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2015年度当初予算編成に対する申し入れ
2014年08月28日

こども支援局


  1. 子どもを取り巻く社会環境が悪化し、児童虐待や子どもが加害者となる事件も頻発している。そうしたなか、子どもたち一人一人がかけがえのない存在であり、市民みんなで育てていくことをめざした「子ども条例」の制定が期待される。すでに阪神間では川西市、宝塚市で制定され、全国的にも増えている。
    「子育てするなら西宮」を標榜する市だからこそ、「子ども条例」を制定し、子どもを大切にする理念を市全体のものにすること。


  2. 子ども子育て支援新制度(以下、新制度)が2015年4月、スタートする。その準備作業が急ピッチで進められているが制度自体が非常に複雑で、関係者はもとより当事者である子育て家庭にも十分理解されていない状況である。
    新制度は、保育への公的責任を大きく後退させ、安上がりの保育を進めようとするものである。しかし、「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童の心身ともに健やかに育成する責任を負う」という児童福祉法の理念は厳然と存在する。少なくとも、これまでの保育行政を後退させないよう、以下の点に取り組むこと。
    1. 新制度では、補助金の対象となる施設等の種類が増える。施設によって基準が別々につくられ条例化されるが、職員の資格や配置、保育所の面積等が異なることになれば、保育環境や保育条件に格差が生まれてしまう。認可保育所や幼保連携型認定こども園、保育ルーム、小規模保育所など、どの施設を利用しても、少なくとも現在の市の保育所最低基準が保障されるよう、各施設・事業の基準を統一すること。

    2. その際、現在は運用でおこなっている1、2歳児への保育士配置基準(国基準6:1を上回り5:1)も条例化すること。

    3. 児童福祉法第24条1項・市町村の保育実施義務を踏まえて、公立、民間保育所が安定して運営できる財政的保障を国に対し求めるとともに、現在市が行っている保育料軽減、第2子減免、保育士加配などのいわゆる「上乗せ」の市単独事業を継続するための財源を確保すること。

    4. 小規模保育や保育ルームなど地域型保育の条例化にあたっては特に、全員保育士とし、自園調理を必須とすること。また、保育の質を高めるために、安定運営への支援や、時間延長への市の支援を引き続き実施し、強めること。

    5. 前述のとおり制度が複雑であるため、繰り返し利用者、市民への広報や説明を強めること。

    6. 就学前児童のうち、新制度に移行しない私立幼稚園を希望する子ども以外は、すべてが保育・教育の必要性と必要量の認定を受けることになる。膨大な事務量となるが、特に必要量については個々の条件を十分配慮して適切に行うこと。

    7. 公立、民間保育所以外は保護者と施設との直接契約となるが、それに先行して市は、保育利用申し込みを受け調整・あっせん・要請などを行うこととなる。利用者の要望などを正しく受けとめ、施設についての情報も細かく提供して親身に相談にのり、適切な調整・あっせんを行うこと。

    8. 3歳までが対象の小規模保育、並びに2歳までが対象の保育ルームに入所した子どもがひきつづき保育を必要とする場合、継続して保育が受けられるようにすること。その際、2019年度末まで据え置き措置となっている、卒園後の受け皿等の役割を担う連携施設制度を早急に整備すること。

    9. そもそも保育に営利はなじまない。西宮市では株式会社の参入は認めないこと。

    10. 保育料は、国が公定価格を定め利用者負担のイメージを提示して、自治体が決める。現行保育料について市は2015年4月からの引き下げを明言している。そのことを踏まえた保育料設定とし、減免制度を拡充すること。

    11. 日用品費や行事費、食事提供に要する費用等が上乗せ徴収・実費徴収可能とされているが、徴収させるべきでない。少なくとも事業所任せにせず、市で徴収にあたっての一定の基準を設けること。


  3. 市は、2013年に続き2014年度も4月点での待機児童がゼロになったとしているが、これは厚生労働省の定義によるもので、保護者が求職活動中の子や特定保育所希望の子など、事実上の待機児童は2013年4月時点で250人、2014年同時点で309人にのぼる。厚労省も新制度導入に合わせ、待機児童の定義を改めるとしている。 
    引き続き待機児童解消は市における重点課題である。新制度のもとで保育需要に見合う子ども子育て支援事業計画を策定することになるが、待機児童解消には認可保育所の大幅増設を基本にすえた計画とすること。
    その際、特に待機児童の多い夙川、浜脇、阪急西宮北口駅周辺などで認可保育所を新設すること。また、埋立地と言う特殊な事情があることから、西宮浜に早急に認可保育所を新設すること。


  4. 市立保育所、保育事業について
    1. 認可保育所の増設にあたっては、民間任せにせず公立保育所の定員増や分園なども検討すること。

    2. 待機児童がなくなり、定員の弾力化が解消されれば公立保育所3か所を民間移管する計画になっているが、保育における公的責任を考え、公立保育所民営化はきっぱりと撤回すること。新たな保育所民営化は行わないこと。

    3. 子ども子育て支援事業計画の中にすべての保育所の耐震化やその他施設改善を盛り込み、とりくむこと。

    4. 虐待や生活荒廃の影響を受けている子どもや、親自身が問題を抱えたケースが増えている。市保育所事業課の保健師や保育士等が、市要保護児童対策協議会と連携して対応しているとのことだが、ひきつづきとりくみを強めること。また、虐待など問題をキャッチできるのは現場の保育士である。研修を強め適切に対応できるようにすること。

