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2018年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ
2017年08月31日

教育委員会


  1. 2016年(平成28年)の児童福祉法改正において、その第1条で「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること」と規定し、子どもを「保護対象」から「権利の主体」へとあらためられたことをふまえ、他市でも取り組まれている「子ども条例」の制定を、西宮市でも検討すること。

  2. 「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」にもとづいて、西宮市教育委員会の体制は、2017年(平成29年)4月1日から新しい仕組みに移行した。この法律の改定は、教育委員会を国と首長の支配下に置こうとするものではあるが、合議制の教育委員会が自治体の教育行政についての最高意思決定機関であることになんら変わりはない。その重要性を十分汲み取り、教育委員会の自主性、独立性を維持し、市行政の介入を許さないこと。

  3. 教科書制度の改悪、学習指導要領の改定を通じて、道徳の教科化、体育への「柔剣道」導入、「君が代」を幼児にまで歌わせるなど、教育内容と教育現場への権力的介入がエスカレートしている。憲法は、教育内容への国の関与をできる限り抑制することを求め、学校・教員の自主性を保障している。教育の自主性を守るため、以下のことについて努力すること。

    1. 「君が代」の斉唱について、国旗・国歌法の審議において、政府は「義務付けはしない」「無理強いは内心の自由にかかわる」と答弁しているが、実際には、各地で強制され、大きな声で歌うよう強要する事例が後を絶たない。決して強制することのないよう指導すること。

    2. 新中学校学習指導要領の教科「保健体育」の武道で、選択できる種目の例に「柔剣道」が加えられたが、「柔剣道」は小銃に似せた木銃(もくじゅう)を相手の喉や胴の部分などをねらう「突き」を技の主体としたものであり、旧日本軍の格闘術である。絶対に採用しないこと。

    3. 近年、歴史教育にたいして、日本の侵略戦争を美化する偏狭な立場からの攻撃が強まっている。たとえば、私立灘中(兵庫県東灘区)で、日本軍「慰安婦」問題や「河野談話」の記述が掲載された「学び舎」の歴史教科書を学校が採択したことにたいして、「自民党の一県会議員から『なぜあの教科書を採用したのか』と詰問された」(和田灘中校長の同人誌寄稿から)、「ある機関が印刷して、賛同者に配布して送らせたと思えるはがきが全国各地から届きだした」(前同)というような、外部からの不当な圧力が加えられる、という由々しき事態が起きている。教科書採択にあたっては、そのような不当な圧力によって選考がゆがめられることのないように、教員の意見を尊重し、保護者・住民の意見をきちんと踏まえること。

  4. 平和教育を重視し、平和の尊さとともに、日本の侵略戦争と植民地支配の歴史的な事実や反省を、児童・生徒に伝えること。さらに、公教育が侵略戦争の美化・肯定を行うようなことは一切許さないこと。

  5. 2009年4月策定の「西宮市人権教育・啓発に関する基本計画」は、同和問題を含む8つの人権課題にとりくむとしている。同和問題は、終結すべきものであり、8つの人権課題から同和問題を外し、あわせて“西宮市人権・同和教育協議会”を廃止すること。

  6. 学校現場でのセクハラやパワハラ、また、「体罰・暴力」は、教員と生徒、あるいは生徒と生徒の間や教員と教員の間など、いかなる関係性においても、絶対に許さないこと。

  7. 「35人学級」を小・中学校全学年での実現を国と県に求めること。さらに、30人学級の実施に向け、必要な正規教職員の確保や施設整備に対しても、国や県に必要な対応を求めること。実現するまでの間、市独自で少人数学級を実施すること。

  8. いじめや不登校対応、学校のプラットホーム化、児童虐待早期発見など、学校には、マンパワーの充実と関係各機関との連携強化、また、そのための体制強化が、強く求められる。以下、次のことに取り組むこと。

    1. 少人数学級の実現はもとより、養護教諭の複数配置やスクールカウンセラーの全校配置、また、スクールソーシャルワーカーの大幅増員など、必要な人員増を国・県に強く求めること。

    2. 横浜市や川崎市、相模原市などでは、ベテランの教諭が学級担任を持たずに専任で児童指導や支援を行い(児童支援専任教諭)成果を上げている。市でも配置について検討し、実施すること。

