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2018年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ
2017年08月31日

健康福祉局


  1. 介護保険制度は法改定のたびに給付減と負担増が押し付けられ、国民にとっては「保険あって介護なし」、さらには「介護保険制度は国家的詐欺」とまで言われている。さらに2017年の法改定では、「自助・共助・公助」に加えて新しく「我がこと・丸ごと」「地域共生社会の実現」などという言葉をもって、介護保険サービス後退の補完や代替を、地域住民に担わせようとしている。
    具体的には、「地域包括ケアシステムの深化・推進」と称し、各自治体に自立支援や重度化防止の名目で介護度軽減や給付費低減を図らせ、実施した自治体にはインセンティブ(財政優遇)を与え、そのうえで地域住民と市町村の協働で包括的支援体制をつくるなどとしている。さらに公費削減でサービスが足りない場合には保険サービスと一体に保険外サービスを提供する「混合介護」の導入まで検討されようとしている。地域の助け合いと市場化で社会保障をつぶすのが政府の狙いといわざるを得ない。
    社会保障は本来、すべての国民に人間らしい生活を営むことを国や自治体が保障する憲法にもとづく仕組み・制度であるべきだ。現在政府によって大きくゆがめられようとしている社会保障を、憲法理念に基づく「人権としての社会保障」を再構築することが求められている。以上を前提に、以下の項目に取り組むこと。

    1. 昨年来の特養ホームや老健施設入居者の食費・住居費の補足給付見直しによる負担増、利用料の2割負担導入に加え、今回の3割負担が導入されれば、ますますサービスの利用控えが進むことになる。市民のくらしへの影響や利用控えの状況などを具体的に把握し、撤回を国に求めること。

    2. 「自立支援」の名目で要介護度軽減の目標を設定し、「卒業」という名のサービス停止や介護認定を受けさせないなどの給付抑制はいっさいおこなわないこと。

    3. 介護保険料に対する国庫負担は20%と調整交付金の5%に分けられているが、国庫負担金を30%に引き上げるよう国に求めること。

    4. 保険料の減額の思い切った拡充と利用料減免制度の創設を国に求めること。また、保険料滞納者に対する厳しい保険給付制限についてもやめるよう求めること。

    5. 高齢者にとって大変重い負担となっている介護保険料を、市の一般財源を投入して引き下げること。県に対しては県基金の活用も求めること。

    6. 市独自の保険料減免を行なっているが、対象はわずかである。一般会計からの繰り入れで、減免を拡充すること。

    7. 低所得者ほど負担が重たくサービスの利用控えがある。低所得者への利用料減免制度を市独自で創設すること。

    8. 介護認定に約1か月かかっているが、必要な介護保険サービスが早期に利用できるよう認定審査について改善すること。また、申請者には認定が下りていなくても暫定で介護保険が利用可能なことをくりかえし知らせること。

    9. 特養ホームへの入所資格を要介護3以上に制限したため、待機者が減少したが、市内の特別養護老人ホーム待機者は2017年4月1日現在、1,366人、特に優先度が高いとされる高齢者も306人にものぼっており深刻な事態である。市として特養をさらに増設すること。また、入所資格の制限は見かけ上だけ待機者数を減らし、「介護難民」を放置しただけであり、国に対し、入所資格の制限撤回を求めること。

    10. 市内には介護付き有料老人ホームやサービス付高齢者専用賃貸住宅など高齢者を対象にした施設が増えている。施設運営者に対し、適正なサービスが提供されているかの指導・監督を強化すること。市民に対し施設等の的確な情報を提供すること。

    11. 介護現場では、劣悪な労働条件や賃金の低さ等で人材不足が続いている。特別養護老人ホームでは職員が足りず定員まで入所者を受け入れられない事態があるときく。国が責任をもって労働条件の改善をおこなうよう市として要望すること。

    12. 地域包括支援センターの役割はいっそう重要になる。市独自で一般財源を投入し、センター増設や職員増等、充実させること。

  2. 2017年4月より、「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、総合事業)が始まり、要支援1・2の訪問介護(ホームヘルプサービス)と通所介護(デイサービス)が総合事業に1年かけて移行されることとなった。2017年5月末時点で家事援助限定型訪問サービスの利用者は34人、同サービスを提供する指定事業所は65か所あるが、サービスを提供しているのは研修を受けた介護予防・生活支援員ではなく、ヘルパー資格者が多いのではないかとのことであった。
    市では、移行終了時には同サービス利用者は、300人から400人程度と見込んでいるが、現行サービスの8割程度と報酬が低いことの影響が、ヘルパーの待遇や、事業所の存続等にどのように表れるかが懸念される。また、なにより、家事に限定する介護サービスが高齢者の自立支援に真に役立つのか、疑問である。
    よって、要支援1、2の高齢者への総合事業については中止し、元通りの保険給付事業に戻すことを国に求めること。

