野口あけみの一般質問/* --項目挿入-- */?>
2011年09月09日
改定介護保険について衆議院で10時間弱、参議院で8時間弱というわずかな審議時間で、大変問題の多い改定介護保険法が、民主、自民、公明、みんなの党の各党の賛成で6月15日、成立しました。 甚大な被害をもたらした東日本大震災の被災地では、多くの高齢者が日常生活を絶たれる中、介護をめぐって深刻な事態が生まれています。そうしたさ中でおこなわれた今回の介護保険法の改正ですから、多くの関係者は少しでもこの矛盾を解決するものであってほしいと願っていました。しかし、その期待は裏切られ、わずかの時間の審議で、新たな介護給付の抑制策が盛り込まれ、具体的な中身は「今後検討」に終始し、ますます制度が複雑化し、わかりにくく利用しづらいものへと「改悪」されてしまいました。 報道などで知った被災地での実例を、少し紹介したいと思います。 当日デイケアを利用していた高齢者が自宅半壊で帰れなくなり、そのまま滞在。3月の半月ほどで利用料は28400円にも上ったとのことです。介護施設に避難した高齢者はショートステイの長期利用扱いで16万円請求されました。これらは、要介護度ごとに支給限度額が決められ、それを超えると全額自己負担となるため起こった事態です。 体調悪化や認知症の進行など、要介護申請が急増する一方で役所機能が麻痺する中、認定審査会も開かれず、認定がすすまないことも問題となりました。5月10日付地方紙の報道によれば認定待ち高齢者が被災3県で2960件にものぼったということです。認定なしでは、介護事業者も報酬が支払われるのか不安で、サービス提供に二の足を踏みます。日本共産党の高橋千鶴子衆議院議員は要介護認定なしでサービス提供ができるよう要求し、厚労省副大臣が、「緊急やむをえない理由があれば、市町村の判断によりサービスの提供ができる」と回答、なんとか改善させることができました。 介護事業所の被災でサービス提供量も圧倒的に不足しています。サービス提供は民間まかせの介護保険制度の下、ほとんどの介護事業所や介護施設は小規模で、基盤は脆弱です。たとえば宮城県では居宅サービス事業所57事業所が休廃業。9割が再開の見通しがたたないとのことです。介護施設では3件で少なくとも65施設が休廃止に追い込まれています。 介護護保険制度の申請・認定・契約という枠組みが壁となり、またサービス提供は民間に丸投げというなかで、すぐにも介護が必要な被災高齢者が必要な介護が受けられないという事態です。大震災のなかで、介護保険制度の矛盾が鋭い形で現れました。こうした矛盾はなんら解決されなかったのが今回の改定です。 介護保険法の主な改定内容は、以下のとおりです。(1)市町村の判断で介護予防・日常生活支援総合事業を創設できる、(2)24時間対応の定期巡回・随時対応型訪問介護看護、2種類の在宅サービスを組み合わせる複合型サービスの創設、(3)介護職員のたん吸引などの医療行為を可能にする、(4)介護療養病床の廃止期限の6年間延長、(5)財政安定化基金の取り崩しを可能にする、などです。 今、市では第5期の高齢者福祉計画ならびに介護保険事業計画を策定中です。2000人を超える待機者がある特別養護老人ホームなど、施設整備をどうするか、これも大変重要な問題ですが、今回の私の質問では、法改定のうち特に高齢者や家族に重大な影響を与え、保険者である市の選択を迫られる介護予防・日常生活支援総合事業創設と、介護保険料設定についてとりあげます。 介護予防・日常生活支援総合事業について1つ目の問題の介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)です。前の介護保険法改正によって2006年から地域支援事業が開始されました。地域包括支援センターをその活動拠点と位置づけ、高齢者の実態把握や啓発活動などの介護予防事業、介護予防ケアマネージメントや権利擁護事業などの包括的支援事業、家族介護者の支援、配食サービスなどの任意事業からなるものです。 今回の法改正で、このような地域支援事業のなかに市町村の判断で新たに「総合事業」を創設することができるようになります。