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杉山たかのりの一般質問
2011年07月01日

原発事故についての市長の見解を問う


クリックで大きな写真を表示 3月11日、マグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生、震源地近くには、東京電力福島第1原子力発電所、同第2原子力発電所、東北電力女川原子力発電所、東通原子力発電所、六ヶ所再処理工場、日本原子力発電の東海発電所が立地し、これらの原子力発電所・施設は全て停止しました。

 このうち、福島第1原発は、1号機?3号機において、地震の振動よって、運転は緊急停止し、これによって核分裂反応も停止、崩壊熱の発生が続く燃料棒が高熱になって溶け出すのを防ぐために、水で冷やすシステムを動かす電源が遮断、冷却用非常用ディーゼル電源が津波により動かなくなり、メルトダウン(炉心溶融)が起きました。また、1号機?4号機の使用済燃料プールでも冷却不能の事態に陥りました。

 放射能汚染は広範囲で、土壌、水道水、牧草、農産物、水産物に被害を及ぼし、海洋汚染は、被害の程度すらわからない事態に、国民、特に子供への健康被害は深刻、自主避難を含めると10万人以上の人々が避難生活を余儀なくされています。

 巨大な地震、あるいは津波は、自然現象であり、その時に、災害が起きても耐えられるよう対応すべきだったのに、していなければ、これは人災となります。わが党は国会で、地震や津波の対策について求めてきましたし、専門家からも再三警告されてきたにもかかわらず、対応してこなかった。今回の原発災害は、まさに人災といえます。

 原子力発電で利用している核エネルギーの最初の実用化は原子爆弾です。原子炉の開発は、原子力潜水艦です。戦争目的で開発されたのですから、当然、安全性は十分に考えられないまま、民間に転用し、原子力発電になったのです。

 原子力発電所は、原子炉の中でウランの核燃料を燃やし(実際は中性子を照射しますが)、核分裂を起こさせ、そのときに発生する熱で水を熱し、高温・高圧の水蒸気を作り出し、タービンを回して発電します。火力発電では、石油や石炭を燃やし、原理は同じですが、熱を発生させるエネルギーが違います。

 ウランから生まれ核分裂の生成物は、膨大な熱を出し続けるため、「軽水炉」では、絶えず水で冷やし続けなければなりませんが、その水の供給がなんらかの事態で止まると、今回のようにメルトダウンとなり、大変な事態になります。

 また、原子炉で、核分裂で生じるのが「死の灰」と呼ばれる人工の放射性物質、ヨウソ131やセシウム137、プルトニウム239など、多数あります。放射性物質は、放射線を発生し、別の物質に変化し、これを放射性崩壊といい、このときに発生する熱が崩壊熱といいます。しかし、この大量の死の灰を原子炉内に完全に閉じ込める技術がいまだに確立されていません。さらに、この死の灰の塊である使用済み核燃料、放射能のゴミですが、廃棄する方法が開発されていません。「トイレなきマンション」と呼ばれるゆえんです。 いまだ完成されていない技術なのです。

 ところが、長年、日本の原発は安全、事故は起こらない、大丈夫だ、となんの根拠もなく、「安全神話」を振りまき、自らもどっぷりつかって、安全対策を怠ってきた、東京電力と自民党政権、自公政権、民主党政権など歴代の政府の責任は重大です。

 東京電力福島原発事故は、日本と世界の人々に大きな衝撃をあたえ、原発に依存したエネルギー政策を、このまま続けていていいのかという、重大な問題を突きつけています。

 ドイツ政府は、2022年までに原発から全面撤退することを決定、昨日下院議会で原発廃止法案が可決されました。発電量の40%を原発に依存するスイスも撤退を決めました。

 日本共産党は、1950年代、最初の段階から安全性の保障のない「未完の技術」のままで原子力発電の道に踏み出すことには、きっぱり反対をし、国会でも一貫して問題点を指摘してきました。

 1976年1月、三木内閣時、政府が原発を9年間で400万キロワットから4900万キロワットに増やす計画を立てたのですが、アメリカでは原発の審査・管理に1900人以上の技術スタッフがいるのに、日本では非常勤が20人余りという形だけの審査体制になっている問題をただしました。

 1981年2月、鈴木内閣時、東海大地震の予想震源域の真上に、なぜ浜岡原発の増設を認めるのかという問題を追求しました。

 1999年11月、小渕内閣時、スリーマイル、チェルノブイリ原発事故を受け、94年に「原子力の安全に関する条約」が結ばれ、原発を進める「推進機関」と、その安全を審査して施設を認可する法的権限をもつ「規制機関」との分離が規定されましたが、日本では、推進機関の通産省(現在は経済産業省)が法的権限を持ち、原子力安全委員会は政府の諮問機関程度の役割しかないという、国際条約違反の審査体制になっていることを追求しました。

