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野口あけみの一般質問
2016年12月06日

児童虐待の防止対策と児童福祉法改正について


 2014年度、全国の児童相談所に約8万9千件の児童虐待が通告され、1990年の調査開始以来初めて8万件を超えました。2015年度では前年度比16%増の10万3260件、集計開始以来25年連続で増えています。虐待によって死亡する子どもは、厚生労働省が把握した13年度の数値で年に69人、日本小児学会は、15歳未満の子どもの虐待死は、実際には年約350人にもなるという推計を2016年4月発表しています。
 子どもの虐待死では今年、いずれも大阪府下でショッキングな事件が相次ぎました。堺市で4歳男児が所在不明となり両親が児童手当詐取で逮捕された事件です。後に男児の死亡が判明しましたが、男児の妹への虐待疑惑の中で一連の事件が発覚しました。つい先日も、大阪市内のコインパーキングに止めた乗用車のトランクから、クーラーボックスに入れられた1歳男児の遺体が発見され、両親が逮捕されました。食事を満足に与えられない栄養不良状態でした。
 子どもの虐待対応の中核的かつ法的権限を持つ強力な機関として児童相談所が全国に209か所あります。都道府県、政令市のほか、2006年からは中核市でも設置できるようになり、金沢市、横須賀市の2市にあります。兵庫県下には政令市の神戸市が1か所をもち、県立の5か所の子ども家庭センター(児童相談所)があり、西宮市は、尼崎市、芦屋市とともに西宮こども家庭センターの管轄下です。
 児童相談所では虐待通告48時間以内に子どもの安全確認をしなければならず、子どもの安全のために分離保護といった強制的な枠組みで保護者と対峙する一方で、親子関係を修復し保護者に寄り添って支援を行うという、質的に異なる役割を同時に求められているため、あり方について議論されているところですが、ともあれ、児童相談所が虐待対応で重要な役割を与えられていることに変わりありません。
 虐待対応の増加で、児童相談所が「対応の限界」に来ているとの認識のもとで、国、都道府県、市町村の役割を明確にすることなどを中心にした社会保障審議会児童部会の「新たな子どもの家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告」=「提言」が2016年3月にまとめられました。その提言を経て先の国会で児童福祉法改正案が提出され、全会一致で可決成立し、一部は16年10月1日に、他は来年17年4月1日に施行されます。

まず、3点、西宮市の児童虐待防止の具体的な施策や実情についてお聞きしたいと思います。

ア、の乳幼児健診についてです。
 乳幼児に対する虐待は直接命にかかわります。予防し、発見できる重要な機会の一つが乳幼児健康診査です。現に市の地域保健課では、乳幼児を対象に疾病や発達障害の早期発見や養育者への育児支援とともに、虐待の早期発見・予防を目的に掲げて、4ヶ月児健診、1歳6か月児健診、3歳児健診をおこなっています。先にあげた大阪での虐待死事件でも健診が発見のきっかけとなっています。(資料をご参照ください)
 2015年度の市の受診率は、4ヶ月児健診の97・9%が最大値となっており、1歳6か月、3歳と年齢が上がるにつれ、少しずつ受診率が下がっています。また、中央、鳴尾、北口、北部と4か所の保健福祉センターで実施されていますが、それぞれ受診率に差があります。お聞きしますと必ずしも居住地のセンターで受診するわけではなく、交通の便が良い北口センターの受診率が高くなっているとのことでした。経年変化で見ても実施か所数が増えるごとに受診率も高まってきたとのことでした。身近でサービスを受けられることが大切であることがうかがえます。
 受診の結果、フォローが必要な方たちが資料にあるような内容で明らかになっています。子どもの発達への心配には医療機関につないだりと、その対処もさまざまだと思いますが、とりまとめの中の養育者の精神面、育児不安、養育者の育児姿勢といったところに、放置すると虐待をしてしまう、あるいはしているといった恐れのあるケースも含まれているのではないかと思われます。
  1. 質問ですが、そうした虐待、または今後虐待の恐れがあるというケースはどのように把握しているのか。その後の支援=フォローはどのように行っていますか。
  2. たとえば統計上ではH27年度には3歳児で262人が、受診できていません。乳幼児健診を受けていない子どもは虐待のリスクがあるとして、大阪府では2014年に統一した指針を定め、市町村によってばらばらだった「未受診」の基準を最長2カ月受けない場合とし、さらに1カ月保健師などの訪問で居住の確認ができなければ担当部署で協議のうえ、虐待の担当部署に協力を要請することとしています。つまり、言葉を換えれば受診100%をめざすということです。虐待の早期発見防止のために100%の受診をめざすべきですが、本市での未受診者に対する対応はどのようなものですか。
  3. 乳幼児健診とは別に児童虐待の予防や防止、早期発見も目的に生後2か月の赤ちゃんを地域の民生委員・児童委員が訪問する健やか赤ちゃん訪問事業が実施されています。この実施状況についてもおききします。

