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上田さち子議員の予算反対討論
2008年03月24日

ただいま上程中の諸議案のうち、議案第137号 2008年度西宮市一般会計予算、議案第139号 2008年度西宮市食肉センター特別会計予算、議案第147号 2008年度西宮市後期高齢者医療事業特別会計予算、以上3件につきまして、日本共産党西宮市会議員団は反対します。以下、討論を行います。

いま、全国的に貧困と格差拡大がすすみ、労働者、高齢者、障害者、農民、中小業者などあらゆる層の暮らしと営業が、「底がぬけてしまった」かのような不安と危機にみまわれています。大企業は昨年度、バブル期の1.7倍にあたる33兆円の利益をあげ、今年度も大幅に利益を伸ばす一方、政府自身「好調な企業業績が家計には波及しない」と認めたように、「大企業が利益を上げれば、いずれはめぐりめぐって家計にも及ぶ」という、いわゆるトリクルダウンという政府の「経済成長シナリオ」は、完全に破たんしました。自公政府が強行してきた「構造改革」路線は、「大企業の競争力を強くすれば日本経済も強くなる」として、財界・大企業をとことん応援する一方で、国民には容赦なく増税や社会保障の負担増と給付削減を押しつけるもので、その結果、日本経済は、国民の所得と消費が伸びず、内需が低迷し続け、「内需主導の力強い経済成長」どころか、輸出だのみ、外需依存に大きく傾斜するという、きわめて脆弱なものになってしまいました。これに拍車をかけるごとく、アメリカのサブプライムローン問題がきっかけとなったドル安・円高の影響が襲ってきています。さらに、投機資金による原油高・穀物高による生活必需品の値上がりやコスト高が、国民の生活と中小企業、農業などの経営をさらに圧迫してきていることは重大です。 いまや脳死状態といわれている福田内閣編成の政府予算案は、国民の窮状を打開するものとはほど遠く、「生活者重視」といいながら生活者には冷酷で、メスを入れるべき大企業優遇、軍事費などは「聖域」にし、「消費税増税を含む税体系の抜本的改革」という庶民大増税への「橋渡し予算」だと言わなければなりません。

国会では3月31日で期限切れとなる道路特定財源・暫定税率問題で緊迫した情勢の中、西宮市議会は本日、最終日本会議を迎えました。この間、総額2688億円にのぼる2008年度西宮市予算案についての審査が行われましたが、日本共産党市会議員団は、地方自治体の本旨である福祉の増進を図り、市民生活を応援する予算かどうか、行政のチェック機関としての議会の役割を十分発揮する立場から予算審査に臨みました。特に、財政危機を口実に強行した第3次「行革」の影響が市民生活にどう出ているか、「官から民へ」の掛け声の下、官製ワーキングプアの実態はどうか、マンション開発規制の緩和による人口急増対策、市民が望む子育て支援策が図られているか、財政の好転をいいことに、無駄な開発に乗り出していないかなど、各分科会で重点的に質疑を行いました。

新年度は、5年生以上の障害児の学童受け入れや小学校・特別支援学校の校門に警備員を配置し、児童生徒の安全対策が図られること、また、増改築される小学校普通教室にエアコン設置が打ち出されたこと、さらに、県下で一番高い西宮市の国民健康保険料引き下げのために、一般会計から2億5000万円の繰り入れが行われたことなど、毎年わが党が予算要望してきた項目が盛り込まれたことは評価するものです。しかし、予算全体としては、国の悪政に苦しむ市民の生活応援に軸足をおかず、反対に市民サービス切捨ての第3次「行革」続行予算であり、到底認めることはできません。以下、主な問題点及び反対箇所等7点について述べたいと思います。

