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2008年度予算要望
2007年09月04日

教育委員会


  1. 昨年、教育の憲法と言われる「教育基本法」の改悪を国会で充分な審議もせず、与党の自民、公明党が数の力で強行採決したことに多くの国民から怒りの声が上がった。その後、教育3法(学校教育法の一部を改正する法律・教員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律・地方教育行政の組織及び運営に関する法律)を強行採決した。
    また、教育再生会議では、6・3・3・4制を見直し、子どもの人数で予算を配分するなど、ますます管理、競争教育を子どもたちに押し付けようとしている。そして、日本を再び「戦争する国」にするために、憲法九条をかえ、戦前のように「お国のために血を流せ」と思わせる教育を復活させようとしている。アジア太平洋戦争で、日本軍国主義が行なった侵略行為により、アジアの2000万人もの命を奪い、310万人の国民の犠牲の上に、2度と戦争をしないと世界に誓ったのが日本国憲法であることは忘れてはならない。いまこそ、憲法を基本にすえた平和教育、民主教育こそ必要である。
    1. 子どもの権利条約や憲法を基本にすえた教育行政、教育活動を行うこと。

    2. 「日の丸・君が代」を教育現場で強制、押し付けは憲法違反であるという判決が東京地裁でくだされた。この立場を尊重し、各学校長、現場に対して「学習指導要領」に基づく強制調査や管理指導は絶対行なわないこと。

    3. 高校日本史教科書検定で、沖縄戦時の「集団自決」をめぐり、「日本軍の強制」を削除する修正がおこなわれ、沖縄では歴史を歪曲するものだと住民や議会からも抗議の声があがっている。また、米国の下院本会議では従軍慰安婦問題で、日本政府に対して謝罪を求める決議が採択されるなど、日本軍国主義の侵略戦争に厳しい批判が国の内外からだされている。日本の近代史については、子どもたちに真実を伝える教育をすること。また、教科書の採択については、政治的な策動にゆらぐことなく公正に行うこと。


  2. 一人ひとりの子どもに行き届いた教育をするために
    1. 義務教育全期間にわたり、30人学級の実施を強く国に要求すること。また、それが実施されるまでの間、小学3年生まで実施している35人学級を義務教育全学年に拡充するよう県に求めること。

    2. 市の開発政策の誤りにより、西宮市の人口、特に児童が急増し、一部の学校ではプレハブ教室での対応を余儀なくされている。特に大社小学校では、校区を「教育環境保全のための住宅開発抑制に関する指導要綱」で「受入困難地区」に指定されながら、教室不足が起こり、校区変更を視野に入れた検討をはじめており、要綱がまったく機能していないことは明らか。教育委員会として、これ以上のマンション開発を全市域で中止するよう市長部局との協議を進め、子どもたちの教育環境を守ること。

    3. 週5日制の導入以降、学力低下が大きな問題になってきており、授業時間確保が望まれている。そのためにも、県が一方的に決めた施策を全校一律に実施している小学5年生の自然学校や中学2年生のトライやる・ウイーク、中学1年生のわくわくオーケストラなどの行事を見直すことが必要である。思い切って廃止するか、実施期間短縮など、学校ごとに子どもの状況や親の思いも踏まえて柔軟に取り組めるようにすること。一方的な押し付けや強制は絶対にしないこと。


  3. 今年から4月に全国一斉学力テストが実施された。これは、「学力向上」策として「教育にもっと競争原理が必要だ」として導入したもので、学校や教員、子どもを競争させれば学力が向上するという考えに基づいている。しかし、テスト結果公表と学校選択制、テスト結果を反映した予算配分というやり方を、国に先がけて実施した東京都足立区では、テスト中に教師が、間違った答えを書いている子どもに合図をしたり、障害のある子どもたちを学力テストから排除するなど、本来の学力向上とは無縁の事態を招いている。国に中止を求めること。

  4. 船坂地域や高須地域では児童数の減少により、学校の統廃合の論議が始まってい
    る。統廃合については、地域住民、保護者、子どもたちの意見を充分聞いて検討
    すること。

  5. 財政が大きく好転しているが、学校配分予算は、児童数が激増するなか、反対にどんどん削減されている。とくに大規模校ではプリント用紙一枚にも苦労するなど、学校運営に支障が生じている。2007年度は、前年度と同額予算となったが、新年度で大幅に増額し、「文教住宅都市」「子育てするなら西宮」にふさわしい教育を実施すること。