  3. 高齢者福祉施策について

    1. 市では、認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らせる地域づくりを目指すとして、認知症サポーター養成講座や交流会・講演会開催など認知症地域ケア推進事業、認知症SOSメールの登録・配信、徘徊高齢者家族支援サービスなどをおこなっている。引き続き認知症に対する理解を広げ、対策を進めるため、これら事業を拡充すること。

    2. 家庭内だけでなく高齢者介護施設での虐待や死亡事故・事件が頻繁に報道されている。高齢者虐待相談窓口が設置され対応が進んできているが、今後も重要である。窓口の存在を周知し、いっそう充実を図ること。

    3. 高齢者の社会参加を促進する唯一の施策である高齢者交通助成制度は5000円が維持されている。高齢者に喜ばれている制度を維持し額を増額すること。また、芦屋市や尼崎市で実施しているバス運賃半額助成制度(敬老パス制度)等を検討すること。

    4. 福祉タクシー制度は障がいのある人や高齢者の外出支援策として有効な施策であり、ますます充実が図られるべきものである。2016年10月からは重度在宅精神障害者も適用対象となったが、さらなる対象者の拡大や助成額の増額や行き先の拡大など、制度の改善をはかること。

    5. 老人クラブに対する市の補助金は削減しないこと。また、ことぶき号バスについては利用する老人クラブの負担が大きい。補助金を増やすこと。

  4. 障がい者(児)施策について
    2014年1月、日本でも障害者権利条約が批准された。障害を理由とした不利益は社会全体で支える、障害の有無にかかわらず、すべての人が安心して暮らせるよう、福祉サービスは無料で提供する、というのが国際社会の共通の原則であり、ここ数年日本でも障害関連予算は毎年増えている。しかし国際的にみればGDP比でドイツの3分の1、スウェーデンの4分の1など、まだまだ水準は低い。以下、障がい者施策の充実を求める。

    1. 障害者総合支援法で、国は応益負担の問題は解決済みとの立場である。1割の定率負担は残され、低所得者は無料になったはいえ、負担上限額は変わらない。「応益負担」制度を廃止し速やかに無料化するよう国に求めること。またそれまでの間、配偶者の収入認定はやめて本人所得のみの収入認定とすることを国に求めること。

    2. 障がいのある人が65歳になると総合支援法から介護保険が優先される仕組みになっている。このたびの障害者総合支援法改定で、一定の条件を満たした障害者が介護保険に移行した場合、利用料を軽減する制度が創設されたが、要支援1、2相当の障がい者は除外されるなど不十分な内容である。介護保険優先原則の廃止を市として国に要望すること。

    3. 国の基本指針では障がい者入所施設から地域生活への移行を進めるとしているが、地域における居住の場であるグループホームは圧倒的に少ない。また、障害の状況などによっては入所施設の役割も重要である。どちらも計画的に増やすこと。

    4. 事業所に対する報酬の日額払いを月額払いに戻し、正規職員の配置を中心とした雇用とし、また報酬の底上げを行うよう、国に求めること。

    5. 障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳所持者、または難病患者が利用することができる各種事業は各自治体でも違いがある。他市の動向などを常に把握し、事業の拡充に努めること。

    6. 障がい者施設や自宅で家族による暴言、暴力等の虐待がある。虐待については生活支援課が相談窓口となっていることを広く市民に知らせること。また、障がいのある人の人権を守るため職員の研修等スキルアップを図ること。

    7. すでにいくつかの自治体で制定し、市内の障害者団体からも強い要望が出ている「障がい者差別解消条例」を、障害者の参画によって市でも制定するよう検討すること。

  5. 障害者の労働の保障
    国の基本指針では、障害者の福祉施設から一般就労への移行を進めるとともに、個人の特性や本人の意思に対応した福祉的就労も重視して取り組むとしている。以下についてとりくむこと。

    1. 障害者雇用を増やすために、引き続き企業への啓発活動を強めること。そのステップとなる市における障がい者臨時雇用を推進すること。

    2. 福祉的就労である就労継続支援(A型)、同(B型)が多様に展開されるよう市としての支援を強めること。

    3. 障害者優先調達推進法に基づく障害者就労支援施設等からの市の物品等の調達は、「西宮市障害者支援施設等からの物品等の調達に関する取扱方針」(以下、取扱方針)等によって行われているが、2017年3月末以来、市内の障害者就労支援事業所の指定を受けたNPO法人のいわゆる「脱税問題」が発覚したことから、この「取扱方針」の問題点・課題が明らかとなり、「抜本見直し」が市より表明されているところである。今後は不当な外圧に屈することなく、福祉的就労の充実に資する「取扱方針」となるよう検討すること。

  6. 生活保護について
    生活保護制度は最低生活保障のセーフティーネットであり、それは、憲法第25条に基づくものである。しかし、昨今の給付水準の相次ぐ切り下げでその役割が十分果たせているとはいえない状況がある。さらに医療扶助においての償還払いや窓口負担の導入まで検討されている。生活に困窮する市民が権利として適切に活用できるよう、市は以下のことに取り組むこと。

