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2010年度予算要望書
2009年10月19日

健康福祉局


  1. 介護保険について
     2000年から実施され10年目を迎えた介護保険制度は、3年ごとに事業計画が見直され、この間の見直しで入所者の施設利用料や食費の徴収、特に今年の見直しでは介護認定基準を厳しくして国の支出を減らそうとするやり方がすすめられてきた。その上、介護保険料の徴収対象を現在の40歳以上からさらに引き下げたり、障害者福祉のうち介護サービスに当たる部分を介護保険に統合するなど、介護保険の被保険者・受給者の範囲の見直しの改悪も検討されている。本来、介護保険制度は介護の必要な人に必要なサービスを受けられる制度をうたい文句に発足しながら、現実には利用を抑制する方向へと誘導されつつあり、市として国に対して抜本的な見直しを求めながらも、次のような対応を行うこと。
    1. 介護保険料が高額になっている最大の原因は、介護保険の創設時に国の負担を2分の1から4分の1に引き下げたことにある。国庫負担を30%に引き上げるよう求めること。当面、国負担を25%とし、調整交付分の5%は別枠とするよう、引き続き国に求めること。また国の制度として保険料、利用料減免制度の創設を国に求めること。
    2. これまで過去2回の介護報酬はマイナス改定となっており、介護労働者の劣悪な労働条件、介護の人員・人材不足、介護提供者の深刻な経営難のもとになっている。国も介護報酬の削減が事業所の経営難であることを認めており、第4期の介護報酬は3パーセントの引き上げが行われたが働く人に十分反映をされておらず、「焼け石に水」となっているのが実態である。
      さらに国に介護報酬の引き上げを求めていくこととともに、働く人たちの実態を把握し、引き上げた介護報酬に見合う待遇改善につながるような仕組みも国に求めていくこと。
    3. 保険給付が大きくなれば、それが保険料の値上げの要因になるというのは介護保険制度の最も大きな矛盾の一つである。第4期保険料については西宮市でも値上げとなった。この間の住民税や健康保険料の負担増、諸物価の高騰などでこれ以上の高齢者の負担増は限界である。一般財源を投入し、現行保険料を引き下げること。また、市独自の保険料減免を行なっているが、対象はわずかである。基準を緩和し拡充すること。
    4. 2006年度の介護保険法「改正」によって導入された「介護予防」について「費用対効果」を踏まえて見直しすることが定められている。要支援1・2の要支援者にはホームヘルパーなどの利用時間や回数が大幅に減らされ、要介護1以下の軽度の高齢者は、車椅子や介護ベッドなど福祉用具貸与への保険給付が原則なくなるなど、「介護予防」導入が「介護とりあげ」になったことは明らかである。 
       市はこれら高齢者の実態をつかみ、改善すべき点、課題を明らかにすること。
    5. 通院介護への制限など、国の法令に照らして行き過ぎた指導で「介護」をとりあげている。このようなことはやめること。
    6. 2009年の改定では認定基準が引き下げられた為に、新たな認定者は自立でないのに「自立」と認定されたり、従来の認定では状態が悪くなっているのに判定が逆に軽くなるなどの問題点が指摘されている。2009年3月時点の認定基準にもどすよう国に求めること。
    7. (7)特別養護老人ホームの待機者は2009年6月時点で1,800人を超えている。さらに療養病床削減の国の方針により、施設不足がいっそう深刻化する事態が起きてくる。今度の整備計画では新たな建設も予定されているが待機者解消には程遠い。特別養護老人ホームや地域密着型施設等の増設は前倒しで進めること。
    8. 「地域包括支援センター」は、介護・医療・福祉の連携で地域の全高齢者の生活を総合的に支える拠点である。しかし、マンパワーが不足し、介護予防ケアプラン作成に手いっぱいで全高齢者を掌握、支援できていないのが現状である。また、市独自で一般財源を投入し、全高齢者に責任を負える体制をつくること。
    9. 不正請求など不適正な運営を行う事業者が少なからず存在している。県とともに十分に、指導監督すること。
  2. 市立軽費老人ホーム「雅楽荘」は施設の老朽化とともに、狭い居室や相部屋など居住環境の劣悪さが問題となっている。これらの改善に取り組むこと。
  3. 第3次行財政改善計画で財政難を理由に、敬老会のおみやげや敬老祝い金制度、原爆被爆者援護金などは廃止、特定疾病患者見舞金は減額された。市の財政状況は改善されていることから、廃止・削減した各種福祉サービスについては元に戻すこと。また、高齢者交通助成制度も、5000円の現金支給に戻すこと。
  4. 福祉タクシー制度は障害のある人や高齢者の外出支援策として有効な施策であり、ますます充実が図られるべきものである。この間、タクシーの基本料金の値上げが行われ、障害者の負担が増えている。助成額の増額や行き先の拡大など、制度の改善をはかること。