  6. 法期限が終了した「同和施策」は、各分野で一般施策に移行している。この中で、市教育委員会だけが事実上「同和教育推進」体制をつづけるのは間違っている。人権教育といいながら同和問題一色の“西宮市人権同和教育協議会”は廃止すること。

  7. クラブ活動の各種競技大会派遣経費(交通費補助)の基準を見直し、補助額を増額するとともに、特に北部の学校については“教育の機会均等”を基本に、市内大会についても旅費を支給すること。

  8. 障害児教育について
    今年度から特別支援教育の本格実施がはじまっている。ところが、文部科学省がすすめようとしている「特別支援教育」の構想には、従来規模の障害児教育の予算・人員のまま、学習発達障害の子どもも含め、これまでの数倍もの子どもたちをゆだねるとしている。これでは、充分な教育が保障できないどころか、教育の質が大きく後退することになりかねない。障害児教育の関係者からも、「障害児教育が危機にひんする」という心配の声があがっている。
    1. 適正就学指導を充実させ、ニーズに応じた教育ができるようにすること。

    2. さまざまな種別の障害児に対応できるよう、全校に必要な特別支援学級を配置すること。

    3. エレベーターの設置をはじめ、施設整備をはかること。

    4. 十分な教育が保障できるよう、人的配置を充実させること。特に、コーディネーターや医療職員を配置すること。また、学校協力員については、ボランティアから正規職員にすること。

    5. 特別支援学級はもちろん障害児が所属している普通学級に対して教員加配や介助員の配置を県に対して強く求めるとともに、LD、ADHD、高機能自閉症などの子どもたちの成長をていねいに支える体制をつくること。そのために、全小・中学校に特別支援教員を配置すること。

    6. 市立西宮特別支援学校の介助員について、一律子ども2人に介助員1人と基準を決めて配置しているが、現場の状況から柔軟に対応すること。

    7. 市立西宮特別支援学校に幼稚部を設け、障害を持つ子供の幼児教育の選択肢を拡大すること。また、公立幼稚園全園で、すべての障害児の受け入れを行なうこと。そのために必要な教員の研修やマンパワーの充実を行なうこと。

    8. 市立西宮特別支援学校内に、健康福祉局とも連携して学童保育所を設置すること。


  9. 在日外国人の子ども、虐待を受けている子ども、いじめ等、心のケアを必要としている子どもが増えている。すべての子どもが、それぞれにふさわしい教育をうけられるよう、養護教諭の複数配置やスクールカウンセラーの増員などの施策を拡充することを、国・県に求めること。また、市独自でも行うこと。

  10. 幼稚園教育について
    1. 人口急増で若い世代がたくさん転入し、4歳児で幼稚園に入園できない子供が多数にのぼっている。市立幼稚園2年保育の募集定員を増やし、入園希望者を全員受け入れること。また、要望の強い「3年保育、延長保育、子育て支援事業」等々を充実させ地域に開かれた幼稚園運営を基本にすえること。

    2. 西宮浜(マリナ)地域に早急に公立幼稚園を設置すること。

    3. 公立幼稚園保育料の減免制度については、市民税所得割が基準額以下の世帯はすべて免除となっていたが、生保・市民税非課税で母子家庭・父子家庭の場合以外は除外された。若い世代を応援するためにも、元の制度に復活させること。

    4. 私立幼稚園就園奨励助成制度における所得制限は撤廃すること。


  11. 昨年10月から始まった認定こども園は、保育園と幼稚園の機能を合わせた施設で、既存の保育園や幼稚園が都道府県に申請して、認定を受けるようになっている。入園を希望する人が、自治体ではなく園に直接申し込んで契約するしくみ(直接契約方式)や、保育料をそれぞれの園が自由に設定することなど、財界が求める「規制緩和」を先取りするものとなっている。保育関係者からは「保育にたいする自治体の公的責任の後退や、子育て格差の拡大につながる」との懸念が出されている。西宮市では認定こども園を将来的にもつくらないこと。

