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2017年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ:都市局
2016年09月14日

都市局


  1. 西宮市は、「文教住宅都市」宣言をしている都市として、民間調査の「住みたい街」ランキングで関西のトップに選ばれるなど、いまも高い評価を得ている。しかし、市は自然環境や住環境保全の計画をたてているものの、無秩序なマンション・住宅開発が、教育施設、福祉施設の不足を生じさせ、教育環境や住環境、自然環境を悪化させている。とくに、開発が学校の教室不足、保育所不足を生じさせ、教育福祉全般の施設不足を生じさせていることは、一刻も放置できない深刻な問題である。以下のことに取り組むこと。

    1. 文教住宅都市にふさわしいまちづくり、また、自然環境保全に役立ち、環境にやさしいまちづくりをすすめるために、市長が公約した「無秩序なマンション開発などから西宮の住環境をまもるためのまちづくり基本条例」の制定を急ぎ、効果ある開発規制を確立すること。

    2. 無秩序なマンション・住宅開発は、学校の深刻な教室不足を生じさせている。この間、西宮市は児童、幼児の急増対策として「教育環境保全のための住宅開発抑制に関する指導要綱」で対応してきたが、効果はなく、事態は悪化している。要綱の条例化を党市議団は繰り返し求めてきたが、市は「財産権の侵害につながる恐れがある」として拒否してきた。現状は、要綱では効果が見えず、後手後手の対応にしかなっていないことを示している。効果ある開発規制とするため、要綱を早急に条例化すること。

    3. 教育不足への対応は急を要するものだけに、要綱を条例化するまでの間、市全域を「準受け入れ困難地区」以上に規制を強化すること。

  2. 高塚町の4haにも及ぶ広大な土地の住宅開発がすすめられようとしている。この土地は、全体が緑に覆われている、自然豊かな小山である。ここの開発は、4haにも及ぶ緑がいっきょに失われる開発だけに、その影響は決して小さくない。市は、公有地の拡大の推進に関する法律にもとづく手続きによって、開発の対象となる約4haの土地が売りに出されることを知ることとなったが、そのときの検討は、土地取得の必要性だけに終始し、緑に覆われた広大な土地が開発されることの影響については、なんら検討していない。高塚町周辺の住民はもちろん、芦屋の住民を含め、住民の間に、開発によって緑豊かな自然が失われることや、保水能力が失われるのではないか、活断層の上に住宅を建てて大丈夫なのかなど、多岐にわたる懸念がひろがり、住民無視の開発はやめてほしいとの声が起きている。市は、この開発について、その影響を総合的に検討するとともに、住民の声をよく聞き、住民の立場で対応すること。

  3. 現行の「開発事業等におけるまちづくりに関する条例」の手続きでは、住民の意見が反映されないまま開発が進んでいく仕組みとなっている。ある場所で開発が行われることが住民に知らされる段階では、開発は事実上後戻りできない状態にある。住環境や自然環境を守りたいと願う住民の意思が反映する仕組みが必要である。住民が納得できる開発をすすめられるよう、早い段階から住民が参加できるような仕組みをつくること。

  4. 開発指導について、以下のことに取り組むこと。

    1. 「開発事業等におけるまちづくりに関する条例」に基づく事業者による住民協議については、市として市民の立場に立ち事業者の指導を徹底すること。

    2. 開発区域への進入路が6m未満の場合の開発については、戸数制限を導入しているが、不十分である。さらに規制を強化すること。

    3. 500u未満の開発は近隣協議の対象とはならないことから、同一事業者が開発時期をずらすなど、結果的に500u以上の開発を行うなどの「開発のがれ」事例がある。全体空地(開発区域)を一体のものとして指導対象にするなど、対応策を早急にたてること。

    4. この間、『大規模開発に伴う協力要請に関する指針』を改訂し、対象範囲として、5ha以上を2haに、300戸以上を200戸以上にするなど、一定の規制強化をした。一定規模以上の開発については、他市で実施しているように、開発によって市に整備が求められる教育施設など、公共施設整備のための協力金の拠出を求めること。

