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2017年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ:健康福祉局
2016年09月14日

健康福祉局


  1. 2000年に介護保険制度が発足したが介護を家族任せにしない「介護の社会化」と言われた。その後は3年ごとの保険料引き上げとともに制度が改悪され現在では「国家的詐欺」とまで言われるひどい状態になっている。直近の改定では@要支援1,2の訪問介護、通所介護を保険給付から外し自治体が実施する総合事業に移行A所得160万円以上(年金収入280万円以上)の高齢者は利用料を2割負担B特養入所を要介護3以上に限定C低所得者の施設入所者への食費・部屋代の補助要件を厳しくするDこれまで非課税だった遺族年金、障害年金受給者で施設入所者への負担増等が行われた。市は保険者としての責任を果たし、必要な介護保険サービスが提供できるように次のことに取り組むこと。さらに国は、要介護1,2の通所介護や訪問介護の生活援助、福祉用具レンタルを保険給付から外すことを計画しているがこのようなことは許しがたい。以下の項目について取り組むこと。

    1. 2015年8月から特養ホームや老健施設入居者の食費・住居費の自己負担分に対する低所得者軽減策である補足給付が見直され負担が増えている。さらに、遺族年金、障害年金受給者も負担が増えている。仕方なく施設の退所を余儀なくされる等、深刻な事態も起こっている。国に撤回を求めること。

    2. このたびの法改定では、所得160万円以上(年金収入280万円以上)の高齢者に利用料の2割負担が導入された。2割負担導入の撤回を国に求めること。

    3. 介護保険料に対する国庫負担は20%と調整交付金の5%に分けられているが国に対して国庫負担金を30%に引き上げるよう求めること。国に対して保険料の減額拡充と利用料減免制度の創設を求めること。

    4. 高齢者にとって大変重い負担となっている介護保険料を、一般財源を投入して引き下げること。県に対しては県基金の活用も求めること。

    5. 市独自の保険料減免を行なっているが、対象はわずかである。基準を緩和するなど減免を拡充するとともに、その財源は一般会計から繰り入れをすること。

    6. 低所得者ほど1割負担が重たくサービスの利用控えがある。低所得者への利用料減免制度を創設すること。

    7. 介護保険サービスを利用するには介護認定を受けなければならない。しかし、現状は認定に約1か月もかかる。職員を増員し必要な介護保険サービスが早期に利用できるよう認定作業について改善すること。また、申請者には認定が下りていなくても暫定で介護保険が利用可能なことを知らせること。

    8. 法改正では特養ホームへの入所資格を要介護3以上に制限をしたため、待機者が減っているが市内の特別養護老人ホームの待機者は2016年4月1日現在1629人にもなっており深刻な事態である。国に対して入所制限を撤回するよう要望すること。市として特養をさらに増設すること。

    9. 市内には介護付き有料老人ホームやサービス付高齢者専用賃貸住宅など高齢者を対象にした施設が増えている。全国では職員による殺人を含む虐待が起こっている。法人等に対して適正なサービスを提供しているのか指導監督を強化するとともに、職員への研修を実施すること。市民に対し施設等の的確な情報を提供すること。

    10. 介護現場では、劣悪な労働条件や賃金の低さ等、人材不足が続いている。これらのことは上記のような問題を起こしている。また、甲子園9番町に新しくできた特別養護老人ホームでは職員が足りず入所者を受け入れられない事態になっている。国が責任をもって労働条件の改善をおこなうよう市として要望すること。

    11. 地域包括支援センターの役割はいっそう重要になる。市独自で一般財源を投入し、センター増設や職員増等、充実させること。

  2. 2017年4月、改定介護保険法による要支援者サービスの見直しである「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、総合事業)が始まり、要支援1・2の訪問介護(ホームヘルプサービス)と通所介護(デイサービス)を総合事業に移行させる。厚労省は、要支援者は「軽度者」などと強調するがそうではなく、適切な介護や支援を受けることができなければ状態が重度化し、尊厳をもった自立生活を送ることが困難になる。以下、総合事業について求める。

    1. 市は2017年4月総合事業を開始し、1年間かけて移行するとしている。訪問介護のうち家事援助については、市はシルバー人材センターや社会福祉事業団等を制度の担い手としている。制度移行後も高齢者が安心して在宅生活を送ることができる体制を整備し現行水準を低下させないこと。

