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佐藤みち子の反対討論
2015年10月02日

2014年度一般予算及び決算認定の件について


 決算認定討論
 ただいま上程中の決算認定のうち、認定第5号2014年度平成26年度西宮市一般会計及び特別会計歳入歳出決算認定の件について、日本共産党西宮市会議員団は反対します。
 以下、討論を行います。

 2015年9月19日未明、国会では「安保関連法案」いわゆる「戦争法案」が自民・公明の数の力で強行採決されました。この法案に対しては、日本弁護士会、憲法学者、歴代の内閣法制局長官、最高裁判所判事等から「憲法違反である」と明言され、世論調査では6割の国民が反対、8割の国民が政府の説明は不十分との結果が世論調査で示されています。  
 憲法を守る立場にある国会で違憲の法案を自民・公明が強行採決したことに国民の怒りはますます大きく広がっています。この問題では若者や子育て中の母親等、今までこういった運動や政治的な発言をしてこなかった人たちが、一人一人自分で考えデモや集会に参加をしていました。憲法守れ、民主主義、平和を守れという国民の声は今後ますます大きくなるでしょう。その中心に若者が立っていたことに大いなる希望を持った人はたくさんいたのではないでしょうか。
 この「戦争法」については、2015年6月議会で今村市長は「国が議論をしている最中です。我々としてはその結果を待つ立場にあります。安全保障に関する問題は西宮議会の議論になじまない」と切り捨てました。これが、憲法を遵守し市民の命と暮らしを守る自治体の長としての発言かと情けない限りです。
 
 さて、2014年度決算は、一般会計、特別会計合わせて、歳入で計2,512億8,055万円、歳出で2,486億8,462万円、翌年度に繰り越すべき財源7億1,618万円を控除した実質収支額は18億7,974万円の黒字となりました。一般会計の黒字額は4億8,297万円です。歳入の根幹となる市税は844億714万円で企業収益の改善や個人所得の増などにより13億9,874万円増加しています。地方消費税交付金については消費税率の引き上げにより47億795万円で9億1,274万円増加しています。これらに伴う基準財政収入額の増額等により地方交付税は8億9,574万円減少しています。
 歳入では財政基金繰り入金等で18億8,656万円増加していますが財産収入は土地売払い収入の減により16億1,748万円減少しています。
 歳出では、アサヒビール西宮工場跡地取得に伴う土地開発公社貸付金等の増などにより諸支出金で55億5,553万円、臨時福祉給付金及び子育て世帯臨時特例給付金の給付事業の増などにより民生費で44億3,668万円、それぞれ増加しています。また、特別会計では、歳入総額825億2,317万円、歳出総額は811億2,641万円です。保険給付費の増などにより、国民健康保険会計で5億3,020万円、介護保険会計で11億9,292万円、後期高齢者医療広域連合納付金で3億6,336万円増えています。
 市民要求との関連では、国民健康保険料抑制に引き続き10億円の繰り入れ、住宅リフォーム助成制度の本格実施、精神障害保健福祉手帳2級保持者の医療助成を入院から外来にも拡充、高齢者・母子世帯の医療費助成の市単独事業の継続等は評価をするものです。
 基金の状況は、2015年3月末では、財政・減債基金を合わせると220億円になります。アサヒビール西宮工場跡地取得のため土地開発公社に貸し付けている55億円を合わせると約280億円もの資金余裕となります。
 一方、市民は、2014年4月に消費税8%への増税が強行され、暮らしはますます苦しくなり先行きに大きな不安を抱えています。地方自治体の本旨は「住民の福祉の増進」です。今後も無駄な公共事業にはつぎ込まず、200億円を超える基金を住民の暮らしを守ることに有効活用するよう求めます。
 以下、具体的な事業・施策について、反対意見、問題点、意見を述べます。

1点目は、UR借り上げ市営住宅の問題です。
 議会の論戦の中で市が「公営住宅法第25条第2項」で定める「事前通知」を怠っていたことが明らかになり、市は「事前通知」を実施していなかったことを認めています。しかし、「市としては、これまでスムースに住替えしていただくために、あらゆる方策を講じるとともに、入居者それぞれにも丁寧な対応に努めてきており大半の入居者の方々にはご理解をいただいたがまだ一部においてご理解が得られない」と述べていますが、法律を守っていない言い逃れであり、市に非があることは明らかです。本会議質疑でも「入居者は悪くない」と言いながら2015年9月30日で入居期限の満了を迎える西宮北口シティハイツの入居者に市が損害を被るとの理由で訴訟を行おうとしています。市が自らの非を認めず裁判をすることは到底許されません。継続入居を希望するすべて人の入居を認める方向で今からでも市の方針を転換することを求めます。
 また、市長はこの問題を報道するマスコミに対して「偏向報道があった」と抗議しました。市長の姿勢に対して「報道が公平・公正かどうかはあくまでも市民が決めるもの、公的機関が自ら判断するのは民主主義に反し、思想統制につながる恐れがある」「市民の知る権利を制限する」等、識者や市民からも厳しい意見が突きつけられましたが何ら反省はありません。このことについては猛省を求めるものです。

