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野口あけみの代表質問
2013年03月01日

2013年度西宮市行政方針並びに教育委員会行政方針について


 ただいまより、日本共産党西宮市会議員団を代表して、私、野口あけみが2013年度西宮市行政方針並びに教育委員会行政方針に対する代表質問を行います。
 傍聴の皆さん、ご苦労様です。
 昨年末の総選挙で、自民党と公明党が、3分の2を超える議席を獲得し、3年半ぶりに自公連立政権が復活しました。戦後60年続いた自民党型政治を、政権交代しても変えることができなかった民主党に対する厳しい審判の表れです。また、自公政権の復活も小選挙区制というマジックによるもので、得票は大きく減らしており、国民は現政権の政策を全面的に支持しているものではありません。「賃金引き上げでデフレ不況克服」「原発ゼロ」「憲法遵守」「TPP反対」「基地のない沖縄」などの声は国民の中でひきつづき多数であり、この声に背く政治は早晩破たんすることは明瞭です。
 分権が叫ばれつつも、地方政治はこのような国の動向に大きな影響を受けます。しかし、市政はつねに市民のくらしの実態をしっかりつかみ、福祉の増進を第一に進めることを求めたいと思います。
 さて、西宮市2013年度予算案は、一般・特別会計あわせて2839億4900万円、うち、一般会計は前年比0.8%増の1609億4100万円で、ほぼ前年並みの予算規模です。
 歳入では、全国的には景気低迷で個人所得が減少傾向にあるなか、西宮市では、働き盛りの中堅所得者層の転入で、個人市民税が前年当初比で2・8%、11億円の増。法人市民税も5%減税を加味しても前年当初比5・8%増。固定資産税増等も含めて、市税全体で、821億5200万円(前年比2・2%18億200万円増)を確保しています。この市税増と、公債費の減少などで、地方交付税と臨時財政対策債は減額されるものの、財源調整のための基金取り崩しは前年度より9億3200万少ない30億6000万円を当て、一般財源全体では、1074億円を確保しています。
 市債残高は順調に減少し、一方で基金残高は、今年度の当初に予定していた約40億円の取り崩しを取りやめた結果、現在180億円が見込まれ、これにこれから整理される決算剰余を加味すれば200億にも届くかという規模になっており、安定した財政状況といえます。
 歳入の土地売り払い収入のうち15億2156万円が両度町にある芸術文化センター駐車場の土地売り払い収入です。これは高木小学校区での新設小学校建設用地取得と引き換えに、代替地として、三井住友銀行に売却するものです。学校新設自体には反対するものではありませんが、この土地取得と市有地売却を巡っては、一私企業を利する要素が多分にあり、また、事態のあまりの急展開にも、釈然としない思いを持っているということを申し上げておきます。

