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2015年度当初予算編成に対する申し入れ
2014年08月28日

健康福祉局


  1. 「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に 関する法律」(以下、医療・介護総合法)が、2014年6月、自民・公明などの賛成多数で成立した。とりわけ介護保険法は、要支援の高齢者からのヘルパー、デイサービスのとりあげ、一定以上の所得がある利用者への2割負担導入、特養ホームからの「軽度者」締め出しなど、負担増と給付削減が盛り込まれた。これは制度の根幹にかかわる制度創設以来の大改悪だといわねばならない。2015年度から第6期介護保険事業計画がスタートするが、市は保険者としての責任を果たし、必要なサービスが提供できるよう次のことにとりくむこと。
    1. 介護保険料に対する国庫負担を30%に引き上げるよう求めること。また国の制度として保険料、利用料減免制度の創設を求めること。

    2. 高齢者にとって大変重い負担となっている介護保険料を、一般財源を投入して引き下げること。また、県基金の活用も求めること。市独自の保険料減免を行なっているが、対象はわずかである。基準を緩和するなど減免を拡充すること。

    3. 低所得者ほどサービスの利用控えがある。低所得者への利用料減免制度を創設すること。

    4. このたびの法改定では、一定所得以上とされた高齢者に利用料の2割負担が導入される。2割負担導入が予定される世帯は「余裕がある」世帯だと、厚労省では数値を挙げて説明したが、データが全くでたらめであったことが明らかになった。
      施行される2015年8月までに2割負担導入の撤回を含めた見直しを国に求めること。
      また、特養ホームや老健施設入居者の食費・住居費の自己負担分に対する低所得者軽減策である補足給付が見直され、所得は低くても一定額以上の預貯金があれば補足給付を受けられなくなるという身ぐるみ剥ぐ、とんでもない施策である。個々の事情に応じた、きめ細かい対応をおこなうこと。

    5. 定期巡回・随時対応型訪問介護看護は在宅介護を支えるうえで要ともなるサービスだが、事業者が顕れていない。「施設から在宅」、地域包括ケアなどが強調されるもとで、これら在宅サービスの拡充は不可欠である。国に対し、人材確保や保険料引き上げにつながらない形での介護報酬引き上げなどを求めること。

    6. 特別養護老人ホームの待機者は常に2000人を超え、深刻な事態である。法改定では特養ホームへの入所資格を要介護3以上に制限をし、見せかけの待機者減らしを進めているが、特養ホーム増設のための抜本的対策が必要である。さらなる増設をすすめること。

    7. 市内には介護付き有料老人ホームや高齢者専用賃貸住宅など高齢者を対象にした施設が増えている。適正なサービスが提供されるよう指導監督を強化するとともに、市民に対し的確な情報を提供すること。

    8. 地域包括支援センターの役割はいっそう重要になる。市独自で一般財源を投入し、センター増設も含め、充実させること。

    9. 介護現場では、賃金の低さから人材不足が続いている。国が責任をもって労働条件の改善をおこなうよう要望すること。


  2. 要支援者への通所介護、訪問介護については市町村が独自に実施する「新たな介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、総合事業)として代替するサービスが行われることになる。厚労省は、要支援者は「軽度者」などと強調するがそうではなく、適切な介護や支援を受けることができなければ重度化し、尊厳をもった自立生活を送ることが困難になる。以下、総合事業について求める。
    1. 総合事業については、自治体の財政力の違いなどで格差が生まれると懸念され、実施に反対の声が強かったが、導入される以上、市は現行サービス水準を低下させないよう、最大限の努力をすること。

    2. 総合事業では、既存の事業所によるヘルパー派遣やデイサービスとともに、NPOなどによる掃除・洗濯、ボランティアによるごみ出し、サロンなどを実施することになる。2015年度から移行を開始し、17年度までに移行完了とのスケジュールだが、関係者との協議等、準備に十分時間をかけ、移行を急がないこと。

