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まつお正秀議員の議案反対討論
2008年03月24日

西宮後期高齢者医療に関する条例制定の件


ただいま上程中の議案第124号「西宮後期高齢者医療に関する条例制定の件」について、日本共産党議員団は反対いたし、以下に理由を述べます

一昨年6月に国会で強行可決された医療改革関連法のひとつとして、4月から後期高齢者医療制度が実施される予定です。この関連法は21の付帯決議をもつけざるをえないほどの異例のゴリ押しで進められ、自治体からの再三の政府広報の発行の要望にもかかわらず、新聞折込みがされたのは3月20日になってからです。

後期高齢者医療制度は、世代間の不公平感をなくし、持続可能な医療制度にするためということを建前にしています。しかし、各都道府県の保険料が昨年末近くになって決まり、具体的な医療の内容なども明らかになるにつれて国民の不安が高まり、2月8日には国会に民主党・社民党・国民新党・日本共産党の4党共同で廃止法案が提出され、各地で見直しを求める世論も大きく高まっています。岐阜県大垣市では、自民クラブという自民党会派さえもこの制度に断固反対のビラを新聞折込みで配布し、議会では見直しの意見書を可決しています。全国でも530を超える約3割の自治体で中止や見直しの意見書が可決され、兵庫県でも尼崎市や神戸市などの13の自治体で意見書が可決されているところです。

この制度についてはすでに昨年12月議会の一般質問で、私まつおが明らかにしましたが、保険料滞納者からの保険証取り上げ・保険料の年金自動天引き・包括払いやかかりつけ医制度による医療制限とともに、現役世代と高齢者とを分断する意図を含んだ制度である点など、多くの問題点を指摘してきたところであります。

今年に入ってからも、国会での審議やマスコミなどを通じて、厚生労働省の閣僚や官僚の発言が報じられておりますが、75歳以上をターゲットにした医療切捨ての制度であるということの狙いがますます明らかになっているところです。いくつか紹介しますが まず、この制度に創設からかかわった厚労省国民健康保険課長補佐で高齢者医療制度施行準備室長補佐でもある土佐和男氏の発言です。

一つは石川県の講演で「なぜ独立型保険にしたのか。60兆円(これは2025年の予測ですが)この医療費を抑制しながら、若い人が支援して行ける仕組みにした。医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者が自ら自分の感覚で感じ取っていただくことにした。たとえば月25回通院している人が多くいれば石川県の医療費が上がる。それを月に20回に減らせば医療費が下がり、保険料は下がる」と語っています。
もうひとつは厚労省の解説書で2月に発行された「高齢者の医療の確保に関する法律の解説」という題名で土佐氏監修している本ですが、75歳以上の診療報酬を別立てにした理由の中で「年齢別に見ると、一番医療費のかかっているのが後期高齢者、この部分の医療費を抑制していかねばならない」と強調し、「後期高齢者が亡くなりそうになり、家族が一時間でも一分でも生かしてほしいと要望して、いろいろな治療がされる。それがかさむと500万円とか1000万円の金額になってしまう」と、延命を求めることが医療費膨張の原因だと決め付けています。
もう一人は厚労省保険局前医療課長の発言ですが「とにかく家で死に易いようにしてあげようと。まず、在宅という概念を変える。つまり家に居なきゃいけないのでなく居宅でいい、グループホームでもケアハウスでも有料老人ホームとか、どこでもいいから住民票を移してそこに居れば家とみなす。・・・そこで死んでくれということ。病院に連れてくるなと」こう発言をしています。
政府が自宅で看取られる人の割合を現在の2割から4割にするという目標まで掲げ、病院から自宅へ追い出し、病院から退院させたら「後期高齢者退院調整加算金」一回当たりの診療報酬100点(1000円ですね)を設定したこととも合致をする発言です。

それから特定検診についても国は40歳から74歳までは国の補助金を出すが、75歳以上は出さない。広域連合や自治体の裁量でやってもやらなくてもいいですよという仕組みになっています。これは老人の特性、すなわち、一つは複数の病気をかかえる、二つ目は認知症が見られる、三つ目はいずれ死を迎えるという特性があるから、治療したところでそんなに改善は見られない、舛添厚労大臣は残存能力を残すだけだ、だからお金はかけなくてもいいという考え方です。健康診断は無駄だと言っているに等しいんです。
医療費削減目標を打ち出して、一昨年の政府試算では、2015年に医療費削減分3兆円のうち2兆円を、2025年には同じく8兆円のうち5兆円を後期高齢者分で削減することを掲げていることからも、75歳以上の狙い撃ち制度だということは明らかです。

私は2月8日兵庫県の広域連合議会の傍聴に行きました。来年度の予算や7件の陳情の審査などが行われましたが、たったの1時間で、議員から一言の発言もなく終わったことに唖然としました。これでは現場の声を反映することはできません。医師も役所も現場では制度の中身がぎりぎりになってもわからない状況の中で大変な思いで準備や実務に当たられていると思いますが、内容を決めるのは国や広域連合で、現場は独自の減免などもできずに窓口や電話で文句を言われるだけということになってしまいます。今回西宮では国民健康保険から移行された方の多くは保険料が安くなるという試算にはなっています。しかし、医療費が増えた場合や後期高齢者の数が増えれば二年ごとの改定で保険料を上げることができるという重大な問題も含んでいます。

日本の医療費は決して高くはありません。OECD加盟先進国7つの中では高齢者がもっとも多いにもかかわらず最低で、30か国中でも22番目です。医師数も政府が「医者が増えると医療費が増える」ということで医師を減らし続けてきた結果、1000人あたりの医師数は2.0人、同じくOECD加盟国中27位で、加盟国平均では12万人も少なくなっています。お年寄りが増えれば医療費が増えるのは当然です。それをどう支える仕組みを作るか、税金をどの分野に重点を置くかが政治に問われています。企業の社会保障の負担がヨーロッパの国と比べても6?7割という負担のあり方、一例を挙げれば経団連会長を務める御手洗富士夫氏が社長でもあるキャノンは派遣労働が原則自由になった1999年からこの10年で利益を7倍にも増やしています。全国1700万人と言われる非正規の人たちを正規にする、あるいは社会保険加入を義務付ければ、医療も年金も支え手を大幅に増やすことができます。このことは、日本の経済力があれば十分にできることです

今述べてきましたように後期高齢者医療保険制度は、医療を制限して切り捨てるか、早く死んでもらうか、保険料を二年ごとに毎回値上げしていけば持続可能というひどい制度であり、したがってその具体化となるこの議案に日本共産党市会議員団として反対を表明するものであります。