HOMEへ
上田さち子の賛成討論
2016年12月19日

請願第12号「高江のオスプレイ着陸帯工事・オスプレイ配備」による環境への影響について、地方自治を尊重する観点から沖縄県と真摯に協議をするよう、西宮市議会として政府に対し意見書の提出を求める請願


 請願第12号 「高江のオスプレイ着陸帯工事・オスプレイ配備」による環境への影響について、地方自治を尊重する観点から沖縄県と真摯に協議をするよう、西宮市議会として政府に対し意見書の提出を求める請願 について日本共産党西宮市会議員団の賛成討論を行います。

 この請願審査を総務常任委員会で行った日の夜9時30分頃、米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)所属の垂直離着陸機MV22オスプレイ1機が名護市沿岸部から80メートルの民家に近い浅瀬に墜落、大破しました。同日夜、別のオスプレイが同基地に胴体着陸していたことも報道されています。現地では、「起こるべくして起きた事故」として、直ちに配備を撤回することを求める声が起こっているのは当然です。
 米軍は1990年代から沖縄へのオスプレイ配備を計画していましたが、墜落・乗務員死亡など重大事故が相次ぎ、県民に大きな懸念が広がったため、日本政府は配備計画をひた隠しにしてきました。配備直前の2012年9月、日米両政府はオスプレイの安全性に関する合意を交わし、その中には、@人口密集地域上空は避ける A夜間訓練飛行を制限するなど盛りこまれていましたが、今回の事故のように、夜間であれ、人口密集地域であれ野放しの訓練がやりたい放題に行われていることが改めて浮き彫りになりました。
 今回の事故を受け、在沖縄米軍トップのニコルソン第3海兵遠征軍司令官は墜落機が浅瀬に着水したとして「住宅上空を飛ばなかったことを感謝されるべきだ」「飛行士は英雄だ」と、米軍基地を押し付けている「占領」意識丸出しの驚くべき発言をしていることに怒りを私は禁じえません。

 さて、今議会に提出された請願第12号の請願趣旨では、1995年に起こった米兵による少女暴行事件が引き金となり、それまで鬱積していた沖縄県民の米軍基地に対する怒りが爆発した情勢を踏まえ、翌1996年、日米両政府が沖縄に関する特別行動委員会(SACO)合意により、「沖縄県民の負担軽減」として基地の統合・整理・縮小が方向づけられ、その一つとして北部訓練場の過半の返還と引き換えにオスプレイ着陸帯(オスプレイパッド)を新たに6個つくることになったと、政府による無法・強行ぶりを告発されています。
 無法ぶりの一つは、新たなオスプレイ着陸帯6個に囲まれる約150人が住む東村高江地区の生活環境破壊、いま一つは、ヤンバルと言われる豊かな森に生息するノグチゲラやヤンバルクイナなど数多くの固有種や絶滅危惧種が危機に瀕する事態になるなど自然環境破壊が一層進んでいる実態を明らかにしています。そして請願項目として環境への影響について、地方自治を尊重する観点から、沖縄県と真摯に協議するよう、政府に意見書を提出してもらいたいと西宮市議会に求めておられるのです。
 
 審査にあたり今回2名の方が陳述されました。そのお一人は、子どもさんの友達が沖縄に住んでいるということから、高江のオスプレイパッド建設工事の実態を知り、お友達ご一家もゲート前で座り込みを続ける現地のおじいやおばあたちとともに反対運動をしていると紹介され、これは沖縄だけの問題だと傍観していいのか、その事実から目を背けていいのかと思い、選挙で示された民意に政府は向き合ってほしいと述べられました。
 もう一人の方は、この間3回高江の建設現場に行かれた方です。利用価値がなくなった北部訓練場の一部返還と引き換えに、SACO合意ではヘリコプター着陸帯の設置と書かれているが、オスプレイ着陸帯の設置とは一切記述されていないこと。沖縄防衛局が実施したオスプレイを前提とした環境アセスメントは実施されておらず、工事のやり方や工期の短縮などの変更があろうと、そのことにより再度の環境アセスが必要なのに、アセスやり直しも行われず自然環境が破壊されている実態も詳細に述べられました。またこの間、毎週1回、西宮市内で署名行動をされ、請願と同趣旨の賛同署名が1713筆寄せられたことも紹介されました。

