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上田さち子の一般質問
2008年09月10日

市民のくらし最優先の
「第4次西宮市総合計画」策定について


「第4次西宮市総合計画」(以下4次総といいます)は、現下の厳しい社会経済状況が続くなかで、2009年度を初年度とし、以後10年間にわたる西宮市としての、ハード・ソフト両面にわたる「まちづくり」の基本方向を明らかにし、必要な施策を進めていくために策定する、地方自治法第2条第4項に定められた重要なものであります。当然のこととして、「4次総」の基本的立場には、地方自治体の本旨である「住民の福祉の増進」がすえられなければなりません。
あらためて「4次総」(原案)を見てみますと、(1)現計画である「第3次西宮市総合計画」(以下、3次総といいます)の総括が極めて不十分であるため、その教訓が生かされていない (2)従って「3次総」で破綻済みの計量経済学的手法による915億円の余剰財源をうたった「財政フレーム」を恥ずかしげもなく登場させ、投資的事業中心の911億円にのぼる「事業計画」の裏付けとしていることは、「4次総」そのものの信頼性を失うことになっている (3)今後の10年間で実施しようとする「事業計画」は、ほとんどが投資的事業で占められており、「住民の福祉の増進」に本気で取り組む姿勢がないなど、多くの問題をもつ内容となっています。
さて、これまでの審議会での議論を通じ、何点かの修正・検討が加えられています。その一つは、基本計画総論で記述されている六つの重点プロジェクトの扱いです。中央体育館の建替え整備や陸上競技場の移設整備などを含んだもので、「なぜこの事業が重点になるのか不明」「基本構想や計画各論との関連も全くない」など、4つの部会すべてで疑問の声や、削除を求める発言が相次いでいます。日本共産党議員団としては具体的事業名など記述する必要はなく、「削除すべき」だという意見のみを、この場では述べておきたいと思います。
今回の私の質問は、「4次総」(原案)をまとめた行政が、一体どのような社会経済状況の中で西宮市が推移していくとみたのか、また、何を根拠に911億円にのぼる「事業計画」を集約したのかなど、ただしていきたいと考えています。

1、現計画である「第3次西宮市総合計画」の総括をつくしてこそ


 「4次総」では、「3次総」の総括部分で「前総合計画が想定した、見込みを上回る厳しい財政状況や、予測を超える一部地域における人口急増などの状況の大きな変化がありましたが、3次にわたる行財政改善の実施や行政経営改革の推進、教育環境の保全に向けて住宅開発の抑制指導を行うなど、適切に対応してきました。」こう述べています。
重度障害者やひとり親家庭などに給付されていた市民福祉金の廃止など、市民サービスをばっさり切り捨てる「第3次行革」まで強行せざるを得なかったこと。また、野放しの開発行政の結果、マンション乱開発により、人口急増を招き、教室不足・校区変更を余儀なくされたという事実に知らん顔をしたままで、何が適切な対応だったのでしょうか。(資料の当時の新聞記事参照)当時の社会経済状況を精査せずに、計量経済学的手法でつくられた「財政フレーム」による過大な収入を見積もった結果、重大な収入欠陥となり、途中で基本計画の見直しをしても、なお321億円の財源不足になるとして、市民にツケをまわしたのではなかったでしょうか。当局はこのような事態がなぜ起こされ、そのために市民にどのような影響があったと総括しているか。お聞きします。
また「4次総」の人口推計では、10年後に509,000人と予測し、この程度なら受け入れられると、的確な規制強化策に消極的な立場をとっています。それでは全市的にバランスよく人口配置ができ、保育所不足や教室不足で市民に迷惑をかけないという根拠があるのかお聞きします。

2、総合計画における財政の考え方について


 「3次総」では、計量経済学手法に基づいて作られた「財政フレーム」と、総務局がつくる「財政計画」との差が、1100億円にのぼり、この歳入欠陥による市民サービス切り捨て強行の事実を先ほど指摘しました。新本理事は「4次総」の財政の考え方については「長期的な推計を行うには計量経済学的手法が最も適している」と答弁されていますが、短期的には、総務局がつくる積み上げ式の「財政計画」が適しているとの考え方も示されています。結局、「4次総」の初年度から「将来の財政を見通すことは極めて難しい状況にあるため、直近の財政状況を踏まえ、3ヵ年の実施計画及び予算編成の中で、調整していく…」として「財政計画」に基づいて実施計画をつくるとしています。また、4年後の基本計画見直しのときも、残期間が5年と短期間であるため、その直近の「財政計画」を根拠とすることは間違いありません。つまり、「4次総」当初から、破綻済みの915億円もの余剰財源があるとする「財政フレーム」ではなく、収入を一定厳しく見ている「財政計画」に基づいて事業計画を進めていくということになります。従って、「財政フレーム」の存在理由がまったくないということです。この際、使いものにならない幻の「財政フレーム」は、きっぱりと「4次総」から削除するべきと考えますが、見解を聞きます。
また、今年2月時点の総務局作成の「財政計画」では、名目成長率を2%で計算していますが、いまあらゆる指標がマイナスを示しており、当然見直しされることになると思います。たとえば成長率をゼロベースとした場合、5年後の計画前期・2013年度末ではどうなるのか。

3、「事業計画」について


 私は冒頭でも述べたとおり、「4次総」の基本には、福祉の増進を置くべきと考えていますが、10年間の大枠を示すとした事業計画は投資的事業が中心で、福祉を充実させるという観点が非常に希薄です。6月議会の野口質問への答弁でも、「現行の制度を前提とした福祉、保健、医療などの施策に必要な経費は、人口の伸びやGDP名目成長率等をふまえ、推計している」とのことで、要するに最小限の歳出しか見ていないということが明らかになりました。
 具体的に聞きます。兵庫県で一番高いとされる西宮市の国民健康保険料について、今年から3年間、日本共産党市議団と市民の運動で保険料引き下げや減免制度の拡充が実現し、「4次総」の2年目まで毎年一般財源が2億5000万円ずつ投入されることになっています。3年目以降の市の対応は事業計画ではどう展開していくのか。また、保育所待機児童解消は緊急課題ですが、これらの解消策は「事業計画」でどう数値化し具体化されているのか。
また、「事業計画」の実施について、行政が好き勝手に優先順位をつけるべきではありません。実施計画策定にあたっては一定のルールを作って、議会も市民も理解と納得のいくように透明化すべきと考えます。