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2014年度当初予算編成に対する申し入れ
2013年08月30日

健康福祉局


  1. 政府の社会保障制度改革国民会議は8月2日、最終報告書案を公表、医療・介護・年金・保育の全分野にわたっての全面改悪を打ち出した。ここでは、自助・共助を柱に自己責任を強調し、効率化、重点化で負担増と給付カットを進めようとしている。しかもその財源は低所得者ほど負担が重い消費税を充てるとしている。社会保障費削減のみが優先され国民負担を強いる社会保障全面改悪には、住民の福祉の増進を目的とする地方自治体として「反対」の立場を明確にし、国にもあらゆる機会をとらえて表明すること。

  2. 介護保険等について
    要支援1、2の高齢者を保険給付の対象から除外し、市町村の地域包括推進事業(仮称)に段階的に移行したり、一定以上の所得がある利用者の負担引き上げ、特養ホームからの「軽度者」締め出しなど、政府は介護保険法の全面改悪をたくらんでいる。現行制度でさえ「保険あって介護なし」といわれる中で、ますます介護をめぐる状況は厳しくなる。市は保険者としての責任を果たし、必要なサービスが提供できるよう以下とりくむこと。

    1. 国による介護保険法改悪には、きっぱり反対すること。

    2. 介護保険料に対する国庫負担を30%に引き上げるよう求めること。また国の制度として保険料、利用料減免制度の創設を求めること。

    3. 高齢者にとって大変重い負担となっている介護保険料を、一般財源を投入し引き下げること。また、県基金の活用も求めること。市独自の保険料減免を行なっているが、対象はわずかである。基準を緩和するなど減免を拡充すること。

    4. 低所得者ほど、自己負担のために十分なサービスを利用できていない実態がある。低所得者にたいする利用料減免を創設すること。

    5. 介護現場では、賃金の低さから人材不足が続いている。国が責任をもって労働条件の改善をおこなうよう要望すること。

    6. 特別養護老人ホームの待機者は常に2000人を超え、深刻な事態である。市は事業計画に基づいて特養ホーム等の増設に取り組んでいるが、待機者解消には程遠いものとなっている。さらなる増設をすすめること。

    7. 市内には介護付き有料老人ホームや高齢者専用賃貸住宅など高齢者を対象にした施設が増えている。適正なサービスが提供されるよう指導監督を強化するとともに、市民に対し的確な情報を提供すること。

    8. 介護・医療・福祉の連携で地域の全高齢者の生活を総合的に支える拠点である「地域包括支援センター」はますますその役割が重要になる。地域の全高齢者を掌握し、支援できるよう、市独自で一般財源を投入しセンター増設も含め、充実させること。

  3. 高齢者施策について

    1. 高齢期の社会的孤立や孤独死が社会問題化している。市では独居高齢者の見守りを民生委員が行っており、さらに地域の老人会、自治会等の力も借りて対策をとることが必要だが、地域の支えあいでカバーできるのはごく一部である。ケースによっては高い専門性が求められるため、地域と連携して行政による直接の支援体制を強めること。

    2. 高齢者虐待相談窓口が設置され対応が進んできているが、今後も重要である。いっそう充実を図ること。

    3. 元気な高齢者の外出支援策の一つに高齢者交通助成制度があるが、都市局と連携し、バス交通の充実など、いっそう外出を支援する方策を検討すること。

    4. 老人クラブへの補助金は削減しないこと。

  4. 障がい者(児)施策について
    2006年施行の「障害者自立支援法」は、障がい者が生きるために不可欠なサービスを「益」とみなし、障害が重くなるほど負担が増える「応益負担」を強いる生存権侵害の悪法であった。これに対し、障がい者や関係者の訴訟を含む運動の力で、法の廃止と障がい者参加による新法制定へと進んだが、2012年6月成立し、2013年4月施行された「障害者総合支援法」は障がい者と国との間の「基本合意」や、国が審議を委託した「総合福祉部会」の「骨格提言」を無視した「障害者自立支援法」の実質的な延命である。
    「障がい者が安心して暮らせる社会は、すべての人が生きやすい社会」この立場からの障がい者施策を以下の通り求める。

