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野口あけみの一般質問
2015年09月04日

「子どもの貧困対策」について


 8月24日の神戸新聞に「子どもの貧困 大規模調査  東京・足立区 就学援助率高く 小1の5300世帯対象」という見出しの記事が掲載されました。貧困の連鎖を断ち切ろうと保護者の収入や子どもの生活習慣などを調査し、貧困が子どもの生活に与える影響を分析し、有効な対策づくりに役立てようとするものです。自治体が貧困対策で特定の年齢に対する大規模調査をするのは初めてとのことでした。
記事によると、足立区では就学援助を受ける小中学生が全国平均の約2倍、約36%を占めるなど、貧困の拡大に危機感が高まっていた、とのこと。女性区長は、「実態をあぶり出すことで、どこで貧困の連鎖を食い止められるかを見つけたい」としています。
足立区の子どもの貧困対策はこれまでも注目されていました。今年度から子どもの貧困対策に取り組む専門の部署を設けています。
こうした足立区の取組みの背景には、全国的にも子どもの貧困が広がっていることがあります。
平均的な可処分所得(いわゆる手取り収入)の半分を「貧困ライン」と呼び、2012年の貧困ラインは122万円でしたが、この世帯にいる18歳未満の割合を示す「子どもの貧困率」は、2012年に過去最悪の16・3%、子どもの6人に1人が貧困です。母子家庭などの「ひとり親世帯」の子どもの貧困率は54・6%、2人に1人を超えています。国際的にも日本のこどもの貧困率は先進国のなかでも高く、OECD・経済協力開発機構が昨年公表したデータで比較すると、加盟する34か国中9番目に高く、ひとり親世帯では最悪の水準、まさに子どもの貧困対策は待ったなしの状態にあるのです。
そこで、2014年1月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が施行され、政府は同年8月に必要な施策をまとめた大綱を決定しています。子どもの貧困対策推進法では基本理念を「子どもの貧困対策は、子ども等に対する教育の支援、生活の支援、就労の支援、経済的支援等の施策を、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として講ずることにより、推進されなければならない」とさだめ、地方自治体の責務として第4条で「地方公共団体は、基本理念にのっとり、子どもの貧困対策に関し、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。」と決めています。
子どもの貧困対策は、貧困がより進んでいる足立区だけに求められるのではなく、この法律によって、全国の地方自治体が取り組むべき課題です。
西宮市においても、就学援助は昨年、平均で16・4%、全国平均の15・6%を上回っています。18歳未満の生活保護受給者数は、ここ数年1200人を超える規模で、保護受給者の15%前後を占めています。
ところで、「子どもの6人に1人が貧困といっても実感がわかない」というのも事実です。日本人の貧困のイメージは、食うや食わずの難民キャンプの子どもたちというようなものだと思いますが、実際に食べるものに困っているような絶対的貧困も現に日本でも存在しますが、ここでいう貧困は平均の半分以下というような「相対的な貧困」を指しています。
少し前のNHKの番組で特集をしていました。そこで紹介された子どもの声に次のようなものがあります。
小学生の女の子  お母さんが離婚。朝は早くから清掃の仕事、夜も働いている。遅く帰ってきて「つらいから仕事変えたい」って言っています。早く私が働かないと、そればかりを考えています。
小学生の男の子  お父さんが突然リストラ。お母さんと一緒に必死に仕事探し。だから、弟や妹の世話は僕が。大好きなサッカーもやめました。給食の残りのパンをみんなに見られないように持ち帰っています。
中学生男子    友達は高校に行く。僕はあきらめた。「授業料ただ」といわれても、お金はかかる。入学金、制服代、定期代……、先生たちにも気付いてほしい。誰か助けて。