2点目は、マイナンバー制度についてです。
 マイナンバーは全国民に12桁の背番号をつけます。現在は個人情報は世帯や住所は市区町村、年金は日本年金機構など各行政機関ごとに管理されています。マイナンバーが導入されれば、各分野の個人情報が結び付けられ、国や自治体が一括して管理・利用できるようになります。個人情報が芋づる式に引き出され情報漏えいや「なりすまし」・不正利用などの危険性が高まることは明らかです。国民には何のメリットもありません。導入したアメリカや韓国では、銀行口座などの大量個人情報が流出して被害が発生し、見直しに追い込まれています。このような制度は直ちに実施を中止すべきです。

3点目は、食肉センターについてです。
 食肉センターは毎年多額の一般会計からの繰り入れを行いながら、市民には何らメリットのない事業であります。2014年度は、使用料収入1億5,189万円に対し支出は3億9,333万円で、その差はすべて一般財源で賄わなくてはなりません。食肉センターは老朽化が進み、センターそのものの改築も想定され、市財政の負担が大きくのしかかってくることは明らかであります。1日も早く検討委員会の提言どおり完全民営化するよう強く求めます。

4点目、名神湾岸連絡道路整備については、不要不急の公共工事であり、周辺の環境の悪化につながります。直ちに撤回することを求めます。

5点目は、保育所待機児童解消についてです。
 2015年4月の保育所待機児童は厚生労働省の定義では76人ですが、希望する保育所に入所できなかった子どもは469人になり、まだまだ保育所が足りないのが実態です。
 市では、待機児童の多い乳児を受け入れるために保育ルームや小規模保育所を増設してきましたが、待機児童の解消には公立保育所も含め認可保育所のさらなる増設を要望します。また、むつみ・芦原両保育所を合築して210人の大規模保育所を作る計画がありますが、むつみ保育所は、老朽化に伴う建替えについての説明会が予定されていたにもかかわらず前日に中止になり、保護者にはどのような経緯で合築という計画に変更したのか説明もありません。
 両保育所を合築して定員210人の保育所では、子どもの安全が保障できるのか、これまでと同様の丁寧な保育ができるのかという保育士や保護者の不安に市は正面から答えることがまったくできていません。パブリックコメントにも計画に反対する意見がたくさん寄せられましたが、坂田こども支援局長は「パブリックコメントは賛否を問うものではない」とパブリックコメントそのものを否定する発言をしたことは問題です。
 保育の専門家である保育士や保護者からの意見に真摯に向き合いこの計画については関係者と共に慎重に協議することを求めます。

6点目は、高齢者交通助成金、難病患者見舞金についてです。
 市は3月議会に突然、70歳以上の高齢者に支給されている交通助成金について5000円から3000円に減額し、年間20000円支給されている難病患者の見舞金について制度を継続した場合、1億円を超える経費となり市の財政を圧迫することになると制度の廃止を提案してきました。市民にも議会にも知らせず突然の提案に「市民、議会軽視だの声が上がり」3月議会で「元に戻す」修正案が全会一致で採択され事業が継続されました。また、議会の議決前に3000円分の高齢者交通助成割引購入証を印刷していたことも問題です。この制度については市民や議会の意見をよく聞いて検討するよう求めます。

7点目は国民健康保険です。高すぎる国民健康保険料抑制のため2012年より一般会計から10億円の繰り入れが行われてきましたが2015年は7億円に減額されました。しかし、基金はここ数年間で23億円にもなっており、2014年度の決算における約7億5千万の剰余金の半分を基金に繰り入れると約27億円にもなります。これは、保険料抑制のための繰り入れが事実上の溜め込み金となって積み上がっているということです。繰り入れ金を10億円に戻し、基金も活用して高過ぎる保険料の引き下げを求めるものです。