  5. 阪神淡路大震災を経験した市として、東日本大震災の教訓をいかし、安全で安心な災害に強いまちづくり、環境にやさしいまちづくりをすすめること。

  6. 全国で地震災害が相次いでおり、住宅の耐震化が急がれる。県の耐震診断と耐震補強についての補助制度とともに、市の補助制度が上乗せされたが、十分とは言えない。個人住宅耐震化制度を拡充すること。

  7. 盲導犬を連れた男性が、東京都内の地下鉄の駅ホームから転落し電車にはねられて死亡した事故が、関係者に不安と衝撃を広げている。ホームでの転落事故は後を絶たず、ホームドアやホームの柵の設置など、駅ホームの転落防止の整備は急務となっている。誰もが命の危険にさらされることなく安心して利用できる公共交通機関の整備を進めなければならない。自治体としての役割を果たすこと。

  8. 市内には消防など緊急車両の通行に支障がある4m未満の狭あい道路が多数残っており、拡幅整備が急がれる。住宅建築の際に市との協議を条例で義務付ける、市の助成制度を拡充(私道への助成)するなど、狭あい道路の解消を積極的にすすめること。

  9. アサヒビール西宮工場跡地の開発については、市長が当初方針としていた白紙撤回方針が事実上破たんし、議会との合意の結果、市が2.6haを購入することとなった。市が購入しない跡地の開発については、市は、「ガイドライン」や「地区計画」など、規制・誘導策によって良好な市街地形成を目指すとしている。市の中心部に位置する広大な土地の開発であるだけに、あくまでも市が関与した住民福祉に資する開発をおこなうこと。

  10. 生産緑地制度は都市環境を守る上で重要な役割を果たしている。しかし、農地所有者の高齢化などによって、生産緑地の指定解除が続いている。この制度では農地所有者が死亡、あるいは農業に従事できなくなった場合は自治体に買い取りを申し出することができ、自治体は「特別な事情がない限り時価で買い取らなければいけない」という規定があるものの、西宮市ではこれまで買い取りをした事例がない。買い取り申し出があれば、不足している公園整備や公共施設の整備等に積極的に活用する方向で検討すること。
    また、生産緑地指定後30年間で指定解除ができることになっていることから、最初の指定から30年となる2022年には大幅な生産緑地の解除が行われる懸念がある。国に対して、この制度の存続はもとより指定要件(u数など)緩和など、農地の保全に向けた有効な対策を求めること。

  11. 池田町の卸売市場について、西宮市卸売市場再生研究会やまちづくり協議会において今後のあり方の検討が進められている。関係権利者の高齢化などの課題もあるが、駅前の地域でもあることから、地域商業の活性化につなげるとともに、まちづくりという点からも、今後も市が積極的役割をはたし、卸売市場整備を進めていくこと。

  12. 第4次総合計画(中間改訂)において、「名神湾岸連絡線の計画の具体化などを国に要請する」と明記している。昨年、連絡線の二つの概略ルート案が示され、住民アンケートが実施され、その後、概略計画をまとめるとして、国と県は計画を着々とすすめている。名神湾岸連絡線は、環境悪化につながり、不要不急の公共事業である。影響を直接受けるルート直近の住民の意見が尊重されずに計画を進めようとしている。名神湾岸連絡線の整備計画に反対すること。

  13. 第4次総合計画(中間改訂)で、「阪神西宮駅について民間主導の駅前整備に向けた検討を行う」としているが、不要な事業である。計画は撤回すること。

  14. 阪急神戸線武庫川部の新駅は、いわゆる「請願駅」となり、多大な市の負担が生じることが予測される。慎重に検討すること。

  15. JR甲子園口駅北側は、歩行者や自転車、バスなどが交錯し、「市内でも有数の危険な地区」と、市も認識している。用地の取得を含め、駅前広場の整備に早期に取り組むこと。
    また、駅南側の駅前広場が一定整備されているが、西宮市道瓦35号線のすずらん通り商店街と甲子園口駅前商店街とのあいだが大変混雑していて危険である。対策を講じること。

