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2015年度当初予算編成に対する申し入れ
2014年08月28日

教育委員会


  1. 憲法と子どもの権利条約を生かした教育を
    教育は、すべての子どもの持っている成長・発達する権利を保障するための社会の営みである。しかし、長崎県佐世保市では高校1年生の女子生徒が同級生を殺害する事件が起きている。特異な事件として終わらせるのではなくなぜこのような事件が起きたのかを徹底的に検証することが求められている。学校教育は、「命を守る教育」「人間を大事にする教育」を大前提に、すべての子どもに基礎的な学力を保障するとともに、子どもたちが社会の主人公として行動できる能力を身につけることを助ける責任を負っている。
    したがって、以下のことに取り組むこと。
    1. 豊島区では「子どもの権利に関する条例」を制定している。これは子どもをわがままにするものでも、権利の濫用を認めるものでもないこと等「子どもの権利」について親も子も学んでいる。また、パンフレットを作成し学校教育の中で「あなたの人生の主人公は、あなたです。あなたのことは、あなたが選んで決めることができます・・・」と教えている。市でも「子ども条例」を制定すること。

    2. いじめによるとみられる自殺が全国で後を絶たない。事例の検証の中で、学校現場や教育委員会の真相究明に対する真摯な姿勢の欠如も浮き彫りになっている。西宮市においても「人間を大切にする教育」「いじめを許さない教育」の取り組みを強化し、不幸な事件を起こさないこと。

    3. 不登校やいじめ等、心のケアを必要としている子どもに対処するためマンパワーの充実は不可欠である。教育現場の安全配慮義務を徹底するとともに、養護教諭の複数配置やスクールカウンセラーを小・中学校全校に配置するよう、国・県に強く求めること。

    4. 児童虐待を早期に発見し、適切な対応をとることが求められている。教職員への研修を強め、こども支援局や県子どもセンターなどとも一層連携を図り、子どもの命を守ること。

    5. いかなる理由があろうとも、学校現場での「体罰」は許さないこと。


  2. 憲法と教育基本法を生かし、歴史の真実に沿った教育の実践を進めること
    1. 子どもや教職員、保護者等の内心の自由を守り、「日の丸・君が代」を教育現場で、決して強制しないこと。

    2. 安倍首相や現役閣僚の靖国参拝、「従軍慰安婦」問題等、侵略戦争を肯定し、歴史を歪曲する事態が相次いでいる。これに対し国内のみならず国際的にも大きな批判の声が沸き起こっているのは当然である。
      侵略戦争への反省は、日本社会が国際社会に復帰する際の条件であり、日本社会に民主主義を定着させ、日本への誇りを培う上で不可欠のものである。平和教育を重視し、歴史の真実を児童・生徒に伝えること。さらに、今後も「つくる会」系教科書を採用せず、公教育が侵略戦争の美化・肯定を行うようなことは一切許さないこと。


  3. 教育委員会について
    安倍内閣は教育委員会廃止の方向を示したが、地方の教育委員会、学校管理職からもほとんどが廃止反対したことから、教育委員会制度は残されることになった。しかし、「教育委員会制度改革」では、@すべての自治体に教育の基本計画である「大綱」の策定を義務付け、その権限を首長に与える。A教育委員長を廃止して「新教育長」に権限を統合し、その「新教育長」を首長の直接任命するとした。これは教育委員会を形骸化させ、「新教育長」が首長の意向で独走できる体制をつくれるものであるとしたが合議制は残された。教育委員会は言うまでもなく自治体の教育行政についての最高意思決定機関であることをふまえて役割を果たすこと。以下のことに取り組むこと。
    1. 教育委員たちが保護者、子ども、教職員、住民の不満や要求をつかみ、自治体 の教育施策をチェックし、改善すること。

    2. 会議の公開、教育への見識や専門性をもつ人物の確保など、教育委員会の役割が実際に果たせる体制をつくること。

    3. 政治的介入から教育の自由と自主性を守ること。

    4. 憲法と子どもの権利条約の立場にたって行政を行うこと。


  4. 学力テストについて
    1. 全国学力テストは子どもに過度な競争を強いるものであり、調査結果についても生かされていない。参加しないこと。

    2. 市が実施しているリサーチプラン学力テストは結果が出るのが遅すぎて現場で生かされていない。一人一人の児童生徒の学力動向については、教員が把握する努力を日常的に行っていることから中止すること。


  5. 文科省は2013年度から順次35人以下学級を導入するとしていたが、安倍政権はその方針を棚上げした。一人一人の子どもに行き届いた教育を保障する「少人数学級」を進めるため、市教委として「少人数学級推進計画」の着実な実施を国に求めること。その上で、義務教育全期間にわたる30人学級の実施に向け、必要な正規教職員の確保や施設整備に対しても、国に必要な対応を求めること。実現するまでの間、市独自で少人数学級を実施すること。


  6. 「教育環境保全のための住宅開発抑制に関する指導要綱」により住宅戸数の制限をはかるとしながら、現在、小学校40校中20校で「規制」が行われている。しかしながら事実上は「規制」になっていない。保育所なども含めより良い市民生活を保障する、実効性ある規制をはかるため、都市局と連携し市長の公約でもある無秩序なマンション開発を規制する「まちづくり基本条例」を制定すること。