8点目は、総合教育会議と、教育大綱についてです。
 今年6月、地方教育行政法が改定されました。そもそもは、戦後住民自治の組織としてスタートした教育委員会制度を廃止し、教育行政を政治(首長)直結とする意図で議論されましたが、保守層を含めて教育委員会廃止には反対意見が多く、結局、教育委員会の廃止は見送られました。
 そして、首長の関与を強める@首長任命の新教育長、A首長の教育大綱制定権、B総合教育会議の設定という3つの新しい仕組みが加わりましたが、改定後においても、教育委員の集まりである教育委員会が、教育行政の最高意思決定機関であるということに変わりはありません。国の各種の通知にもこのことは明らかです。
 現在市では、今年度中をめどに、教育大綱を策定すべく、総合教育会議等での議論が始まっています。総合教育会議は、地方公共団体の長と教育委員会という対等な執行機関同士の協議・調整の場であります。また、首長は教育のあらゆることに関与できるものではありません。権限が重なる部分はあるものの、教科書の採択や人事、教育課程の編成、学習指導などは教育委員会の権限に属するもの=専管事項です。
 教育こども分科会では、政新会の坂上委員が、「市長の教育介入を許さないようにすべきだ。政治的中立を図るべきだ」と質問されたとのことですが、全く同感です。これに対し伊藤教育長は、「市長は予算に対しては絶大な権限があるが、現市長は教育内容については踏み込むことはないと明言されている」と答弁されました。申し添えると、教育内容に踏み込まないのは現市長にとどまることではなく、すべての市長に求めるべきことです。
 教育大綱策定にあたっては、これらを前提に、首長の独断でなく、また、教育は住民自治で進めるという精神からも、住民合意を大切にした創造的なものになるよう求めておきます。
 最後に、今村市長の行政執行上の対応について申し上げます。
第1点は、市長は日頃より2元代表制を強調されているにもかかわらず、一方の代表である市議会の公党に対し、常軌を逸した無礼な対応をしていることです。
 これは16日の決算質疑で明らかにしましたが、2か月も前に日程調整していた日本共産党市議団の「予算要望提出」という公務を、緊急性も正当性もない理由で突然キャンセルし、そのことに日本共産党市議団が抗議の申し入れを行ったことを、あたかも圧力団体の強要と、誹謗中傷する発言を行ったことは許しがたい問題であります。
 この点について総務分科会における決算質疑では、私たちの抗議の申し入れについては戦略部長が「苦情ではなく要望として取り扱っている」とし、「脅威とは思っていない」と、現場に同席した立場から明確な発言をしました。
 自らの無礼な行為にみじんの反省もなく、正当な抗議には逆上する市長の態度に猛省を促すものです。
 第2点目は、教育への行政の介入の問題です。
 私たちの「予算要望書」提出を突然キャンセルまでして、予告もなく、ある学校に市長が視察したという問題ですが、いまだに、どの学校に、緊急に市長が出向かなければならなかったのかについては、全く不明です。しかも現時点で、市内のどこかの学校に重大な問題が発生して混乱しているという報告もありません。用もないのに、日本共産党市議団からの「要望書」を受ける場にいたくなかっただけではなかったのかと思わざるを得ません。理由はどうであれ、行政の長が抜き打ちで学校現場に行くという行為が、常識的にはやってはならない行政の教育介入であることを自覚すべきです。
 第3点目は、市長と言う立場を利用した、職員へのパワハラ問題です。
 この問題では本会議の決算質疑の場で、日本共産党市議団の正当な抗議の申し入れを、パワハラだとし、そのパワハラから職員を守るために「おまえら出ろ」と言ったという、恐るべき発言まで今村市長は行いました。まさに、市長が本会議での決算質疑を通し、自分の非を認めず正当化しようとすればするほど矛盾に陥っていった様子が明らかになった場面ではないでしょうか。語るに落ちるとはまさにこのことです。総務分科会での決算質疑で、同席していた幹部職員が「苦情ではなく要望として取り扱っている」とし「脅威とは思っていない」と明確に述べ、さらに「パワハラ防止、暴力対策のマニュアルは、市長が理解すべきもの」との答弁が副市長からもあったほどです。
 人の言うことを聞かず、違う意見をもつものには「お前ら」と威圧する市長は、全国でもおそらくいないでしょう。市長なら何をやっても許されるという傲慢なやり方は即刻改め、職員のみなさんがのびのびと、自由闊達に市政発展のために働ける環境づくりを心から望むものです。
 以上、日本共産党市議団の反対討論といたします。ご清聴ありがとうございました。