市長は5番目の政策課題として、「市民に信頼される公正で効率的な行政の実現」を掲げ、相変わらず、「限られた経営資源を効率的で効果的に活用する行財政改革を進め、市民満足度の向上をはかっていく」というフレーズを繰り返しています。
これは、NPM(ニューパブリックマネージメント)という企業経営的な手法・概念を行政に取り入れる行財政改革手法・考え方にもとずくものです。経営資源を持つ「会社」である市が、限られたその資源をいかに効率よく使い、お客さんである市民を満足させるか。このように発想するために、「会社」である市はコストを把握分析し、財政基盤を安定させねばならない、事業を見直し取捨選択する、効率化のために民間活力を導入する、ということになるのです。
御承知のように企業は利潤=もうけを追求するものです。しかし、地方自治体の役割は、地方自治法第1条の2にあるとおり、「住民の福祉の増進を図る」ことです。この自治体に企業の論理を取り入れることに、そもそも問題があります。
しかも市民は主権者です。「市民」をサービスの受け手のお客さんにしてはなりません。一方で市は、市民の参画と協働を掲げているではありませんか。明らかに矛盾をきたすものです。
広い意味での「福祉」の増進を図る、このことを目標に、主権者である市民とともに政治を前に進めるのが市長の役割だと考えます。
<質問>
- 「住民の福祉の増進を図る」という自治体の役割を発揮しようと考えた時には、市民がどんな状況に置かれているかを把握することがまず必要です。48万市民のリーダーとして、市民の暮らしむきをどのように認識しているか。
- 市長は、本市の喫緊の課題として、保育所の待機児童対策、公共事業の耐震化や老朽化対策、中央病院のありかたの検討などとあわせて、「財政の健全化」をあげています。
市の財政は、ことさら「健全化」を掲げなければならないほど、「不健全」でしょうか。見解を求めます。 - 市長は、財政健全化=財政基盤の確立の目標として、「経常収支比率の早期改善を目指す」としています。またマニュフェストでは、「健全な財政状況とされる経常収支比率80%の早期実現」と数字まであげています。
経常収支比率とは、人件費、扶助費、公債費などの経常的経費が自治体の財源に占める割合のことです。これが高いと「弾力性がない」「健全でない」などといわれます。
しかし、自治体が福祉や教育に力を入れれば、マンパワーが大きな要素を占めるだけに、人件費も増えることになります。福祉などで市の上乗せ施策があるほど扶助費も増えます。また、人件費を抑えようと民間委託を進めても物件費が上昇し、これも経常収支比率を押し上げる要素です。一方、経常的でない経費=臨時的経費=普通建設事業費(いわゆる公共事業費)に予算を多く当てると、経常収支比率は低くなりますが、事業を起債(借金)で取り組めば、のちのち公債費(借金返し)が増え、経常収支比率は高くなることになります。
このように、結局、経常収支比率の高低は、一つの参考にはしても、その数字だけを行政評価の基準にできない。まして数値目標を掲げることなどすべきでないと考えます。
3つ目の質問ですが、市長は経常収支比率を改善するというが、具体的に何をするつもりか。 - 4点目の質問は「西宮方式の事業仕分け」についてです。
市長は「経常収支比率の早期改善を目指し、つまり、経常経費の削減をめざし、既存事業を見直す。事業の取捨選択のために事業仕分けをおこなう」と語っておられます。
事業仕分けといえば、国のあのやり方が強烈な印象を残しています。政府の行政刷新会議が、2010年度予算概算要求の3兆円削減を目標とし、447項目(約220事業)を対象に、短時間で、時には行政側の発言も封じて、事業の「見直し」、「地方移管」、「民間委託」にと、次々結論付けていきました。
「保育所運営費負担金」「延長保育料」など福祉関係事業や、学校耐震化、国立大学法人運営交付金などが事業仕分けの対象になる一方で、超大型公共事業や大企業優遇の事業については項目になく、320億円の政党助成金も対象外。軍事費も在日米軍への思いやり予算のうち日本人基地従業員の給与のみが対象となるだけで、聖域とされ、結果的に軍事費は増加しました。
第2弾の独立行政法人の仕分けでも、高速道路機構や日本原子力研究開発機構など大きなものが対象外となっています。
結局「大きなむだづかいにメスを」という国民の期待はみごとに裏切られることとなりました。- 「国の事業仕分け」についてどのような評価をしているのか。
- 西宮版事業仕分けの目的は何か。
- わざわざ「西宮方式」と銘打っているが、どういう意図か。
- 私たちは、行政は効率性ばかりを追うべきでない、ということを一貫して主張してきました。先日も、市内の駐輪場で働く方から電話がありました。会社が変わるたびに時給が下がっていく。どういうことか、聞かせてほしい、というものでした。指定管理者が競争で勝つためにどんどん人件費を絞っていく。市からの委託を受けておこなう事業で働く人々が、働いてもなお貧乏、いわゆる官製ワーキングプアにおちいっている現状は放置できません。これが地域経済を疲弊させ、景気悪化に拍車をかけているのです。改善する方策として、すでに千葉県野田市で実現している公契約条例の制定を求めてきました。この条例は、市発注の公共事業や業務委託などの公契約に携わる労働者に市長が定める最低額以上の賃金を支払うものとするものです。
本市では、今年3月にやっと公契約条例の調査研究をするプロジェクトチームが発足しました。どのように進めるつもりか。市の業務委託、指定管理者で働く人々の労働実態をつかむべきだということもくりかえし求めてきたが、この点はどうか。