    5. 自園調理の実施やアレルギー除去食への対応等で、給食調理員の過重負担がある。給食内容をいっそう充実させるために調理員の増員をはかること。

    6. 一時預かり(一時保育)を公立保育所でも実施すること。

    7. 浜甲子園保育所については早急に都市再生機構と協議して代替地を確保し、引き続き公立保育所として整備すること。

    8. 民間保育所や保育ルーム等に対し、保健指導等のための巡回指導など、保育の質を高めるための支援策を実施されているが、いっそう強化すること。


  5. 認可保育所や保育ルームなどを希望しても入所することができず、また、保育条件が合わずにやむなくベビーホテルなど無認可保育所を利用せざるを得ない子どもがまだ多数残されている。各地でずさんな経営による犠牲者が出ているが、市として適切な指導監督を行なうこと。


  6. 新制度では、すべての子育て家庭を支援するため子育て広場や一時預かり、病児病後児保育などの様々な子育て支援をおこなうこととなる。これまでも市が実施してきた事業が大半だが、特に子育て広場は、中学校区に1か所の目標を早期に実現し、さらに小学校区1か所に拡充すること。


  7. 学童保育(留守家庭児童育成センター)について
    学童保育所は、保護者が昼間家庭にいない子どもに、授業終了後および学校休業日に、専用施設を利用して、適切な遊びと、生活の場を与え、その健全な育成を図る事業である。また、指導員には子どもの安全を守り、適切な指導で発達を保障する専門職としての重要な役割がある。市として次のことにとりくむこと。
    1. 市は、「留守家庭児童育成センター」と「放課後子ども教室」のそれぞれの役割を活かした運営の一体化をめざし、総合的な放課後対策に取り組むとしている。しかし、2つの事業は目的と役割、利用方法などがまったく違う。無理に運営を一体化すれば、学童保育はその役割を果たせず、多くの共働き、ひとり親家庭の子育てを支援することができなくなる。両事業の連携ははかっても運営の一体化はおこなわないこと。

    2. 新制度の施行によって、学童保育事業では設備や運営について条例化することになった。市では静養のための区画整備、児童1人当たり面積、クラスの規模について国の省令基準どおり条例化するものの、実際には入所児童が多くその基準をクリアできていない。「当分の間、既存施設については適用除外とする」旨を条例に盛り込むが、早急に条例どおりの事業として執行できるよう、条件整備をすすめること。

    3. 児童福祉法改正により6年生までが学童保育の対象となった。保護者の要望も強く、まず4年生を対象に条件のある学童からモデル実施し、順次全学童での高学年学童を実施すること。

    4. 学童保育の継続性からも数年ごとに運営事業者が変わる指定管理者制度の導入には問題が多い。市でもそのことを認識し、再指定においては審査基準に合致すれば同一の指定管理者を引き続き6年間指定できることに変更した。施設の管理運営が主ではない学童保育所に指定管理者制度、とりわけ公募はなじまない。少なくとも非公募とすること。

    5. 開所時間の延長と長期休み時の朝の30分延長が行なわれているが、指導員がシフト勤務では十分な打合せが出来ないなど、子どもの安全確保に責任がもてなくなっている。人員体制などの拡充をすること。

    6. 延長料金は通常の利用料と比較して高い。保育料と同様に所得に応じた減免措置を講じること。

    7. 希望する子どもをすべて受け入れられるよう対処すること。

    8. 雨の日は子どもたちの遊ぶ場所がない。学校と協議して体育館を使用できるようにすること。


  8. 子育て総合センターは、各地域で行われている子育てに関する各種取組への支援や、子育て支援施設間や関係機関との連携・協力を促進などの役割が求められている。また、乳幼児教育・保育等の調査・研究においても役割を期待されている。センターで展開されている個別の子育て支援事業にとどまらず、そういった文字通り、子育て支援の総合センター的役割が果たせるよう、運営について整理・検討すること。


  9. 児童虐待や育児放棄などは、年々増加の一途である。市では児童・母子支援グループを虐待問題等の窓口とし、家庭相談員を増員しながら対応しているが、さらに増員すること。また、学校、保育所、幼稚園などの子どもが通う施設やこども家庭センターなどとで要保護児童対策地域協議会を設置し、連携を図っているようだが、いっそう虐待等の早期発見、対策を強めること。


  10. 中核市として、市立児童相談所を設置すること。また、設置までの間、諸事案に適切に即応できるよう、こども家庭センター(児童相談所)の専門職員の増員を国、県に求めること。


  11. 「子育て支援の拠点」として児童館、児童センターを位置づけるのなら当然直営を守るべきである。あわせて、休日の開館や、地域偏在の解消、増館についても検討すること。


  12. 一人親家庭支援について
    1. 母子家庭の母親の能力開発支援のための自立支援教育訓練給付金および高等技能訓練促進費は、利用が少ない。制度自体縮小の方向にあるが、意義ある制度であり、周知を図り、利用を促進すること。

    2. 婚姻歴のあるひとり親が所得税を収めるときに適用される優遇措置である「寡婦控除」を、未婚のひとり親にも「みなし適用」し、保育料等の負担軽減をすすめること。