    1. 国庫負担額の削減やれ以上の給付削減攻撃を許さず、「健康で文化的な生活保障」の観点に立った制度となるよう、老齢加算の復活、生活扶助費、住宅扶助費など保護基準(最低生活費)の引き上げを国に求めること。

    2. 生活上経済上の悩みを抱える市民が、安心して悩みを打ち明けられるよう心を寄せ、問題解決をはかっていくのが面接相談員、ケースワーカーの役割である。国基準(被保護世帯80世帯に1人)に比べて少ないケースワーカー(同122世帯)を増やすこと。また、質を高める研修をすすめること。

    3. 法改定では扶養義務に関する規定が盛り込まれたが、「扶養は従来通り生活保護受給の要件ではない」「家族の問題に行政が踏み込んでいくことは相当慎重にしなければならない」と、これも国会で答弁している。この点を踏まえ、申請を躊躇させるような、従来以上の扶養義務照会を行わないこと。

    4. 生活困窮者自立支援法の下、稼働能力を有する要保護者に就労支援や指導を行っているが、一人一人の実情や条件に応じた丁寧な支援を行うこと。また、保護の辞退を誘導するような指導はいっさい行わないこと。

    5. 近年の酷暑でエアコンの使用は不可欠だが、電気料金の負担から使用を躊躇している受給者も多い。市の一般財源による、夏季・冬季見舞金および上下水道料金の基本料金免除を復活すること。

  7. 社会福祉法人・施設指導監査について
    2015年8月、9月にかけて発覚した社会福祉法人「夢工房」(本部:芦屋市)の不適正経理は、本市にも「夢工房」の保育所が分園も含めて5園あることもあって、市の法人指導課による監査の役割の大きさを浮き彫りにした。さらに、2017年4月に発覚した市内障がい者就労支援事業所であるNPO法人の脱税事件でも、その役割と限界が明らかとなった。
    2017年3月末現在、法人指導課が指導監査すべき対象は、社会福祉法人が35、保育所35、認可外保育施設57、老人福祉施設39、介護保険サービス事業所656、障害福祉サービス事業所・相談支援事業所536、救護施設1と、総数1364か所にものぼり、とても適切に監査が実施されているとは思えない。
    職員を増やすなど体制の強化を図ること。また、研修等により監査担当の職員のスキルアップを図ること。

  8. 市の援護資金貸付金は、市民が経済的困窮状態に陥った時に活用できる公的制度であるが、2014年度以降貸し付け実績がゼロとなっている。市は、同様の貸付制度が社会福祉協議会にあること等をその理由として説明し、制度の存廃も含めて今後検討すると聞いている。経済的支援策は「子どもの貧困」対策の中でも重要な施策であるので、援護資金貸付制度については、実績ゼロの要因、需要の有無などについて十分分析し、慎重に検討すること。

  9. 災害援護資金貸付金の償還免除要件が2015年度に拡大され、県下統一基準によって本市では2017年3月末現在、932件の免除を行ったが、内閣府より、無資力の状態の認定等に疑義ありとされ、現在県と国の間で調整中とのことである。県下統一基準による免除が認められるよう強く求めること。その際、神戸市が連帯保証人に対する債権を放棄する方針を示したが、県と連携し、同様の措置を認めるよう国に求めること。また、接触が困難な行方不明者も免除対象とすることや、償還指導事務にかかる経費について国庫補助対象とするよう国に求めること。

  10. 妊婦健康診査助成は2015年度に回数14回、上限82,000円に増額されたものの、全国平均(99,927円)や県平均(92,846円)を大きく下回っている。増額すること。

  11. 乳幼児健康診査は節目ごとに4回実施されており、受診率も95%を超えているが、虐待のリスクが高い家庭が未受診である可能性が高いと思われるので、面談での受診100%をめざすこと。

  12. おおむね40歳以上の市民を対象にがん検診や歯周病疾患健診等を実施しているが、受診率が高い乳がん検診でも29%(2015年度)にとどまっている。周知を図って受診者を増やすこと。また、乳がんなど、り患年齢が低いがんについては対象年齢を引き下げ、対象者を拡大すること。

  13. 内科、小児科の第1次救急医療をになう応急診療所は、順次診療時間も拡大され、市民の命を守っているが、特に子どもの救急への対応は、多くの子育て世代の要望である。休日、夜間(午後11時から朝方)の診療時間を拡大すること。
    また、救急協力病院を引き続き増やすこと。

  14. 難病患者の見舞金について2016年度に廃止された。難病患者へのアンケート調査では見舞金の継続を希望する意見が多数寄せられている。復活すること。

  15. 県の「受動喫煙防止条例」では飲食店等の「禁煙」「分煙」は努力義務にとどまっている。受動喫煙の健康被害がとりざたされており、分煙をしていない飲食店については、禁煙を含め指導を強化すること。