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野口あけみの一般質問
2008年07月09日

第4次総合計画について


 西宮市は、今年度末に第3次総合計画が終了することを受け、2009年度から10年間の第4次総合計画策定に、昨年度より取り組んでいます。昨年8月には参画と協働の手法を取り入れ市民の意見を反映するとして、総合計画策定では初めて市民からの公募委員38名を含めた総合計画策定委員会がつくられ、論議がされました。このたび、市によってまとめられた総合計画素案に対してのパブリックコメントが終了、いよいよ審議会での議論が始まり、12月議会では基本構想について議決予定としています。
 私からは、いくつか概括的に問題点を指摘し、質問したいと思います。
 まず、総合計画の大きな枠組み、特に基本計画についてです。
 総合計画は「基本構想」「基本計画」「実施計画」によって構成するとしています。それぞれがどんなものか、耳からだけでは大変わかりにくいので市の素案の一部を、議場の皆さんには資料としてお配りしています。
 文章をそのまま紹介しますが、基本構想は、「本市の都市目標と将来像を明らかにし、それを実現するための基本的な考え方を施策の大綱として示し」、基本計画は「基本構想に基づきまちづくりの具体的な諸施策について、可能な限り長期的な財政計画との整合を図り、体系的枠組みを示すもの」としています。そして実施計画は、「基本計画においてさだめた諸施策をさらに年次的調整を加え、財源との整合など具体的な実効性ある計画として策定し、毎年度むこう3ヵ年の計画として見直し」=ローリングするとしています。
 ここで問題にしたいのは、基本計画です。つまり基本計画とは、基本構想で掲げる大きな目標実現のためにとりくむ具体的な諸施策・事業であり、それは財政的見通しも考慮したうえで、10年間という期間の中で実施できうるもの、ということです。
 ところが、当局の説明では、「基本計画」においては具体的事業を記述せず、各施策の方向性のみを示し、事業実施は実施計画において検討する、としています。ただ一方で、中長期の具体的な事業の大枠=10年間で取り組むべき基本的なものとして「10カ年事業計画」が示されています。これは参考資料ということで、私たち議員には「次期総合計画 事業計画の概要」として別冊になっており配布されていますが、パブリックコメントの対象にはされていません。市民に公表されているのは、「基本計画各論 計画推進編 第2章 財政見通しと事業計画」と題されたA3、1ページのみ(資料)です。
  6月3日、党議員団で総合計画素案について説明を受けました。その翌日神戸新聞に、阪急甲陽線地下化事業が4次総に盛り込まれたという記事が報道されました。説明会ではまったく触れられなかったものです。素案にも「事業計画」にも記述がありません。なにかのまちがいではと土木局長に問い合わせると、「説明はしていないが聞かれればこたえるつもりでいた。地下化事業は10カ年事業計画の道路ネットワークの形成 都市計画道路の整備 市役所前線、山手幹線(熊野工区)などの「など」という表現の中に含まれている」というのです。
 地下化事業は、県と市が関与する莫大な事業費がかかる大事業であり、近隣住民の多くが反対し、注目を集めているものです。これを10年間の計画に入れるかどうか、まさに市民の意見を聞き、判断すべきものではないでしょうか。また、当局が取り組むべき基本的な事業の大枠であるとした「10カ年事業計画」にも具体的に記述されていない。これは一体どういうことでしょうか。総合計画で決めていく基本計画とは何なのか、改めて問われています。
次に、財政計画、財政フレームについてです。資料の裏面をご覧ください。
 素案では、「総合計画の実現性を確保するためには、各施策の下位に当たる事業計画と財政計画の整合性を図る必要がある。そのため、今後の財政見通しについて計量経済学的手法で推計する。その結果、前期5年の普通会計の余剰財源は約94億円、後期5年で769億円、08年度末基金残高52億円と合わせ、09年度から18年度の10年間で約915億の余剰財源がでる。この枠内で、10カ年事業計画にとりくむ」としています。10カ年事業計画は総額で911億、余剰財源をほぼ使い切るとしています。事業計画の裏付けとしているこの財政予測が果たして適切かどうかです。
 市の説明では中長期の予測には「計量経済学的手法」が望ましいとして、名目経済成長率を+1.5%で試算、推計しているものです。
第3次総合計画(99年?08年度)においても「計量経済学的手法」で財政予測を立てました。その際の名目経済成長率は+2.5%としていました。しかし実際には初年度で成長率は?0.5%、その後も厳しい数字が続きました。(資料)一度も2.5%に届かないまま、景気は低迷―税収は落ち込みました。くわえて人口推計も大幅に狂って急増、第3次総合計画は10年間持ちこたえず、02年には見直され、財政試算も「積み上げ方式」で修正されました。
 市は3次総の見直しで60事業を繰り延べし、それにとどまらず、第2次行財政改善実施計画に続いて04年度以降、第3次行財を強行しました。その際には「積み上げ方式」による「財政試算」で今度は入りを少なく、出を大きく見積もって、実際以上の財政危機をあおり、市民サービスを切り捨ててきたのです。
 第3次総合計画における財政計画=財政フレームと実際の違いはどうだったでしょうか。99年から2006年度の合計で、経常収入はフレームでは8533億8700万円、実際の決算値は7167億2800万円、経常支出は、フレームで7695億、決算で7427億円、問題にすべき余剰財源では、フレームでは838億6500万円の余剰がある予測だったものが、決算では余剰が出るどころか、マイナス259億9300万円。その開きは実に1098億5800万円です。いかに財政予測が当てにならないか。それを前提にすべきです。
 また市ではこの総合計画における財政予測とは別に積み上げ方式による「西宮の財政を考える6」の数字をもっています。これと財政フレームとの比較でも09年から2013年で、市税収入で402億円、歳入合計で165億円、歳入―歳出=余剰財源で約40億円、それぞれ財政フレーム=総合計画における財政予測値のほうが大きくなっています。市内部でこのように2つの予測値を持っているというのもいかがなものでしょうか。

 具体的な質問です。
(1)「基本計画」においては具体的事業を記述せず、各施策の方向性のみを示し、事業実施は実施計画において検討する、としていますが、なぜそのようにするのか、すべては網羅せずとも、優先順位の高いもの、これだけは10年間で行いたいという施策・事業については、記述してこそ「計画」といえるのではないか。

(2)一方で示している「10カ年事業計画」。これは総枠で一般財源911億円を投入する内容    だが、これは基本計画そのものと受け取れる。一体これはどういう位置づけになるのか。

(3)総合計画を市民の参画と協働、意見も取り入れてつくるというなら、「10カ年事業計画」を市の案として公表し、パブリックコメントにもかけて取捨選択を市民とともにおこなうべきだと考えるが、どうか。

(4)財政フレームにおいて、名目経済成長率+1.5%での見込みは過大過ぎるのではないか。財政課の積み上げ方式での試算とでも大きな開きがあります。第3次総合計画で破たんしたやり方を繰り返してはならないとかんがえるがどうか。

(5)資料によれば事業計画はほとんどいわゆる箱物=投資的事業である。もちろんその中には必要な、待ったなしの事業、学校耐震化などもありますが、たとえば国保や介護などの負担軽減や、福祉医療制度、特に乳幼児医療助成制度拡充などといった経常的経費を伴う福祉の施策も重点的に取り組もうとするなら事業計画のひとつとなりうるものである。事業計画とはどういうものと考えているのか。