 歳出では、2012年度で、東部総合処理センターの整備、市役所前線街路事業の完了と、夙川小学校増改築がほぼ終了。学校園の耐震化も新年度でようやく完了。従来の耐震化工事で対応できない、南甲子園小、上甲子園小もそれぞれ着手され、めどがつきました。
 2013年度の新たな投資的事業では、待ちに待った中学校普通教室へのエアコン整備が13年、14年度で予定されています。13年度には、一部小学校への設計もおこなわれます。他に、高木小学校区での小学校新設、山手幹線熊野工区、競馬場線の整備などで、投資的経費全体では、前年比21億7100万円の減、15・7%の減となっています。ただ、投資的事業は、国の2012年度の予備費および1号補正予算に対応して、22億円の規模で12年度市予算に補正増し、繰り越して新年度に執行することになっており、これらを加味すればほぼ同水準であるともいえます。
 一方、障害援護費で前年比15・1%増、生活保護費で同5・9%、児童保育費が17・0%増など、民生費の伸びが顕著で、これは現在の社会状況から当然のことであり、今後も増え続けるでしょう。また、民間保育所の1,2歳児クラスの職員配置を、子ども6人に対し保育士1人の6:1から公立と同じ5:1に引き上げる措置や、国民健康保険料軽減に引き続き10億円の繰り入れ、住宅リフォーム助成制度のモデル事業継続、後期高齢者人間ドック助成制度創設や、ハリ・きゅう・マッサージ等の福祉医療費受領委任払い実施のためのシステム改修、小松第2、瓦林第2児童育成センターの整備などなどは、市民の運動にこたえたものであり、評価するものです。
 その他、新年度予算の特徴といえるのが、学校給食費の公金化と「文教住宅都市宣言50周年」「平和非核都市宣言30周年」「環境学習都市宣言10周年」が重なる年の記念行事とともに、新年度予算では予算額が小さいものの今後、多額の費用を要し、まちの姿を変える大型公共事業が目白押しだということです。
 アサヒビール跡地での公共施設整備計画で総事業費223億円、教育委員会庁舎の建て替えと合わせた(仮称)総合防災センター整備(55億円)、さらに、今後の検討結果次第で大きなものになるJR西宮駅北旧国鉄用地と旧食肉センター跡地、芦原小学校跡地の有効活用などです。アサヒビール跡地活用については、行政方針でも2013年度中には、公共施設の配置計画も含め、その道筋を明らかにしていくとしており、中央病院の移転新築予定は2016年度というスケジュールから逆算するならば、新年度中には土地取得にむけ、何らかの動きがあることも十分想定されます。
 問題点を指摘したいのはUR借り上げ住宅追い出し問題です。震災被災者の入居するUR借り上げ住宅で借り上げ期間20年が満了するからと、ほとんどが高齢の入居者に退去住み替えを求める非人道的な仕打ちに、当事者たちがやまれず怒りの声をあげ、市への要請行動を繰り返しておられます。宝塚市に続き伊丹市では継続入居を決定、兵庫県や神戸市は、高齢者・障害者などに何らかの対応を検討中というさなか、先ごろ西宮市は、方針を示しました。新聞では、「継続入居認める」などという見出しが出ていましたが、実際は、「全員退去・住み替え」の方針は変えず、一部要配慮者に5年間の猶予を与えるのみという、およそ入居者の願いにほど遠い、冷たいものです。こういうところにこそ、知恵を絞り財源を回すべきです。この問題は一般質問で杉山議員が取り上げます。
 総じて、国や地方自治体をめぐる情勢をみれば、先行きを見通すことはなかなか困難ですが、西宮においては中期的には比較的安定した財政状況であり、だからこそ、投資的事業に偏重するのでなく、具体的な市民の暮らしや福祉、教育への支援策を充実させることを求めたいと思います。
 これらを前提に、まず財政状況についてお聞きします。

1、財政状況について
(1)市税収入の安定や、市債残高の減少、基金の積み上げなど、市財政は比較的安定しているといえます。現に、行政方針には「財政危機」や「厳しい財政状況」という表現は一切ありません。市財政局は今回、「西宮の財政を考える」という冊子を作成していませんが、今後の中期的な財政見通しはどうか。
(2)経常収支比率についてです。
市長は3年前の市長選で、経常収支比率を80%に早期に改善するという公約を掲げ、今年度までの行政方針には経常収支比率の早期改善を述べておられました。新年度行政方針では、経常収支比率には直接言及せず、財政の各種指標の改善という表現をされました。
経常収支比率とは、性質別歳出のうち、人件費、公債費、扶助費など支出が毎年続く経常的経費が自治体の財源に占める割合のことを言い、政府や行政は、経常収支比率が高いと「財政の硬直化」「弾力性がない」と財政が健全でないように言います。
しかし、自治体が福祉や教育に力を入れれば、これはマンパワーが大きな要素を占めるサービスであり人件費も増え、扶助費、これは生活保護費だけでない医療助成や各種福祉給付・サービスなどの幅広い経費なども増えるので、経常収支比率が高くなるのは当然です。一方で、適切な人件費にし、過大な借金を避けて公債費(借金返し)を低く抑えることで経常収支比率を下げる努力も必要です。
また、経常的でない経費、臨時的な経費を増やし、いわゆる普通建設事業、公共事業に予算の多くを充てれば、経常収支比率は低くなります。政府や行政の言う「弾力化」「健全」な姿は、こういう意味も持っています。
しかし、地方政治や財政のあり方が変化するもとで、経常収支比率そのものの「財政指標」としての評価も変化してきています。その点をまずお答えください。
私は、経常収支比率はあくまで一つの指標にすぎないと思います。これにとらわれすぎ数字だけを追うようなことはしないこと、自治体は、本来の仕事である住民の福祉の増進をはかるべきと考えますが、いかがでしょうか。
   