    1. 障害者総合支援法で国は、応益負担の問題は解決済みとの立場だが、1割の定率負担は残され、低所得者は無料になったといっても、負担上限額は変わらない。「応益負担」制度を廃止し速やかに無料化することや、配偶者の収入認定はやめて本人所得のみの収入認定とすることなどを国に求めること。

    2. 事業所に対する報酬の日額払いを月額払いに戻し、正規職員の配置を中心として雇用形態ができるよう報酬の底上げを行うよう、国に求めること。

    3. 就労支援のいっそうの拡充をはかること。精神、知的障がい者の市での雇用を継続すること。

    4. 市として「障害者権利条例」を制定し、実効あるものとすること。その際には、障がい者団体の連合会や協議会など、各障がい者団体等の意見も聴きながら取り組みをすすめること。

    5. 総合福祉センターは市の福祉活動において重要な役割を果たしているが老朽化が進んでいる。利用者の方が安全かつ快適に利用できるよう、つねに設備改善に努めること。

    6. 福祉タクシー制度は障がいのある人や高齢者の外出支援策として有効な施策であり、ますます充実が図られるべきものである。対象者の拡大や助成額の増額や行き先の拡大など、制度の改善をはかること。

    7. 2015年度開設の「総合療育センター」は、診療所、肢体不自由児や発達障がい児等の通園施設、相談窓口を併設する重要な障がい児者施設として期待される。専門家や現場職員、利用者の意見をとりいれた施設内容や体制とすること。特に医師など専門スタッフの確保に努めること。

  5. 生活保護について
    安倍政権は2013年8月1日から3年間で最大10%もの生活保護基準の引き下げを強行した。さらに申請のハードルを高くする、扶養義務者の扶養を事実上の要件とするなどの生活保護法改悪がもくろまれている。
    生活保護の申請や受給は、憲法第25条に定める生存権を具体化したものである。必要な人が適切に利用できるよう市として次のことに取り組むこと。

    1. 生活保護法改悪については、反対の立場に立ち、国にも働きかけること。

    2. 国庫負担額の削減や給付削減攻撃を許さず、老齢加算の復活、生活扶助費、住宅扶助費など保護基準(最低生活費)の引き上げを国に求めること。

    3. 保護受給者は、国による生活扶助費等の削減で、ますます困難な生活を強いられている。また、近年の酷暑でエアコンの使用は不可欠だが、電気料金の負担から使用をちゅうちょしている受給者も多い。市の一般財源による、夏季冬季見舞金および水道料金の基本料金免除を復活すること。

    4. 生活上経済上の悩みを抱える市民が、安心して悩みを打ち明けられるよう心を開かせ、問題解決、続いて自立の方策をともに考えていくのが面接相談員、ケースワーカーであるが、圧倒的に人員不足である。人員を大幅に増やし、質を高める研修をすすめること。また、経験を蓄積できるよう専門職を採用すること。

    5. 西館が新設されたが、面接室の机やいすはありあわせの古いものであり、またプライバシー保護も十分ではない。市民が落ち着いて相談できるよう、早急に改善すること。

  6. 市の援護資金貸付金や県社協の生活福祉貸付金は、市民が経済的困窮状態に陥った時に活用できる数少ない公的制度である。援護資金貸付については、貸付条件が厳しくなっているために件数が著しく少なくなっている。貸付条件を見直し、生活実態と見合うよう貸付額を増額し、保証人、民生委員の証明は求めないこと。また、自営業者などについては審査が複雑になっており時間がかかるケースが多い。審査を簡素化すること。県社協の貸付については、借りやすいように一定改善されているが、県に対してさらなる改善を求めること。

  7. 一人親家庭支援について

    1. 母子家庭の母親の能力開発支援のための自立支援教育訓練給付金および高等技能訓練促進費は、利用が少ない。制度自体縮小の方向にあるが、意義ある制度であり、周知を図り、利用を促進すること。

    2. 母子生活支援施設は、老朽化している。移転も含めて建て替えを検討すること。また、母子生活支援施設からの自立を促進するため、市営住宅への優先入居など、何らかの支援策を講じること。

  8. 子育て支援について
    「子育てするなら西宮」にふさわしい施策や施設整備を行うことが求められている。市として以下の点に取り組むこと。

    1. 子どもを取り巻く社会環境が悪化し、児童虐待も増加するもとで、子どもたちを市民みんなで育てていくことを目指した「子ども条例」が、阪神間では川西市、宝塚市で制定され、全国的にも増えている。市でも早急に「子ども条例」を制定すること。

