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野口あけみの反対討論
2014年09月17日

子ども子育て支援新制度関連条例案反対討論


 ただいま上程中の諸議案のうち、議案第474号 西宮市保育の実施に関する条例を廃止する条例制定の件、議案第475号 西宮市特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営に関する基準を定める条例制定の件、議案第476号 西宮市児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例制定の件、議案第477号 西宮市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例制定の件、議案第478号西宮市幼保連携型認定こども園の学級の編成、職員、設備及び運営に関する基準を定める条例制定の件、以上5件について日本共産党西宮市会議員団は反対いたします。以下、討論を行います。

 これら条例案は、子ども・子育て支援新制度(以下、新制度)がH27年4月から施行されるにあたり、認可基準など各種基準を、国が示す政省令に基づきながら市が定めるものです。
 日本共産党西宮市会議員団は、保育所の量とともに質の確保は不可欠であるとの立場から、議案476号、477号、478号について修正案を提案しました。まず、この修正案に関連して意見を述べます。
 修正案の趣旨は、保育を担う施設によって、職員の資格や配置、面積等の基準が異なることになれば、保育環境や条件に格差が生まれるため、現行の保育所最低基準をできるだけ各施設基準にいかせるようにするというものです。
 議案第476号については、現行の認可保育所において運用で実施している1,2歳児の保育士配置5:1を、条例上も明文化するものです。
 議案第478号については、新たに市が基準をつくり条例化する幼保連携型認定こども園の1,2歳児の保育士配置を、原案では6:1としているものを、現行の認可保育所で実施している基準に合わせ5:1とするもの。
 議案第477号は、これも市が新たに基準をつくる地域型保育事業です。修正案では保育の質を確保するために、家庭的保育事業、小規模保育B型、C型、並びに事業所内保育事業において、小規模保育A型と同様に、保育従事者はすべて保育士資格を有するものとしました。ただし、現在市で実施されている保育ルームと小規模保育所がそれぞれ新制度に移行できるよう、家庭的保育事業と小規模保育C型については、5年間の経過措置をとります。
 また、小規模保育A型、同B型、事業所内保育の、1・2歳児の保育士配置基準は現行の認可保育所の基準に合わせ5:1へ、加えて、すべて保育士資格とすることでA型とB型が同一となり3区分を設けるべきとする国の基準に合致しないため、小規模保育A型については、4・5歳児の保育士配置基準を原案の30:1から20:1へと修正するものです。
 
 委員長報告であったように、修正案についての賛成者は提案者である私のみで、すべて否決とされました。私は残念でなりません。特に、議案478号の認定こども園の認可基準は前年度の厚生常任委員会の施策研究テーマであり、10人の委員の内8人が1,2歳児への保育士配置については5:1がよい、すべきと主張されておられました。現在の委員会でも9人中7人が同じメンバーです。そのこともあって、私は4・5歳児の保育士配置も現行認可基準と同様に20:1すべきであるとの意見があり、そもそも子ども子育て支援新制度には賛同できないものですが、ここは意見を留保し、まとまる内容での修正案としたのです。できれば共同で提案できればと各委員さんにも働きかけをさせていただきました。「協力させてもらう」との言葉をいただいた委員もおられ、おおむね賛同を得たとの感触でしたが、どうしたことか、完全否決です。
 これでは何のための施策研究か、疑問を持たざるを得ません。かくあるべきとの理想を皆でかんかんがくがく議論し、一定の共通認識となり、いざ、その提案実現のまたとないチャンスが訪れたのに、かくのごとく逃げ腰になるなら、熱心に議論し合ったことに、はたして意味があったのか。当局とは対等の立場で、政策提起をするための施策研究テーマだったのではなかったのか。考えるほどに残念だし、疑問が頭をもたげますが、ここではこの程度にしておきます。
 さて、当局の5:1を非とする主な言い分は、国基準以上の5:1を規定すれば認定こども園への移行を検討する法人にとって「高い障壁になる」というものでした。委員会での当局の意見表明で副市長は、5:1にすることは高い障壁となり、そのため、移行が進まなければ待機児童が増加する恐れがある、とまで言われました。では、5:1にせず、6:1にすれば移行が進むのでしょうか。私はそうは思いません。すでに先日の議案質疑において、法人にとっての障壁は、何より低い公定価格にあることなどを申し上げました。本気で移行を進めようというのであれば、公定価格の引き上げなどについて国に働きかけをすべきと考えます。
 また、当局は法人の立場からのみ評価して5:1は障壁といいますが、こどもにとって、親にとっては、障壁どころか歓迎されるものであり、また保育士不足が言われる中、潜在的保育士の掘り起こしにおいてもプラスに働くものであります。これは当局も認めざるをえなかったものです。新制度は子どものため、子育て支援のための制度であるはずです。そうであるならどの場面においても「子どもにとってどうなのか」を考えるべきではないでしょうか。そうならないところにも、制度に問題ありと指摘せざるを得ません。
 修正案は否決となったものの、一方で、先日の議案質疑や修正案提出の一連の動きの中で、認可保育所と認定こども園の1,2歳児保育士配置5:1については、新制度移行後に、条例の見直しを行うと明言しておられます。条例の見直し、すなわち条例化を必ず実施していただくよう、強く求めるものです。