第1は、財政問題と「行革」続行予算についてです。西宮市の財政状況は、代表質問でも明らかにしてきましたが、一般財源が1104億5000万円にのぼる、市民による堅実な歳入に支えられていることが特徴です。公債費の272億円や団塊の世代の大量退職に伴う退職手当など人件費の増についても、基金を活用して十分まかなえる力を持っていることは、退職手当債を発行する近隣市とは大きな違いです。今日の財政好転については、もちろん手放しで安心できる状況ではないけれども、削った市民サービスを元に戻し、悪政がはびこるもとでくらしや営業が困難を極めている市民の皆さんのくらしを、十分バックアップできるだけの財政状況であることは間違いありません。ところが2008年度は、保育所保育料の引き上げで子育て世代に負担を押し付け、さらに、市民福祉金や原爆被爆者扶助費の全廃など、市民サービス切捨ての第3次「行革」を続行する、冷たい予算そのものです。その一方で、わが党が代表質問で明らかにしたように、本来なら当然受けられる、約10億円以上もの浜脇小学校等の増改築に伴う国庫補助金をもらい損なっている問題は深刻な事態です。市民や職員に「金がない」といっては痛みを強いておきながら、このような事態を招いた市長の責任は重大です。当然のことながら、ただちに補助金獲得のために全力を挙げるよう求めるとともに、議会としても当局と協力し、国に要請するなど必要な行動をとることを議長にも求めておきたいと思います。

第2は、人口急増問題です。震災後に人口を呼び戻すとして西宮市が行った、マンションなど1戸当たり50平米の敷地必要面積の規制を取り払ったために、いまや47万7000人を越えた西宮市の人口急増問題は、あらゆる分野で問題を引き起こしています。一つは学校教室が不足し、校区変更、プレハブ校舎対応等が余儀なくされ、子どもや保護者に大きな不安を広げ、多額の一般財源の投入で、市の財政を圧迫する事態となっていることです。二つ目は、保育所や特別養護老人ホームなどが大幅に不足し、保育所では約600名もの待機児童、特養の待機者も1678名にのぼっている問題です。わが党の代表質問や予算審査の中で、認可保育園や分園建設については、市所有の未利用地を有効に活用して進めることが表明されました。「子育てするなら西宮」を標榜するなら、待機児童解消のためにこそ全力をつくすべき時で、市民の大きな反対の声が広がる、公立保育所の民営化は即刻撤回するべきです。また、特別養護老人ホームについては、入りたくても入れない方々が困っておられます。新年度開設予定だった小規模特養・116床の計画は、現時点でまったくめどもたっていないことが明らかになりましたが、この背景には、社会福祉法人が特養建設の用地確保や採算面・従事者確保など大きな困難を抱えていることがあげられます。高齢者福祉の充実に向けては、法人任せにせず、市が責任を持って施設整備を進めることを強く求めておきます。今日の事態を「着実な人口増」だと手放しで喜んでいられる状況はまったくありません。人口急増問題については、早急にマンション等の開発規制の強化を実施し、住環境を守ることもあわせて強く求めておきます。

第3は、官製ワーキングプアについてです。いまや、市に働く三分の一が嘱託・アルバイト・パートなど非正規雇用労働者、さらに業務委託や指定管理などで働く方々も含めると、働いても働いても年収200万円以下の賃金しか得られない、いわゆるワーキングプアの実態が西宮市内で広がってきていることは問題です。1時間当たり697円という最低賃金さえクリアしていればよしとする姿勢でいいのかが、いま行政に鋭く問われています。審査の中では、行政として非正規雇用、指定管理制度などのもとで働く労働者の労働実態調査をしていないことが明らかになりましたが、全庁的に早急に調査を行い、官製ワーキングプアをなくすための手立てをとるべきです。東京都国分寺市では、市との契約によって清掃や保育所、介護サービスなどの委託先等で働く労働者の労働条件を保障するために公契約条例を制定し、その基本方針で「適正な労働条件や賃金水準の実施状況を把握できる環境の整備を図る」事などを定めています。全国のこのような先進事例を検討し、西宮市としても早急に公契約条例の制定を求めます。

第4は、不要不急の開発事業中止についてです。「阪神西宮駅北側の駅前広場整備事業に着手するため」として新年度予算に500万円の調査費が計上されました。この地区は、すでに阪神連続立体交差事業と同時に駅前整備が図られており、わざわざ西宮市が市道西262号線を付け替えてまで、阪神電鉄の事業用地を有効に活用できるように便宜を図る必要はありません。事業費は約20億円ということですが、誰がどう見ても阪神電鉄のための開発にほかならない事業のために、今やっと財政再建が進み始めた西宮市にとって、こんな無駄使いは許されないのは当然です。この計画の撤回を強く求めておきます。