    3. こども未来センターや、こども支援局、県子ども家庭センターなどとの連携をいっそう強化すること。

  9. 教職員の「超多忙化」「非正規化」を解決するために、教職員定数の改善を国に求めるとともに、以下の項目に取り組むこと。

    1. 本定欠教員が小学校で5%、中学校で11%となっている。定員についてはすべて正規教員で確保するよう、県に強力に求めること。また、非常勤講師の加配、産休代替教員の確保についても、適正に行われるよう要望すること。

    2. 中学校における教員のクラブ活動へのかかわり方は、その献身性に大きく依存しており、心身ともに大変な負担となっている。早急な改善を図ること。

    3. 市独自でプール指導時の補助員や中学校の理科・技術家庭科の実習助手など現場の声を聞き確保すること。

    4. 労働安全衛生基準に基づいて、教員の更衣室、休養室の設置を進めること。とくに、妊産婦教員の休憩室を必ず確保すること。

    5. 「教員評価」「不適格教員」制度や「教員免許更新制」、「教員給与の格差付け」については、国に廃止を求めること。

    6. 過重勤務でメンタルケアを必要とする教員が増えている。教員に対するメンタルヘルスを充実させること。

    7. 臨時教員や非常勤講師については、有期雇用で「官製ワーキングプア」と言われるような実態がある。このような非正規教員の処遇を大幅に引き上げるよう、国・県に強く求めること。

  10. 職員室の電話回線が少ないため、さまざまな対応で、電話の使用が急がれるにもかかわらず、電話が空くのを待たざるを得ない事態が生じたり、保健室にプリンターが無いため、ことあるごとに職員室にまで移動しなければならないなど問題が起こっている。急いで解決すること。

  11. 学校管理事務経費(学校配分予算)は、一人当たり換算で、1995年度(小学校27,306円、中学校は35,681円)時に遠く及ばない。教育予算を増額し、学校配分予算も大幅に増額すること。

  12. 特別支援教育について、次のことに取り組むこと。

    1. こども未来センターと連携した専門家チームの派遣や、市独自の特別支援教育支援員の全校配置、また、養護学校での介助員・看護師の配置など努力がなされているが、さらに充実を図ること。また、県に財政措置などの要望を強めること。

    2. 配慮の必要な児童・生徒を介助するなど補佐する役割を持つ学校協力員については、ボランティア的存在におかれている。教育委員会として身分を明確にし、必要な賃金を保障すること。

    3. 多様な様子を示し、程度もさまざまな発達障がいの子どもが増えている。引き続き教員加配などとともに、早期発見と適切な教育・支援が行えるよう全教職員向け、専門職向けの各種研修をつよめること。

    4. 「養護学校校舎改築」計画において、仮移転先が田近野町の「尼崎養護学校」と決まり、新校舎の改築は西宮養護学校「現地」と決定されたが、仮移転については、利用者や保護者、関係者に支障のないように万全を期して事業を推進すること。また、建て替えにあたっては、インクルーシブな教育のシステムを構築していくうえで、養護学校がセンター的機能を果たせるよう、関係者の意見をよく聞いて施設の整備をすること。

  13. 学力テストについて、次のように対応すること。

    1. 全国学力テストは子どもに過度な競争を強いるものであり、調査結果についても十分には生かされていない。参加しないこと。

    2. 市が実施しているリサーチプラン学力テストは結果が出るのが遅すぎて現場で生かされていない。一人一人の児童生徒の学力動向については、教員が把握する努力を日常的に行っていることから中止すること。

  14. 過熱しすぎる中学校運動部活動が社会問題になっている。成長期にある中学生に無理な練習を課すことはスポーツ障害の原因になり、教員の長時間労働にもつながっている。一方で、指導する教員がいないために部活動が成り立たない学校もあり、この際、中学校の部活動のあり方について、現場の意見や実態も聞き、見直すこと。

  15. 県の一斉事業であるトライやる・ウィークが実施されるようになって久しいが、各中学校で受け入れ先の事業所を探さなければならないことや、地域によっては受け入れ先の確保にかなりの困難が生じ、大変な苦労をせざるを得なくなる場合がある。また、宣伝チラシの配布など、労働の肩代わりという問題も生じている。さらに、塩瀬中学校では父母の抗議があったにもかかわらず連続して自衛隊を体験先とするなど、問題が多く噴出している。現場の意見を十分聞き取り、各学校の実施時期をずらすなど、問題の解決を図ること。

  16. 「自然学校」は、児童にとって、成育上重要な体験の機会ともなっている。しかし、指導員の不祥事など、教育現場ではあってはならない重大問題が生じている。指導員への教育行政としての指導の在り方や募集のあり方を見直すなど、体制を改善すること。

