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杉山たかのりの討論
2015年03月20日

2015年度西宮市一般会計予算案に対する討論


 ただ今上程中の議案第566号2015年度西宮市一般会計予算について、日本共産党西宮市会議員団議は、2つの修正案については賛成、修正部分を除く原案については、反対をいたします。
 以下、意見を申し述べます。
 代表質問で、申しあげたとおり、新年度予算案を編成する際には、市民のくらしがどうなのか、そのことを念頭において、検討し、提案されるべきであります。
 国会では、日本共産党は組換え動議も出し反対した新年度予算案が衆議院を通過しましたが、その中身はどうでしょうか。
 安倍政権になって3年連続増額され、4兆9801億円と5兆円に迫る規模になった軍事費は、最新鋭の輸送機オスプレイ、F35戦闘機、護衛艦、水陸両用車などを自衛隊に装備する内容で、まさに「海外で戦争する国」になるための、異常な軍拡予算です。
 その一方、福祉のための社会保障予算は、高齢化などによって見込まれていた「自然増」予算にまで手をつけ、医療も介護も年金も、大幅に後退させられています。「自然増」予算の削減は、「医療崩壊」や「介護難民」をもたらした小泉純一郎内閣以来の方針で、消費税増税の際の「社会保障のため」という公約さえ完全に投げ捨てるものです。
 介護施設の運営を苦境に追い込む介護報酬の引き下げ、高齢者の医療費窓口負担の引き上げ、年金額の抑制や生活保護のいっそうの改悪などが目白押しです。物価上昇や実質賃金の低下など安倍政権の経済政策「アベノミクス」による国民の暮らしの悪化に、拍車をかけるものです。
 税制「改正」に盛り込まれた法人税減税は、利益が出ている大企業の負担を軽くするために赤字企業や中堅企業の負担を増やす、大企業本位のきわみです。大企業への減税は2年連続で、減税額は来年度には1・6兆円に達します。
 こうした大企業減税とあわせ、安倍政権は、今年10月からの実施を延期した消費税の10%への引き上げを2017年4月から実施することを、税制「改正」法案に盛り込みました。景気が悪化すれば増税は見送る「景気判断条項」まで削除しており、まさに問答無用で消費税増税を押し付ける態度となっています。
 大企業や大金持ちばかり優遇し、国民の生活を顧みないひどいものとなっています。
 このような下での2015年度西宮市当初予算案は、国の悪政から市民生活をまもる防波堤とはなっていません。

 まず、修正案について述べておきます。
高齢者交通助成金の4割削減、5000円の助成金を3000円に削減、特定疾病患者見舞金の廃止を撤回させる修正案であり、これはわが党議員団だけが、代表質問の中で、取り上げ、福祉切り捨てだと、撤回を求めたものであります。質疑の中で、この重大な福祉の切り捨てを、市民に情報をかくし、やり過ごそうとした西宮市の姑息な実態も明らかにしました。今回修正案として西宮市の蛮行を許さなかったことは、西宮市議会の良識を示すものと言えます。

 高齢者交通助成金については、現行制度を維持するとともに、我が党議員団が提起している、高齢者の外出支援策としてふさわしい制度、敬老パスとの併用など、しっかりと検討していただきたいと思います。

 特定疾病患者見舞金制度について、廃止の理由として従前は法に基づかない予算事業であった医療助成が今年1月より法制化されたこと。対象疾患が従来の56疾病から今年1月現在で110疾病、夏ごろには約300疾病に拡大され、認定患者数はおよそ2倍になる、西宮においては現在の約2700人から約5200人へと増え、継続する場合は財政的負担が大きいこと、などを挙げています。
 しかし、法制化された医療助成の内容を見てみると、1つに、一部負担の月額限度額を決める際の所得階層区分が、これまでの生計中心者の所得から、世帯全体の所得に変更される。2つに、これまでは医療費とは別に薬代は無料であったものを、薬代も含めて医療費とすること、3つに、入院時の食費について、従前は医療費に含め、限度額の範囲内であったものが、既認定者は3年間の経過措置があるものの、全額が自己負担へと変更、などとなっています。結果、既認定者にとっては、医療助成の法制化で自己負担が重くなっており、見舞金支給の根拠がなくなったとは到底言えません。また、市の単独事業であり、財政的負担が大きいといいますが、対象者増で増える予算額は、6400万円程度です。西宮市の財政力をもってすれば継続は不可能ではありません。
 以上のことから2つの修正案について賛成するものです。