この番組では、日本社会の事情がどんどん厳しくなっている背景があるということを指摘しています。ある日突然リストラされるお父さんもいる、再就職しようにも正規社員は難しい時代。ある日収入が劇的に減ってしまうことが今の日本では珍しくなくなった。
他の国では、両親の失業で子どもが貧困というケースはあるが、日本では、親が働いているのに貧困から抜け出せないという例が突出して高い。
ひとり親の場合、子育てしながらだと正社員が難しく非正規が多い、給料が低いので掛け持ちが当たり前。親が働きづめ、朝も夜も親がいない。そうした中で子どもが孤独になり内向きになってしまう。学校で救われるかというと、先生は多忙化し向き合いたくても向き合えない。
子どもたちは、がんばっても抜け出せない、自己責任を言う人がいるが果たしていえるか、と番組ではそこまで言っています。
子どもの貧困を研究している立教大学の湯澤教授によれば、貧困は子どもの内面にもいろいろな影響を与えるといいます。「自分はダメな人間だ」「自分がいるから親に迷惑をかけているんじゃないか。自分が我慢しなきゃいけない」高校生・大学生になれば、「自分が生きているだけでお金がかかる」「そんな自分が生きていてもいいんですか」と、そこまでの声を聴いたと番組では語っておられます。
子どもの貧困は、家庭の経済的困窮から端を発して、不十分な衣食住、学習環境の不足、低学力・低学歴へ、そして子どもの内面には、低い自己評価、不安感・不信感、孤立・排除を生み、場合によれば虐待・ネグレクトなど、複合的なものとしてあらわれます。
また、子どもは自ら困っていると訴えません。自分の窮状はむしろ「恥ずかしい、隠したい」ものであり、そのことがいじめや仲間外れの原因にもなるので隠すのも当然です。
こうした子どもの貧困の実態をつかみ対策を考えるうえで、早期発見がまず大事です。みずからSOSを出していない、出せない子どもに早期に働きかけるには、子どもたちが安心して過ごすことができる居場所が必要。そしてそこに、子どもの貧困という問題をよくわかって(これは学ばないとわからない)アンテナを張って、ピンとくる力をもっている人がいないと機能しないといいます。
今、全国では、学習の力をつけ、居場所ともなっている各学校での取り組みや、無料塾などといった民間の取り組み、食=食べることを支援する「こども食堂」などのとりくみなども始まっています。
一番おおもとにある経済的困窮の解決は、国の政治の転換が不可欠だと考えますが、それにしても手をこまねいている訳にはいかない。あらゆる複合的な取り組みを、地域の力や民間の力も借りて、市が行うことを求めたいと思います。

そこで質問です。
1、子どもの貧困対策推進法による市の施策策定と実施のために、まずは専門の部署を設け、実態をつかむところから始めるべきだと考えるがどうか。

次に、幾多ある具体的な課題から、経済的支援のうち2つに絞って質問します。
このテーマの2つ目として、就学奨励金についてです。学校教育法により、「経済的理由によって、就学困難と認められる保護者に、市町村が必要な援助を与える」もので、給食費や学用品などの学校教育活動での必要経費の一部を援助する制度です。財源については、もともとは国庫補助事業でしたが、ほんの一部を除いて2005年に国庫補助がなくなり一般財源化されました。まず、市における受給状況、特徴を1点目に伺います。

@支援の対象者となる基準は、生活保護基準を参酌して決められていますが、生活保護の生活扶助費がこの数年で3回引き下げられています。生活保護引き下げ前にはこの影響を避ける旨、文科省が通知していましたが、その後の就学奨励金制度の基準所得はどうなっているか。
A子どもの貧困対策推進法や大綱から見れば、この就学奨励金制度は、国が責任をもって国の制度として行われるべきものだと考えます。国に要求すべきではないか。

3、寡婦控除のみなし適用の問題です。以前によつや議員が本会議で取り上げられ、私も委員会や予算分科会等で取り上げてきました。婚姻歴のあるひとり親が所得税を納めるときに適用される「寡婦控除」を、未婚のひとり親にも「みなし適用」し、保育料等の負担軽減をはかり、いくばくかでも経済的負担を減らすべきです。お答えください。