  17. 学校園施設等の整備、改修について、現場の要求にたいしすみやかに応えること。

    1. 老朽化や、教室運動場の不足等への対策が、優先的に必要な学校として8校(春風小、香櫨園小、安井小、瓦木中、西宮養護、大社小、瓦林小、深津小)が明らかにされ、2015年度は香櫨園小、西宮養護学校、16年度には春風小、安井小、深津小と、順次計画がすすめられる。具体化にあたっては関係者や地域住民、周辺住民の意見要望をよく聞き、進めること。

    2. 校舎新増改築に際して当然アスベスト含有が予測されるため、万全な対策をとること。

    3. 学校からの要望として出されている、雨漏りや床板のはがれ、窓枠やドアの立てつけが悪い等、修繕要望には直ちにこたえること。そのために、各学校の修繕要望を把握し、予算を増額すること。

    4. 小中学校普通教室へのエアコン設置が完了した。残されている幼稚園にエアコンを早急に設置すること。

    5. 道路や鉄道、航空機などの騒音対策で設置された空調の老朽化が進んでいる。早期に計画を立て、エアコンを整備すること。

    6. 災害時の避難所となる体育館へのエアコン整備も検討をすすめること。

    7. 学校のトイレを生活様式に見合った洋式トイレに改修することの必要性が認められ、早急に50%をめざすとしているが、テンポは遅々としている。予算を思い切って増額し、一気に進めること。また、廊下からトイレの中の奥までなんの遮りもなく見える現状を改善すること。さらに、性の多様性(LGBT)を考慮したトイレの設置についても検討すること。

    8. 委託業者によるトイレ清掃は効果も大きいことから、全体として回数を増やすこと。また、危険を伴う窓ガラス等の清掃については、児童による清掃をやめ、委託業者による清掃を実施すること。

    9. 水着や体育着の着替えのための更衣室がない。早急に改善を図ること。

  18. 学校図書教育を充実させるために、早期に専任・専門・正規の司書教諭を全校に配置すること。

  19. 西宮市の小・中学校での学校給食は、県下の各市に先んじて“直営自校方式”で実施され、食育の観点からも、子どもたちの健康と成長を守る上でも大きな役割を果たし、保護者からも喜ばれている。よって、以下のことを実施すること。

    1. 学校給食基本方針の改定にあたって、「効率化の一つとして民間委託の研究にも取り組む」としているが、一方で「質を低下させる効率化は行わない」としている。この観点から、将来的にも「直営自校方式」を堅持し、民間委託はしないこと。

    2. 正規調理員を基本とした人員を確保すること。また、同じ職務にありながら嘱託、新嘱託、臨時等で勤務時間の差とともに賃金格差がある。早急に関係団体と協議し、整理改善すること。

    3. 週2.5回の「米飯給食」を週3回以上にすることを目指すとしているが、その実現のためにも自校炊飯できるよう施設整備をすすめること。とくに、新増改築校においてはその前提で整備すること。

    4. 食物アレルギーのある子どもが増加している。2015年度に献立作成からアレルゲン情報の管理までを一括したシステムで行う取り組みが進められているが、さらにアレルギー除去食の完全実施を行うこと。

    5. 現在、児童生徒数550人以上の学校に1名の栄養教諭が配置されているが、食育の観点からも栄養教諭を全校に配置するよう県に求めること。

    6. 夏場の調理室では40度を超えることもあると聞いている。調理員の健康面でも食材等の管理の面でも、空調の整備を急ぐこと。

    7. 給食費の無料化に踏み切る自治体が広がり始めている。給食費について、食育という位置づけをし、教育費の無償化という教育基本法や憲法の精神に立ち、給食費の無料化を検討すること。

  20. 無秩序な開発により児童、生徒が急増し、教室等学校施設が不足する事態が生じ、それに対応するために「教育環境保全のための住宅開発抑制に関する指導要綱」を策定したが、「教育環境保全」に十分な効果を発揮しているとはいえない。仮設教室での対応が可能であれば規制の対象外としていることや、児童数推計の甘さなどに、その原因がある。現に瓦木中学校などの校区変更せざるを得なくなった。規制強化の方向で要綱の内容を抜本的に見直し、条例化すること。