    3. 要支援者を一律に「専門的サービス」から排除すれば、心身の状況悪化、家族負担の増大など、在宅生活が困難になりかねない。厚労大臣は「必要とする人には既存の事業所による専門的サービスを提供する」「専門的サービスの対象となる要件を列挙する」と発言している。地域包括支援センターがその判断を行うことになるようだが、利用者の立場に立った判断を行うよう、市は適切な指導を行うこと。

    4. 要介護認定を受けずにチェックリストによる判定だけで総合事業の利用が可能になるという改定がなされるが、安易に要介護認定を回避し、チェックリストの判定のみで安上がりの総合事業に誘導するようなことがあってはならない。何らかの支援の必要を感じた高齢者が要介護認定を受けることは、すべての高齢者の権利であり、このことをあらゆる窓口で徹底すること。

    5. 総合事業を行う事業所等の人員、運営、単価などの基準は、国として一律の基準は定めず、市の裁量となる。事業委託単価は現在の介護報酬以下に設定するものとされているが、少なくとも現行サービス水準を下回らない適切なサービスが提供されるよう、人員、運営、単価などの基準を定めること。

    6. 総合事業は「地域支援事業」の予算の枠組みの中で実施され、国が設定した上限を超えてはならないとされている。このことによって制度から排除される高齢者が生まれる可能性がある。高齢者が必要なサービスを受ける権利を制限されることがないよう、上限を撤廃するなど国に対し、財政的保障を求めること。また、市として「サービス単価を減らす、利用を制限する、利用者負担を増やす」などということがないよう財源を確保すること。


  3. 高齢者施策について
    1. 高齢期の社会的孤立や孤独死に加え、近年、徘徊する認知症高齢者の行方不明が社会問題化している。市では独居高齢者の見守りを民生委員が行っており、さらに地域の老人会、自治会等の力も借りて対策をとることが必要だが、地域の支えあいや見守りには限界がある。ましてや徘徊高齢者対策には広範な機関や市民の協力が必要であり、有効な対策は全国的にもまれである。群馬県沼田市や福岡県大牟田市などが先進例だが、「徘徊者を見守る眼を増やすしかない」として、まちぐるみの取り組みを行い、特に認知症に関する子どもの教育にも力を注いでいる。これらの事例に学び、できることは取り入れること。

    2. 高齢者虐待相談窓口が設置され対応が進んできているが、今後も重要である。いっそう充実を図ること。

    3. 元気な高齢者の外出支援策の一つに高齢者交通助成制度があるが、芦屋市や尼崎市で実施しているバス運賃半額助成制度を創設し、それとの選択制とすること。また、都市局と連携し、バス交通の充実など、いっそう外出を支援する方策を検討すること。

    4. 県行革によって老人クラブへの補助金は削減されたが、復活を求めること。また、市の補助金は削減しないこと。


  4. 障がい者(児)施策について
    「障がい者が安心して暮らせる社会は、すべての人が生きやすい社会」この立場からの障がい者施策を以下の通り求める。
    1. 障害者総合支援法で国は、応益負担の問題は解決済みとの立場だが、1割の定率負担は残され、低所得者は無料になったといっても、負担上限額は変わらない。「応益負担」制度を廃止し速やかに無料化することや、配偶者の収入認定はやめて本人所得のみの収入認定とすることなどを国に求めること。

    2. 就労支援のいっそうの拡充をはかること。精神、知的障がい者の市での雇用を継続すること。

    3. すでにいくつかの自治体で制定している「障害者権利条例」を市でも制定するよう検討すること。その際には、各障がい者団体等の意見も聴きながら取り組みをすすめること。

    4. 事業所に対する報酬の日額払いを月額払いに戻し、正規職員の配置を中心とした雇用とし、また報酬の底上げを行うよう、国に求めること。

    5. 2015年度開設の「総合療育センター」は、診療所、肢体不自由児や発達障がい児等の通園施設、相談窓口を併設する重要な障がい児者施設として期待される。専門家や現場職員、利用者の意見をとりいれた施設内容や体制とすること。特に医師など専門スタッフの確保に努めること。