  16. JR西宮名塩駅外には、上りエスカレーターしか設置されていない。下りエスカレーターを設置するよう、引き続き関係機関にはたらきかけること。

  17. 市民生活を支援するための公共交通の充実を図ることが求められているが、なかなか進んでいない。とくに、地域交通の柱となるバス交通については、高齢者の社会参加促進とともに、通学区がますます拡大する高校生の通学保障の面からも、拡充が急がれる。以下の項目に取り組むこと。

    1. この間、新規を含め路線の拡充に取り組まれている。引き続き、住民要望に基づく路線開拓に努めること。とくに、臨港線経由の西宮浜と阪神甲子園駅を結ぶ新規路線の平日運行、西宮市立中央病院を経由する路線の増便についても取り組むこと。また、ニテコ池周辺からJR西宮駅へ乗り換えなしで行ける路線を新たに設けること。

    2. 南北バス(さくらやまなみバス)については、今後も、効率的な経営につとめ、市が責任をもって運行を継続させること。

    3. 交通不便地域については、それぞれの地域でのニーズや課題を深める努力が必要である。交通不便地域対策の予算を増額して公共交通政策に生かすこと。昨年、生瀬地区を巡るコミュニティ交通「ぐるっと生瀬」が本格運行されたが、この取り組みの教訓を生かしつつ、やはり、コミュニティバス運行は地域住民まかせではなく市が主体性をもって進めること。とくに、名塩地域と名塩駅を結ぶコミュニティバスの運行が実現できるよう、市の努力を求める。

    4. 西宮市内では、バスを乗り継がなければ目的地に到達できない場合の「乗り継ぎ」割引制がないため市民や高校生の負担が大きくなっている。このほど、ハニカ定期券が発行されることとなり、割引制度が一定拡充されたが、普通券も同様に、同一バス会社の乗り継ぎとともに、阪神と阪急を相互に乗り継ぐ場合も運賃が割引となるよう、市は関係者と協議を行うこと。

    5. 芦屋市や尼崎市が実施しているような70歳以上のバス運賃半額助成制度(敬老パス)の創設を検討すること。

  18. 西宮北有料道路(盤滝トンネル)の無料開放時期が、住民からの強い要望や議会の取り組みを経て、3年間前倒しし、2017年度末となった。しかし、西宮北有料道路の財政状況は、2017年度末を待つまでもなく、直ちに無料開放することが可能な状況にある。そのような財政状況の中で、この道路を利用せざるを得ない住民や業者に、多大な負担を負わせることは、到底納得できるものではない。西宮北有料道路の即時無料化にむけ、兵庫県と県道路公社との協議をすすめ、あらゆる可能性を追求すること。

  19. 北部山口地域の渋滞は、地域住民の生活に影響を及ぼしている。北有料道路の無料化の実施も考慮し、国道176号線の整備を含め、早急に渋滞解消のための対策を講じること。

  20. UR(都市再生機構)による浜甲子園団地の建て替え事業は、長期にわたる事業であり、まちづくりに対する市の主体性が求められる。以下の点に取り組むこと。
    1. さくら街に続き、なぎさ街が完成した。今後、センター地区の開発については、保育所・幼稚園・集会施設などの公共施設を残すよう、URと協議をすること。

    2. これまでの建て替えでは、来客用駐車場の不足等、多様な住民の要望、意見が十分に取り入れられなかった。多数の住民の意見が反映されるような場を設けること。

    3. 戻り入居者は高齢者が多く、一定の配慮はされているものの、高くなった家賃負担は深刻である。家賃の引き下げをURに求めること。

    4. 建て替え前の団地街は、道路・通路なども老朽化が進んでいる。この間、一定の道路補修が行われたが、大きな段差などは生活に支障がでないようURと協議の上、全体計画工事前であっても早めに補修などに取り組むこと。

  21. 市営住宅について

    1. 市は、2012年に策定した「西宮市営住宅整備・管理計画」にそって、市営住宅のストック数を、当初の約9,600戸を2021年(H33)までの10年間で1,000戸減らす計画をすすめ、その後さらに300戸削減し、ストックを全体として8,300戸とする「整備・管理計画」の見直しの内容を具体的に提示した。
      これは、貧困と格差が広がり、また、高齢化が進むなかで、人気の高いところでは応募倍率が50倍、100倍を超えるところがあるように、市営住宅への入居を切望する市民の実情と大きくかけ離れている。福祉的観点からも市営住宅削減計画は撤回し、市営住宅を増設して市民の期待にこたえること。