  5. 障害のある人もない人も、ともに安心して暮らせるまちをつくるための、「障害者
    権利条例」を制定し、実効あるものとすること。その際には、障害者団体の連合会や協議会など、各障害者団体等の意見も聴きながら取り組みをすすめること。
     障害者自立支援法は、資産要件廃止などの一部改善も見られるが、原則1割の応益負担による利用者負担増や利用の手控え、報酬の激減による施設運営への圧迫、労働者の条件悪化など基本的な部分はなにも改善されていない。市として次のことに取り組むこと。
    1. 制度として、応益負担をやめ「応能負担」に戻すよう、抜本的な見直しを国に求めること。
    2. 負担増に反対する障害者の世論と運動に押され、利用負担上限月額が軽減されている。今後も引き続き軽減策がとられるよう国に要望するとともに、さらなる減免や上乗せを市独自で行うなど、必要なサービスが制限なく受けられるようにすること。
    3. 通所・入所施設の運営を困難にしている低すぎる報酬単価を引き上げ、日額制を月額制に戻すよう国に要望するとともに、市でも改善策を講じること。
  6. 社会福祉法人及び社会福祉施設等に対する指導監査は、適正な運営の確保と提供する福祉サービスの質の向上を目的としているが、その目的を達成できるよう必要な人員も確保して厳格に行うこと。
  7. 2009年5月の新型インフルエンザの流行にともない、市として介護施設や障害者施設に対して休業や休所を要請した。その間、本来施設利用によるあるべき収入がなくなり施設の経営を圧迫している。休業に見合う補償を国に求めるとともに、国の補償が行われるまでは市として補償すること。
  8. 生活保護について
     昨年末から今年にかけての派遣村に象徴されるように格差と貧困が広がり、生活保護世帯が増えている。この間、政府は「老齢加算」に続いて「母子加算」の廃止にふみだしたが、新たに誕生した民主党政権では世論の高まりもあり母子加算の復活をする方向を打ち出している。最低生活保障制度である生活保護を充実させるために、以下の項目を実施すること。
    1. 生活保護法では生活に困っている人は誰でも生活保護を申請でき、条件にあっていれば、平等に受けることができることを明記している。この規定や憲法25条の具体化として、より適正な事務を行うこと。
    2. 国庫負担額の削減や給付削減攻撃を許さず、老齢加算や母子加算の復活、生活扶助費、住宅扶助費など保護基準(最低生活費)の引き上げを国に求めること。
    3.  第3次行財政改善実施計画により、夏季冬季見舞金、上下水道基本料金減免
        などが廃止になっている。ただちに復活させること。
    4. ホームレスに対する保護適用については、NPO法人が運営する低額宿泊施設入所など一定の手立てが取られているが、住居の確保が要件となっており困難な面がある。テント生活者にはそこを居住地として認定するように改められつつあるがまだ不十分である。支援をさらに強化すること。
    5. 保護相談や申請、適用が急増しているが面接相談員やケースワーカーの数が足りない。相談者の立場にたった親身な相談を行うためにも人員を大幅に増やすこと。また、面接室のスペースが狭すぎることとともに、部屋の数も足りない。市役所全体の配置を見直し、スペースや部屋数を確保すること。
  9. 市民が困窮状態に陥った時に活用できる市の制度は、援護資金貸付しかない。生活実態と見合うよう貸付額を増額し、保証人、民生委員の証明は求めないこと。また、自営業者などについては審査が複雑になっており時間がかかるケースが多い。審査を簡素化すること。また、県社協の生活福祉貸付金の貸付についても、条件緩和、手続きの簡素化、貸付までの期間短縮を求めること。
  10. 一人親家庭支援について
    1. 国は、母子家庭に支給されている児童扶養手当を、08年4月から最大半減するとしていたが、反対の世論と運動により、事実上「凍結」している。しかし、就業意欲が見られない人については「削減対象」とし、割り出すために証明書の提出や市町村での相談等を求めている。これらについては煩雑な手続きや金銭的負担を強いるやり方でなく、柔軟に対応すること。あわせて国に「凍結」でなく中止を求めること。
    2. 専門技術取得を支援する母子家庭自立支援給付金事業があるが、その利用は少ない。周知を図り利用を促進すること。
    3. 母子生活支援施設は、老朽化している。早急に建てかえること。また、母子生活支援施設からの自立を促進するため、市営住宅への優先入居など、何らかの支援策を講じること。 
    4. 父子家庭への支援策は母子のそれと比較しても圧倒的に少ない。すでに宝塚市では独自に母子家庭の国基準額を支給することを決めている。こうした事例も参考に父子家庭への児童扶養手当の支給など必要な対策を講じること。