2、文教住宅都市西宮にふさわしいまちづくりについて
 それぞれ50年30年10年と記念の節目をむかえる「文教住宅都市宣言」「平和非核都市宣言」「環境学習都市宣言」はいづれも大切な宣言ですが、とりわけ、まちの性格を決定づけ、めざす目標を示し、骨格をなすものが「文教住宅都市宣言」です。西宮市の礎という表現を市長はされておられます。
 行政方針では、50年の節目に周年事業をおこなうにあたり、これまでの歩みを振り返り、宣言の意義をさらに高め、発展させる、さらに文教住宅都市として将来の望ましい姿を考える、としています。これは重要なことだと思います。あわせて、今の西宮市が「文教住宅都市」と呼ぶにふさわしいものであるか、そう自己評価できるというのであれば、西宮を「文教住宅都市」たらしめているものは何か、これをしっかりとつかみ、守るべきだと考えます。
 私は、西宮市を文教住宅都市たらしめている要素はいろいろあるでしょうが、まず「住環境」にあり、「教育」にあると考えます。「住環境」と一口にいっても、それこそ市内各地それぞれです。環境がいいとは言い難いところもありつつ、全体として西宮の住環境、自然環境が守られることを、多くの市民が望んでいます。1月にまとめられた市民意識調査でもそのことは現れ、西宮を自然と調和しているまちと評価し、まちなみとの調和を考えた開発や建築が重要とされている方が半数を超えています。
 そこに、一頃より落ち着いてきたとはいえ、まだ、地域によっては新たな、規模の大きな住宅開発が続いていることは、市民にとってうれしい材料ではなく、不安、心配材料です。学校の教室不足や保育所不足に加え、人口増に伴って大型店の出店も相次ぎ、車も増えています。
 日本共産党西宮市会議員団は、これまでも言い続けてきましたが、文教住宅都市宣言を大切にするというのであれば、これ以上の住宅開発には、市が歯止めをかけるべきと考えます。

具体的な、質問
(1)市教育委員会は2010年度に、市内の「開発可能性」について校区ごとに調査を行っていますが、調査内容とその結果から見えてくるものをお聞かせください。高木小学校区と、深津小学校区の今後の状況と対策はどのように考えているか。
(2)「教育環境保全のための住宅開発抑制に関する指導要綱」は、住宅開発を行おうとする事業者と市が、住宅開発の計画段階で協議し、住宅開発による幼児児童及び生徒の急増により学校施設が不足する恐れのある地区の住宅開発を一定期間抑制することを目的に定められています。新たに監視地区を設けたり、地区指定を見直したりしていますが、先に述べたように、一向に事態は改善していません。要綱自体の見直しが必要ではないでしょうか。要綱の見直しに時間がかかるというのであれば、少なくとも、地区指定の変更は時期を逸せず適切におこなうべきではないか。
(3)3点目は、教育です。私は、教育の分野では学校教育と合わせて、公民館を中心とした社会教育の推進が「文教住宅都市」を形作ってきたと考えます。新年度、公共施設マネジメントのなかで、公民館および市民館など地域集会施設について、効率的な利活用や適正な配置に向け、改善方法や将来の施設のあり方について、つまり統廃合について、市民や学識経験者などによる検討に着手するとしています。これから検討ということで何らかの結論を持って臨むのではないと信じたいところですが、公民館を市民館とともに地域集会施設と言い切っていることに懸念をもちます。社会教育において公民館がこれまで果たしてきた役割、今後果たすべき役割と、市民館との位置づけの違いについてお聞きします。


