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野口あけみの代表質問
2009年03月03日

大不況下、市民生活応援型の財政出動を


2月16日、内閣府が発表した2008年10月から12月の国内総生産(GDP)が年率換算で12.7%減、35年ぶりの減少を記録したニュースは国民に衝撃を与えました。金融危機の震源地であるアメリカよりも急激な落ち込みだったからです。世界同時不況の中でも日本がとりわけ大きな打撃を受けており、国民の暮らし、中小業者の経営はいよいよ深刻です。国民の苦しみにまともに対応できず、迷走する麻生内閣の支持率は10%を切るほどに下落し、文字通り「政権末期」の様相が広がっています。
こうした日本経済の壊滅的状況は、「官から民へ」「改革なくして成長なし」などワンフレーズで一見わかりやすい、小泉劇場型政治といわれる手法で、あらゆる分野で進められた、新自由主義=市場原理主義=「構造改革」路線によってつくりだされました。
構造改革路線によって、あの「派遣村」に象徴されるような「格差と貧困」の惨憺たる状況が日本の隅々に広がりました。強いものがより強くなれば、そのおこぼれを貧困層も受けられる=トリクルダウン効果と言うそうですが、どんどん労働関連法を改悪し非正規労働者を増やして人件費を減らし、はては不景気になっていらなくなれば使い捨てさせる。リストラしたら減税というそんな方法まで考えて、輸出中心の大企業ばかりを優遇しました。一方で大企業優遇減税の帳尻あわせに、社会保障はばっさり削減。2002年度から毎年、自然増分から初年度は3000億円、その後は2200億円ずつ連続してへらし医療も、介護も、年金も、生活保護も、社会保障はまともに機能しなくなりつつあります。
特に医療の分野では、医療費削減を目的に医師数抑制策を続けた結果、救急医療や小児・周産期医療などで医師不足が社会問題化し、「医療崩壊」と呼ばれる事態が出現しました。「後期高齢者医療制度」は「現代版姥捨て山」とよばれ国民の怒りの声が集中しています。
国民は「生きること」自体が脅かされています。「痛みに耐えれば、明日はよくなる」どころか、「生きてゆけない」と悲鳴が上がるほどの状況が、国民各層に広がっています。
内需を受け持つ国民、中小業者、地方を犠牲にしての外需頼み、外資頼みの日本経済がいかに、もろいものか、このもろい社会を作り出したのが構造改革です。
しかし、構造改革路線も限界です。社会保障費削減は国の09年度予算では手直しせざるを得なくなり、第二次小泉内閣で厚生労働大臣だった自民党の尾辻議員でさえ、「乾いたタオルを絞っても、もう水は出ない」とのべるなど、路線の破綻を認めざるを得なくなっています。
また与謝野財務相は、先ごろ衆院財務金融委員会でトリクルダウン効果について批判し、「市場原理主義の幻想」などと竹中平蔵氏を皮肉ったとのことです。さらに「労働力の流動化に対応するセーフティネットをどうするかを、この10年間怠ったといわれても仕方がない部分があった」と雇用の規制緩和に行きすぎがあったことを認めました。
さらに、ある学者は自著でこのように述べました。「一時、日本を風靡した「改革なくして成長なし」というスローガンは、財政投融資制度にくさびを打ち込むなど、大きな成果を挙げたが、他方、新自由主義の行き過ぎから来る日本社会の劣化をもたらしたように思われる。たとえば、日本社会におけるこの20年間における「貧困率」の急激な上昇は日本社会にさまざまなゆがみをもたらした。あるいは救急難民や異常犯罪の増加もその「負の効果」にはいるかもしれない」
この学者こそ、今注目の人、竹中平蔵氏らとともに「構造改革」を進めてきた中谷巌氏で、その著作、「資本主義はなぜ自壊したのか?「日本」再生への提言」のまえがきのなかで、先ほどの言葉に続けてこうのべます。「かつては筆者はその「改革」の一翼をになった「改革派」としての経歴を持つ。その意味で本書は自戒の念をこめて書かれた「懺悔の書」でもある。まだ十分な懺悔はできていないかもしれないが、世界の情勢が情勢だけに、黙っていることができなくなった」
もはや新自由主義=構造改革に歴史の審判は下っています。
市当局も、この構想改革路線にのっとって、「行政経営改革」なるものに取り組み、ニューパブリックマネージメント理論にもとづいて、「民でできることは民へ」「効率化・活性化」などといって指定管理者制度の導入やアウトソーシング化=民間委託・外部委託をどんどんと推し進めてきました。指定管理者制度は施設運営だけでなく、学童保育など福祉の分野にまでおよび、そこでは市の責任は薄まり、競争を強制されることによってそこに働く人々は「ワーキングプア状態」を強いられています。指定管理者制度そのもの、民間委託のありかたを、見直すべき時に来ています。
そして、こうした大不況下の新年度予算では、何より「格差と貧困」の広がりに、市が真正面から立ち向かい、「痛めつけられている市民」の生活支援をおこなうことが、求められています。
このことをまず指摘して、新年度予算案、市長の行政方針を見てみたいと思います。