  21. 子どもの貧困対策について、以下のことを実施すること。

    1. 「子どもの貧困対策法」にもとづき、本市でも経済状況や生活実態の調査が実施され、支援体制整備計画が策定された。次の段階で、いま、支援体制の整備計画の内容が検討されている。こども支援局が中心になるが教育委員会も連携して取り組むこと。

    2. 義務教育は無償の原則にも関わらず、その対象は授業料や教科書などに限られている。給食費の無料化を開始した自治体もあり、制服代、ドリル代、修学旅行積み立て、クラブ活動経費など保護者負担の解消を国に求めること。

    3. 不況が深刻化しているにもかかわらず、生活保護基準の切り下げが強行されている。就学奨励金については生活保護基準の切り捨てに連動して対象者を狭めないこと。あわせて、対象を増やし、支給額を引き上げ、利用しやすくすること。申請手続きについては保護者が希望する場合、直接教育委員会でも行なえるようにすること。

    4. 就学奨励金の小・中学生のいわゆる入学準備金について、これまでの7月支給から入学に間に合うよう3月支給に改善されることになった。あわせて、生活保護で支給されている入学準備に係る教育扶助額に相当する額へ入学準備金を増額すること。

    5. 国は2014年度から高校授業料無償制に所得制限を導入し、就学支援金制度とした。教育予算増による「高校授業料無償化」を復活するよう強く国に求めること。

    6. 奨学金制度については給付制奨学金の創設を、国や県に早期実現を要求するとともに、市独自の制度についても創設、拡充すること。

    7. 世界一高い大学、専門学校などの学費についても、負担軽減を国に求めること。

  22. 学校等で行われている健康診断において、心臓検診、腎臓検診の三次検診が保護者負担となっている。公費負担とすること。

  23. 幼稚園教育について市は公・私立の共存共栄といいながら、市民の要望の強い公立幼稚園の「3年保育、延長保育、子育て支援事業」等々を実施せずに定員割れを誘導し、休園させている。幼稚園教育において公立の果たしている役割は大きいものがある。公立幼稚園は減らさず存続させること。また、保育所待機児童対策として、「3年保育、延長保育」を緊急に公立幼稚園で実施すること。

  24. 県教委は、高校学区を2015年度入学者から5学区に統合・拡大し、これにより西宮市は阪神・丹波学区に統合された。学区の広域化によって中学における進路指導の困難や、遠距離通学による経済的、身体的負担の増大など、諸問題があると聞いている。市教育委員会自身が課題等を掌握し、議会に報告すること。

  25. 18歳選挙権が2016年の参議院選挙から開始された。学校現場での政治教育や生徒の政治活動を規制するような動きがあるが、規制するのではなく、主権者としての権利を保障するよう、適切な教育を行うこと。

  26. 図書館について、以下のことに取り組むこと。

    1. 正規司書職員を増員すること。

    2. 拠点図書館については毎日開館すること。また開館時間の延長についても、2015年度より一定の改善が図られたが、要望の強い閉館時間の繰り下げを、すでに実施している期間(現在4月から7月)を延長することや、閉館時間を繰り下げる図書館を拡大するなど、開館時間を延長すること。とくに、北口図書館での閉館時間を午後9時までとし、開館時間を延長するとこ。

    3. 地域の人たちにとって図書館が身近な存在となるよう、図書館分室の増設など図書館の整備を進めること。

    4. マイナンバーカードで図書館利用を可能としているが、頻繁に携帯するため紛失の可能性が高い。この際、マイナンバーカードでの図書館利用は中止すること。

  27. 公民館については、以下のことを留意し、改善を図ること。

    1. 公民館は、社会教育施設としての重要な役割がある。2015年度に公共施設適正配置審議会より公民館と、市民館、共同利用施設のありかたや配置について答申があったが、西宮市の公民館の歴史的役割、経過も踏まえ、安易な統廃合は行わないこと。

    2. 各公民館の視聴覚設備については最新のメディアに対応できるものを配備すること。

    3. 市内各公民館活動の登録グループが日ごろの活動を発表する市民文化祭は、現在、文化振興財団への委託事業となっているが、公民館(社会教育部)が直接行うべきである。検討すること。

  28. 高塚山を削って4haにも及ぶ大規模な宅地造成が計画されている。開発区域に高塚古墳があるが、古墳の保存については、記録保存の方針を決めているため、現物は撤去されるとのことである。専門家からも、また、周辺住民からも、現地での現状保存すべきとの強い声が上がっている。記録保存とした方針を見直し、現状保存すること。