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野口あけみの議会発言
2011年07月11日

震災と原発にかかわる 二つの意見書(案)についての提案理由の説明


「被災者生活再建支援法」の抜本的拡充を


東日本大震災からまもなく4カ月がたとうとしております。「復旧・復興」の言葉が語られ始めましたが、多くの被災者はなお心身ともに苦しみのふちにあり、先の見えない不安の中に置かれています。被災者や被災地の窮状に向き合い、困難を打開し希望を示す血の通った施策を進めることこそ、今、日本の政治に問われています。そんな中で7月5日、復興担当大臣が被災地で暴言を吐き、就任わずか9日で辞任しました。災害救助法を持ち出すまでもなく、救援・復興の最大の責任者は政府です。対等の関係にある自治体と協力して復興に当たるべき立場の大臣が、命令口調で、いわゆる「上から目線」で被災地の知事をおどしつける、全くあきれてしまいます。辞任は当然、さらに、こんな人物を「被災地をよく理解している適任者」として任命し、暴言が報道されても何ら対応せず、松本氏が辞表を提出すると慰留した、菅首相の責任も問われるところです。
さて、具体的な被災者支援については、今なお避難所生活を強いられている被災者の生活環境の改善、せめてゼロからスタートできるように2重ローンの解消、失われた農業、漁業、商工業の基盤回復などなど課題が山積しています。このたび意見書として提案させていただいたのは、これらのうち、生活再建の土台である「住まいの再建」にかかわっての「被災者生活再建支援法」の抜本拡充のみにかぎって政府に求めるものです。是非とも賛同をいただきますよう、お願いいたします。

福島原発事故の収束と原発から撤退に関する意見書について


すでに本会議一般質問でとりあげて、私どもの原発に対する見解は述べておりますが、何点か補足をしたいと思います。
1点目は、原発技術で客観的な「安全基準」が決められるか、という問題です。技術における安全基準とは何か、どんな技術でも「安全基準」を設定した場合、それが本当に客観性を持っているかどうかは、実証実験によって試すわけです。実際に使ってみて不具合があれば改善し、もっと安全なものにする、こういう工程を繰り返し、技術が発展します。それでは原発で客観的な「安全基準」を決められるか。例えば地震に対する原発の「安全基準」を実証しようとしたら、実際に稼働している原発をゆすってみて壊れるかどうか実験をやらなければならない。そんなことはできません。結局、「安全基準」は机の上での計算だけになるのです。
意見書案では、2項目目に「すべての原子力施設を厳密に管理・検査できる安全基準の確立と体制をつくること」とあげていますが、これも正確にいえば、「考えうる最大限」の安全基準と体制を求めることになります。原発事故の危険を最大限回避する、危険を少なくするための措置は必要です。このたび政府が言い出したストレステストはEUで実施しているものを手本にし、想定を上回る規模の地震、津波、洪水などへの備えを検査する新たな安全評価です。こうしたことも必要でしょう。ただ、原子力安全委員会と原子力安全・保安院によって進めるとのことですが、両組織が原発に対する規制という点で資格も能力もないことは福島原発事故で既に証明済みです。ストレステストを行うなら安全委員会や保安院任せにせず政府が責任をもって「安全神話」にとらわれていない専門家の力を総結集して実施すべきです。
しかし、このようなテストも行い、ある「安全基準」を決めて、これをクリアしたら「安全だからどんどん作りましょう」という考え方は、原発においては成り立たないのです。それはひとたび重大事故が起これば、危険な放射性物質がどこまでもいつまでも拡大し続け、地域社会の存在そのものをも脅かすという取り返しのつかない事態を招くからです。いまただちにすべて撤退することは困難ですが、撤退をまず決断し、期限を決めてすみやかに工程にのせていくことが必要ではないでしょうか。
2点目に原発再稼働の問題です。海江田経済産業相は6月18日、安全性が確認されたとして定期点検などで停止中の全国の原発の再稼働を地元自治体に要請しました。29日には大臣じきじきに佐賀県を訪問し、玄海原発2、3号機は安心として再稼働を要請しています。
この九州電力の玄海原発をめぐって再稼働に向けて国が実施した説明会で「やらせメール」問題が発覚しました。説明会は地元ケーブルテレビやインターネットで視聴できる説明番組で、国の側が選んだ県民代表7人に対し経済産業省の原子力安全・保安院職員や大学教授などが説明し、疑問に答えるとともに、生中継中に視聴者からの意見も募集し、紹介するといった内容です。この意見募集に際し、九州電力が関係会社の社員らに、玄海原発の運転再開を支持するメールを投稿するよう組織していたことが、関係者の証言や内部文書でわかりました。しんぶん赤旗が2日付でスクープしましたが、その際九電は「そのような依頼は一切していない」と全面否定していました。6日の衆院予算委員会で日本共産党の笠井亮議員が関係会社の要請文書も示して「説明会の正当性が問われる妨害行為、世論誘導工作ではないか」と追及。首相も経済産業相も「やっているとしたらけしからんこと。しかるべき措置をとる」と答えました。九電の社長は6日夜、この事実を渋々認め、謝罪しましたが、こんな世論をゆがめることまでして、再稼働をごり押ししようとすることは到底許されません。また、こういうやらせをやらなければ安全の説明ができない、危険なものだということを自認するに等しいものです。
福島原発の事故について政府は国際原子力機関(IAEA)に28項目の「教訓」をあげて報告書を提出していますが、少なくとも政府はこれに基づく対策をとることが求められます。笠井質問では具体的に玄海原発における教訓に基づく対策について聞いたうえで、とった対策が1週間程度でやれる小手先のもので、「到底安心な原発などと言えるものではない」「再稼働が先にありき」だと批判しました。こうした追及の結果、首相に「再稼働については国民に納得のいくルールを明確にしてやっていく」と答弁させ、事実上、原発再稼働の見直しに追い込みました。4日にいったん再稼働に同意していた玄海町長は昨日7日、同意を撤回しました。この際、政府はすべての自治体に対する要請を、白紙撤回すべきです。
このように政府が追い込まれている背景には、原発に対する国民の大きな不安、真剣な模索の広がりがあります。一般マスコミは一切報道しませんでしたが、7月2日、東京・明治公園で2万人の原発ゼロを求める緊急行動が行われました。この行動は、女優の市原悦子さん、音楽評論家の湯川れい子さんなど著名人10氏が呼びかけ、吉永小百合さんなど200数十人が賛同して行われたものです。
私たちは、国民が、事実から目をそむけず、いのちとくらしを大切にしようとするなら、原発からの速やかな撤退と自然エネルギーの本格的導入を求めることは当然のことであり、その世論はますます広がり強まることを確信しているものです。自然エネルギーの可能性、潜在能力は原発54基分の約40倍といわれています。
この世論の一つとして、この西宮市議会においても提案させていただいた意見書案をどうか採択くださいますようお願いいたしまして、提案とさせていただきます。