 次に、新制度について意見を述べます。なお、先日の議案質疑でも一定の意見を述べていますので、できるだけ重ならないようにしたいと思います。
 現行の保育所制度では、保育所を運営する経費は保育の実施主体である市から委託費として民間保育所に支払われます。これに対し、新制度は保育を利用した保護者に給付という名の補助金を支払い、保護者がその補助金(給付金)と保育料をあわせて施設・事業者に支払うシステムへと変わります。「現物給付」から「現金給付」へ、「直接契約・直接入所」へというものです。施設・事業者が保護者の代わりに給付金を受け取る法定代理受領という仕組みをとり、見掛け上のお金の流れは同じように見えますが、意味合いは全く違います。これまで公費は保育以外に使用できなかったものが、このシステム変更で、使途の規制がかけにくくなり、保育事業であげた収益を配当に回すことが可能となります。
 また、児童福祉法で規定する保育所認可制度の変更で、経済的基礎・社会的信望等の欠格事項に該当する場合や供給過剰な場合を除き、民間企業も認可することになります。営利目的の民間保育所では人件費比率が極めて低い傾向があり、保育者の待遇が劣悪となることから保育者の入れ替わりが頻繁となり、保育の質低下をもたらしている状況が報告されています。このように新制度には保育の市場化といわれる仕組みが導入されており、日本共産党は、保育や子どもを儲けの対象にすることに反対するものです。ただ、児童福祉法第24条1項により認可保育所については市町村の責任による保育が存続し、その部分については直接契約化されませんでした。また市は、同条2項において保育所以外の認定子ども園や小規模保育などの保育についても「必要な保育を確保するための措置を講じなければならない」という間接的ながら保育確保義務を負います。このことの重みを市は自覚し、ふさわしい保育行政を実施するよう求めます。
 2点目は財源の問題です。新制度によって新たに必要となる財源は約1兆1千億円とされ、消費税率の引き上げで国民が負担することになっていますが、4千億円超についてめどがたたず、確保したという7千億円も2017年度です。財源不足分は保育士の処遇改善などが先延ばしにされるとしています。子育て支援というなら必要な予算は消費税増税をあてにするのではなく、きちんと確保すべきです。
 3点目、待機児童対策についてです。新制度では当初、全国的にみて定員が余っている幼稚園を、省庁の違いという壁を崩し、保育所と一体化すれば待機児童問題は前進するとしていました。しかし、幼保一体化、一元化は様々な面から批判が出され、幼稚園と保育所の一体化を義務化することは断念され、新制度のもとでそれぞれ維持されることになりました。ただ、制度的な一体化でなく、施設として2つを一体化した認定子ども園を重視し、移行を促すとしています。市でも同様に待機児童対策として私立幼稚園の幼保連携型認定子ども園への移行をすすめ、任意である三歳未満児の受け入れにも協力してもらうという方針が示されていますが、認定子ども園への移行は簡単なものではないことは先日申し上げました。
 そうなれば今度は、施設要件や保育士資格要件等が緩和されている家庭的保育事業や小規模保育を増やすことで受け皿づくりが進められることにもなりそうです。委員会審査では、小規模保育事業について、全員が保育士資格者であるA型が望ましい、B,C型のA型への移行を目指してもらいたい、との答弁がありました。私からは、そう願うのなら宝塚市のように3年間でのB,C型からA型への移行を努力義務として明文化するなどの具体的対応を求めたところです。
 しかし、待機児童解消策の柱とすべきは、認可保育所をひきつづき整備することです。今、市には認可保育所が公私立合わせて68か所あり、今年4月1日現在の入所児童は6109人です。一方、保育ルーム49、家庭保育所5、小規模保育所9か所に、在籍は同じく254人。圧倒的に認可保育所が主流です。家庭的育事業等に対しては巡回指導や助言、研修を行い、今後は保育士資格取得への支援も行うとしていますが、児童福祉法24条1項が残ったことにより、直接に市に実施義務がある認可保育所を整備することの方が、子どもたちの安全や保育の質を確保する点でも、保育の量を確保する点でも合理性があり、効率的であると考えます。国民や政府の意に反してこのまま少子化が進行することになっても、現在の保育環境は先進国の中で際立っておくれており、認可保育所の整備を進めることは将来の保育環境向上につながるものであり、ちゅうちょする必要はありません。
 また、認可保育所の中でも公立保育所における保育は市のモデル的な保育水準、民間にとって目指すべき保育水準であり、公立保育所の民営化は行うべきではありません。
 以上、概括的に反対の理由と意見、要望を述べました。新制度は保育の市場化を進め、安上がりの保育を進めようとするものですが、新制度のもとでも児童福祉法の理念、原理は尊重されなければなりません。すなわち、第1条「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。」「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」、第2条、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童の心身ともに健やかに育成する責任を負う」、第3条、「前2条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべての児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない」のです。
 日本共産党は今後もその立場で、新制度の変更や改善を求めて奮闘することを述べて討論とします。