    2. 市立児童相談所を設置すること。また、それまでの間、適切に即応できるよう子どもセンター(児童相談所)の専門職員の増員を国、県に求めること。

    3. 市では児童・母子支援グループが虐待問題の窓口になっている。対応する家庭相談員を増員し、学校、保育所、幼稚園などの子どもが通う施設との連携を強め、虐待等の早期発見、対策を強めること。

    4. 「子育て支援の拠点」として児童館、児童センターを位置づけるのなら当然「直営化」すべきであると考える。あわせて、休日の開館や、地域偏在の解消、増館についても検討すること。

    5. 主に0歳から2歳ごろまでの親子がいつでも自由に集い、交流や相談、情報提供などの支援が受けられることをめざした「地域子育て支援拠点事業」のうち子育てひろば事業は、2014年度までに20か所に増やす計画となっているが、少なくとも小学校区に1か所をめざし取り組みを進めること。その際、常設施設をめざし、遊び場も充実させること。

    6. 子育て総合センターは、今後その目的や意義を明確にしていくとされているが、子育て支援の拠点であり、文字通りセンター的役割が果たせるよう運営について検討すること。

  9. 自民党、公明党、民主党が強行した「子ども・子育て支援新制度」(新システム)は、保育に対する国・自治体の責任を後退させ、子どもの保育に格差を持ち込み、保育を営利企業にいっそうゆだねていくもので、公的保育制度の大改悪である。保育所整備のための補助金も廃止され、待機児童解消のための認可保育所整備にもブレーキをかけかねない。2015年4月に予定されている「新システム」の実施中止を国に求めること。

  10. 保育所の充実と待機児童解消について
    市は2013年4月時点での待機児童はゼロになったとしているが、これは厚生労働省の定義によるもので、保護者が求職活動中の子や特定保育所希望の子など、事実上の待機児童は250人にのぼる。また、月を追って待機児童数は増えており、引き続き待機児解消は重点課題である。この解決には、国による「詰め込み」と「規制緩和」、保育の民営化という流れでなく、「安心できる認可保育所」の大幅増設を基本に公的責任を果たすべきである。市として以下の項目について実施すること。

    1. 保育所待機児童解消に向け、まず正確に待機児童数や今後の需要予測を把握することは不可欠である。待機児童数は厚生労働省の定義によらず、「入所を希望しても入所できていない児童数」とすること。

    2. 民間保育所の新増設や分園の設置等で定員を増やしているが追いついていない。民間任せにせず公立保育所の定員増や分園なども検討すること。特に待機児童の多い夙川、浜脇、瓦木地域で認可保育所を新設すること。

    3. 西宮浜には現在、私立保育所が1ヶ所ある。埋立地と言う特殊な事情があることから、西宮浜に早急に認可保育所を新設すること。

    4. 待機児童がなくなり、定員の弾力化が解消されれば公立保育所3か所を民間移管する計画になっているが、保育における公的責任を考え、公立保育所民営化はきっぱりと撤回すること。

    5. すべての保育所の耐震化を急ぐこと。

    6. 虐待や生活荒廃の影響を受けている子どもや、親自身が問題を抱えたケースが増えている。保育士の研修を強め適切に対応できるようにすること。

    7. 自園調理の実施やアレルギー除去食への対応等で、給食調理員の過重負担がある。給食内容をいっそう充実させるために調理員の増員をはかること。

    8. 障がい児保育や一時保育をすべての公立保育所で実施すること。

    9. この間、民間保育所への助成金が削減されている。安定した運営ができるように人件費等の助成金を増やすとともに、交付の際の運用については、各保育所の実情に合わせ、柔軟に対応すること。

    10. 株式会社が運営する保育所は、保育士の入れ替わりが激しく保育内容が不安といった声や、突然の閉園などといった事態が各地で続出している。そもそも保育に営利はなじまない。西宮市では株式会社の参入は認めないこと。

    11. 認可保育所を希望しても入所することができず、やむなく無認可保育所を利用せざるを得ない事態となっている。各地でずさんな経営による犠牲者が出ているが、市として適切な指導監督を行なうこと。