 次に、修正部分を除く原案について、 具体的な反対ヵ所、問題点等を指摘しておきます。

1、UR借り上げ市営住宅問題についてです。
 代表質問、一般質問でも明らかにしましたが、西宮市が継続入居を一切認めないという方針を改めないことは、阪神淡路大震災の被災地でも異常な対応となっており、通常国会でわが党の堀内照文衆議院議員が予算員会で取り上げていますが、質問終了後、自民党の大島予算委員長も「聞いていたら、かわいそうだ。追い出しちゃあ」と言われたそうです。
 このような事態になった最大の原因は、公営住宅法第25条2項、すなわち入居決定時に借り上げ期限の満了時と、その時に明け渡す旨を通知する、事前通知制度を怠ったことであり、西宮市が法律を守っていなかったことです。市当局は、「周知できている」と強弁していますが、「寝耳に水」が入居者の声であり、建設分科会では、「なぜ事前通知をしなかったのか」の問いに「当時のことはわからない」と答弁しており、わからないのに周知できているはずがありません。しかも、事前通知よりも「募集パンフレットに記載している方が重要だ」と答弁したことは、西宮市が法律は重要視しないと宣言したことに等しく、自治体としての資格がない驚くべき実態です。
 西宮市は、このUR借上げ市営住宅に関しては、「偏向報道対応」、メディアの取材にとどまらず、一般市民もふくめて広報課によるビデオ撮影を無条件に行うほど、目の敵にしています。また、なんの落ちども、罪もない入居者に対して、まるで罪人かのように、訴訟をたてに、おどしてまで追い出そうとしています。
 このような対応は直ちにやめて、他の自治体同様に、「継続入居」の方針を確立するよう強く求めます。現在の方針は、市長選挙直前の公開質問により、今村市長自身が「他の方法をとるべきだ」と答えたように、誤ったものであります。
 加えて、市営住宅をさらに削減することについても反対するものです。