予算案は、予算総額2701億1972万円、前年比0.5%増、うち一般会計1583億5497万円、前年比2.8%増、借換債を除く一般会計は1551億8217万円、前年比2.1%増、特別会計は695億76万円、前年比5.8%減、企業会計422億6398万円、前年比3.3%増となっています。
歳入では、まだ不況の影響を受けていない個人市民税は2.9%増。固定資産税、都市計画税も評価替えと戸数増で1.6%の増加となっていますが、一方で景気悪化の影響で法人市民税は10.6%の減となっており、市税全体で839億6406万円、前年比1.4%、11億3400万円増の、ほぼ前年並みの市税収入です。
景気悪化の影響は利子割り交付金、配当割交付金など交付金4項目で前年比9億7600万円の減となっていますが、地方交付税と臨時財政対策債で手当てされ、基金取り崩しをふくめた一般財源は、前年とほぼ同規模の1100億5603万円となりました。
歳出では、新年度は第4次総合計画の1年目ですが、そのことよりも市長選挙で山田市長が掲げた公約の具体化が目に付くものとなっています。73項目中45項目掲げているとのことです。もちろん、政治家がみずからの公約を果たそうとすることは当然ですので、市民のニーズにかなった公約が、適切に実現されることに異を唱えるものではありません。そのなかには、市民とともに日本共産党市会議員団も要求してきたものも多く実現しています。中学3年生までの子どもの医療費無料化(新年度全面実施ではなく段階的実施)、妊婦健診の公的助成拡大、学校校舎を始めとした公的施設の耐震化、全教員へのパソコン貸与、特別支援教育支援員の全校配置、学童保育障害児受入れの6年生まで延長、甲子園口5丁目から天道町に至るJR地下道改修などなど、評価をするものです。
一方で、市長が「公約」実現にあげているものでも手放しでは評価できないもの、あるいは「公約」に掲げていなくても、なすべきことでまったく不十分なことも多くあります。この点で指摘しなければならないのは、まず、まちづくりの失敗です。

現在の市の重大課題、焦点のひとつである、フレンテからのコープデイズ撤退問題に行政方針では一言も触れていません。これは、明らかに市が直接手掛けた再開発事業の破たん、失敗です。なぜこのことに行政方針は言及していないのでしょうか。日本共産党の見解などは杉山議員が一般質問でさせていただきますが、市のまちづくりの失敗、商業政策の失敗という厳しい反省の上に立って、今後に当たっていく必要があるということだけ、申し上げておきます。
また、人口急増対策もまちづくりの失敗の結果であるということを、市長はしっかり認識すべきではないでしょうか。学校教室不足に、校舎増改築(4校、39億3800万円)、プレハブ建設(9校、1億1800万円)。保育所待機児童解消には、公立保育所定員弾力化(7か所、6700万円)既存の民間保育所定員増(1か所、597万円)民間保育所分園整備(2010年開園2園、3億4500万円)民間保育所新設予定として2園分、1億200万円等、相当額にのぼる予算が計上されています。
これらは、やらざるを得ない、待ったなしの事業ですが、住環境や教育環境を守るためにもマンション開発を抑制すべきという私たちの主張、今や与党会派も主張しだしているこの声を聞かず、人口急増を招いた結果であります。行政方針では相変わらず「これまで積み重ねてきたまちづくりの実績が評価された人口増」とし、「子どもたちの笑顔があふれ、健やかに成長する環境を整えることが責務」などとのべておられますが、運動場をせばめてのプレハブ対応やギュウギュウ詰めの保育所定員弾力化などは、子どもたちに犠牲を背負わせている、このことを忘れてはなりません。これ以上のマンション開発は規制すべき、このことを求めておきます。
2点目に、緊急性の高い事業を優先的に実施するとしながら、阪神西宮駅北広場整備という新たなムダづかいにいよいよ乗り出しているということです。この問題はあとで質問いたします。
3点目に、新年度予算案では深刻な不況下に見合う雇用対策、経済対策が、ほとんど見当たらないという問題です。具体的な新規施策は、30人の非常勤嘱託職員の雇用=緊急雇用対策しかありません。
さらに市民に追い討ちをかけるように、保育所保育料、給食費、介護保険料など公共料金の値上げです。なぜ避けなかったのでしょうか。

行政方針で市長は、現在の金融危機下の状況を次のように表現しました。「昨年の秋以降、アメリカに端を発する金融危機に伴う、100年に1度といわれる世界規模の景気後退、株価暴落などの経済情勢の変動による企業の減産などから、全国の各地域で大幅な雇用調整が行われるなど、経済・雇用情勢をとりまく急激な変化が続いております」
人をもの扱いしての派遣切りなど非正規・正規労働者の首切り=「雇用破壊」といえるものですが、これを「雇用調整」、急激な景気悪化を「変化」と表現するのは市民の感覚とかけ離れています。
だからでしょうか。「『景気の後退』は市財政に影響を及ぼしているので、堅実な行財政運営に努める」と市財政の心配はするものの、今の景気悪化が市民にどんな深刻な影響を与えているか、そのことを心配する表現は一切ありません。その一方で「阪急ガーデンズやキッザニア、阪神なんば線でますますまちがにぎわう」と、これも相変わらず手放しでの賛辞です。
この間、日本共産党議員団はハローワークや労働基準監督署、市内の労働組合、商店市場連盟はじめ市内各地の商店会、個人業者の皆さんなどを日本共産党の「緊急経済提言」を持って訪問し、懇談させていただきました。どこでも聞こえてくるのは「この不景気、何とかして」という悲痛な声です。市として、できうる最大限の経済対策・雇用対策を真剣に検討すべきときです。

