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2018年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ
2017年08月31日

こども支援局


  1. 児童虐待、いじめ、不登校や体罰など子どもの人権を侵害する多くの問題が生じており、また、薬物乱用の低年齢化や有害情報の氾濫、性の商品化といった問題など、子どもを取り巻く環境の悪化は、非常に深刻な状況となっている。そうしたなか、子どもたち一人一人がかけがえのない存在であり、権利の主体であることを確認し、「子どもの権利条約」、また、改正された児童福祉法の第1条に明示された理念にもとづき、子どもの育成の基本理念を定める「子ども条例」が制定されることには大きな意義がある。すでに阪神間では川西市、宝塚市で制定され、全国的にも増えている。
    「子育てするなら西宮」を標榜する市だからこそ、「子ども条例」を制定し、子どもを権利の主体として位置づけ、子どもを大切にする理念を市全体のものにすること。

  2. 全国各地で保育所待機児童解消は社会問題となっているが、2017年4月1日現在の潜在待機児童数が、830人にものぼる。本市でも、引き続き大きな課題である。
    市は、緊急的に2016年度から3年間で1500人の定員枠を増やすことを公表し、対策を進めているが、実態は、待機児童解消の見通しが立たなくなっている。待機児童対策の基本は、認可保育所の大幅増設である。その上にたって、以下要望する。

    1. 市有地、国有地、公園の活用や、民有地のマッチング事業等、対策の具体化が進んでいるが、3年間で1500人定員増の目標の実現に全力を尽くすこと。

    2. 民間まかせにせず、公立保育所や分園も増設し、定員を増やすこと。

    3. 「送迎保育ステーション」を導入するとしているが、ステーションで送迎バスを待つなど、子どもに大きな負担がかかること、子どもの発熱、ケガなどで保護者のお迎え予定時間前にお迎えが必要となったときにはどうするのか、ということなど、この方式には問題点が多い。再検討し、導入しないこと。

  3. 子ども・子育て支援新制度(以下、新制度)が2015年4月、スタートし、2年以上が経過した。政府は新制度によって待機児童解消や保育の量の拡大や質の改善につながると宣伝してきたが、まったくそうなっていない。「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童の心身ともに健やかに育成する責任を負う」という児童福祉法の理念に照らして必要な以下の対策を講じること。

    1. 認可保育所において、運用で実施されている1、2歳児への保育士配置基準(国基準6:1を上回り5:1)を条例化し、認定こども園も同様に、条例を改正すること。

    2. 保育ルーム、小規模保育所などでは、保育士資格を必須としていないが、一方で「すべて保育士資格取得者とするよう努めていく」と事業計画に明記されている。これを条例上も必須とすること。

    3. 新制度では保育の利用に先立って、保育の必要性と、保育が必要な子どもについては保育短時間、保育標準時間の区分認定が行われる。特に必要量の認定については個々の条件を十分配慮して適切に行うこと。

    4. 公立、民間保育所以外は保護者と施設との直接契約となるが、それに先行して市は、保育利用申し込みを受け調整・あっせん・要請などを行うこととなる。ひきつづき、利用者の要望などを正しく受けとめ、施設についての情報も細かく提供して親身に相談にのり、適切な調整・あっせんを行うこと。

    5. 2歳までが対象の小規模保育、並びに保育ルームに入所した子どもがひきつづき保育を必要とする場合、認可保育所に入所できる保証がなく、実際に入所できない、いわゆる「3歳の壁」が問題になっている。継続して保育が受けられるよう、連携施設の整備等の対策をとること。

    6. そもそも保育に営利はなじまない。西宮市では株式会社の参入は認めないこと。

    7. 保育料について一定の所得者層を中心に引き下げられたが、まだ高い水準にある。さらなる引き下げを進めること。また、減免制度を拡充すること。

  4. 保育士不足についても各地で深刻になっているが、解決のためには全職種の平均を月10万円余り下回っているなどの低待遇の改善が不可欠である。西宮市がいま実施している内容は、国がやっていることを導入しているにすぎず、保育士不足を改善するという目的に照らして全く不充分である。他市で実施している給与の上乗せや家賃補助、通勤手当の支給など、抜本的な処遇改善策を進めること。

  5. 市立保育所、保育事業について、以下のことを要望する。

    1. 芦原保育所とむつみ保育所・むつみ児童館の合築計画は関係者の大規模化への懸念から、150人規模でまず開園することとなった。今後の定員の増員について、専門家の検証を経るとしているものの、定員増の方針は既定方針とされている。父母や保育士の意見十分汲み取り、一方的で安易な増員をしないこと。

    2. 待機児童がなくなり、定員の弾力化が解消されれば公立保育所3か所を民間移管する計画になっているが、保育における公的責任を考え、公立保育所民営化はきっぱりと撤回すること。新たな保育所民営化は行わないこと。