    12. 負担能力を超える高い保育料で、滞納も増えている。保育料の引き下げと減免制度の拡充を進めること。

    13. 浜甲子園保育所については早急に都市再生機構と協議して代替地を確保し、引き続き公立保育所として整備すること。

  11. 家庭保育所と保育ルームについて
    家庭保育所や保育ルームは、産休明け保育を担い、市の保育行政や待機児童対策としても大きな役割を担っている。市として次のことに取り組むこと。

    1. 多くの家庭保育所は施設を賃貸し、保育士を雇用して運営しているが、市の運営・助成要綱は自宅において家族による保育を前提としたものとなっており実態に合わない。家庭保育所の運営を改善するために要綱を抜本的に見直し、市の責任をはたすこと。

    2. 運営助成費や保育補助費は月ごとの入所人数によって支給されていることから、特に4月は入所人数が少なく、運営に支障をきたしている。年間を通じて定員分の運営助成費を支給すること。

    3. 給食実施に補助が出るようになったが、調理施設の設置や保護者負担になっている食材・ミルクについても助成を行うこと。

    4. 家庭保育所の時間外保育料は5時半以降30分ごとに350円で、月額21000円にもなり、全額保護者負担になっている。保育料と合計すると認可保育所より負担が重くなっている。改善すること。

    5. 家庭保育所や保育ルームの入所児は待機児童としてカウントされていない。卒園と同時に認可保育所に入所できるかどうかが保護者には不安である。卒園児を希望する認可保育所に優先的に入所させる制度をつくること。

    6. 保育ルームの施設は、市が建設し無償貸与しているものや、賃貸物件のものなど、形態も内容も千差万別である。中には安全性を疑われるものも見受けられる。市として一定の施設基準を設け、安全性を確保すること。

  12. 学童保育(留守家庭児童育成センター)について
    学童保育所は、異年齢集団の中で遊びと生活を通して子どもの成長発達を保障する、放課後の子どもの居場所である。また、指導員には子どもの安全を守り、適切な指導で発達を保障する専門職としての重要な役割がある。市として次のことに取り組むこと。

    1. 学童保育所の運営者が数年ごとに変わることには、その果たすべき役割から問題がある。施設の管理運営が主ではない学童保育所に指定管理者制度、とりわけ公募はなじまない。少なくとも非公募とすること。

    2. 開所時間の延長と長期休み時の朝の30分延長が行なわれているが、シフト勤務では十分な打合せが出来ないなど、子どもの安全確保に責任がもてなくなっている。人員体制などの拡充をすること。

    3. 延長料金は通常の利用料と比較して高い。保育料と同様に所得に応じた減免措置を講じること。

    4. 希望する子どもをすべて受け入れられるよう対処すること。

    5. 雨の日は子どもたちの遊ぶ場所がない。学校と協議して体育館を使用できるようにすること。また、子ども1人あたり面積等については、国の基準にそって改善すること。

  13. 県立こども病院を神戸沖の人工島ポートアイランドに移転させる計画に対して、県医師会をはじめ県内の医療団体が反対している。県立こども病院は災害時に拠点となる病院である。災害リスクの高い人工島に移転させるべきでない。県に対して移転計画の撤回を求めること。

  14. 内科、小児科の第1次救急医療をになう応急診療所は、順次診療時間も拡大され、市民の命を守っている。子どもが急増している中、ますますその役割は重要であり、さらに充実を図ること。また、中央病院がアサヒビール跡地に移転することになった際には、医師会とも協議して応急診療所の移転併設も検討すること。

  15. 妊婦健診および妊婦歯科検診への公的助成を拡大すること。

  16. 放射能汚染について市民は依然として不安をもっている。食の安全にかかわる検査体制を強化し、正しい情報を的確に市民に提供すること。

  17. 保健所庁舎については、耐震性の観点からも早急な建て替えが求められている。市民の利便性も考慮した場所での建て替えを早急に検討すること。

  18. 災害援護資金貸付金の国・県への償還期限は2014年までに3年間延長された。国への償還免除要件は「死亡か重度障害で、保証人も返済能力がない場合」となっている。東日本大震災では特例措置として「支払期日到来から10年経過後において、なお無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、償還金を支払うことができる見込みがない場合も、免除要件に該当する」とされた。国に対し、償還期間のさらなる延長と東日本大震災に準じた償還免除の適用範囲の拡大等を求めること。