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上田さち子の賛成討論
2015年07月10日

戦争法案の廃案を求める請願の賛成討論


 ただいま上程中の「請願第3号 「安全保障関連法案」のすみやかな廃案を求める意見書についての請願」及び「請願第4号 安全保障関連2法案(国際平和支援法案、平和安全法制整備法案)の廃案を求める意見書を国に提出することを求める請願」以上2件につきまして、日本共産党西宮市会議員団は直ちに採択すべきという立場から、両請願に対する賛成討論を行います。

 請願第3号は、全日本年金者組合西宮支部から、請願第4号は、新日本婦人の会西宮支部からそれぞれ提出され、各団体から意見陳述もされました。いずれも、5月15日に国会に提出された「安全保障関連法案」は、これまで政府自身が平和憲法のもとでは憲法違反とされてきた集団的自衛権の行使を可能にし、アメリカが行う戦争や軍事行動に、世界のどこでも、いつでも、切れ目なく参加させるというもので、まさに「戦争法案」というべき危険なものと告発しています。そして、70年前に終わった戦争の反省からつくられた日本国憲法、特に第9条で、日本が再び「戦争する国」にならないことを固く決意し、世界に平和国家であることを宣言したにもかかわらず、「戦争法案」は、この憲法9条を破壊に導くものと厳しく指摘、請願事項として「安全保障関連法案」すなわち「戦争法案」のすみやかな廃案を求める意見書提出を求めておられます。
 とくに、請願第3号の年金者組合西宮支部から提出された請願では、西宮市が1983年・昭和58年12月10日に「西宮市平和非核都市宣言」を行った自治体であることから、この宣言をも危うくするのがこの「戦争法案」であると指摘され、「平和非核都市宣言」を全うするためにも、西宮市議会として廃案を求める意見書提出をと強調されました。いずれも憲法を順守する立場に立った主張であり、日本共産党西宮市会議員団は賛成するものです。

 請願審査では、日本共産党西宮市会議員団の杉山議員以外、まったく質疑はありませんでした。しかし討論では、反対の立場で蒼士会、政新会、維新の党、公明党議員団のみなさんが、用意されたペーパーをとうとうと読み上げられました。要約しますと @北朝鮮や中国、あわせてテロの脅威が増し安全保障環境が厳しくなってきている Aこれらの国では核兵器開発が進み、軍事技術もますます向上してきている B国民の生命と財産を守ることは、政府の責任である C日本がこれまで平和でやって来れたのは、憲法9条ではなく自衛隊の存在とアメリカとの友好関係があったから D憲法でも集団的自衛権は主権国として当然の権利として認められているなど等でありました。

 そうであるならば、各種世論調査で6割もの国民が「戦争法案に反対」と明確に答え、8割もの方々が、政府は説明責任を果たしていないとしているのでしょうか。また、圧倒的多数の憲法学者や元内閣法制局長官経験者が憲法違反と厳しく指摘するのでしょうか。あらためて、国会での論戦では何が問題になり、何が明らかになったか見てみたいと思います。

 今年は戦後70年ですが、日本の自衛隊は半世紀以上にわたり一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出してきませんでした。これは自衛隊ができたことやアメリカとの同盟関係があるからと主張する政党もありますが、そうではありません。ここには憲法9条の偉大な力が働いてきたことは国際的にみても明らかです。また、この憲法のもとで、政府が戦後一貫して「海外での武力行使は許されない」という憲法解釈をとってきたことも大きな要因です。ベトナム戦争時には沖縄の米軍基地からベトナムを攻撃するアメリカの戦闘機が飛び立ちましたが、日本の自衛隊は米軍とともに戦争には参加しませんでした。イラク戦争時にも、自衛隊が派兵されたのは「非戦闘地域」に厳しく限定されてきたのです。ここに、国際紛争の解決のために武力の行使は禁止するという憲法9条の力が働いたことが証明されています。
 憲法第9条には次のように規定されています。
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。 
 以上の通り明確です。これに照らし安倍自公政権による「戦争法案」は違憲性が明白といわなければなりません。

