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上田さち子の反対討論
2011年10月04日

平成22年度西宮市一般会計及び特別会計歳入歳出決算認定の件


ただいま上程中の決算認定のうち、認定第5号 平成22年度西宮市一般会計及び特別会計歳入歳出決算認定の件について、日本共産党西宮市会議員団は反対いたします。
以下、討論を行ないます。

平成23年3月11日に発生した東日本大震災と、それに続く東京電力福島第1原子力発電所の事故は、日本と世界を震撼させ、7ヶ月がたとうとする今も、未曾有の大災害による復旧・復興、そして事故収束にめどが立たない事態が続いています。本市の22年度決算にも、大震災の救援・復興関連の支出が反映されたものになりました。とりわけ原発事故は、ひとたび事故が起これば「時間的にはいつまでも・空間的にどこまでも・社会的にも生きるための生業を破壊し、自治体までも破壊する」という、取り返しのつかない三つの、他の災害には決して見られない、異質の危険があるということを、私たちに突きつけました。また、これからの国の形、社会のあり方が「今のままでいいのか」と、きびしく問いかけていることも、触れないわけにはまいりません。
このような中で、当市議会が先日の本会議で、政府に対する「原発から、自然エネルギーへの転換を求める意見書」を、全会一致で採択したことは大きな意義があると確信するものです。
 一刻も早く、被災された方々が元の生活を取り戻すことに、国を挙げて取り組まなければならないときに、民主党政権の3人目の野田首相は、9月13日の所信表明演説で、復興のためとして、いま立ち上がろうとする被災者にも襲い掛かる「大増税」を進め、いまや98%にも広がった、脱原発の世論とは真逆の、原発推進という立場をあからさまにしました。まさに、容認できない事態です。また、政治とカネをめぐる問題では、民主党の小沢一郎氏の元秘書3人が有罪判決となり、舞台は小沢一郎氏本人を、国会証人喚問へと動き始めています。政権党として、政治とカネをめぐる自浄作用の有無が問われています。政権交代から丸2年。国民に約束した「子ども手当や高校授業料無償化」など、マニフェストはことごとく投げ捨て、マスコミでも「自民党返り」と指摘されるほど、財界とアメリカに忠誠を誓う態度があらわになってきたといわなければなりません。
こんな中で、地方自治体にとってもいわゆる「地域主権一括法」により、西宮市も40以上の条例改正や制定を平成25年4月1日までに行なうことになります。これを好機ととらえ、地方自治体本来の仕事である「福祉増進のまちづくり」を進め、3・11を踏まえた、地域の実情に合わせた「防災に強いまちづくり」の道を歩んでいくことが、西宮市にも強く求められる時代に入ったことを申し上げておきたいと思います。

西宮市の2010年度決算は、一般会計、特別会計をあわせると、歳入総額2303億1600万円、歳出総額2260億2200万円、翌年度に繰り越すべき財源3億1000万円を差し引くと、実質収支額は39億8300万円の黒字となりました。実に32年連続の黒字決算です。
不況の影響は個人市民税の減収にくっきり現れ、前年度に比べると23億4300万円の減、市税収入全体では、少し持ち直した法人市民税の増で14億5300万円の減収となりましたが、総額で818億3200万円を確保。減収分を補填する財源として、普通交付税が104億円、また、後に元利相当分が交付税算入される臨時財政対策債は82億円、あわせると186億5600万円、前年比で59億3600万円の増となったことは、西宮市の22年度決算に大きなプラス要素をもたらしました。結局、当初予定していた財政・減債両基金からの取り崩し49億円を中止し、一般会計では約36億円の決算剰余となりました。22年度末の財政・減債両基金の残高は、138億9300万円に達しています。私は先日の本会議決算質疑でも、西宮市の財政を考える??3で、平成26年度末で財源不足30億円と試算している点で、22年度決算で二つの基金残高が約139億円であることを踏まえ、23年度以降、毎年の決算剰余・約30億円ずつを見込むと、26年度末は財源不足どころか、130億円以上の基金残高になることを明らかにしました。もちろん、民主党政権の一括交付金化等でどうなるのか、予測がつかない部分もありますが、慎重に、ムダな大型公共事業などに取り組まなければ、今後も一定の基金を確保しながら、安定した財政運営が可能な自治体であることを改めて強調し、むやみに「財政危機」を叫ぶことのないように申し上げておきたいと思います。

