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佐藤みち子の一般質問
2012年09月05日

地域主権改革一括法について
−保育所の人員・設置基準の条例化−


今議会には、地域主権改革一括法関係で特別養護老人ホーム等19条例が提案されています。保育所は12月議会に条例提案するとのことです。 
保育所の設備及び運営に関する基準として、保育室の面積基準、保育士の配置については国の示す基準に「従うべき基準」とされています。「従うべき基準」とは、必ず適合させなければならない基準で、基準に従う範囲内で地域の実情に応じた内容を定めることは許容されるものの、異なる内容を定めることは許されないものとされています。
屋外遊戯場、衛生管理、入所者・職員の健康診断等は、「参酌すべき基準」とされました。地域の実情に応じて、異なる内容を定めることが許容されるものが「参酌すべき基準」です。
さて、保育所の最低基準は、乳児室1.65m2、ほふく室3.3m2、2歳児以上1.98m2で、この最低基準は、1948年(昭和23年)戦後まもなく制定されています。当時は戦後の混乱が続いていた時代で、庶民の生活も6畳1間に一家で生活をし、当然寝るところも食事も一家団欒もすべて同じ部屋でという大変貧しい実態でした。その国民の生活を元に最低基準を決めましたが、児童福祉法には「厚生労働大臣は最低基準を向上させるように努めるものとする」と書いてあります。時代がすすむにつれて、国民の住環境は徐々に改善されてきましたが、保育室の面積基準は、制定されて一度も改善されていません。 
現在の0歳児1人当たりの保育室の面積基準の国際比較では、日本が1.65m2、ドイツ3.5m2、フランス5.5m2、スウェーデン7.5m2で日本の最低基準が国際的に見ても最低となっています。
2009年、厚生労働省が最低基準のあり方について全国社会福祉協議会に委託調査をしています。調査結果報告で食事と午睡のスペースで2歳未満児4.11m2以上、2歳児以上2.43m2以上が最低限度必要でありこれに遊びの面積を確保すべきと報告されました。
また、保育活動の機能面から職員配置基準とグループ規模についても諸外国と比較すると日本は職員の配置基準は低く、グループ規模も大きくなっています。諸外国では、3歳未満児では最大で6名、3歳以上でも最大13名、大きくて15名の集団保育です。3歳児で20名、4,5歳児で30名もの集団で保育をしているのは日本だけです。一人ひとりに応じたきめ細かな保育を保障するために、グループの小規模化が必要であり職員の配置基準を改善していくことが必要だと調査報告で結論づけています。しかし、依頼した厚労省はこの調査を棚上げし改善しようとしていません。
すでに保育所条例を制定した京都市は、保育内容を充実させるために1歳児5対1、3歳児15対1、4歳児20対1、5歳児25対1とするなど、国基準を上回る保育士の配置基準にしています。栃木県佐野市は、1歳児4対1、3歳児18対1、4歳児以上28対1とし国基準を上回って保育士を配置しています。佐賀県では、乳幼児の安心・安全の拡充のため、乳児を入所させる保育所は、保健師又は看護師を配置するよう努めるとしています。東京都は、満2歳以上の幼児のみを入所させる保育所も医務室を設置することとしています。
市でも1,2歳児、3,4,5歳児は国基準を上回る保育士を配置していますが、1,2歳児は公立と民間保育所で配置基準が違います。民間保育所からは、1,2歳児も公立と同じにしてほしいと長年にわたり要望されていますが、公立、民間と格差をつける必要はまったくありません。
地域主権改革は、「国と地方の役割分担」といっていますが、憲法25条は、国民の生存権を具体的に保障することは「国の責務」だと定めています。これまでは、福祉や教育などの公共サービスは、国がナショナルミニマム、最低基準を決め、いっそう充実させるための「上乗せ」を地方自治体がはかり、国と地方自治体で国民生活を保障してきました。国が責任を放棄してしまったことで、今後、地方自治体が子どもたちが心身ともに健やかに成長発達できる環境づくりの責任を担うことになりました。


質問
@西宮市の保育士配置基準は国基準に上乗せして、1、2歳児が公立のみ5対1、3、4,5歳児は公立、民間ともに20対1です。条例化にあたっては、現行基準で条例化し、特に1,2歳児については公立、民間の格差をなくすべきではないですか。
A居室面積については最低基準を守っていますが、厚生労働省の委託調査でも諸外国に比べて狭いことが指摘されています。子どもの生活環境を向上させるために引き上げるべきではないですか。
B条例化にあたって「参酌すべき基準」地域の内容について異なる基準を定めても許容されている園庭の面積や衛生管理については少なくとも今の基準を守るべきではないですか。