 世界から見ると、戦争法案とその推進勢力には三つの異常があるといわなければなりません。
 第1は、「非国際性」です。たとえば「戦闘地域」での兵たん活動について、武力行使と一体不可分であり戦争行為の不可欠の一部であることは世界の常識であり軍事の常識です。しかし安倍政権は「後方支援」という日本政府だけの造語で、決して前方にはいかない、攻撃されそうになったら逃げる…というゴマカシに終始。さらに武器の使用はするが武力の行使にあたらないと、世界のどこにも通用しないいいわけを展開する始末。集団的自衛権発動の要件として政府は、「日本と密接な関係にある他国に対する武力行使が発生し、日本が「存立危機事態」に陥る」ことをあげ、この憲法解釈の変更を行った唯一最大の理由として「安全保障環境が根本的に変容した」としているのです。
 これに対し日本共産党国会議員団が「「安全保障環境が根本的に変容した」というが、他国に対する武力攻撃によって、政府の戦争法案が言うような「存立危機事態」なる状態に陥った国が、世界に一つでもあるのか」との質問に「事例をあげるのが困難」と岸田外務大臣が答弁しました。一つも実例があげられない。すなわち憲法解釈を変更した理由である戦争法案の「立法事実」が根底から崩れたというのがこの間の国会論戦の到達であります。

 第2は、「対米従属性」であり、アメリカの無法な戦争に日本が参戦する危険です。ご承知の通りアメリカという国は先制攻撃を国家戦略の基本としている国です。先ほども述べたとおり、戦後アメリカは、ベトナム侵略戦争、イラク侵略戦争をはじめ、数多くの先制攻撃の戦争を実行してきました。いまでは、ベトナム侵略戦争の口実となったトンキン湾事件はアメリカによるねつ造・でっち上げであったことは、公開されたアメリカ政府の公文書やベトナム侵略戦争遂行者であったマクナマラ国務長官の回顧録でも明らかです。
 イラク戦争では大量破壊兵器があるからと空爆を開始しましたが、結果、大量破壊兵器は出てこなかったことは議場のみなさんもご承知の通りです。しかし、時の日本の政府は一度たりとも、アメリカの先制攻撃に異を唱えることもなく支持・理解を与えてきたことは歴史の事実です。これまでは、アメリカの要求があっても「憲法上、集団的自衛権は行使できない」として断れましたが、この戦争法案が成立すればそうはいきません。先制攻撃とは、攻撃されていない段階で相手国に武力行使をすることで侵略そのものです。まさに日本が、アメリカに言われるまま侵略戦争を行う国になってしまうのです。
 
 第3は、「歴史逆行性」であり、日本の戦争を反省しない勢力が、戦争法案を推進する危険をもっていることです。
 党首討論で、日本共産党の志位和夫委員長が、ポツダム宣言を引用し、過去の日本の戦争を「間違った戦争」との認識を問われた安倍首相は、「まだ、つまびらかに読んでいない」と言いつつ、かたくなに「間違った戦争」と認めることを拒み続けました。ご承知の通りポツダム宣言は13項目からなっているものですが、その第6項目目に「日本国民を欺いて世界征服に乗り出す過ちを犯させた勢力を永久に除去する・・・」と、明確に日本は間違った侵略戦争を行ったことが明記されています。これを無条件に受け入れて第2次世界大戦を終結させ、日本は国際社会に復帰したのです。これが日本と世界の第2次世界大戦後の国際秩序そのものです。
 ところが安倍首相は「侵略戦争」はおろか、「間違った戦争」と認めることすらしない。日本の過去の戦争への反省のない勢力が、憲法9条を壊して「海外で戦争する国」への道を暴走する。これほどアジアと世界にとって危険なことはありません。

