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杉山たかのりの反対討論
2016年10月04日

2015年度決算認定に対する反対討論


 ただ今上程中の諸議案のうち、認定第10号2015年度西宮市一般会計および特別会計歳入歳出決算認定の件について、日本共産党西宮市会議員団は反対をします。
 以下、意見を申し上げます

 2015年度は憲法が制定されて以降、はじめて自衛隊を海外で戦争をさせるための安保法制、戦争法が安倍政権によって強行成立した年です。安倍自公政権は、国会での多数を背景に、消費税増税、大企業減税、原発の再稼働、TPP推進、沖縄への米軍新基地建設、社会保障の切り下げ、労働者派遣法の改悪など、国民の声をきかない暴走政治、独裁政治を進めています。
 安保法制は、全面的な運用段階にはいろうとしており、停戦合意が崩れて内戦の悪化が深刻な南スーダンPKOへ11月にも「駆けつけ警護」や「宿営地共同防護」などの新任務を付与した自衛隊を派兵しようとしています。戦争に巻き込まれる危険性がいよいよ高まってきています。
 また、安倍内閣の目玉政策のアベノミクスは、「大企業を応援し、大企業がもうかれば、いずれ家計にまわってくる」という、いわゆるトリクルダウン政策ですが、すでに破たんしています。大企業は3年連続で史上最高の利益を上げ、内部留保は313兆円に、日本の富裕層上位40人は資産を2倍に増やしています。ところが、働く人の実質賃金は5年連続でマイナス、個人消費は、2014年度、15年度と2年連続でマイナス、過去初めてのことです。「アベノミクスの破たん」どころか「アベノミクス不況」が国民をおそっています。
 このような状況の下での2015年度決算認定は、国の悪政から市民を守る防波堤の役割を果たすことが、地方自治体に求められるというのが日本共産党の基本的な考えです。
 2015年度決算がそれに応えるものになっているでしょうか。

 2015年度決算の特徴は、@今村市長が編成したはじめての予算A震災直後を除けば、最大の規模となったB当初予算から高齢者交通助成金減額、特定疾病患者見舞金廃止が議会により修正されたC財政状況の好転が顕著になった、などが言えるでしょう。
 2015年度決算は、一般会計、特別会計を合わせると歳入総額2634億8872万円、歳出総額2600億3104万円、前年度より、歳入で122億816万円、歳出で113億4642万円、それぞれ増額となっています。
 翌年度に繰り越すべき財源1億1261万円を差し引くと、実質収支総額は33億4506万円となり、2015年度も黒字となっています。
 歳入では、消費税8%への増税による影響が平年度化し、地方消費税交付金が32億6538万円増額する一方、地方交付税は11億1479万円、臨時財政対策債とあわせると、19億2599万円の減額となっています。消費税増税に伴う法人市民税率引き下げにより、4億円程度の減収が見込まれていたものの、市税はほぼ前年度なみとなっています。使途の制約のない一般財源は、1100億円の水準を保っています。
 歳出では、高木北小学校、南甲子園小学校、上甲子園小学校の整備や扶助費の増額などが増額要因となっています。前年のアサヒビール跡地の土地開発公社への貸付、55億円は皆減となっています。
 市長選挙の際には「危機的な財政状況」だと市財政の状況をことさら厳しく表現していたわけですが、市長最初の決算では、最終的には基金の取崩しをせず、財政基金、減債基金の総額は221億円を維持、これに加え公共施設保全基金15億円、アサヒビール跡地購入貸付55億円、地方交付税を補填する臨時財政対策債未発行分32億円、財政見通しへの計上をなぜか忘れた西宮北有料道路整備の県貸付金12億円をあわせると、330億円を超える資金余裕を示す結果となりました。この財源を市民のくらし応援に十分に活用されていないといわなければなりません。