  12. 高校教育について
    西宮市の公立高等学校(全日制普通科)の入学者選抜制度は、1953年より総合選抜制度が導入され、以来今日まで、一定の学力を有する子どもたちは、地域の公立高等学校に通える制度として、高校が偏在しているという問題をかかえつつも、学校間に序列のない優れた制度として広く市民に支持されてきた。しかし、市は2006年5月から「高校改革に伴う選抜制度改善検討会」を立ち上げ、「複数志願選抜・特色選抜」が望ましい選抜制度であるとまとめ、2009年から「複数志願・特色選抜」に入試制度を変えようとしている。
    1. 保護者からは「制度がよくわからない」との声が多数あがっている。これでは、子どもたちにとってはよいのかわるいのかも判断ができない、事前の説明をもっとていねいにすること。保護者の賛同が得られなければ制度の変更はやめること。

    2. 北部には高校がないため、学校が居住地から遠くなることが大きな問題となっている。市教委としての県への要望書で、北部に高校を早急に設置するよう働きかけること。また、自由学区の見直しを行うこと。


  13. 就学奨励金については、所得制限を緩和し、保護者が修学旅行積立金等を立替払いしなくてもいいように、年度当初から支給するとともに、申請手続きについては、直接教育委員会で行なえるようにすること。負担の大きい給食費については、事前に保護者が立て替え払いをしなくてすむように、本人に通知をしたうえで、尼崎市のように、市教委が直接各学校に振り込むようにすること。
    また、めがね購入費の補助(上限5000円)を復活させること。

  14. 奨学金制度の拡充を国や県に要求するとともに、市独自の制度も拡充すること。

  15. 2003年度から司書教諭の配置が義務付けられている。ただちに、専任の司書教諭を配置すること。また、予算を増額し、各校の蔵書数を増やすこと。特に中学校は遅れているので重点にすること。

  16. 教師の過重負担をなくすための人的配置等について
    1. いま、専科の教員をはじめ、教員が不足している実態があると聞いている。また、本来の教員以外の仕事に忙殺されている。必要な教員を確保し、子ども達に責任を果たすこと。

    2. 年休や出張時には県教育委員会の要領に基づき、代替教員等の配置を行なっているが、実態としては短期対応などで不十分な状況となっている。さらにきめ細かな補助員配置を要求するとともに、市独自でプール指導時の補助員の確保、事務職員の増員などを早期に実施すること。

    3. 教員の現職死亡や病休、また、メンタル面での休職が増えている。教室不足のなか、教員の休養室がほとんど取れていない実態がある。早急に設置を進めること。


  17. 市立高校の市費教員の給料が引き下げられ、県費教員との格差が生じているため、市立高校の教員確保が困難になってきている。格差を解消し、必要な教員の確保を行なうこと。

  18. 西宮東高校の視聴覚室に設置されているコンピューター等のシステムが古く、使用に耐えなくなっており校長からも機器の更新の希望が出されている。早期に改善すること。

  19. 学校現場における個人情報保護について、個人情報の学校園からの持ち出しは行なわないなど、教育委員会としてすべての教職員に個人情報保護を徹底すること。学校園においては校長、園長が管理監督をすること。

  20. 地域公共ネットワーク整備事業等、小中学校等にパソコン整備が進められたが、教員の事務処理用などのパソコン設置は遅れている。必要数を設置すること。

  21. 市教委の県への要望に、普通教室への冷房設備設置にかかる補助制度の充実についてがあげられている。国に対しても強く働きかけるとともに、市独自での設置も直ちにすすめること。また、災害時の避難場所となっている体育館へのエアコン整備も取り組むこと。

  22. 公立学校等の耐震診断が終了したが、その結果を受けて補強や改修の必要な施設については早急に行なうこと。

  23. 学校のトイレは、引き続き、入り口のドアを取り付けるなど、外からトイレの中が見えないようにし、洋式便器を設置、増設するなど、子どもたちの人権を守るとともに、現代の生活様式に見合った改修・改善を早期に実施すること。また、高齢者事業団等に委託している清掃回数を増やし、臭気対策をとること。

  24. 学校施設の整備について
    1. 用海、夙川小学校の老朽校舎についても早急に建替えること。また、老朽化のすすんでいる校舎等については改修をすすめること。各学校からの改修要望にはただちにこたえること。

    2. プール事故を防ぐために、点検を強化すること。また、各学校に温水シャワーを設置し、児童や教員がプールのあと使用できるようにすること。

    3. 今年度より特別支援教育が本格実施された。現在、中学校10校、小学校11校にエレベーターが設置されている。全校へのエレベーター設置を、緊急課題として取り組むこと。