3、第4次総合計画中間見直しについて
 現在、第4次総合計画(以下、4次総という)の中間見直し作業の最中です。
 「4次総」は、2009年度から10年間の、中核市としていっそう「文教住宅都市」らしいまちづくりを目指すための指針として策定されました。10年という長期計画であるため、中間年度に当たる2013年度に、基本構想は維持しつつ、具体的な諸施策にあたる基本計画の見直しを行い、見直し修正した基本計画については今回から議決対象ともなっています。
 2011年、地域主権改革に伴い、地方自治体の総合計画作成の法的義務付けはなくなり、各自治体が総合計画の必要性、意義、内容を自律的に判断できることとなりましたが、現実は、従来どおりの計画を作成する流れが強いようです。
 さて、市の基本計画見直しに当たっては、将来人口の推計と実績にかい離があるため人口フレームの見直しと、参考資料としての位置づけではあるがとの限定つきで、財政フレームの見直しを行い、これも参考資料である事業計画を中心に見直し作業が進行中です。
議決が必要とのこともあって、今日まで適宜、総務常任委員会に報告や資料提供が行われているところですが、せんだって12月17日の委員会では計画後期、2014年度から2018年度までの事業計画の概要案が示され、2月1日の委員会で、さらに詳細な説明が加えられました。
 当局は、4次総は庁内外で議論検討し、基本計画各論との整合を図ったものであるので、後期計画策定にあたっても、当初計画の内容を基本的に踏襲するとしていますが、実際は事業計画の大幅な見直し、修正がされている、せざるを得ない状況となっています。
 1つに、参考資料としての位置づけである財政枠組み、すなわち10年間の計画期間中、投資的事業に充てることのできる一般財源を、前期については実績値をあてはめ、後期は景気低迷に合わせ修正し、当初見込みの約915億円から、見直し後は約550億〜560億円へと大幅下方修正したこと。
 2つに、新たな行政課題に対応する必要があるということで、4次総にはなかった次の課題が加わる、あるいは加えたいとしています。(1)中央病院の移転・建て替え、(2)アサヒビール閉鎖に伴う跡地活用とまちづくり、(3)東日本大震災を契機とした防災・減災対策 (4)同じく新エネルギー・省エネルギーの促進 (5)公共施設マネジメント推進 (6)児童数増対策として教育・保育施設の充実 (7)企業流出を防ぐ産業施策や観光施策です。
 3つに、財政フレームを縮小し、新たな課題が加われば当然次期計画へ先送り、あるいは見送る事業も出てきます。新陸上競技場や新体育館の建設、文学館や他世代ふれあいセンター、保健所、ふれあいの森整備等々です。
 このように、10年間の事業計画の中身はずいぶんと入れ替わり、投資的事業に充てる一般財源を911億6400万円から501億7900万円へと45%縮小しているにもかかわらず、取り組みずみ、あるいは今後取り組みたいとする事業費の総額では、あまり大きく変わっていません。事業費ベースでは、公営企業会計では60億から78億へ3割増し、普通会計では、1773億から1572億へ、1割ほどの減にとどまっています。これは、事業の財源内訳が、一般財源から国県支出金と地方債(借金)に振り替わっているからです。結果、地方債は、企業会計普通会計合わせて、909億円から見直し後1120億円に23%増えています。普通会計だけを見ても地方債は585億円から719億円に、これも23%増えています。  
 行政方針でも指摘のある通り、今後の日本は人口減少に向かい、同時に急速な高齢化を迎えます。西宮においては、震災以降の人口増加は、今後10年間は続くものと推計されていますが、その先の「人口減少・高齢化」はほぼ避けられないと思います。
 過度な公共投資は無駄になり、負担になります。一方で今後10年間続く人口増に伴う児童対策とともに、高齢化に対応するマンパワーとコスト投入が必要です。ところが、財政フレーム見直しでは、扶助費について制度改正等の影響は見込まず、自然増として3%の伸びを見込んでいるのみです。私は、特に扶助費等については、これも行政方針にあるとおり国が社会保障制度改悪によって給付抑制をおこなうのであればなおのこと、市の独自施策によって市民のくらしを守るため増額が必要になると考えます。これは財政問題でも述べたとおりです。