  7. 学校配分予算は1人当たりの金額が1995年度は小学校27,306円、中学校は35,681円だったが、2014年度には小学校で15,175 円、中学校では23,716円になっている。1995年度比で見ると約6割に削減されている。教育予算を増額し学校配分予算も大幅に増額すること。


  8. 行き届いた教育のための人的配置等について
    日本の教員はOECD加盟国の中で世界一の最長勤務と言われている。その中で精神面での疾病が増え続けている。教員の過重労働を軽減するため以下のことに取り組むこと。
    1. 児童生徒数や学級数に見合う正規教員が県教委で確保されていない。現場では必要な職員の約1割が本定欠教員(臨時講師)となっている。定員についてはすべて正規教員で確保するよう、県に強力に求めること。また、非常勤講師の加配分についても、適正に行われるよう要望すること。

    2. 臨時教員や非常勤講師については、有期雇用で「官製ワーキング・プア」と言われるような実態がある。このような非正規教員の処遇を大幅に引き上げるよう、国・県に強く求めること。

    3. 中学校における教員のクラブ活動へのかかわり方は、その献身性に大きく依存しており、心身ともに大変な負担となっている。早急な改善を図ること。

    4. 市独自でプール指導時の補助員や中学校の理科・技術家庭科の実習助手など現場の声を聞き確保すること。

    5. 労働安全衛生基準に基づいて、教員の更衣室、休養室の設置を進めること。

    6. 「教員評価」「不適格教員」制度や「教員給与の格差付け」については、国に廃止を求めること。

    7. 過重勤務でメンタルケアを必要とする教員が増えている。教員に対するカウンセラーを配置すること。


  9. 教育費の家計負担の軽減について
    1. 国は2014年度から高校授業料無償制に所得制限を導入し、就学支援金制度とした。教育予算増による「高校授業料無償化」を復活するよう強く国に求めること。

    2. 義務教育は無償の原則にも関わらず、その対象は授業料や教科書などに限られている。給食費の無料化を開始した自治体もあり、制服代、ドリル代、修学旅行積み立て、クラブ活動経費など保護者負担の無償化を国に求めること。

    3. 不況が深刻化しているにもかかわらず、生活保護基準の切り下げが強行されている。就学奨励金については連動して対象者を狭めないこと。また、就学奨励金の一層の所得制限緩和を行い、利用しやすくすること。申請手続きについては保護者が希望する場合、直接教育委員会でも行なえるようにすること。

    4. 奨学金制度については給付制奨学金の創設を、国や県に早期実現を要求するとともに、市独自の制度についても創設、拡充すること。

    5. 世界一高い大学、専門学校などの学費についても、負担軽減を国に求めること。


  10. 学校園施設等の整備、改修について
    1. 文教住宅都市として教育環境が大事である。老朽化している学校施設については、計画をたて順次建替えを進めること。また、各学校から出ている雨漏りや床板のはがれ等の修繕要望には直ちにこたえること。

    2. 小学校へのエアコン設置については、できるだけ前倒しに事業を進め、さらに幼稚園についても早急に設置すること。 
      また、災害時の避難所となっている体育館へのエアコン整備もすすめること。

    3. 道路や鉄道、航空機などの騒音対策で設置された空調機の老朽化が進んでいる。早期に計画を立て、順次エアコンを整備すること。

    4. 6月議会で学校トイレの洋式化を求める請願が全会一致で採択された。学校のトイレは、現代の生活様式に見合った洋式トイレへの改修をすすめること。また、委託業者による清掃は効果も大きいことから、全体として回数を増やすこと。危険を伴うガラス清掃についても、少なくとも各校年1回は実施すること。

    5. エレベーター設置は、財政状況を理由に全校設置が進んでいない。予算を大幅に増やし、一気に整備すること。

    6. プールの際のシャワーは温水にし全校に配置すること。


  11. トライやる・ウィークは各中学校で職業を体験させる事業所を探さなければならないが、最近、地域によっては受け入れ先が減っている。塩瀬中学では自衛隊を体験先としているが大問題である。この際、トライやる・ウィークをやめるよう県に要請すること。


  12. 2014年、小学校40校中約10校で夏休みのプール開放ができなかった。このことはプールの安全を確保するためにライフセーバー等の資格を持っている人を監視員としなくてはならないためである。市では消防局が実施している救命入門コースを受講した人を監視員としている。2015年度は人を確保しすべての小学校でプール開放ができるよう市として対策をたてること。


  13. 学校図書教育を充実させるためには、「いつ行っても図書の先生がいる」という状況が必要である。学校図書館指導員の配置を行っているが、限定的である。先進市に学び、早期に専任の司書教諭を市費で全校に配置すること。


  14. 幼稚園教育について
    1. 市長は所信表明で、保育所や幼稚園等、民間においても実施可能な事業は民間に任せると述べているが、幼稚園教育において公立の果たしている役割は大変大きいものがある。公立幼稚園は減らさず存続させること。