  25. 学校施設での安全対策として、学校各階各教室に“防犯ベル” “校内電話”等を現場の声も聞き早急に設置すること。また各校に警備員を配置すること。

  26. 児童、保護者を含む、学校現場等でのセクハラ防止に向けて、市教委として、被害者のプライバシー保護を確保した上での相談体制を整備すること。また、職員の研修を強化すること。

  27. 学校園内でのいかなる暴力・いじめも許さないという毅然とした立場に立つよう学校を指導し、すべての教職員にも徹底すること。

  28. 教育委員会庁舎はエレベーターが未設置のままとなっている。建替える時期も考慮しなければならないが、多くの市民や関係者が訪れる施設でもあり、ただちに設置すること。

  29. 西宮市の小中学校での学校給食は、“直営自校方式”で実施されている。子どもたちの健康と成長をまもり、教育の一環としての学校給食という立場からも次のことを実施すること。
    1. 将来的にも「直営自校方式」を堅持すること。

    2. 正規調理員を基本とした人員を確保すること。また、同じ職務にありながら新嘱託の賃金は劣悪になっている。早急に改善すること。

    3. 食物アレルギーを持つ子どもが増加していることを踏まえて、早急にアレルギー除去食を実施すること。

    4. 「米飯給食」については自校炊飯ができるところから取り入れること。

    5. 「統一献立」「食材一括購入」については、学校ごとの献立、野菜等地域の生産者から可能な限り購入するよう、可能なところから工夫して取り組むこと。

    6. 「給食費」については“光熱水費等の食材費以外の経費を含めるよう実施時期も含め研究する”としているが、これ以上の父母負担を増やすべきではない。給食費の値上げはしないこと。


  30. 財団法人・学校給食会への市補助金について、不正流用事件が発生した。この件に関しては係争中であるが、真相は未解明である。引き続き調査し、市民や議会に報告すること。

  31. 公民館について
    公民館は1中学校区地域に1公民館を基準として設置しているが、設置場所によっては使いにくい地域もある。また、地域集会施設とは違い、社会教育の拠点である公民館の充実のため、次のことを実施すること。
    1. 公民館は指定管理者制度を導入するのでなく、市直営を堅持すること。

    2. 公民館使用団体である登録グループの使用料の減免廃止を取りやめ、無料に戻すこと。

    3. 上ヶ原地域、甲陽園地域、広田地域に公民館を新設すること。

    4. 各公民館のバリアフリー化、洋式トイレの増設をすすめること。

    5. 段上公民館の冷房が効きにくい。早急に取り替えること。

    6. 高須公民館の空調設備の音が大きすぎる。改善すること。


  32. 図書館について
    1. 分室については民間委託が強行された。住民にとってもっとも身近な分室の運営が、毎年の入札で業者が替わり、人も替わってしまうと継続性は保てない。直営に戻し市民サービス向上をめざすこと。

    2. 司書正規職員を増員し、適正な配置を行なうこと。

    3. 拠点図書館について祝日を含め毎日開館すること。また開館時間についても、改善の方向は示されているが、北口図書館は勤労者が利用できるよう午後9時までとすること。そのために必要な人員を確保すること。

    4. 要望のある津門・今津、甲陽園地域に地域図書館を設置すること。

    5. 蔵書数を大幅に増やすこと。


  33. スポーツ施設の整備等について
    1. 市民要望の強い温水プールを再建整備すること。
    2. 厚生年金プール跡地に子どもたちが安心して遊べ、家族で憩える市民プールをつくること。
    3. スポーツ施設の整備については、青年のスポーツ要求にこたえ、バスケットやフットサル、スケートボードができるよう公園等に整備すること。
    4. 野球場の使用料は尼崎市に比して高い。利用者の要望にこたえ引き下げること。


  34. 市は2008年度には中核市に移行するとしている。中核市である金沢市では全国で3例目として、子どもをとりまく社会環境が変わる中で、子どもたちを市民みんなで育てていくことをめざして「子ども条例」(正式名称は「子どもの幸せと健やかな成長を図るための社会の役割に関する条例」)が制定されている。西宮市も「子育てするなら西宮」をキャッチフレーズにしていることからも、早急に「子ども条例」を制定すること。また、「子ども条例」の具体的施策の拠点として、例えば神祇官町の総合教育センターを活用し、総合的に子育てを支援するような施設(金沢市では「教育プラザ」)を建設すること。