2、保育行政について、3点の意見、指摘、要望を申し上げます。
 1点目は、むつみ保育所・児童館と芦原保育所の移転合築計画についてです。
 市は、今年1月、むつみ保育所・児童館と芦原保育所を移転、合築し、耐震化をはかる計画を、2つの保育所の保護者らに説明しました。
 これまで、それぞれの保育所で2回ずつの説明会が持たれたとのことですが、その上でなお、合築を進めるうえで疑問や不安がたくさんある、と今議会に総数1902筆の署名を添えて、請願が出されました。特に、問題となっているのが、合築した場合の保育所規模です。2つの園を合築することによって、児童定員は210名の予定とされていますが、市内の公立保育所の最大定員は130人、民間保育所でも入所数は最高で185人で、200人を超す保育実績はありません。保育所の適正規模について基準はありませんが、多くの専門家は「100人以下」と提言しています。
 200人を超す大規模園では、保育者が子どもや保護者を十分把握できないのではないか、安全でていねいな保育ができないのではないか、と不安に思うのは当然です。その他、立地予定地が危険な場所であること、児童館の移転は利用者に説明がされておらず、校区が変わることによる影響はどうなのか、などなど、市には当然これらの不安や疑問について、説明責任があります。
 市は、今後、現在の合築計画案に固執することなく、昨年8月に説明する予定であった計画案も含めて、ていねいに説明をし、保護者や保育関係者らの意見要望に耳を傾け、老朽化耐震化対策を進めるよう、求めます。
 2点目は、保育所保育料引き下げについてです。党議員団では、一貫して引き下げを求めてきましたが、新年度予算案では、所得の高い階層の3歳未満児で、約8000万円の引き下げとなっています。結果、阪神間他都市との比較で、3歳未満児の保育料最高額は、最も低くなったとのことですが、一般質問でも指摘している通り、阪神間は全国でも高い水準にあります。全体として高いベースにある保育料のさらなる引き下げを求めます。なお、保育料や育成センター利用料などの設定にかかわる税法上の寡婦控除を未婚の母子父子にも適用するみなし寡婦控除については2016年度に実施したい旨、分科会で表明されました。2016年度を待たず今年度にも実施できるよう強く求めておきます。
 3点目は、西宮市子ども・子育て支援事業計画(案)についてです。4月からスタートする子ども子育て支援新制度では、様々な基準の多種多様な幼児期の学校教育・保育施設が併存します。党議員団は、昨年9月議会、条例化にあたって少しでも質の改善が図れるよう、修正案を提案しましたが、このたび示された西宮市子ども・子育て支援事業計画(案)には、この修正案の趣旨を踏まえた内容が盛り込まれることになりました。すなわち、小規模保育事業では、職員配置における有資格者の割合が高いA型を中心に整備を進めること、保育ルームや小規模保育等に対し、従事者については、すべて保育士資格取得者とするよう努めていくこと、幼保連携型認定こども園について、認可保育所と同様に、1,2歳児に対する職員配置を5:1に、4歳以上児に対する職員配置を20:1にするよう努めること。さらに、育成センターについては、40名定員の実施、静養スペースの確保、児童1人当たり面積基準の引き上げ等、国基準の早期実現をめざすこと、などです。
 これら計画(案)の内容が確実に実施されるよう、また、引き続き、認可保育所整備を含め待機児童解消にあたるよう求めます。

3、マイナンバー制度についてです。
 マイナンバー制度は、赤ちゃんからお年寄りまで住民登録をしている全員に生涯変わらない番号を割り振り、社会保障や税の情報を国が一括管理するものです。
 政府は、今年10月から本格実施のため、自治体や企業に準備を急がせていますが、ほとんどの国民は計画を詳しく知らず、むしろ不安を抱いています。内閣府調査では、プライバシー侵害の恐れが32・6%、個人情報不正利用被害の心配が32・3%、国による監視の恐れが18・2%と、いずれも「特に不安がない」の11・5%を上回りました。政府がいくら「情報保護のさまざまな措置をとっている」と説明しても懸念と不安は消せません。マイナンバーそのものがプライバシーを危険にさらす仕組みだからです。すでに「社会保障番号」を導入しているアメリカでは個人情報の大量流出・不正使用が大問題になっています。国民の権利を危険に陥れる制度は、実施を強行するのでなく中止を決断し、廃止へ踏み出すべきです。国の制度であっても地方自治体としての決断を求めるものです。

4、市長の政治姿勢についてです。
 代表質問で私は、最後にこのように述べました。
キーワードだと感じたのが「正確な情報の提供」「市民の知る権利」です。 例えば「偏向報道」問題で、市長は「公正、正確な行政情報を伝えるため」と言いながら、事実上報道規制で市民の知る権利を侵害する。
 借上げ住宅問題では、市が法律に基づく「正確な行政情報」を知らせなかったために大問題となり、「情報提供」の名のもとに訴訟という情報をあえて知らせ、「脅し」をてこに、住民追い出しをはかる。
 高齢者交通助成金等、福祉の切り捨てを、議会を含め、市民に知らせずに、不意打ちで突破しようとする。市の財政情報を正確にしめさず、「危機的状況」などという誤った情報を流布する、など、今村市政の下では、情報を1市民よりも強い権力を持つ市長と市行政が、都合勝手に、都合の悪い情報を隠し、マスメディアに規制をかける、都合の良い情報を市政ニュースやマスメディアを使って垂れ流す、これが今村市政の実情です。本来まっとうに、正確な情報提供、市民の知る権利を守るべきですが、それができない。
 ここには、市政推進が市長の野望から出発しているため、市民の生活の実情、何を市民が願っているのか、市民の声を聞く、という姿勢の欠如があるのではないかと思います。
 「誹謗中傷する市民は市政報告会から退場させますよ」「市の都合の良いことを報道しないマスコミは排除しますよ」「市の言うことを聞かない市民は、裁判で追い出しますよ」このような、強行的な排除の論理から、市民の幸せはうまれません。