質問です。
(1)5年10年先を見通せば、扶助費の伸びを3%見込むのみでは、財源確保は不十分だと考えます。一方、4次総後期の事業計画で予定している投資的事業は過大であり、もっと精査し、絞りこむべきではないか。

(2)事業計画の内容や財政フレームが大幅な見直しになっていることは先に述べた通りです。これでは膨大なマンパワーと時間をかけて計画を立てる意味があるのか、検討しなければならないのではないでしょうか。
 4次総見直しはすでに動き出していますからやめよとは言いません。しかし次期計画を作成するのであれば2〜3年後には着手することになります。そもそも総合計画をつくるかどうか、10年という計画期間でいいのか、手法など見直しが必要ではないか。中間見直しをおこなっている現時点で、教訓とすべき点があれば聞かせてください。


4、(仮称)総合防災センター整備と教育委員会庁舎建て替えについて
 2012年度行政方針で初めて言及された市役所周辺での防災センター整備は、同年度に300万円の予算で調査を行い、新年度行政方針(P14)では、その候補地として老朽化と耐震性能により建て替えが必要な教育委員会庁舎の敷地があげられています。
 新年度予算では、前年度調査を踏まえ、防災センター整備に向けた基本構想策定の予算、1048万円が、また、教育委員会庁舎建て替えについては、庁舎維持管理事業経費の中で基礎調査の委託料が計上されています。これらは4次総見直しのなかで後期事業に位置づけられ、費用は約55億円、2018年度までに取り組むとされています。

いくつか具体的に質問します。
(1)今年度に行った防災センターについての調査結果について端的にお答えください。
(2)教育委員会庁舎の建て替えが、具体的な日程に上ったことは初めてではないかと思うのですが、老朽化し、耐震性、またエレベーターがないなどバリアフリーの点でも問題があるため、建て替えを検討することは妥当であると考えます。その際には、本庁舎以外に、東館、江上庁舎、総合教育センターと、4か所に分散されていることの解消なども検討材料ではないかと思います。
行政方針および4次総事業計画見直しでの記述からは、現教育委員会庁舎敷地内での防災センターと教育委員会庁舎の合築という方向が見えてくるが、今後の検討の方向性はどのようなものか。
(3)4次総の計画期間内で事業化するとしていますが、検討結果によっては全く別の選択肢もありうるのではないか、そうであれば実施時期は4次総期間内とはいきません。仮に、合築の選択をしても、先の質問で述べたように4次総での事業を絞り減らすとすれば、この事業ではないかと考えます。見解を求めます。 