以上、私なりに新年度予算案の特徴を見てみました。
今後の市の財政見通しについて、「西宮市の財政を考える(??1)」が公表されていますので、これについても少しのべたいと思います。
「西宮市の財政を考える(??1)」という財政課が作成する冊子に、今後の財政収支見込みとして、H18年(2006年)度から25年(2013年)度までの「財政収支試算表」が記載されています。これによれば2007年度末の基金残高121億円は、20年度に大きく取り崩し、21年度以降は急速な景気悪化で市税増収が見込めず引き続き基金取り崩しは避けられず、22年度以降財源不足が続き、2013年度末には138億円の財源不足が見込まれる、というものです。
「財政収支試算表」ときいて私の頭に浮かぶのは、「321億円の大赤字」です。
2004年2月に作成された「西宮市の財政を考える(??1)」の財政収支試算表で、2008年度末の財源不足額が321億円とされ、「赤字再建団体に転落だ、大事件だ」と市民に大宣伝され、それを根拠に第3次行革が強行されました。職員人件費に続き、市民福祉金など市民サービス・福祉が次々と削減されました。
私たちは行革の計画段階から、歳入はできるだけ小さく、歳出はできるだけ大きく見積もって「意図的に赤字」を作り出し、それで市民を脅して、行革を強行しようとしていると指摘、批判してきました。
実際、321億円の赤字が出るどころか、2007年度決算での基金残高は120億円、黒字が出ています。第3次行革の効果額163億円を差し引いても2004年の試算は、現実と大きくかけ離れていたということです。午前中の質疑にもあったように、昨年の試算と今年の試算を比べても、9億円の黒字が一転、138億円の赤字です。
このように試算はあくまで試算です。今後の傾向を見るためには必要でしょうが、それを2004年のときのように、既定事実扱いで市民に喧伝し、危機感をあおり、市民サービスを切り捨てる道具にしてはならない。このことを強く申し上げたいと思います。

<質問>
  1. 「新自由主義=構造改革」に歴史の審判は下りました。市としても「官から民へ」「安ければよい」という考えを捨てるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

  2. 市長の方針に欠けている経済・雇用対策についてお聞きします。
    たとえば空港など必要性緊急性が低く、また大ゼネコンのみが受注できる大型公共事業でなく、生活に密着した公共事業は、地元中小業者にも受注でき、地域経済活性化に有効に活用していけるとして、日本共産党はこれまでから重点を置くべきと主張してきました。
    この大不況下、ますますその立場が重要です。市が発注する公共工事は地域経済に大きな比重を占めます。市では新年度以降、東部総合処理センター建設や市営住宅の建て替えが予定されています。また、学校耐震化、校舎増改築も同様に相当額の事業です。
    地元業者への優先発注、分割発注など、考え方を整理し、基準をもっておこなう必要があると考えますが、その認識があるか。先ほどあげた工事について、それぞれ具体的方策をどのように予定しているか、お答えください。

  3. こうした公共工事や、広く委託事業、指定管理業務などで、そこにはたらく人たちをいわゆる「ワーキングプア」にさせない、「官製ワーキングプア」を生み出さない、この観点が必要です。
    競争入札の場合、どこでほかより「安く」できるか、最終的に労働者の賃金が犠牲になっているのです。業者が労働者を雇用するに当たって賃金・労働条件が一定水準を下回らないよう保障させる公契約条例の策定が求められています。その検討と実施を求めます。お答えください。
    工事だけでなく委託事業、指定管理業務などについても同様に、入札や指定の際の評価については価格面だけでなく、地域貢献度や労働者保護の観点も取り入れた総合評価が必要と考えます。また委託後において、労働者の労働実態や賃金が適正かどうかの指導・監督が必要だと考えるがどうか。

  4. 緊急雇用対策の応募状況について聞かせてください。また国の補正予算で緊急雇用創出事業、ふるさと雇用再生特別基金事業が予定されていますが、市ではどう活用する予定ですか。

  5. 今の雇用・経済悪化に対し、労働者、各種業者、商店など各階層の実態把握からはじめて、市が何をすべきか、できうることは何かを考え対策する、あるいは市長に提言するような関係各課の横断的なプロジェクトチームを組むべきではないか。6、財政収支見込の問題。「138億円の赤字」というこの試算表を「321億円の赤字」の試算表のように、市民を脅す道具として使うべきではありません。どうですか。市はこの試算表をもとに、今後どのように臨むつもりか。また、いつも試算する場合に、必ず発生する決算剰余金を全く見込んでいない、という問題点を指摘していますが、仮に見込んだ場合どうなるか、お答えください。