 まず、反対の箇所等について述べます。

 第1に、今村市長の政治姿勢についてです。
 今村市長が初めて編成する当初予算案で、約8万人の高齢者に影響が及ぶ高齢者交通助成金の5000円から3000円への減額、難病患者への見舞金制度の廃止を予算案に盛り込み提案しました。ところが予算案のポイントを記した資料には全く掲載せず、こっそりと組み込んだのです。議会から厳しい批判とともに、予算の修正が可決する事態となりました。これは、市民のくらしを無視し、議会を軽視する姿勢だと言わざるを得ません。
 また、「偏向報道」対応に見られる、マスメディアに対する強権的な姿勢は今なお改まっていません。自分の気に入らない報道を敵視し、圧力をかけることは、報道の自由、市民の知る権利を侵すこととなります。
 あわせて、昨年9月議会に我が党議員団が取り上げた問題、具体的には、昨年、公党、会派として予算編成に対する申し入れを行った際に、出席を前日突然キャンセルし、そのことに対する申し入れを行った際に、職員に対して「お前ら出ろ」と言い、我々には威嚇する、そのことを本会議で追求すると、公党の申し入れを「強要行為」と言い放つなど、議会会派を尊重しない、パワハラ、暴力行為まがいの言動など、およそ市長として品性の欠けるものと言わざるを得ません。
 一連の市長の政治姿勢は許すわけにはいかないものです。
 市民、議会、市職員に対して敬意を示すべきです。

 第2に、UR借り上げ市営住宅についてです。
 2015年9月末にシティハイツ西宮北口の市とURとの借上げ契約が20年の期限を迎え、全戸返還、全世帯転居の方針により、継続入居を求める7世帯を提訴する議案を12月議会に提出、議会が入居者との真摯な話し合いを求め継続審査したものの、市の頑なな姿勢によって話し合いは実らず、3月議会議案が採択されました。これにより、西宮市はなんら罪のない市民を裁判で訴え、強制的に退去させようとの立場をとったのです。
 しかし、そもそも市の方針は、継続入居を認める他自治体と比べても、突出した冷酷な方針であり、非のない市民を訴えるなどということは認めるわけにはいきません。

 第3に、マイナンバー制度の導入、推進についてです。
 番号制度整備事業経費に4億1935万円が執行されています。
 マイナンバー制度については、これまでも本会議場でも指摘してきましたが、マイナンバーに集積する個人情報漏えいの危険性は、情報が増えれば増えるだけ、利用場面が増えれば増えるだけ、高まります。2015年度は、通知カードの受け取りから混乱が起こり、マイナンバーカードでは、カード発行システムにトラブルが起こるなど、メーカー側に損害賠償を請求する事態が生じるなど、構造的な欠陥すら疑わざるを得ません。
 このような状況で、市はマイナンバーカードの利用をさらに拡大しようとしています。
 市民のプライバシーを危険にさらすマイナンバー制度はただちに中止するべきです。

 第4に、介護保険特別会計についてです。
 第6期介護保険事業計画では、2014年6月に成立した医療・介護総合確保推進法によって、地域包括システムの構築という名で、高齢者が住みなれた地域で生活を継続できるようにするため、在宅医療と介護の連携や認知症の推進をうたう一方で、介護保険の土台を壊す大改悪となりました。
 特別養護老人ホームの入所者を原則要介護3以上になり、市では特養待機者が2014年度2100人から2015年度1500人となり500人減っています。
 特養入所者で配偶者の課税状況の見直しで50人、預貯金等で負担軽減の見直しで150人遺族年金等の見直しで負担増になった人が1000人となっています。年金はまったく上がらないのに負担増になり今後特養を退所しなければならない人が出てくることが懸念されます。
 介護保険料については国の公費による1号保険料の低所所得者軽減が導入されることになりました。利用者には負担を増やしながら市の65歳以上の介護保険料は基準額で4974円から5200円へと5%の値上げになり反対です。

 第5に、国民健康保険特別会計についてです。
 国民健康保険料は、高すぎて払えず、滞納世帯が多数いる状況が長期にわたって続いており、日本共産党西宮市会議員団が繰り返し一般会計からの繰り入れで引き下げることを提案し、2008年度から2億5千万円、2012年度からは10億円の繰り入れを実施し、保険料の高騰を抑制してきました。党議員団は、この間の市の努力を一定、評価してきました。
 しかし、2015年度は23億円もの基金があり、十分に可能な保険料の引き下げを実施せず、逆にこれまでの10億円の繰り入れを7億円に減額しました。決算では、基金はさらに27億円にまで積み立てられたのです。保険料は引き下げるべきだったことが結果として明らかになりました。
 日本共産党西宮市会議員団は、27億円の基金を活用して、国民健康保険料を引き下げることを強く求めてきましたが、保険料負担軽減のために活用できるように今年度中に基金条例を改正するとの答弁がありました。基金条例改正と新年度の保険料の引き下げを強く求めるものです。
 第6に、食肉センター特別会計についてです。食肉センターについては、市民への寄与がないことから、多額の税金投入はただちにやめるべきです。県への移管、民営化、廃止の3つの選択肢が提言されていました。市長は「できるものは民間に」ということを言いながら、肝心の食肉センターの民営化は全く取り組もうとしません。提言に沿った対応を直ちにもとめるものです。
 以上が反対の理由です。
 次に、指摘、意見、要望を行います。

