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上田さち子の一般質問
2013年03月07日

増え続ける「保育ルーム」の抜本改善について


 保育所待機児童解消という大きな課題が横たわる本市ですが、全庁上げて保育所整備に取り組んでおられることを評価するものです。今回はその中でも、生後57日目から3歳未満の待機児が多いということから、急速に整備が進む「保育ルーム」に関して質問します。なお私の質問は、長年にわたり産休明け保育を担っている「家庭保育所」についても包含されていることを申し上げておきます。
 西宮市の家庭的保育事業(保育ルーム)の運営・助成要綱にはこのように記されています。「『保育ルーム』とは、児童の保育に熱意のある人が、自宅等を開放し、保育に欠ける児童を家庭的な雰囲気の中で保育することを目的とする施設で、市が認定したもの」とし、「保育者は、この施設に従事する者をいう」とあります。保育する児童の人数は1保育ルームにつき5人以下で、市から斡旋された子ども以外の保育はできず、その上、市の仕様書(例えば、土日祝以外の朝7時30分から夕方6時までの10時間半を保育することだとか、保育にあたるスタッフは子どもが一人でも最低2名は配置することなどなど)通りの保育をしなければなりません。また、保育ルームは、入所児童の人数によって金額が異なる市からの運営助成金のみで運営されています。
 具体的にご紹介したいと思います。
 5人の子どもが入所している保育ルームは、基本助成費として月額248800円、保育補助者助成費が178500円、合計427300円の収入です。この他に光熱水費・5300円、保育者らの健康診断や検便検査費用などの保健対策費の実費、民間施設借り上げの場合の家賃相当額、児童賠償責任保険加入費用の実費などの収入があります。
 支出は、保育補助者(1保育ルームあたり平均5名)に800円前後の時間給を払ったり、通勤費を出したりすると、補助者助成費の178500円では当然不足し、基本助成費248800円から補填。さらに5300円の光熱水費の不足分や子どもたちのおもちゃなど保育教材費、施設雑費等も、基本助成費からまかなうことになるので、結局施設の代表である保育者の受け取る報酬は10万円にも満たないことになってしまうということです。もちろん、先に述べた支出のなかには、雇用保険や労災は未加入のため、掛け金は含まれていない保育ルームがほとんどです。
 昨日、私は阪神西宮駅北側の和上町マルシェビル2階にある「すくすく保育ルーム」「ほがらか保育ルーム」という、2施設をグループで運営する保育ルームを訪ねました。代表の方は朝7時30分から夕方6時まで10時間30分は必ず保育ルームに常駐しており、休憩はありませんとのこと。散歩のときは、安全は保てないので子ども二人に1人の保育補助者を配置しなければならない。現在、補助者は10人で、時間給は通勤費込みで1000円支給している。保育教材も安いコーナンまで買いに行くがこれらの費用を支出すると私の受け取る分はほんのわずかですと語っておられました。
 もともとこの方は自宅を開放し、平成14年から保育ルームを開設してこられたベテランの保育者です。3年ほど前に西宮市の担当者から、和上町のビルを借り上げるので、2施設つまり10名を保育する保育ルームを開設してもらえないかと話があったと、経過もお聞きしました。
 お話を聞いている間も、可愛い子どもたちが保育士さんたちと楽しく過ごしていました。
 あらためて、保育ルームとは、多くの方々の善意の上にかろうじて成り立っている制度だということと、西宮市が待機児童解消のために、必死で保育ルーム開設に動いていることなど実感したところです。
 昨年12月27日、その時点で26ある「保育ルーム」うち16の「保育ルーム」運営者の方々が、市に対し「保育ルームの運営・助成要綱に関する要望書」を提出されました。その冒頭に「保育ルーム制度の中で生活する家族やそこで働く者に対し、多くの無理を強いている」「保育現場における工夫や努力、苦労の積み重ねにより、何とか運営継続しているが、中長期気的な運営継続、また、短期的にも健全な運営は非常に困難な状況であり、早期の改善を要望いたします」と切実な声が記述されています。
 さて、新年度には新たに24箇所の「保育ルーム」が増え、合計で50箇所・250人の低年齢児保育を担う一層重要性を増した事業となります。市長の25年度行政方針では、認可保育所の新増設のほか「幼稚園の余裕教室や賃貸物件、市有物件などを活用した保育ルーム24か所などの取り組みで、415名の定員増を行い、平成25年4月には待機児童の解消をはかります」とされました。つまり、保育ルームに入所する児童は待機児童ではなく、他の認可保育所と同様に定員としてカウントしているとあらためて明確にされました。
 しかし、認可保育所に働く保育士とは違い「保育ルーム」の施設従事者とされ、保育を担う方々の労働環境は劣悪のままになっていること。保護者にとっては保育料が認可保育所より若干低いことを理由に、給食はなし、保育時間も短いために困り果てておられること。さらに、待機児童ではないにもかかわらず、3歳児になり「保育ルーム」を卒園や転所する際は、新たに待機児童としての扱いをされ、いちから入所申し込みをしなければならないという大矛盾まで放置されたままです。

 市の待機児童解消の背景に、こんなにも善意ある施設従事者に胡坐をかき続け、保護者を不安にさせている行政の実態があると言わなければなりません。
 私は今回、なぜこうなるのか、「保育ルーム」の位置づけは市にとって何なのかなどを明確にし、運営の抜本改善を求めて質問します。

(質問)
(1)新設されるものを含め、50カ所にもなる「保育ルーム」のうち、自宅を開放しているのは何箇所か、それ以外はどうなっていますか。

(2)市が認定した「保育ルーム」との契約はどうなっていますか。家庭的保育事業「保育ルーム」の事業主体は市なのか、保育にあたる施設従事者なのかお答えください。

(3)運営・助成要綱のなかで、運営基本助成費(5人の子どもの場合1ヶ月24万8800円)や保育補助者助成費の積算根拠は一体何か明確にお答えください。特に保育にあたる方々を労働者として位置付けているのかどうかも合わせてお答えください。

(4)「保育ルーム」入所児は、市として待機児のカウントに入れておらず、公立や民間の認可保育所に入所する児童と同じ位置づけです。認可保育所入所の児童は何の制限もなく4月になればひとつ上のクラスに進級、あるいは他の保育所に転所できるのと同様に、「保育ルーム」入所児も認可保育所への転所の際、保育課へ一から入所申し込みをしなければならないという矛盾を直ちに解消し、スムーズに認可保育所へ進級転所できるように改善すべきです。答弁を求めます。