5、生活保護基準引き下げと就学奨励金制度について
 生活保護の問題は12月議会でも取り上げたところですが、いよいよ具体的に改悪の攻撃にさらされることになりました。
安倍内閣は、生活保護費のうち食費や光熱費など日常の暮らしに欠かせない生活扶助費の基準を、今年8月から3年かけて引き下げ、670億円(6・5%)減額、期末一時扶助も13年度に70億円削減、合わせて740億、7・3%の大幅な引き下げ計画を画策しています。
 現行生活保護制度は、1950年に始まりました。扶助費基準の引き下げは、2003年度と04年度の2回行われましたが、引き下げ率は、それぞれ0・9%と0・2%で、今回の6・5%という削減幅は過去に例を見ない大幅なものです。最大で10%減額される世帯や、月2万円もカットされる夫婦子ども2人世帯も生まれるなどし、全体で96%の世帯が減額されます。
 今回の大幅引き下げの9割は、政府が突然持ち出してきた「物価下落分を下げる」という理屈によるものです。物価下落といいますが、要因はパソコンやビデオ、テレビなどの下落にあり、一方水光熱費、食料、交通通信など生活必需品は下がっていません。さらに08年度と11年度の比較で物価下落分4・78%引き下げとしていますが、08年度は原油高などで物価指数は飛びぬけて高く、しかも、その年、物価が上がった分に対応して生活保護基準はあげていない、これでは何重にも道理がありません。
 また残り1割の削減は、低所得世帯の消費水準と比較しての削減となっています。1984年以来生活保護基準は「一般国民の消費水準と比べて調整する」ことになっていましたが、2004年以降、一般世帯でなく低所得世帯と比べる考え方が持ち込まれました。日本では生活保護基準を下回る所得しかない世帯で生活保護を受けているのは15%程度。フランス91%、ドイツ65%などと比べても極端に低い状態です。この状態を放置したまま低所得者層との比較で基準を引き下げればどんどん下がっていくことになります。
 現行の生活保護基準はここまで下げないといけないほど、ぜいたくすぎるのでしょうか。つい先日、昨年秋行われた、尼崎医療生協病院の職員による生活保護利用者の生活実態調査の結果について報道されていました。一連の生活保護バッシングに対し、「保護利用者と接する機会の多い自分たちが、報道は実態と違うと声を上げなくていいのか」との思いから、ソーシャルワーカーなど86人の職員が3人1組で、病院受診者の生活保護利用者876人から無作為に選んだ28人を訪問、聞き取ったものです。少し紹介します。
 56%が「疾病」をきっかけに保護申請。そのほとんどが、「疾病による医療費負担で生活が圧迫された」「疾病により失業」したということです。家計では89%が「支出を切り詰め、」食事は1日1〜2回の人が43%。被服・履物をここ数年買っていない人が72%。交際費ゼロが81%、交通費は全国平均5020円に対し、1709円。外出は、買い物や受診など近所の生活圏だけ。教養・娯楽費なしも68%。相談相手がいないと答える人も36%で、社会から孤立して生活している実態も浮き彫りになっています。40代の母親と3人の子どもの家庭では、母親は食べない日もあるほど切り詰めた生活で、「保護への偏見の目を恐れて苦しんでいる」と涙ながらに訴え、60代男性は、脳梗塞で足が不自由だが、風呂もないアパートの2階に1人住まいで、親族や近所との交流もなく「誰とも話さない」生活を送っている。 調査に参加した多くの職員が、「利用者がこんなに厳しい生活をしているとは思わなかった」「保護費を上げられないのか」と実感し、「保護基準を下げてはいけない、ぎりぎりのラインで生きている人への社会保障制度の拡充こそ必要」とまとめています。
 このような貧困世帯にさらなる貧困を強いる削減計画は、「健康で文化的な最低限度の生活をすべての国民に保障する」とした憲法25条に反しており、撤回すべきです。
 影響は保護利用者だけにとどまりません。保護基準は収入が少ない低所得者の暮らしを支える国や地方自治体の様々な制度の適用対象の目安となっています。小中学生への給食費や学用品代等を支給する就学援助や個人市民税の非課税限度額算定、最低賃金、保育料や医療・介護の保険料の減免基準など少なくとも40近くに及んでいます。
 世論の怒りが広がるなか、安倍政権は生活保護基準引き下げができるだけ他制度に影響しないようにすると言い始め、「対処方針」をまとめました。住民税非課税の基準については2014年度以降の税制改正で対応すると結論を先延ばししました。最低賃金は生活保護基準を下回らないことが法律で明記されていますが、影響させないための対処方針はまだ示されていません。
 就学援助については、下村文科大臣が1月29日の記者会見で、「支給水準が引き下がることのないような仕組みを考えていきたい」と表明し、市町村に要請されているときいています。しかし、2005年国は就学援助への国庫負担をやめ、対象者の範囲や援助内容も自治体任せにしています。支給水準を引き下げないためにも、まずは、国庫負担を元に戻すことが必要だと考えますが、ともあれ、生活保護基準引き下げで、就学奨励金を受けられなくなる世帯が出ないよう市は対応すべきです。
質問です。
 就学奨励金の市の支給対象、支給内容、利用状況と、仮に生活保護基準が引き下げられた場合の「就学奨励金の支給水準への影響回避」をどう検討しているか。

 以上で壇上からの質問は終わり、ご答弁によりまして自席にて再質問、意見要望を申し上げます。
 ご清聴ありがとうございました。