 いま、戦争法案を推進する勢力は、憲法でも集団的自衛権は主権国として当然の権利として認められているとする根拠に、砂川判決や1972年の政府見解を持ち出していますが、政府見解はこうなっています。つまり「平和主義を基本原則とする憲法が、自衛のための措置を無制限に認めているとは解されない。あくまでも国の武力攻撃を受けることによって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫・不正の事態に対処し、国民の権利を守るためのやむを得ない措置としてはじめて容認されるものであるから、その措置は、その事態を排除するためとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものである」と、明確に個別的自衛権の行使のみを認めたものです。これを無理やり集団的自衛権行使容認まで拡大するために持ち出したのが「安全保障環境の変化」という、まったく根拠も示されない空論です。一内閣が勝手に解釈変更することは到底許されないことです。

 また、砂川判決とは1955年に始まった米軍立川基地拡張反対闘争(砂川闘争)で、1957年7月8日反対同盟を支援する労働者や学生が柵を壊し基地内に入ったことで、日米安保条約に基づく刑事特別法違反の容疑で逮捕された23名のうち、7名が起訴され東京地裁での裁判になり、60年安保の直前である1959年3月30日、伊達裁判長が「米軍が日本に駐留するのは・・・憲法9条が禁止する陸海空軍その他の戦力に該当するものであり、憲法上その存在を許すべからざるものである」として、駐留米軍を特別に保護する刑事特別法は憲法違反であり、基地内に立ち入ったことは罪にならないとして、被告全員に無罪を言い渡しました。これがいわゆる伊達判決です。

 この判決にあわてた日本政府は、高等裁判所を飛び越え跳躍上告で最高裁に事件を持ち込み、最高裁では田中耕太郎長官が同年12月16日、伊達判決を破棄し東京地裁に差し戻しをしたのです。しかしこの時最高裁は、刑事特別法を「合憲」としたわけではなく「法的判断は司法裁判所の審査になじまない。日米安保条約の締結権を有する内閣及び国会の判断に従うべく、終局的には、主権を有する国民の政治的判断にゆだねられるべきものである」として最高裁判所・自らの憲法判断を放棄し、司法の政治への従属を決定づけたのです。この1か月後1960年1月に、日米安保条約改定調印が行われ現在に至っています。伊達判決をくつがえすために、判決翌朝にはマッカーサー大使が藤山外務大臣と会い、「伊達判決について、日本政府が迅速に高等裁判所を飛び越えて跳躍上告を行うよう」示唆し、外務大臣がそれを約束。またマッカーサー大使自ら田中最高裁長官と会って「本件を優先的に取り扱うこと」などを報告させました。このように、伊達判決が及ぼす安保改定交渉の影響を最小限にとどめるために、伊達判決を最高裁で早期に破棄させる米国の圧力・日米密議があったことは、すでに公開されている米国公文書で今日ではだれもが知るところです。
 この結論からも、砂川判決が集団的自衛権を認めているとは到底言えないことは明らかです。
 
 さて今日、日本と中国や北朝鮮など近隣諸国との間でいくつかの緊張があるのは事実です。だからといって、短絡的に武力と武力の衝突という事態は、絶対に避けなければなりません。世界では今、紛争はあっても、それを戦争にしないための様々な取り組みが進んでいます。東南アジア諸国連合―アセアンーは、東南アジア友好協力条約TACを締結し拡大しています。その流れを日本や中国、朝鮮半島など北東アジアにも広げることこそ必要なことではないでしょうか。その立場から日本共産党は北東アジア平和協力構想を提唱しているところです。
 
 以上のように、憲法違反が明明白白となった戦争法案は、廃案するしかありません。安倍自公政権は、戦後最長の国会会期延長を強行しましたが、6割以上の反対の声が大きく広がっているもとで、まちがっても数の力で戦争法案の強行は絶対許されません。それこそ主権者である国民をないがしろにする日本の民主主義破壊そのものです。西宮市議会としても、日本が再び過ちを犯さないために、良識ある結果を出していただくことを呼びかけまして、日本共産党西宮市会議員団の賛成討論といたします。