第5は、市立中央病院と東部総合処理センターについてです。まず、今議会、焦点のひとつとなった中央病院の「あり方検討委員会」答申について、日本共産党議員団の意見を申し上げます。答申が中央病院に求めているものは、現在の医療機能の充実と、救急医療、緩和ケア、ヘルスケアにおいて新たな役割を発揮することであり、これは市民の期待にも応える病院機能の拡大で、日本共産党もその具体的な実現を求めるものです。
そのためにとして、答申では、各医療機関の適切な役割分担と連携が不可欠、特に県立西宮病院との連携強化を検討することと、経営形態は「地方独立行政法人(非公務員型)」が望ましいとしています。答申のいう病院機能の拡大は、医師と看護師の確保が不可欠です。答申でも委員会での質疑でも、医療スタッフの確保や処遇改善が必要と言及されていますが、このことを抜きに答申の実現はありえません。経営形態については、安易に「地方独立行政法人(非公務員型)」をとるのではなく、このめざすべき病院像にふさわしいものが検討されなければなりません。今後、真剣な検討と、特に人材確保については具体的な取り組みを求めます。
また、2012年度・平成24年度供用開始をめざす東部総合処理センター整備については、建設工事と20年間の運営委託業務を加えた、包括発注方式を前提とする予算が提案されました。ごみ処理という市民生活に欠かせない事業が、市直営から、運転だけでなく運営も民間に委託され、果たして安全に安定して行なえるのか、問題なしとはいえません。さらに5年ごとに運営契約については更新するというものの、運営基本契約は新年度から2031年度・平成43年度までの長期にわたる独占契約で、市が言うように効率化、総コスト低減が図られるか、はなはだ疑問といわなければなりません。今後十分検証を行いながら慎重に進めることを求めておきます。
環境局に関連して、地球温暖化対策について一言述べておきます。津門小学校や、今後増改築される浜脇小学校などで、太陽光パネル設置が進められていますが、行政自らの努力はもちろんのこと、環境学習都市宣言をしている自治体として、市民や事業者の地球温暖化対策を支援し、大きくプラスに働くような組織や予算のあり方が必要です。現時点では、行政にその認識が不足していることを指摘し改善を求めておきます。

第6は、議案第139号 2008年度西宮市食肉センター特別会計予算、議案第147号 2008年度西宮市後期高齢者医療事業特別会計予算についてです。まず、後期高齢者医療事業特別会計については、日程第1の議案第124号 西宮市後期高齢者医療に関する条例制定の件の反対討論で詳細に述べたとおりです。次に食肉センター特別会計は日程第4で詳しく述べますが、従来から指摘してきたとおり、2007年度中に検討委員会の提言を受けて完全民営化、あるいは閉鎖の結論を出すことになっていたにもかかわらず、それを反故にし、指定管理者制度導入で、引き続き一般財源投入の道筋をつくり、今後の市財政に大きな負担をもたらすものであり反対です。

第7は、新年度中に策定される「第4次西宮市総合計画」についてです。今回初めて公募市民により策定委員会が設置され、基本方針等の議論がされてきましたが、それらを土台にして今後審議会の中で論議されることになります。今議会には、総合企画局の4次総に向けた財政フレームと総務局が策定した財政計画が公表されました。このふたつに初年度から大きな差が生じていることから、4次総の基本計画策定の根拠となる数字に信頼性がないなど、原案作成前の現時点でいくつかの問題点が指摘されています。今後の策定に当たっては、行政内部における従来踏襲型からの脱却と、一部学識経験者の作文を押し付けるようなことがないよう求めるとともに、絵に描いた「総合計画」ではなく、実効性を持った「総合計画」づくりに、また、真に地方自治の本旨に沿った「総合計画」策定のために、議会人として関わっていくことを表明しておきます。

以上が、日本共産党市会議員団の各予算に対する主な反対理由と意見です。
財政の好転をいいことに、昨年のJR用地購入に続き新年度は阪神西宮駅北広場整備など、税金の無駄使い、不要不急の開発に乗り出そうとしていることは許されません。慎重な行財政運営を重ねて強く求め、また、市民の命とくらしを守るために、私たち日本共産党市会議員団もいっそう奮闘することを申し上げて、反対討論といたします。