    2. 要支援者を一律に「専門的サービス」から排除すれば、心身の状態悪化、家族負担の増大など、在宅生活が困難になりかねない。厚労大臣は「必要とする人には既存の事業所による専門的サービスを提供する」「専門的サービスの対象となる要件を列挙する」と発言している。地域包括支援センターがその判断を行うことになるようだが、利用者の立場に立った判断を行うよう、市は適切な指導を行うこと。

    3. 地域包括支援センターでは安易に要介護認定を回避し、チェックリストの判定のみで安上がりの総合事業に誘導するようなことがあってはならない。何らかの支援の必要を感じた高齢者が要介護認定を受けることは、すべての高齢者の権利であり、このことをあらゆる窓口で徹底すること。

    4. 総合事業を行う事業所等の人員、運営、単価などの基準は、国として一律の基準は定めず、市の裁量となる。事業委託単価は現在の介護報酬以下に設定するものとされているが、少なくとも現行サービス水準を下回らない適切なサービスが提供されるよう、人員、運営、単価などの基準を定めること。

    5. 総合事業は「地域支援事業」の予算の枠組みの中で実施され、国が設定した上限を超えてはならないとされている。このことによって制度から排除される高齢者が生まれる可能性がある。高齢者が必要なサービスを受ける権利を制限されることがないよう、上限を撤廃するなど国に対し、財政的保障を求めるこ。また、市として「サービス単価を減らす、利用を制限する、利用者負担を増やす」などということがないよう財源を確保すること。

  3. 高齢者施策について

    1. 高齢期の社会的孤立や孤独死に加え、近年、徘徊する認知症高齢者の行方不明が社会問題化している。市では独居高齢者の見守りを民生委員が行っており、さらに地域の老人会、自治会等の力も借りて対策をとることが必要だが、地域の支えあいや見守りには限界がある。ましてや徘徊高齢者対策には広範な機関や市民の協力が必要である。先進市の例では、「徘徊者を見守る眼を増やすしかない」として、まちぐるみの取り組みを行い、特に認知症に関する子どもの教育にも力を注いでいる。これらの事例に学び、できることは取り入れること。

    2. 高齢者虐待相談窓口が設置され対応が進んできているが、今後も重要である。周知しいっそう充実を図ること。

    3. 高齢者の社会参加を促進する高齢者交通助成制度は5000円が維持された。高齢者にとても喜ばれている制度を維持し額を増額すること。また、芦屋市や尼崎市で実施しているバス運賃半額助成制度(敬老パス制度)等を検討すること。

    4. 福祉タクシー制度は障がいのある人や高齢者の外出支援策として有効な施策であり、ますます充実が図られるべきものである。対象者の拡大や助成額の増額や行き先の拡大など、制度の改善をはかること。

    5. 老人クラブについて、市の補助金は削減しないこと。また、ことぶき号バスについては利用する老人クラブの負担が大きい、市の補助金を増やすこと。

  4. 障がい者(児)施策について
    2016年7月26日未明、神奈川県相模原市の障がい者施設で入所者19人が殺害され、25人が重軽傷を負う事件が起きた。容疑者は施設の元職員で無防備な障がい者を狙った残忍な犯行が大きな衝撃を与えている。なぜこのような事件を起こしたのか事件の真相を明らかにすることが求められている。また、二度と同じような事件を起こさないための取り組みも求められている。「障がい者が安心して暮らせる社会は、すべての人が生きやすい社会」この立場からの障がい者施策を以下の通り求めること。

    1. 市として高齢者や障がい者施設の実態を把握しセキュリティや夜間の職員体制等必要な対策をとること。また国や県にも安全対策を求めること。

    2. 障害者総合支援法で国は、応益負担の問題は解決済みとの立場だが、1割の定率負担は残され、低所得者は無料になったといっても、負担上限額は変わらない。「応益負担」制度を廃止し速やかに無料化することや、配偶者の収入認定はやめて本人所得のみの収入認定とすることなどを国に求めること。

    3. 障がいのある人が65歳になると総合支援法から介護保険が優先される仕組みになっておりそれまで無料で受けられていた介護が1割負担になる。経済的にも大変である。この仕組みを見直すよう市として国に要望すること。

    4. 就労支援のいっそうの拡充をはかること。精神、知的障がい者の市での雇用を引き続き実施すること。

    5. すでにいくつかの自治体で制定している「障害者権利条例」ならびに「障害者差別禁止条例」を市でも制定するよう検討すること。その際には、各障がい者団体等の意見も聴きながら取り組みをすすめること。