  11. 市では子育て世帯が急増しており、それに伴って子育てに悩んでいる親や、また児童虐待など、問題を抱えている子どもも増えてきている。市は「子育てするなら西宮」を標榜しているが、それにふさわしい施策や施設整備が求められている。以下の点に取り組むこと。
    1. 子どもの権利を守り、行政や市民全体で子育てをすすめるための「子ども条例」を制定すること。
    2. 児童虐待が急増している。適切に即応できるよう子どもセンター(児童相談所)の増設や専門職員の増員を国、県に求めること。また、中核市として市立児童相談所を設置すること。
    3. 「子育て支援の拠点」として児童館、児童センターを位置づけるのなら当然「直営化」すべきであると考える。あわせて、休日開館、偏在の解消、増館についても検討すること。
    4. 地域での子育て支援を進めるため展開されている子育て総合センターの各種事業が好評である。全市に1ヶ所では不足しているので増やすこと。
  12. 保育所について
     この間、政府は公立保育所民営化、規制緩和による企業保育所の参入に加え、「直接契約(直接入所)」方式への変更や、施設などの最低基準の撤廃なども検討され、保育制度の大幅な改変をもくろんできた。これらは保育に対する公的責任が後退させられ、市場化が進むことにつながる。その流れにくみせず、在家庭の子どもたちの支援などもふくめた保育に対する公的責任を果たすよう、以下の項目を実施すること。
    1. 公立保育所の民間移管計画はきっぱりと撤回すること。
    2. 保育所待機児童については、10月1日時点で579人にものぼっている。民間保育所の新増設や子どもたちの保育環境悪化にもつながる定員の弾力化で対応しているが、なお解決していないだけでなく昨年よりさらに増えている。希望するすべての子どもたちが入所できるよう、全庁的な取り組みにして早急に解消すること。
    3. 耐震診断を実施し耐震化を進めるとともに、老朽施設については計画的に改善を進めること。
    4. 公立保育所の1歳児クラスの保育士配置基準は今までどおり5対1を守ること。また、私立保育所についても5対1に改善すること。
    5. 虐待や生活荒廃の影響を受けている子どもへの対応は特別の配慮が必要とされる。専門知識を持った職員を配置するとともに、正規、非正規を問わず全保育士への研修を強めること。
    6. 自園調理の実施やアレルギー除去食への対応等で給食調理員の過重負担がある。給食内容をいっそう充実させるために調理員の増員をはかること。
    7. 障害児保育や一時保育をすべての保育所で実施すること。
    8. この間民間保育所への助成金が削減され、経営を圧迫している。安定した運営ができるように人件費等の助成金を増やすとともに、交付の際の運用については、各保育所の実情に合わせ、柔軟に対応すること。
    9. 待機児童解消策の一環として市内法人保育園に土地建物無償貸与、5年間の期限付きで分園を開設させている。分園も事実上独立園として運営されており、現行の助成基準では不十分であり改善すること。特に安井さくら保育園は50人定員で66人を保育している。独立園にすること。
    10. 新たな保育所設置にあたっては、株式会社の参入は認めないこと。
    11. 認可保育所を希望しても入所することができず、やむなく無認可保育所を利用せざるを得ない事態がある。各地でずさんな経営による犠牲者が出ているが、適切な指導監督を行なうこと。
    12. 負担能力を超える高い保育料で、滞納も増えている。保育料の引き下げと減免制度の拡充を進めること。
    13. 西宮浜には現在、私立保育所が1ヶ所あるのみで、ここに入所できなかった子どもは、橋を渡って他の地域の保育所に通っている。これは子どもにとっても親にとっても大変な負担であり、西宮浜に早急に保育所を新設すること。
  13. 認定子ども園では、直接契約制度、保育料の自由設定方式が導入されており、これは国と自治体が責任を負う公的保育制度の「解体」に道を開くものである。また、幼稚園・保育所双方の認可基準の切り下げや、認可外施設の公認化をすすめるとして懸念が広がっている。市内ではつくらせないこと。
  14. 家庭保育所について
    1. 家庭保育所は、産休明け保育の大部分を担い、市の保育行政の中で重要な役割を果たしている。しかし市は、運営助成費や保育補助費を月ごとの入所人数によってしか支給せず、水光熱費なども部分支給で運営に支障をきたしている。また、多くの家庭保育所は施設を賃貸し、保育士を雇用して運営しているが、市の運営・助成要綱は自宅において家族による保育を前提としたものとなっており実態に合わない。家庭保育所の運営を改善するために要綱を抜本的に見直し、市の責任をはたすこと。
    2.  保護者負担になっている給食や延長保育に助成を行うこと。
    3.  家庭保育所の卒園児を希望の認可保育所に入所させること。
  15. 学童保育(留守家庭児童育成センター)について
    学童保育所は、ただ単に子どもを預かる場所ではなく、異年齢集団の中で遊びと生