    2. 幼稚園は3年保育が主流である。要望の強い「3年保育、延長保育、子育て支援事業」等々を公立幼稚園で実施すること。

    3. 私立幼稚園就園奨励助成制度における所得制限は撤廃し、奨励金もさらに増額すること。


  15. 障害のある子どもたちの教育条件を改善するために、以下のことを取り組むこと。
    1. 西宮市立養護学校への児童生徒が近年増加している。施設については初期の校舎は建築後50年以上経過し老朽化している。早期の建替えは4次総後期に盛り込まれているがさらに前倒しで検討をすすめること。その際、生徒の体力を考慮して市内の中央部に建てること。

    2. 肢体不自由児通園施設「総合療育センター」の整備に合わせ、「西宮スクーリングサポートセンター」が合築される。他市の先進例を参考にするとともに、特別支援教育の拠点施設として、現場の先生方の意見を十分反映させること。

    3. 特別支援教育においては、専門家も含めたマンパワーが必要である。子どもたちの障害の複雑化に対応するため、市費による教員もさらに増員すること。

    4. 特別支援教育支援員が全学校に配置されているが、全額市費である。
      県に対し、補助金の復活と実態に応じて複数配置を求めること。さらに専任のコーディネーターや医療職員を配置すること。

    5. 配慮の必要な児童・生徒を介助するなど補佐する役割を持つ学校協力員については、ボランティア的存在におかれている。教育委員会として身分を明確にし、必要な賃金を保障すること。

    6. 障害認定がなくても、配慮を要する子どもが増えている。一人一人の障害種別や程度が複雑多様化していることに、教育環境が現時点で十分とは言えない。引き続き教員加配など必要な手立てをとること。


  16. 県教委は、2015年度入学者から高校学区を5学区に統合・拡大することを強行しこれにより西宮市は阪神・丹波学区に統合されることになった。
    学区拡大は学校間格差を生み競争を激化させ、遠距離通学による経済的、身体的負担の増大を招くとともに、「地域の高校」という特徴がなくなるなど多くの問題点が指摘されているがこのことは解決されないままである。特に初年度となる2015年度の入試に向けて、現場では進路指導が困難な状況になっている。市教育委員会として各中学校の状況をつかみ適切に対処すること。


  17. 西宮市の小・中学校での学校給食は、“直営自校方式”で実施され、食育の観点からも、子どもたちの健康と成長を守る上でも大きな役割を果たしている。現在、給食の献立表には加工食品や添加物の一覧、アレルギー食品の成分表をつける等、保護者からも喜ばれている。以下のことを実施すること。
    1. 将来的にも「直営自校方式」を堅持し民営化はしないこと。

    2. 正規調理員を基本とした人員を確保すること。また、同じ職務にありながら嘱託、新嘱託、臨時等で勤務時間の差とともに賃金格差がある。早急に関係団体と協議し、整理改善すること。

    3. 「米飯給食」を自校炊飯できるよう施設整備をすすめること。米粉パンについても実施すること。

    4. 食物アレルギーのある子どもが増加している。アレルギー除去食の完全実施を行うこと。

    5. 現在、児童生徒数550人以上の学校に1名の栄養教諭が配置されているが、食育の観点からも栄養教諭を全校に配置するよう県に求めること。

    6. 給食費の無料化について、検討すること。


  18. “西宮市人権・同和教育協議会”は、あらゆる人権問題の早期解決をめざすとしているが、同和教育に大きく偏っている。廃止すること。


  19. 「放課後子ども教室」は青少年愛護協会の協力で実施されている。市長は所信表明で「留守家庭児童育成センター」との運営の一体化を目指すと述べているが、それぞれの役割はまったく別である。運営の一体化は論外でありすすめないこと。


  20. 図書館について、以下のことに取り組むこと。
    1. 正規司書職員を増員することで、開館日の増や時間延長等を実施すること。

    2. 拠点図書館については毎日開館すること。また開館時間についても、一定改善されているが、特に北口図書館は朝の開館は早められたが、勤労者が利用できるよう午後9時までとし、必要な人員を確保すること。

    3. 引き続き地域図書館の整備を進めること。要望のある津門・今津地域には、教育会館等も視野に入れ検討し、甲陽園地域にも地域図書館を設置すること。

    4. 分室については、市民に最も身近な図書館であることから民間委託から直営に戻すこと。

    5. 人気の図書は予約しても、1年以上待たなくてはならないなど市民からの苦情がある。特別の人気図書については別扱いとし取扱いについて工夫すること。貸し出し期間が大幅に超過した場合はきびしく対処すること。


  21. 公民館については、社会教育施設としての重要な役割がある。現在、公共施設マネジメントの見直しとして、多くの地域集会施設と同列視した統廃合が検討されているが、公民館の歴史的役割、経過も踏まえ、施設の切り捨てを行わないこと。


  22. なるお文化ホールを市民団体が使用するのに必要以上に制限をくわえている事例がある。制限をゆるやかにし市民団体が使用しやすいようにすること。