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野口あけみの代表質問
2017年02月28日

西宮市財政の現況と今後


 本題に入る前に、少し前置きを述べさせていただきます。
 政府与党は、昨日27日、新年度予算案を衆院予算委員会で採決し、本会議でも可決、衆議院を通過させました。自衛隊が派遣されている南スーダンの深刻な実情と防衛省ぐるみでの日報の隠ぺい、提出の根拠が総崩れしている「共謀罪」法案、文部科学省の天下りの実態解明など、各大臣の資質や責任が厳しく問われる問題が山積しており、審議は全く尽くされていないなか、日本共産党などの反対を押し切っての採決です。
 予算案審議の舞台は今後、参議院に移りますが、予算案以外にも学校法人「森友学園」への異常な安値での国有地払い下げ問題や、過労死ラインまで残業を容認する案を検討している「働き方改革」も重大焦点となります。ひきつづき、安倍政権の姿勢が厳しく問われることになります。

 そのような中、今村市政発足から3年が経過しようとしています。まずはこのおよそ3年の間でマスコミを騒がせた2つの事案に触れないわけにはまいりません。2015年1月、あるテレビ局の「UR借り上げ住宅問題」の放送を、当初は偏向報道とした市の報道対応と、昨年2016年12月議会で大問題となった、中高生を前にした不適切発言とその後の議員に関するブログ問題です。
 内容の詳細についてはよく知られていることであり、ここでは述べません。当時マスコミでも頻繁に取り上げられ、東京にいる私の娘やめいは、出身が西宮と言うと、「あの西宮」と言われ恥ずかしかったと言っておりました。どちらの問題も市議会において、全会一致で市長の対応を改めるよう、また謝罪することを求めた決議が採択されました。
 また、2015年12月議会でUR借り上げ住宅問題での訴え提起議案が継続審査となったことに関連して、これも議会全体の意思として、「市長の言動が、自分が常に正しいという立場を決して譲ることなく、他者を理解し、共感する姿勢に欠けている」「議会から幾度となく市長としての在り方に批判が相次ぐこと自体が、尋常でないと認識するべき」との異例の議長声明が発せられたところです。  
 これらは政策対決以前の、今村市長個人の資質にかかわる問題であり、意見や立場の違う議員会派の全会一致での決議という重みを自覚してもらいたいと思うのです。しかし、私などが意見を申し上げたところで何ら反省をうながすことにもならず、市長の心に響くところもないのだろうなと推察しますので、この件は以上の指摘のみにとどめます。

 さて、ここから本題です。2017年度西宮市予算案は、一般会計1766億2311万円、特別会計947億1868万円、企業会計467億2765万円、合計3180億6940万円となっており、当初予算の総額としては、4年連続の増、阪神・淡路大震災直後の1995年度を除いて、過去最大の規模になっています。

 歳出では、「持続可能な文教住宅都市」実現のための事業に重点配分したとしています。今年度も含め3年間で1500人の保育所定員増に向けた保育所待機児童対策。香櫨園小、瓦木中など6つの学校の増改築、中央病院、保育所、市営住宅の耐震化対策等公共施設の老朽化対策、これらは喫緊の課題への対応です。第2庁舎整備のなかでの防災危機管理センター整備や防犯カメラ設置など防災や地域の安全・安心対策、地域力の強化に積極的に取り組むとし、党議員団も求めてきた(仮称)産業振興条例の制定などももりこまれています。

 新年度は、市長として予算策定から執行までをやりきることができる最後の年度であり、これまで2年半経営に携わる中で明確化された課題のすべてについて、解決に向けて着手する、と豪語されています。
 時間に制限がありますので代表質問ではとりあげることができませんが、見過ごすことができない課題について簡単に述べておきます。
UR借り上げ住宅からの引き続きの追い出しを含む、市営住宅のさらなる削減計画の具体化があげられています。また、入居者の確実な住み替えを担保する制度の検討や入居承継の条件の見直しにも言及されていますが、これ以上の戸数削減は認められません。制度改変には住まいは人権、福祉の観点を忘れてはならないと考えます。
 自動車運転手、学校用務員、給食調理員などの民間委託については、市としての考え方の整理ができており新年度中に発表していくとしています。この場では安易な民間委託には反対とのみ申し上げておきます。
 中央病院と県立西宮病院の統合については、「両病院を統合し、新たな用地に新病院を整備することが望ましい」との方向性が「あり方検討委員会」より示されました。議会では2015年12月議会に統合を検討する際の留意事項が5点、意見書としてまとめられ兵庫県知事に提出されています。これらの点も今後の検討に生かしてほしいと思います。
 芦屋市とのごみ処理広域化の検討、西宮浜での小中一貫教育の検討は様々な観点から慎重になされるべきです。