 まず、公共施設マネジメントについてです。
 この間、公立幼稚園の適正配置、公立保育所の民営化、市営住宅の削減など、公共施設を削減する動きが強まっています。現在、公民館、市民館,共同利用施設の3施設の適正配置が検討されていますが、答申では施設削減も示されています。
 現在公共施設等総合管理計画(素案)のパブリックコメントが行われていますが、方針には公共施設の総床面積を2012年度比で2032年度には10%、2062年度には20%削減するとしており、「削減はじめにありき」になっていないかとの質問に対して「総量を一律削減するものではない」との答弁をしており、市民、地域とよく話し合って公共施設の整備、適正配置をすすめるべきです。
 なお、第2庁舎整備についても、パブリックコメントは終わっていますが、地上12階地下1階、100億円規模で、財政的にも大きな負担となることから、過大とならないよう、強く求めるものです。

 次に介護保険についてです。2017年4月から介護予防訪問介護と介護予防通所介護について全国一律の基準となっている介護給付からはずし市町村が実施する総合事業に移行します。市では生活援助については一定の質の担保が必要であると住民主体の実施については見送り通所介護についても利用者の安全面を確保するため現行サービスを継続するとしています。今後についても維持するよう求めます。
 さらに、国は要介護2以下の軽度者の訪問介護や通所介護、福祉用具貸与、住宅改修等についても原則1割から全額自己負担にすることを検討しています。市では69%の人が対象になりますが保険料は有無を言わさず年金から天引きし介護を受けさせないことは大問題です。
 今市議会でも、歩行器や手すり等の軽度者向けの福祉用具、住宅改修の利用が原則自己負担になれば、転倒、骨折等が発生しやすくなり、要介護度の重度化を招き結果として高齢者の自立的な生活を阻害し給付費が増大すると「介護保険制度における軽度者への福祉用具貸与及び住宅改修の継続を求める意見書」が全会一致で採択されました。
 日本ホームヘルパー協会は「初期段階のおける専門性の高い生活援助サービスの提供こそが、利用者の気力の衰えの回復や交流不足を補い、体の維持・改善、悪化の防止につながり、わずかな支援で、高齢者が自分らしく暮らす期間を長くすることができる」と述べています。専門家の警告を正面から受け止め、制度自体を危うくする改悪ではなく安心して介護を受けることができる仕組みへの転換が必要です。市では安心して老後をすごせるよう最大限の努力をすることを求めます。

 保育行政について、指摘、意見、要望を申し上げます。
 2015年4月から、父母、保育関係者の反対をおしきって実施された「子ども・子育て支援新制度」は、国と自治体の保育に対する責任を後退させ、保育を営利企業にゆだねるものです。「待機児童解消」の名のもとに発足した「新制度」でしたが、市当局も「幼稚園や保育所の認定こども園化で、待機児童解消が進むとされてきたが、そうはならなかった」と認めざるを得ませんでした。実際、今年4月1日現在の希望通り保育所に入所できなかった児童数は636人にのぼり、9月1日現在では、さらに増えて、969人となりました。
 市では今年度から3年間で、1500人の受け入れ枠拡大を方針化し、進めているところですが、教育こども分科会で市は、「12月議会には進捗の詳細を報告したい」と明言しました。待機児童対策は「施設整備による受け入れ枠拡大」「保育士の確保」「保育所に入所できなかったこども(家庭)への支援」の3つの柱でとりくむとしていますから、保育士の処遇改善具体策も含めた3つの柱全般についての報告を求めます。
 また、芦原むつみ統合保育所は、父母や関係者の声を受け、当初210人の定員としていたものを150人定員でスタートさせ、芦原で60人の保育を実施し、むつみは廃止するとしていました。しかし、待機児童がさらに増加しているもとで、芦原むつみ両保育所の有効活用は当然検討すべきというわが党議員の指摘に、局長は「検討する」としています。この検討結果も12月議会には明らかにすべきです。
 最後に保育料の問題です。2015年度から所得の高い4階層の3歳未満児1300人で年平均約6万円、総額7900万円が引き下げられました。3歳未満児の最高額が阪神7市で一番低くなったとはいえ、全国的に見てまだまだ高い水準にあり、さらなる保育料引き下げを求めます。