    2. 不足している障がい者、高齢者仕様のバリアフリー住宅を多数整備すること。

    3. 現在、市営住宅の管理について、北部、中部、南部管理センターとして地域を分け、指定管理者を選定、募集業務は北部管理センターが行なっている。しかし、市営住宅は福祉的な対応が求められることから、指定管理者では、入居者の様々な要求や相談に、迅速かつ責任ある対応ができない。したがって、市営住宅の管理は市直営に戻すよう検討すること。

    4. 空き家募集の際、多回数落選者優先制度を復活させること。また、県営住宅は毎月募集を行っているが、西宮市も毎月募集をおこなうこと。

    5. 階段型市営住宅へのエレベーター設置は、電気代等の共益費の新たな負担が生じることから、住民全員の合意を得ることが困難なため、すすんでいない。未設置住宅には市が責任をもって早急に設置すること。その際、個々のドアまでは公共空間という観点に立ち、電気代徴収をやめること。

    6. 市営住宅の共用部分等の管理について、居住者間のトラブルが絶えず、また、高齢化による管理困難が広がっている現状を解決するために、日本共産党議員団は、いわゆる大家である市が管理することを繰り返し要求してきた。
      市営住宅の共用部分等の管理について、2015年9月議会において条例改正を行い、団地ごとに住民が希望すれば、市が共益費の徴収とその収支管理、共用部分等の管理をおこなうこととなったが、この事務をすべての市営住宅に広げ、管理が市へ移行しない団地についての管理に関するさまざまな問題にたいしても、引き続き、市が責任を持って対応すること。

    7. 市営住宅の共益費徴収については、改良住宅では共益費の負担はない。福祉的な観点からも、公平性の観点からも、共益費廃止で統一するよう検討すること。

    8. 一般住宅と改良住宅での住宅改修の基準の違いは、一部残されており、同一基準とすること。

    9. 名義の承継について、「配偶者に限るように」との国の通知(指針・ガイドラインして)があるが、これは低所得者の追い出しにつながり新たな住宅困窮者を生み出すことになる。引き続き、市の従来方針で慎重かつ柔軟に対応すること。

  22. UR(都市再生機構)借り上げ市営住宅について、西宮市は、URへの全住宅の返還、全員転居の方針に固執し、入居者に大きな不安と負担を与え、くわえて、職員の繰り返しの訪問などによって精神的苦痛を与えている。継続入居を希望する人たちは、そもそも転居困難者である。入居者の高齢化が進み、これまで築いてきたコミュニティに支えられて暮らしてきた入居者が住み慣れた住宅を離れることは、命にかかわる問題となる。以下の点について実施すること。

    1. シティハイツ西宮北口(青木町)で継続入居を希望している人は、市のかたくなな態度により、何の解決も得られず、市とURとの20年間の契約期限を迎えた。議会は話し合いによる早期解決を求めたが、市は、話し合いの努力を早々と打ち切り、入居者を裁判に訴えた。市は、入居者の意向に沿って、早期解決のため、あらゆる努力をすること。

    2. 現行方針は誤りであることは明白であり、撤回するとともに、希望者全員が継続入居できるよう、方針化すること。

    3. 市の執拗な働きかけによって、半ば強制的に転居に応じた人が少なくない。生活環境の変化に即応できない人たちに、さまざまな問題が生じているが、放置されたままになっている。移転後の適切で必要な対応をすること。

    4. 転居後の空き住戸については、カラ家賃が20億円にもなる。カラ家賃問題を、URと協議し、一刻も早く解決すること。

  23. 特定優良賃貸住宅制度は国が推進した施策であるが、年次的に補助額が減り、家賃が上がるため、空き家が増加している。空き家による家主の収入減を都市整備公社が補填する仕組みとなっており、市の財政負担も増えている。20年間の期限(2017年度)までは国の補助金を拡充するなど、国が責任を持つよう強く求めること。

  24. 西宮市内は家賃が高い。青年や高齢者など低所得者に対して、民間賃貸住宅家賃補助制度を創設し、支援すること。