    活を通して子どもの成長発達を保障する場であり、放課後の子どもの居場所である。また、指導員には子どもの安全を守り、適切な指導で発達を保証する重要な役割が
    ある。
    1. 市は、学童保育所の運営に指定管理者制度を導入し、これまで長きにわたって委託してきた社会福祉協議会を非公募で指定管理者としてきたが、2008年度から4ヶ所の育成センターについて指定管理者を公募した。さらに、2010年度より公募をさらに4ヶ所増やし、指定管理期間を2年から4年にすることで順次増やしていく方向を打ち出している。2年前の公募のときには関係者への説明が不十分であったことは明らかであり、公募になれば指定管理期間が2年から4年になるとはいえ、数年ごとに管理者が変更されることになる。これでは保育の継続性を損なうことになる。また全市40センターの保育の質についても同一性、公平性が保てない。学童保育所の運営に指定管理者制度や公募はなじまず、非公募とすること。
    2. 開所時間の延長については関係者の意見もよく聞いた上で実施すること。その際、保育の質的低下につながらないよう人員体制などの拡充をすること。また、新たな料金加算は行わないこと。
    3. 待機児童がでているセンターは、希望する子どもをすべて受け入れられるよう対処すること。
    4. 定員の弾力運用で、子どもたちは施設の中ですし詰め状態である。特に、雨の日は居場所さえない。早急に改善すること。
    5.  高学年学童を自主運営している父母団体に補助制度をつくること。
    6. 「全児童対策事業」については、現行の学童保育(育成センター)事業とはまったく役割や内容が異なっている。現行の学童保育(育成センター)事業を後退させないこと。
  16. 総合福祉センターは市の福祉活動において重要な役割を果たしているが、旧式トイレや駐車場・駐輪場の不足など、施設整備の面では遅れが目立つ。引き続き、利用者の声をきいて改善にとりくむこと。
  17. 障害児は増加し、その障害も多様化、複合化している。わかば園では本来の肢体不自由児療育だけでなく、精神発達障害児の療育も引き受け、市の障害児療育の中心的役割を果たしており、今後もますます重要である。
    1. 施設は増築を繰り返し、大変狭隘であり、建て替えは「待ったなし」の課題である。わかば園を含めた総合療育センターの整備は2009年度からの第4次総合計画の課題としているが、関係者の意見も聴き、早期に計画をたて実現すること。
    2. 現在、内科・小児科医師は1名のみで、休暇取得もままならず診療にあたっている。療育センター整備も見据え、専門医師を早急に増員すること。
  18. 名塩・生瀬地域に総合的な病院の設置を具体化すること。
  19. 内科、小児科の第1次救急医療をになう応急診療所は、順次診療時間も拡大され、市民の命を守っている。子どもが急増している中、ますますその役割は重要であり、さらに充実を図ること。
  20. ヒブ(細菌性髄膜炎)ワクチンへの助成と周知についての請願が、2009年9月の本議会では全会一致で採択されている。早急にヒブワクチンについての周知をはかるとともに、定期接種にするよう国に求めること。国の定期接種になるまでの間、2010年度から市の助成制度をつくること。
  21. 保健所について
    1. 食の安全に対する不信が強まる重大な事件が後を絶たない。内容によって管轄外の事案もあるが、市民は食の安全に関する厳しい指導監督を保健所が行うべき、との強い期待がある。この期待を受けとめ、日常的な衛生管理への指導や抜き打ち検査の実施、食品表示の実態把握など、迅速で厳しい対応と情報公開をおこなうこと。
    2. 妊婦健診への公的助成の重要性が言われ、市でも14回70000円の助成を実施しているが、自己負担が大きい。三田市では98000円などの事例もあることから金額を増やすこと。
    3. 新型インフルエンザ対策として国はワクチンを確保することになった。国の低所得者対策だけでは不十分であり、市としても国の基準に上乗せして助成するとともに対象者も拡大すること。
    4. 保健所の施設については今年度での県への返還時期が迫っている。県に対し、引き続きの使用を求め、その間に保健所についての今後の市の方向性を確立すること。
  22. 食育は、食を通じて健康的な生活をめざすものであり、食育基本法に基づく食育を推進するために「西宮食育推進計画」の作成が急がれる。また、例えば農業体験をした子どもたちが食べ残しをしなくなりごみ減量にもつながる例や、食べる時によく噛む人は健康であるなど医療費の削減にもつながる側面もあり、市の財政にも貢献できる施策である。「食育推進計画」を全庁的に実践するためにも、当面は広報に力を入れること。
  23. 災害援護資金貸付金の県への償還期限は06年法令改正により5年間延長されたが、小額償還も多く、最終償還までには相当期間がかかるものと思われる。引き続き国に対し、償還期間の延長と償還免除の適用範囲の拡大等を求めること。