 次に、市営住宅についてです。
 いま、老朽化してきている団地の統廃合、建替え計画が進められており、甲子園9番町、石在町、甲子園春風町第一期が完了し順次廃止となる団地からの住み替えが進んでいます。しかし、老朽団地からの入居が完了しても、甲子園春風町団地では約60戸も余り、今後の建替え計画のある江上町などからの住み替えも、「第2次建替え計画」で現地建替えに方針が変わったことから、甲子園春風町団地への住み替え希望者が出る見込みはほとんどない状況となりました。
 決算審査の中で、市とURとの間で決めた20年という期日を突き付けられているUR借り上げ市住入居者には、甲子園春風町への住み替え斡旋は、鍵渡し後1年経過しなければ行わないという方針は間違いだと質疑を行いました。この中で、老朽団地からの住み替えと、UR借り上げ市住からの住み替えには「差」がないことを確認。さらに早急に江上町団地などに説明に入り、住み替え意向を聞くと答弁がありました。
 甲子園春風町団地には多くの空き住戸があることから、UR借り上げ市住の入居者にも、希望すればコミュニティを壊さずに集団で住み替えができるように直ちに行政の運用を変更すべきです。同じ市営住宅にもかかわらず、UR借り上げ市住入居者だけに特別な困難を押し付け、窮地に立たせることはやめるべき

 次に、消防力の増強についてです。国の消防力整備指針では西宮市の場合、消防署13消防職員650人となっていますが、現在8署所、426人が現状です。総務分科会でも各委員から消防力の増強を求める意見がありました。ところが消防局では2015年度は定年退職ではない普通退職者が10人、うち3年以内が7人、これからという若い職員が多数退職しています。消防職員の確保を求めるものです。
 なお、消防局は、今年度中にも西宮市に必要な消防力についての検討結果を示したいとの答弁があり、思い切った増強を求めるものです。

 次に、卸売市場整備についてです。
 2013年3月に策定された「西宮市卸売市場整備基本方針」では、@公設と民設の2市場の統合 A民設民営で新市場を開設運営 B現在地での新市場整備となっています。現時点では、第1種市街地再開発事業として進める方向が示されておりますが、新市場の開設に約15億円を要し、開設後の管理運営費等では1u当たり月額3000円の負担になると説明がありました。
 これに対し建設分科会の審査では各委員から、今回の提案では事業者として営業存続は無理ではないかと、懸念の声が相次ぎました。
 いうまでもなく卸売市場は、市内事業者に対する食材提供、地場産野菜での農業振興、産業振興、食育推進など、重要な役割を果たしています。西宮市としても公設市場の開設者として、長年責任をもってかかわってきていることから、今回の整備にあたっては、事業者が引き続き、営業可能な手法や自己負担能力等を見極めながら、西宮市としても公的支援も含めて具体的なかかわり方を示す必要があると考えます。
 掛田副市長は「決算分科会の議論を踏まえ考えさせていただく。公費の投入はしないとしているが次のステップを示すことが必要。庁内論議をしていきたい」と答弁されました。ぜひ、思い切った方針を出されることを要望しておきます。

 次に、上下水道局に対してです。
 決算特別委員会建設分科会において、上下水道料金の減免制度について、来年度実施をめどに、精神障がい者にも拡大することを、いま検討しているとの答弁がありました。
 これは、ことしの3月16日に開催された予算特別委員会建設分科会において、日本共産党市議団が、上下水道料金の減免制度に精神障がい者も適用すべきことを要求し、検討されたものです。
 障害の違いによる格差は是正されなければなりません。来年度必ず実施するよう改めて要望しておきます。
 以上で日本共産党西宮市会議員団の反対討論とします。