総合事業は介護認定で要支援1あるいは2と認定された高齢者と介護保険非該当とされた高齢者を対象とする事業で、訪問・通所サービスや、配食、見守りなどの生活支援、権利擁護などを総合的に支給するとされています。 これまでと何が違ってくるのでしょうか。従来の「予防給付」では要支援1,2の方にも、要介護者に対する介護給付に準じて通所介護・訪問介護・短期入所などが提供されてきました。このサービスでは、全国一律の基準によって質が保たれており、利用料も1割負担とされているのに対し、「総合事業」による訪問・通所サービスなどの予防給付は、サービスの内容も料金設定もすべて市町村任せになります。サービスの担い手も必ずしもプロ=専門職ではなくボランティアなど「多様なマンパワーを活用」するとされています。 具体的に、どんなことになるか、たとえばこれまで、介護保険の予防給付で、ヘルパーの支援で食事づくりをしていた人が、総合事業になれば有料の配食サービスに変更されるということも、ありうるのです。ヘルパーの援助は単なる家事の手助けとは違います。ヘルパーさんは利用者と関係を築きながら生活への意欲を引き出す専門職です。こうしたやり方は、ヘルパーの専門性を否定し、また、必要なケアを受けることで生活が成り立つ高齢者から生きるための基礎を奪う、大問題だと言わなければなりません。 また、利用者一人ひとりについて、従来の「予防給付」か「総合事業」か、どちらを利用するかは利用者の状態や意向に応じて市町村・地域包括支援センターが判断することになっています。国会のやり取りでは、利用者の意向として、これまで通りの介護保険の訪問介護やデイサービスを望んでも、「尊重」はするが、最終的には市町村が判断する、ということがいわれています。利用者の意に反してこれまでのサービスが受けられない可能性があります。また、実際には「総合事業」が導入されれば、すべての要支援者がそちらに移ることになるでしょう。同じ認定段階、たとえば要支援1のAさん、Bさんは、どちらも審査を経て認定が下りているわけですから、区別する根拠を探すのが難しいことになります。地域支援事業と総合事業の関係もどうなるのか、見えてきません。 さらに問題なのは、総合事業を含めた、地域支援事業は総量に上限があることです。その事業費は介護給付費の3%以内と制限されています。現在、全国平均で、介護給付費のうち5.9%が要支援1,2の高齢者の予防給付費です。 市町村が「総合事業」を創設し、要支援者の給付をそちらに移し、しかも3%を超えないようにしようと思えば、そこで提供されるサービスは、おのずと安上がりのものになります。 また、要支援者が総合事業に移行すれば、事業費の上限がある限り、いま地域支援事業でおこなわれている非該当者へのサービスや、高齢者全体への啓発活動などが押し出され、切り捨てられることにもなります。 2006年の法改正で、国は要支援1,2という認定区分と予防給付を創設し、サービス利用制限を強め、介護給付の抑制を図りました。今度はその要支援者を介護給付の外に排除し、さらに給付全体を抑制しようとしているのです。 こうした思惑に乗って、市は、総合事業を創設すべきではないと考えます。 【質問】
介護保険料について65歳以上の第1号保険料は、3年ごとに市町村が改定を行い、第5期の改定が2012年からです。 厚労省は、まだ介護報酬などの数字も示さないままに保険料の全国的な試算を示しています。それによると、次期保険料は、現在の平均月額4160円から5200円になるとのことです。その上で今回の法改定で、都道府県の財政安定化基金を取り崩す規定を設けました。財政安定化基金は、市町村の介護保険財源に不足が生じた場合、貸付を行う基金で、国、都道府県、市町村が同額を積み立てています。この基金の市町村分50円と、市町村の介護給付費準備基金の取り崩し130円の合計180円を保険料引き下げのために使い、次期保険料を平均月額5000円程度に抑えるとしています。 【質問】
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