22年度は、バラマキの最たるものといわれた定額給付金も姿を消し、子ども手当に取って代わった年。また、市民の願いに答え、近隣市に先駆け中学卒業までの子ども医療費無料化を7月から開始、学童保育所の保育時間延長や、待機児解消へ保育所の新増設、浜甲子園他で特別養護老人ホームの新設、戸建住宅への太陽光パネル設置補助の創設、ヒブワクチン接種費用への助成等、市民の運動が反映された年でした。
しかし一方で、市民が主人公という観点からは程遠い行政姿勢があり、次に反対箇所や問題指摘を行ないます。

第1は、国いいなりの行政についてです。
22年度も、国基準の90%の保育料にと、月額平均で504円、1.75%の保育所保育料が引き上げられました。不況の中で働く若い世代に、負担を強いることから認められません。決算審査では、愛知県豊田市が保育所保育料を国基準の49.5%に押さえ、保護者負担の軽減を図っていることなどと比べ、全国の中核市の中で、西宮市の保育料が最も高いことが明らかになりました。子育て世代の支援という観点から、機械的な保育所保育料の引き上げについて、中止することを求めます。また、保育所待機児の受け皿として大きな役割を果たしている家庭保育所や保育ルームの運営に関わる助成額が、認可保育所に比較しあまりにも低すぎることを指摘しました。そのため保護者負担が増大し、保育者の労働環境が劣悪であることから、新年度に向けて改善するという答弁がありました。待機児解消に向けた保育所の新増設の取り組みとともに、保育水準の向上にも必要な対策をしっかり取り組んでいただきたいと思います。
また、国の構造改革路線を追随し、行政経営改革の名の下に、安ければよいと指定管理者制度を拡大し、官製ワーキングプアを増加させてきたことは、抜本的に見直すべきです。いまや市の関係で働く人の3分の1以上が非正規労働者、あるいは業務委託や指定管理で働く方々です。年収が200万円に満たない賃金であり、その改善が求められています。公契約条例に向けた行政としてのプロジェクトチームの検討を早急に取りまとめ、労働環境の改善を図るよう求めます。

第2に、食肉センター特別会計についてです。
 西宮市は23年度から3年間、これまでの(株)キャンホラを、非公募で継続して食肉センターの指定管理者として継続させました。今年の福島原発事故の影響で、セシウムで汚染された稲わらを餌にしていた肉牛192頭が、西宮の食肉センターで解体処理されていました。保健所によってその枝肉の販売流通経路が追跡調査され、全頭分が明らかになりましたが、そのうち西宮市内に流通販売されていたのは、わずか4.5キログラム・0.000075%のみでした。他はすべて他市・県外へと流れていたのです。市は20億円の経済波及効果があるなどと、これまで食肉センターが西宮市に存在する理由を説明してきましたが、市民にはまったく利益をもたらさない施設であることが、今回判明しました。この食肉センター会計に、運営費の不足額として、22年度で1億2700万円の一般財源の投入、23年度は、処理頭数が大幅に減少しているため、使用料収入が激減することから、さらなる一般財源の追加繰り入れが必要となるとの答弁もあったところです。さらに、わが党が、指定管理になった施設に、いつまで市の職員4名を常駐させるのかとの指摘に対し、23年度からは4名の職員引き上げが行なわれました。しかし、23年度の指定管理料には、3名分・1300万円の人件費上乗せまで行なっていたことも明らかになりました。関係事業者のいいなりなっている行政の実態が浮き彫りであり、とうてい認めることはできません。もとより、肉牛などの解体処理は必要なことであります。しかし、今回の流通経路でもはっきりしたように、広範囲に関係することから、西宮市という1自治体だけで食肉センターを設置する合理的な意味、市民の理解が得られません。今後、施設の改善や機器の改修等に、指定管理料以外に多額の一般財源投入が予定されていることからも、施設の広域化ができなければ、完全民営化、あるいは施設の閉鎖も視野に、行政トップの大胆な改革を求めておきたいと思います。

第3は、職員の問題です。
22年度決算では社会状況を反映し、扶助費の大幅な増となり、今後も伸び率が増す状況です。保護世帯・人数が増加しているのも関わらず、厚生課のケースワーカー不足が深刻になっています。生活保護から自立を促進するためにも定数確保が急がれるとともに、若い未経験のケースワーカーも多いことから、ベテランの経験ゆたかな職員の配置もあわせて進めるよう求めておきます。また、「議会基本条例」制定の流れが全国で広まっており、当市議会でも論議が始まろうとしています。議会の活性化などを進めるためには、議会事務局の体制強化も必要になることから、職員の配置増を検討してください。