 いずれ、市民との矛盾が表れる、ともうしあげましたが、すでに3月議会中に明確になりました。

 偏向報道対応では、広報課によるビデオ撮影では「肖像権の侵害」などいろいろな問題が噴出してきました。直ちに撤回を求めます。この問題については、後の日程で上田議員が総務分科会での質疑内容を含め明らかにします。
 同時に、市が発信する情報については、市の都合の良い情報のみを発信するなどの偏ったあり方を改めて、正確な情報を市議会、市民に伝えるよう求めるものです。
 また、人事では、9月議会教育委員会委員の選任に続いて、政策アドバイザーでも、いわゆる「お友達人事」が実施されたことは遺憾であります。
 民間委託、民営化とする、いわゆる民間活力の導入は、ただちにやめるべきです。
 3月議会を通じて、西宮市が地方自治体としての民主的な機能が破壊されてきているのではないかと危惧しています。
 地方自治体を企業にたとえ、自らを経営者、住民を客とする、この市長の思想は、地方自治の本旨とは相容れません。議会軽視、住民無視の原因となります。
「福祉の増進」という言葉を百回唱えても、福祉の心のない市政では、「効率」の名による、あるいは「持続可能な」の言葉による、福祉の切り捨てしか出てきません。
 今の西宮市には、行政執行について、法律や規範に基づいて行われているのか、市役所内部の手続きはどうか、市民にどう正確に情報を伝え、意思を汲み取るのか、何が正しくて何が間違っているのか、など、地方自治体として正しい判断をする、民主的な手続きを踏むしくみと良識があきらかに失われています。ですから、やることなすこと、間違いだらけになっているのではないでしょうか。 
 このような誤った政治姿勢は、ただちに改めなければ、取り返しのつかない失敗を引き起こすでしょう。その意味では、UR借り上げ市営住宅問題は、法律どおりできなかった誤りを、さらに誤った方針で尻拭いをしようとしたため、いまや取り返しのつかない失敗となってきています。3月議会では「偏向報道」をはじめ、「肖像権の侵害」など報道機関対応にとどまらず、いまや市のシステムにまでその悪影響が現れてきているのではないでしょうか。強く警鐘を鳴らすものです。

 最後に、要望を申し上げます。
 まず、義務教育における少人数学級の拡大についてです。2011年から35人学級が順次拡大される予定だったものが、安倍政権になりストップしていましたが、通常国会で安倍首相は「35人学級の実現に向けて努力していきたい」との答弁があり、注目すべき重要な変化となっています。現在、兵庫県では小学4年生まで35人学級が実施されており、中学3年生まで35人学級を拡大できるよう兵庫県教育委員会と協議されるよう強く求めます。
 そのためにも教室不足の解消、さらには、乱開発規制のためのまちづくり基本条例の制定を求めるものです。
 子どもの医療費無料制度については、早期に所得制限の撤廃を求めるものです。
 西宮北有料道路の無料化については、3年前倒しでよしとせず、さらに実施を早めるよう求めます。また、名神湾岸連絡線は環境破壊の不要事業であり、整備の中止を求めます。
 最後に、西宮市の全ての施設におけるトイレの洋式化を計画的にすすめるよう求めます。

 以上、日本共産党西宮市会議員団の修正案に対する賛成討論、修正部分を除く一般会計予算原案に対する反対討論とします。