 次に、一般会計の歳入について見ていきたいと思います。
 歳入の根幹であり、構成比では半分近く、48・5%を占める市税収入は、給与所得の増、一部企業の業績好調、引き続き家屋の新増築増などによって、前年度比1・3%、11億2,318万円の増加が見込まれ、予算額は856億4290万円です。また、党議員団が一貫して求め、議会としても全会一致で実現を促した盤滝トンネルの無料化が3年前倒しで2017年度末には実現し、同時に兵庫県道路公社から12億1500万円が償還され予算化されています。
 一方、市税収入増と公債費(借入金の返済)の減を要因として、国から地方へ財源不足を補てんする地方交付税と交付税の振り替え財源である臨時財政対策債は、合計で前年より28億5,300万円、24・9%減少し、予算額85億9100万円です。その他、「アベノミクス」の陰りで、企業の配当実績や株式取引が低調なため、配当割交付金などでは前年度に比べ約7億円減少しています。
 投資的事業など行政需要に対応するため歳出は、先ほども述べたとおり震災直後を除き最大規模に膨れていますから、収入の不足分は財政・減債基金から繰り入れ、繰り入れ予定額は前年より約15億円多い約69億円となっています。
 増加している市税のうちでも個人市民税は、給与所得の増がみこまれるということで、前年比増の予算が組まれていますが、市民にとって給与所得の増を実感できる状況でしょうか。
 つい最近、総務省が実施した2016年家計調査の結果が発表されました。家庭の消費支出全体に占める食費の比率であるエンゲル係数が、25・8%と4年連続で上昇し、1987年以来29年ぶりの高水準となった、というものです。エンゲル係数は、生活水準が高くなるにつれて数値が低くなる経済指標として知られています。2005年には22・9%にまで下がり、そこから徐々にまた上昇し、現在、支出のほぼ4分の1が食費に充てられているのです。所得の伸び悩みで消費全体が落ち込み、食費が増える一方、被服費や教養娯楽費などは減少しており、国民のくらしがゆとりをなくしていることを浮き彫りにしています。
 給与所得増とはいってもそれは名目上のこと、消費税増税や物価の上昇で実質賃金は低下しています。労働者の実質賃金は「アベノミクス」の4年で、年額平均19万円も減り、家計消費は15か月連続で対前年比マイナスです。全国の給与所得者数を所得階層別にみると、増加しているのは年収2000万円以上のごく一部の高額所得者と、年収500万円以下の層であり、年収500万円〜1000万円の層は減少しています。大企業によるリストラと正社員の削減、非正規雇用労働者の増大で、低賃金労働者が増え、中間層がやせ細っています。
 一方、純金融資産5億円以上を保有する超富裕層では、一人あたりが保有する金融資産は1997年から2013年の間に、6・3億円から13・5億円に増え、同じく保有額1億円以上の富裕層は2016年までの2年間で101万世帯から122万世帯に急増しています。
 昨年のわが党佐藤議員の代表質問に対し、市長は、格差といわず、多様と答弁しましたが、ますます貧困と格差が広がっています。日本共産党は、現在の日本社会の姿を、「超富裕層がますます富み、国民全体の所得が低下する中で、中間層が疲弊し、貧困層が増大している」と特徴づけましたが、これを変えていくために奮闘するものです。
 このような市民の暮らしの実態を踏まえたうえで、所得の再分配機能をしっかり果たせるような行政執行を求めるものです。
 具体的な質問です。
 1、施政方針では、増加する行政需要に対応するために必要な財源の確保が厳しい状況なので、国県補助金の活用や市有地売却に積極的に取り組み、なお不足する額については、財政・減債基金からの繰り入れにより確保したとしています。厳しいという中でも、過去最大規模の歳出に見合う歳入を確保できる。それだけの力があるということです。そこで、市の歳入構成の特徴についてお伺いします。
 2、財源の不足分を財政・減債基金から繰り入れるという予算編成は初めてのことではなく、これまでも行ってきています。これまでの基金繰入れの状況と、基金残高、新年度の見通しはどうか。
 1つ目の質問の3点目です。
 今後の西宮市の財政を考えるにあたっての重要な柱の一つに公共施設マネジメントがあります。
新年度は、第2庁舎の基本設計をとりまとめつつ、更新時期はもう少し先ではありますが、本庁舎、市民会館、勤労会館や青少年ホームも含む本庁舎周辺整備の総合的な検討を2年間で進める、建築後30年を超える施設が6割を占める学校施設全体の長寿命化計画を策定するとしています。
 合わせて、市営住宅や学校施設を中心にした計画修繕や、大規模な投資的事業の経費をできるだけ具体的な計画を積み上げて今後20年程度の施設整備費を試算するとしています。
 すでに「西宮市公共施設等総合管理計画」では、今後の公共施設の更新・改修においては、必要性を十分に検討し、経費を抑制し単年度費用を平準化していくこと、長寿命化を図ること、行政需要の変化に見合って施設供給のあり方、量を見直していくという方向性が示されています。
 一定の長期計画が必要なことを否定するものではありません。しかし、今回提起されている施設整備費を20年間分試算するという方針には、ある種の危惧を感じているところです。
 震災後の第2次第3次行財政改善実施計画、西宮版行革では、過大に見積られた累積赤字が将来出るという財政試算をもとに、「財政危機」があおられ、福祉サービス行政サービスの切り下げや、職員削減が強行されました。
 現在はさすがに「財政危機」とは言えませんので、これにかわって、「今後の公共施設保全に多額の財源が必要だから」が枕詞のように語られ始めています。今後は、この20年間の施設整備費試算額が、かつての累積赤字想定額のように、市民の福祉やくらしの願いを押さえつけ、サービス切り下げの「錦の御旗」「御老公の紋所」のようになりはしないか、心配するのです。
 質問します。
 具体的な計画を積み上げるといいますが、先々の行政需要も工事単価なども不透明ななか、試算をするわけです。その目的は何か。試算を20年とした理由は何か。