第4は、国民健康保険特別会計についてです。
22年度は、市民の要望が実り、毎年2億5000万円の一般会計からの繰り入れ実施3年目で、兵庫県で一番高かった保険料を引き下げてきましたが、国保会計は深刻さを増し、赤字決算とならないように、基金から3億5000万円取り崩す結果となりました。23年度は、引き続き一般会計繰入を2億5000万円行なっていますが、基金全額の2億5000万円を取り崩しても、なおきびしい状況だということから、平均3%の保険料引き上げを行ないました。先般の本会議質疑でも明らかになったように、国保会計の23年度決算見通しはさらにきびしく、一般会計繰り入れ追加も必要になるということです。市民局長や総務局長は、そろって「適切に対応する」と答弁されました。赤字を補填する財源が国保会計にはなくなってしまっていることから、それこそ「適切」にちゃんと対応していただきたいと思います。さらに、新年度予算編成にあたっても、これまでの2億5000万円の一般財源の繰り入れにこだわらず、一層「適切な対応」をされるよう要望しておきます。もちろん、国における医療制度の相次ぐ改悪が、各自治体の国保会計を脅かしていることから、私どもも、ただ手をこまねいているわけにはいかず、しっかりと国に向けての運動も行なっていくことを申し添えます。

次に、認定第1号 平成22年度西宮市水道事業会計決算認定と、認定第3号 平成22年度西宮市立中央病院事業会計決算認定についても意見を申し上げておきたいと思います。
水道事業会計では、22年度は水利権確保のために参画していた、川上ダムからの撤退費用が9億1300万円生じたことから、収益的収支で6億1500万円の赤字となっています。しかし、資金ベースでは企業会計ならではの資金繰りで、結局1400万円の減のみにとどまり、内部留保金は昨年とほぼ同額の29億6800万円。今後、阪水からの受水費が増となりますが、長期的には鯨池浄水場を運転し続けるよりも84億円費用が軽減されることや、鯨池浄水場の処分により、28億円の特別利益が発生すること、施設の統廃合による人件費の縮減など、よほどの問題がない限り、長期に順調な経営が見込めるものと思われます。
この間、過去最高となっている内部留保金は、13年前に水道料金を引き上げすぎたことが、その要因にあることは明白です。答弁では、23年度、すなわち今年度の決算状況の「見極めが必要」とした上で、次期財政計画の中で検討する旨の方向が一定示されました。公営企業であることを踏まえ、市民生活を支えるということからも、ぜひ水道料金引下げへ前向きな検討を要求しておきます。


病院事業会計についてですが、今年7月に市立中央病院の移転新築について「中間報告」が、8月には「最終答申」が出されました。これを受け、年内にも市の方針が出されることになっています。わが党は、市立中央病院は地域の医療の拠点として必要な施設であり、単純に赤字が出るからなくすという考え方には立ちません。市民の命と健康を守るためにも、直営で存続させるべきだと考えます。しかし、病院経営には一層の改革が必要であることはいうまでもありません。その点から、今回の報告には注目すべき点も含まれています。市の方針が出ていない段階ですが、次の意見を申し上げておきます。(1)移転先については現地(現駐車場などの活用)も含めて、さらに十分検討すべき (2)小児救急や感染症に対応する拠点としての位置づけは必要。しかし、診療科目については提案されているがんに特化することが妥当かどうか。産科なども含め、市民の声を十分反映させることが必要と考えます (3)黒字経営をめざすことは公営企業としても大事なことです。しかし、職員の身分に関わる事項については、関係団体とも十分協議して、合意を形成することなしにすすめることはやってはならないことです。病院収益を引き上げることなしに、「人件費のみを54.3%にする」という、現給与水準を単純に54.3%にすれば赤字解消だとする、呪縛にとらわれる危険性を指摘しておきたいと思います。全体として、市として結論を急ぐあまり、取り返しのつかないことは絶対避けなければならないことを強調しておきます。

最後に、市長はじめ職員のみなさんは、いま、24年度予算編成に向けての作業をされていることと思いますが、この決算審査での意見や要望を真摯に受け止めていただき、適確に予算に反映していただくことを求めまして、日本共産党西宮市会議員団の討論とします。