    6. 事業所に対する報酬の日額払いを月額払いに戻し、正規職員の配置を中心とした雇用とし、また報酬の底上げを行うよう、国に求めること。

    7. 障がい者施設や自宅で家族による暴言、暴力等の虐待がある。虐待については生活支援課が相談窓口となっていることを広く市民に知らせること。また、障がいのある人の人権を守るため職員の研修等スキルアップを図ること。

  5. 染殿町および津門川町の、総合福祉センター、福祉会館、旧わかば園などの健康福祉関連施設については、2016年度旧わかば園の解体と総合福祉センターの内部の再配置についての基本構想が示されると聞いている。関係者の意見をよく聞いて進めること。また、不足している駐輪場、駐車場についても整備すること。

  6. 生活保護について
    生活保護法が憲法第25条に規定する理念に基づくものであるという基本、原則は変わっていない。生活扶助基準額は「税と社会保障の一体改革」で2013年8月から最初の引き下げが行われ、2015年4月からは3回目の引き下げが行われた。さらに母子加算の廃止も言われている。これではとても生活できない。最低生活が必要な人が権利として適切に利用できるよう市として以下のことに取り組むこと。

    1. 「就労支援」の名で要保護者にさまざまな圧力をかけ、強権的な保護の打ち切り等しないこと。

    2. 改定では扶養義務に関する規定が盛り込まれたが、「扶養は従来通り生活保護受給の要件ではない」「家族の問題に行政が踏み込んでいくことは相当慎重にしなければならない」と、これも国会で答弁している。この点を踏まえ、申請を躊躇させるような、従来以上の扶養義務照会を行わないこと。

    3. 国庫負担額の削減や給付削減攻撃を許さず、老齢加算の復活、生活扶助費、住宅扶助費など保護基準(最低生活費)の引き上げを国に求めること。

    4. 保護受給者は、国による生活扶助費等の削減で、ますます困難な生活を強いられている。また、近年の酷暑でエアコンの使用は不可欠だが、電気料金の負担から使用を躊躇している受給者も多い。市の一般財源による、夏季・冬季見舞金および水道料金の基本料金免除を復活すること。

    5. 生活上経済上の悩みを抱える市民が、安心して悩みを打ち明けられるよう心を寄せ、問題解決をはかっていくのが面接相談員、ケースワーカーの役割である。国基準に比べて少ないケースワーカーを増やすこと。また、質を高める研修をすすめること。

    6. 社会保障全般に精通している再任用職員も含めて職員の配置を大胆に行うこと。

  7. 法人指導監査について
    2015年8月、姫路市の定期監査、同年9月の特別監査等で社会福祉法人「夢工房」(本部:芦屋市)の不適正経理が発覚した。その中身は架空勤務や私的な家具・家電品の購入等、総額2750万円にも上る補助金の不正使用である。このような補助金の不正受給は許されない。市の監査の役割は大きい、市として次のことに取り組むこと。

    1. 市内にも「夢工房」の保育所が分園も含めて5園ある。調査・監督すること。

    2. 相当数に上る社会福祉法人への指導、監査は市の重要な業務である。必要に応じて職員の増員を図ること。

    3. 研修等により監査担当の職員のスキルアップを図ること。

  8. 市の援護資金貸付金は、市民が経済的困窮状態に陥った時に活用できる唯一の公的制度である。援護資金貸付については、貸付条件が厳しくなっているために件数が著しく少なくなっており、とても福祉施策とは言えない状況である。貸付条件を見直し、生活実態と見合うよう貸付額を増額し、保証人は求めないこと。また、自営業者などについては審査が複雑になっており時間がかかるケースが多い。審査を簡素化すること。

  9. 深夜帯の診療ついては2015年4月から伊丹市の阪神北広域こども急病センターとの連携、また、2015年7月より24時間対応の電話医療相談「健康医療相談ハローにしみや」を開始している。内科、小児科の第1次救急医療をになう応急診療所は、順次診療時間も拡大され、市民の命を守っているが、特に子どもの救急への対応は、多くの子育て世代の要望である。休日、夜間(午後11時から朝方)の診療時間を拡大すること。

  10. 難病患者の見舞金について2016年度は廃止された。難病患者へのアンケート調査では見舞金の継続を希望する意見が多数寄せられている。復活すること。

  11. 県の「受動喫煙防止条例」では飲食店等の「喫煙」「分煙」は努力義務にとどまっている。飲食店は分煙をしていない所もあるが禁煙を含めた指導を強化すること。

  12. 災害援護資金貸付金の国への償還免除要件は拡大された。さらに、行方不明者の取り扱いについては免除対象とすること。償還期間の延長についても国に求めること。