 総務常任委員会での請願審査では、会派ぜんしんの議員から、請願書に記載されている「オスプレイの夜間の騒音で睡眠不足となった児童が学校を欠席する事態が生まれている」とあるが、東村に電話で問い合わせたところ、そのようなことは聞いていないと言っていた。また、自治権を侵害する高江での政府の行為とはどういうことかなど質問がありました。
 まず騒音被害については、今年9月、建設工事の差し止めを那覇地裁に提訴した33人のうちの一人は、すでに完成し運用されている2カ所のオスプレイパッドによって、昼夜を分かたぬ爆音を押し付けられ、睡眠妨害、生活妨害を受けていると証言。また、琉球大学の渡嘉敷健准教授が今年4月に行った東村内の小中学生対象のアンケートでは、77%の児童・生徒がヘリの騒音が気になると回答。「授業に集中できない」「うるさくて寝られない、家の上は飛ばないでほしい」と記述し、周辺住民からも「寝ていた赤ちゃんが飛び起きる」「飛んだあとは、頭痛、吐き気がする」と悲痛な声があることが発表されています。
 また自治権侵害では、この間の県知事選挙や衆院選の全選挙区、県議選、今年7月の参院選のすべてで、「オスプレイ配備NO!」とし、沖縄県41市町村長全員が「オスプレイ配備の撤回」をもとめて「建白書」を2013年1月に政府に提出したこと。そして、東村高江地区では1999年と2006年の2度にわたり、区民総会として ヘリパッド建設反対決議が行われ、最近でも東村議会として2015年6月に「オスプレイ飛行禁止と撤去を求める意見書」を可決するなど、民意は明確に示されています。にもかかわらず、今年の参院選直後の7月22日から安倍政権が地方自治を踏みにじって、全国から500名を超す機動隊を終結させ、無法な工事強行という暴挙を重ねている事態も怒りをもって陳述者とともに説明させていただきました。

 今回の請願審査を通じて、あらためて日米安保や国防は専管事項として地方自治を蹴散らし、生活や自然環境を破壊する権限が法的にあるのかという問題が問われていると思いました。まず、国会の論戦で政府がよく引用する「専管事項」ということを扱う法律はないということです。さらに沖縄県民も知らない間に、日米両政府のみで取り決めたSACO合意の内容も、何らかの法律で決められたという事実はないということです。
 反対に地方自治法第1条には、「地方公共団体は、住民の福祉の増進をはかることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広くになうものとする」とし、住民の生命、財産、自由、あるいは生活基盤に関わることがあれば、それが外交や安全保障に関連しようがしまいが、地方公共団体は住民の福祉のために毅然と意思表明をし、住民を守り抜く責任と権限を持っているということです。このことに照らせば、いま沖縄県東村高江で起こっている事態は、何の法的根拠も持たず、安倍政権のもと、防衛省、警察庁の国家権力が総がかりで無法の限りを尽くして、地方自治を蹂躙しているといわなければならないことです。この背景には米軍の思い通りに「基地の縮小」どころか「基地のたらいまわし・基地増強」を強行する意図があります。
 いま、住宅地の中心にある老朽化し使い勝手の悪い普天間基地を、名護市辺野古沖に、向こう200年の使用を認める最新鋭の新基地につくりかえようとしていますが、高江のオスプレイ着陸帯建設はこの新基地に配備されるオスプレイの訓練場そのものです。いうまでもなく新基地に配属されるのは海兵隊です。ご承知の通り、米軍の侵略部隊として名高い「殴り込み部隊」である海兵隊が世界で海外配備されているのは日本以外にありません。そしてワインバーガー国務長官が明言している通り、「海兵隊は日本防衛には割り当てられていない」のです。日米両政府は、口をひらけば中国や北朝鮮の脅威をあおっており、米軍が日本を守ってくれるといいますが、偽りそのものです。沖縄県民にとっての最大の脅威は、基地による人権侵害であり、基地の米兵による凶悪事件であることは周知の事実です。
 沖縄は、先の大戦で唯一アメリカ軍が上陸して地上戦となった地です。島民の4人に一人が亡くなったといわれています。アメリカ軍は沖縄の住民を収容所に入れている間に、「銃剣とブルドーザー」で、世界戦略の基地をつくりました。日本国土のわずか0.6%の沖縄県に、日本国内の米軍基地の74%を押し付けている実態を私たちも傍観していられないのではないでしょうか。
 誰にも健やかな生活を踏みにじる権利はありません。
 本請願は、沖縄の実態をあらゆる角度から告発し、法治国家としての問題点を提起され、地方自治本来の役割を政府に真摯に向き合ってもらいたいという趣旨で出されました。地方議会で日々住民こそ主人公の政治をとそれぞれの立場で向き合っておられる議場のみなさん、高江の事態を西宮に置き換えたとき、決して唯々諾々と国のやることに黙って付き従う方はおられないと思います。地方自治の本旨に基づき、みなさんの良識あるご判断をいただき、ぜひご賛同下さることを願い、日本共産党西宮市会議員団の賛成討論とします。