イ、
 2015年度に市の虐待問題の担当課(こども家庭支援課 家庭児童支援チーム)が受けた相談件数は1741件、うち虐待相談は832件です。いわゆる「泣き声通報」なども含まれるようですが、通報があった限りは慎重に経過を観察するとのこと。もちろん深刻な事態も含まれています。程度は様々でも、832件すべてを支援や対策の対象としている、とお聞きしました。
 ご承知の通り虐待は実の親や継父母などから家庭において受けるケースが圧倒的です。緊急度、重症度の高いケースのほんの一部分、全体のなかの2%ほどが、児童養護施設や乳児院、母子生活支援施設、また里親や2人の養育者と補助員などで養育される小規模のファミリーホームなど社会的養護を受けていますが、虐待を受けている子どもたちの98%は在宅ですごしているとのことです。児童養護施設など社会的養護の量が圧倒的に足りないことが背景にあると思います。
 そこで質問ですが、本市の在宅の被虐待児への支援、家庭への支援の実情について具体的におきかせください。

ウ、は市の担当部署である家庭児童支援チームの体制充実についてです。
 相談件数は先ほども申し上げましたが、2015年度は、1741件、うち虐待は832件で、前年度の1667件から74件増加するなど、ここ5年間の相談件数は増加傾向が続いているとのことです。これを2015年度は家庭児童相談員7名の体制でこなしており、1人当たりの相談件数は、平均で248件、虐待では119件と、100件を超えることになります。
 一方、西宮こども家庭センター(児童相談所)におけるケースワーカー1人当たりの虐待対応数は、47・8件です。児童相談所では強制措置を伴うような重症なケースが多い一方で、支援する期間を一定で区切り、後の見守りや対応は市の担当課に回していくことが多いということでした。市の家庭児童支援チームは2016年度に増員となり、係長1名、相談員8名の体制、ただし1人が育児休業中とのこと。明らかに人員不足です。人員体制の充実を求めますが、見解をお聞かせください。

エ、
 次に、児童福祉法改正と児童相談所についてお聞きします。
 児童福祉法改正には施行後5年をめどに中核市・特別区が児童相談所を設置できるような必要な措置を講ずることも盛り込まれています。我が党、佐藤議員が再三にわたり児童相談所設置を求めて本会議質問をしていますが、今年6月議会でも法改正を見通して児童相談所設置を求めました。
 この質問に、市長からは現段階では児童相談所を設置する考えはない、その理由の一つとして、次のような答弁がありました。
 正確を期するために議事録を読みあげます。「具体的な理由として、たとえば本市に児童相談所を設置した場合、市が従来から担っております継続的な相談や支援という役割と同時に、児童相談所が持つ強権的な介入という役割までを引き受けることとなります。これにより、これまで行えてきた保護者への多面的な支援のアプローチがかえってしづらくなるばかりでなく、強権的な介入により一旦保護者と対立してしまうと、その後の支援が大変難しくなり、かえって虐待のリスクが高まるのではないかといった懸念も感じているところでございます」「専門的人材の確保や財政面での負担といった課題に加え、ただいま申し上げましたような虐待事案への対応の実務面における懸念等も総合的に勘案しました結果、本市といたしましては、現段階では市立の児童相談所を独自に設置する考えはございません」
 児童相談所のあり方に、議論があることは先にも述べた通りです。しかし、これを理由にして児童相談所設置を拒むのは、明らかに児童相談所の役割を否定しているととられかねず重大です。佐藤議員も答弁に対し反論していますが、見解を求めたいと思います。
質問ですが、
  1. このたびの児童福祉法改正で、児童虐待対策における市の役割や対応はどう変わるか。
  2. 児童相談所が児童虐待防止対策において果たしている役割をどう認識しているか。
  3. 西宮こども家庭センターに寄せられる虐待相談件数が2014年度において3市の中でも西宮市が最大であったのは、子どもの人数が多いこと、また他市からの転入者が多く子育て支援に結びつかず孤立して子育てをしている人が多いから、というセンターの分析を昨年12月議会で佐藤議員が指摘しています。このようなことからも、中核市である西宮市が法改正の趣旨にのっとって児童相談所を設置することを決断し、ただちに準備を始めるべきだと考えるがどうか。