中小零細業者の団体が、会員さん以外も対象に「えびす会」という会をつくって、弁護士や司法書士と連携し親身な相談活動をおこなっています。  
2006年1年間で48回相談会を開き、53人、のべ93人の相談にのり、過払い請求や、任意整理、特定調停、自己破産等、53人中35人、66%が一定の解決をしています。
 自治体でもテレビなどで紹介されている奄美市、滋賀県野洲市、高知市などで先進的な取り組みがなされています。
 自治体が取り組めば厚生課や、税金、国民健康保険、住宅など滞納相談のある部署との連携で潜在している多重債務者の掘り起こしも可能ですし、過払い分が戻ってくる例も多く、滞納解決にも結びつきます。
 6月12日付朝日新聞社説では、多重債務での奄美市の取り組みが紹介され、「困っている人がいる。それを助けることで、行政にも魂が吹き込まれる。そんな善意と感謝の輪を多重債務者対策で広げていくことが大切だ」と述べられています。

【質問項目】
  1. 多重債務者は社会的・経済的環境の悪化による被害者であり、決して「個人の問題」として捨て置けるものではありません。また、「必ず解決できる」問題です。こういう認識がありますか。また行政が対策に取り組む意義について、どう考えていますか。

  2. 12月議会の答弁では国の推移を注視して今後対応したいとのことでしたが、消費者センターがある市では改正貸金業法完全施行時(2009年末)を待たずに、プログラムがいう「ていねいに事情を聞いてアドバイスをおこなう相談窓口」の整備・強化が求められています。専属・複数の相談員を置き、研修も行なって取り組みを進める必要がありますが、市での対応はどうなっているか。