  5. 福祉タクシー制度は障がいのある人や高齢者の外出支援策として有効な施策であり、ますます充実が図られるべきものである。対象者の拡大や助成額の増額や行き先の拡大など、制度の改善をはかること。


  6. 染殿町および津門川町の、総合福祉センター、福祉会館、わかば園などの健康福祉関連施設について市は、2014年度予算で再配置構想の策定を行うとしている。現状でも福祉や健康活動に大きな役割を果たしている同ゾーンの再配置には期待も大きい。関係者・関係団体などの意見もよく聞き、住民本位の計画とすること。


  7. 生活保護について
    安倍政権は2013年8月1日から3年間で最大10%もの生活保護基準の引き下げを強行した。さらに改定生活保護法が2014年7月から施行されている。今回の改定は1950年以来の大幅改定であるが、生活保護法が憲法第25条に規定する理念に基づくものであるという基本、原則は変わっていないと、厚労大臣も明言しているものである。必要な人が権利として適切に利用できるよう市として以下のことに取り組むこと。
    1. 改定では扶養義務に関する規定が盛り込まれたが、「扶養は従来通り生活保護受給の要件ではない」「家族の問題に行政が踏み込んでいくことは相当慎重にしなければならない」と、これも国会で答弁している。この点を踏まえ、申請を躊躇させるような、従来以上の扶養義務照会を行わないこと。

    2. 国庫負担額の削減や給付削減攻撃を許さず、老齢加算の復活、生活扶助費、住宅扶助費など保護基準(最低生活費)の引き上げを国に求めること。

    3. 保護受給者は、国による生活扶助費等の削減で、ますます困難な生活を強いられている。また、近年の酷暑でエアコンの使用は不可欠だが、電気料金の負担から使用を躊躇している受給者も多い。市の一般財源による、夏季・冬季見舞金および水道料金の基本料金免除を復活すること。

    4. 生活上経済上の悩みを抱える市民が、安心して悩みを打ち明けられるよう心を寄せ、問題解決をはかっていくのが面接相談員、ケースワーカーの役割である。圧倒的に人員不足、経験不足である。人員を大幅に増やし、質を高める研修をすすめること。特に、初期の相談、面接においては、申請の権利を侵さないよう、とりくむこと。また、経験を蓄積できるよう専門職を採用すること。

    5. 面接室の机やいすは一定改善されたが、市民が落ち着いて相談できるよう、いっそう改善すること。


  8. 市の援護資金貸付金は、市民が経済的困窮状態に陥った時に活用できる唯一の公的制度である。援護資金貸付については、貸付条件が厳しくなっているために件数が著しく少なくなっており、とても福祉施策とは言えない状況である。貸付条件を見直し、生活実態と見合うよう貸付額を増額し、保証人、民生委員の証明は求めないこと。
    また、自営業者などについては審査が複雑になっており時間がかかるケースが多い。審査を簡素化すること。


  9. 内科、小児科の第1次救急医療をになう応急診療所は、順次診療時間も拡大され、市民の命を守っているが、特に子どもの救急への対応は、多くの子育て世代の要望である。さらに充実を図ること。


  10. 大阪府吹田市で、認可保育所の運営費を私的に流用していた事件が発覚した。相当数に上る社会福祉法人への指導、監査は市の重要な業務である。必要な体制とスキルで厳格に行うこと。


  11. 保健所庁舎については、耐震性の観点からも早急な建て替えが求められている。また、現在、西宮健康開発センター(染殿町)にある地域保健課も同一庁舎で執務できることが必要である。市民の利便性も考慮した場所での建て替えを早急に検討すること。


  12. 災害援護資金貸付金の国・県への償還期限は2014年までから、さらに3年間延長された。国への償還免除要件についても「死亡か重度障害で、保証人も返済能力がない場合」から、東日本大震災の特例措置にならうとして「支払期日到来から10年経過後において、なお無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、償還金を支払うことができる見込みがない場合も、免除要件に該当する」とされた。今後具体化されることになるが、被災者の実態に応じた柔軟なものとなるよう、国とよく協議すること。