 2006年3月小泉内閣時、日本の原発の8割が大津波の引き波により海水の取水ができなくなる、また大規模地震によるバックアップ電源の送電系統が破壊される、などこういった原子炉の冷却不能、炉心溶融の危険に備える必要があることをただしました。老朽化した原発の問題点も指摘しています。
 いずれも、現在も大きな問題といえます。

日本共産党は、今回の事故によって、次の4つのことが明らかになったと考えます。
1.原発事故には、他の事故にはみられない「異質の危険」がある
2.現在の原発技術は、本質的に未完成で危険なもの
3.こうした原発を、世界有数の地震国であり、世界1、2の津波国である日本に集中立地することは、危険極まりない
4.歴代政権が、電力業界の経営陣と共に、「日本の原発は安全」とする「安全神話」にしがみつき、繰り返しの警告を無視して重大事故への備えをとらなかったことが、どういう深刻な結果をもたらすかも明瞭になった

 結論として、「安全神話」を一掃し、最大限の安全対策をとったとしても、安全な原発というものはありえず、ひとたび重大事故が起きれば、取り返しのつかない事態を引き起こす。地震と津波の多い日本では原発と日本社会は共存し得ない、ということです。

 日本共産党は、5?10年以内を目標に、原発から撤退する計画を策定し、同時に、自然エネルギーの本格導入と低エネルギー社会にむけて、国を挙げての取り組みを提起しています。

 さて、西宮市についてです。
 関西電力は、現在、高浜4基、大飯4基、美浜3基、福井県に合計11基もの原発を建設しています。同じ福井県には日本原子力発電が敦賀に2基、日本原子力開発機構のもんじゅもあります。8基は30年以上、そのうち40年2基、39年1基、多くが老朽施設で、西宮からわずか80?100キロメートルのところです。福島から東京まで200キロメートルほどですから、本当に近いのです。

 特に、近畿の水瓶といわれる琵琶湖は、わずか30kmのところにあり、福井県にある原発に事故が起これば、大変な事態になることは間違いありません。

 東京電力で起こった事故が、関西電力では起こらないか。関西電力は、「起こらない」「大丈夫」だと言っています。この後に及んでも「安全神話」にどっぷりつかって、抜け出すことができません。

 関西の首長からも「脱原発」宣言がでるのも当然です。私は、市長には、市民の生命、安全、暮らしをまもるという立場から、原発の「安全神話」を一掃し、原発をなくし、低エネルギーのまちづくりをめざしてもらいたいと思います。

<質問>
  1. 4カ月が近づくのに、なお収束するどころか被害の拡大が続いている東京電力福島原発事故に対する市長の見解を、まず伺いたいと思います。特に「安全神話」は崩れた、ということについてもお聞きしたいと思います。その上で、「もう原発はだめ、やめなあかんな」と正直に思われませんか。率直な気持ちをお聞きします。
  2. 東日本大震災によって、「日本の原発は安全だ、事故は起こらない」という「安全神話」はもろくも崩れさりました。これは、全国の原発も危険だということです。日本共産党西宮市会議員団は、4月5日、市長に、福井県に集中する関西電力の原発の安全総点検を国と関西電力にするよう、求めましたが、その後、西宮市民をまもる立場から、具体的にどんな行動をとられたのか、お聞きします。
  3. 関西電力が、西宮市にも説明にきたとのことを聞きましたが、具体的に、関西電力は何を言ったのか、またそれに対して市はどんな対応をしたのか。
      先日、日本共産党は関西電力本店と交渉をしましたが、その際、「エネルギーの安定供給のため原発は必要」「電源が確保できず、冷却機能が失われても冷温停止できる」「停止中の原発の運転再開は経済産業大臣から安全上支障はないと言われている」と、「安全神話」に固執し、原発依存を続ける姿勢を示しています。いまだに原発の危険性を認識していないのです。
    市長として、国際基準に照らして真摯に総点検と抜本的な安全対策を取ること、老朽化した原発は廃炉にすることなど、関西電力に求めるべきではないか。
  4. 「原発ゼロ」「脱原発」など、自治体首長をはじめ、各界から声が聞かれます。西昨日は、宝塚市・尼崎市・篠山市が関西電力に原発からの脱却などで、関西電力に要請をしたとの報道がされています。西宮市長として、期限を決めた、原発からの撤退、自然エネルギーへ活用、低エネルギー社会にむけた取り組みをすすめる、という明確な意思表示を、すべきではないか。