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野口あけみの一般質問
2012年12月10日

生活保護行政について


人気お笑いタレントの母親が生活保護を受給していることを女性週刊誌が報じ、それを契機に、生活保護に対する異常ともいえるバッシングがわき起こりました。そもそも民法上の扶養義務とはどのようなものか、なぜ、扶養義務者による扶養が保護の前提条件になっていないのかなどの正確な理解を欠いたまま、息子としての道義的な問題を、「不正受給」かのように感情的な追及がなされたわけですが、あたかも生活保護利用者に不正がまん延しており、制度そのものに問題があるかのような空気がつくられました。
国は、この生活保護バッシングも大きな追い風にして、生活保護費の削減や扶養義務の強化など「生活保護制度」改悪を進めようとしています。
「まじめに働いている方が生活保護よりも苦しい生活を強いられている」「年金保険料を払ってきたのに、年金より生活保護費の方が高いのはおかしい」こんな国民の思いもバッシングには含まれていると思われますが、おかしいのは、まじめに働いたり、保険料を納めても生活保護費以下の賃金や年金しか得られない労働法制や年金制度の方ではないでしょうか。しかも、日本では収入が最低生活費を下回っている世帯のうち、現に生活保護を利用している世帯の割合(捕捉率)は2割程度に過ぎません。目下の状況を生活保護制度のせいにして解決しようとすることは、賃金の低さや雇用の不安定、年金の少なさなど雇用や社会保障制度の不備に目をつぶることになり、いっそう貧困を広げることになります。
生活保護制度は言うまでもなく自力で生活できない人々を、国として助ける公的扶助制度で、憲法25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という「生存権保障」に基づくものです。つまり、生活保護費の基準は、国が定めた最低生活費の基準なのです。それゆえ、生活保護制度は貧困層を直接救う制度としての役割だけではなく、その保護費基準は最低賃金や、課税基準など暮らしにかかわる制度の物差しとしても使われています。市では就学奨励金―小中学校の生徒の保護者に、給食費や学用品などの学校教育に必要な経費の一部を援助する制度ですが、就学奨励金の適用基準に生活保護基準を準用しており、また、国民健康保険加入者が生活困窮で医療機関への支払いが困難な時、自己負担額(一部負担金)を減免する制度でも保護基準が判断指標となっています。
厚生労働省は「生活支援戦略」という名の生活保護見直しの中で、生活保護基準の検証・見直しを今年末にも行うとし、自民党は生活保護基準の10%引き下げを選挙公約としていますが、生活保護基準の引き下げは、各種制度の利用対象者を狭め、課税世帯を増やし、賃金も引き下げることになり、国民生活全体の水準を引き下げることにつながります。その結果として消費は抑制され、新たな不況の糸口ともなりかねません。今、デフレ不況からの脱出が大きな社会問題、選挙の争点ともなっていますが、生活保護費の引き下げは、不況をますます深刻化させるだけです。

質問1、話題になった扶養義務の考え方についてお聞きします。民法でいう扶養義務と生活保護の適用関係について、わかりやすく説明してください。また、扶養義務者に扶養できないことの証明義務を課すなどという話が出ていますが、これが行われた場合、直接事務をする市の現場ではどういうことが想定されるでしょうか。

質問2、「不正受給が増えている」「働けるのに働かないで保護費を受け取っている人が増えている」などという話も巷でいわれていますが、保護受給者の世帯構成など西宮市における現状はどのようなものですか。