    3. 保育所の耐震化は65.2%と、遅れている。近隣に仮設園舎を確保する必要があることが遅れの原因だが、猶予できない課題として早急に計画化し、とりくむこと。

    4. 虐待や貧困などの影響を受けている子どもや、親自身が特別の支援を必要とするケースが増えている。市保育所事業課の保健師や保育士等が、市要保護児童対策協議会と連携して対応しているとのことだが、ひきつづきとりくみを強めること。また、虐待など問題をキャッチできるのは現場の保育士である。研修を強め適切に対応できるようにすること。

    5. 自園調理の実施やアレルギー除去食への対応等で、給食調理員の過重負担がある。給食内容をいっそう充実させるために調理員の増員をはかること。

    6. 誰もが利用できる一時預かり(一時保育)を公立保育所でも実施すること。

    7. 浜甲子園保育所については、引き続き公立保育所として整備すること。

    8. 母子支援施設の移転に伴って、また耐震化対策の必要から、津門保育所と児童館の改築が課題となっている。早急に計画を示すこと。

    9. 民間保育所や保育ルーム等に対し、保健指導等のための巡回指導など、保育の質を高めるための支援策を実施されているが、いっそう強化すること。

  6. 認可保育所を希望しても入所することができず、やむなくベビーホテルなど、認可外保育施設を利用せざるを得ない子どもがまだ多数残されている。認可外保育施設の利用にかかわって派生する問題を解決するために、少なくとも次のことを実施すること。

    1. 各地でずさんな運営の犠牲となる子どもが出ているが、市として適切な指導監督を行ない、犠牲を出さないこと。

    2. 認可外保育施設が認可保育所へ移行できるよう、施設整備の負担軽減や保育士確保、保育士資格取得などを支援し、認可を進めること。

    3. 認可保育所等の入所が保留となったため、認可外保育施設に移った子どもには、一定額を補助する制度がある。この補助制度を、認可外保育所に入所するすべての子どもに対象を広げること。

  7. 子育て広場は、中学校区に1か所の目標を早期に実現し、さらに小学校区1か所に拡充すること。

  8. 学童保育(留守家庭児童育成センター)は、保護者が昼間家庭にいない子どもに、授業終了後および学校休業日に、専用施設を利用して、適切な遊びと、生活の場を与え、その健全な育成を図る事業である。また、指導員には子どもの安全を守り、適切な指導で発達を保障する専門職としての重要な役割がある。市として次のことに取り組むこと。

    1. 市は、「留守家庭児童育成センターにおける施設整備のあり方について」という方針を定めた。そこでは、基準に即した施設整備と、受け入れ対象児童の拡充について、目標値が示されている。基準に適合した施設の整備については、老朽化対策と待機児童解消対策とをすすめるなかで、順次、整備していくとしている。
      また、受け入れ対象児童の拡充については、当面、4年生を対象にした受け入れを、2016年度(平成28年度)には4センターで実施し、2017年度(平成29年度)には新たに5センターで実施され、2018年度(平成30年度)の半ばには全センターで実施するとし、さらに、5,6年生については、可能なところから受け入れを検討するとしている。
      確実な方針の実施、推進とともに、計画の前倒し実施を検討すること。また、国や県の学童保育に関する予算の大幅な増額を要求すること。

    2. 学童保育の継続性からも数年ごとに運営事業者が変わる指定管理者制度の導入には問題が多い。市でもそのことを認識し、再指定においては審査基準に合致すれば同一の指定管理者を引き続き6年間指定できることに変更した。施設の管理運営が主ではない学童保育所に指定管理者制度、とりわけ公募はなじまない。少なくとも非公募とすること。

    3. 2016年度には、保護者の要望に応えて、長期休み時の開所時間を8時開所に変更するモデル事業が実施された。2017年度は17か所の施設へと拡大された。しかし、時間繰り上げ実施に伴う人員の確保をせず、シフト勤務とすることで対応しているため、十分な打合せが出来ないなど、運営に支障が出ている。全センターに拡大するに当たっては、人員体制を拡充すること。

    4. 延長料金は通常の利用料と比較して高い。保育料と同様に所得に応じた減免措置を講じること。

    5. 雨の日は育成センター利用の子どもたちに遊ぶ場所がない。学校と協議して体育館を使用できるようにすること。

    6. すべての育成センターにおいて、保護者への災害時などの緊急連絡用に一斉メールが送信できる環境を整備すること。

  9. 子育て総合センターは、各地域で行われている子育てに関する各種取組への支援や、子育て支援施設間や関係機関との連携・協力を促進するなどの役割が求められている。また、乳幼児教育・保育等の調査・研究においても役割を期待されている。センターで展開されている個別の子育て支援事業にとどまらず、文字通り、子育て支援の総合センター的役割が果たせるよう、運営について整理・検討すること。

  10. 児童虐待や育児放棄などは、年々増加の一途である。市では子供家庭支援課を虐待問題等の窓口として対応しており、一定の増員もはかられているが、さらに増員し体制を充実させること。また、学校、保育所、幼稚園などの子どもが通う施設や、県立こども家庭センター(児童相談所)などとで要保護児童対策地域協議会を設置し、連携を図っているが、虐待等の早期発見、対策のいっそうの強化に努めること。

  11. 中核市として、児童相談所の設置をすること。

  12. 「子育て支援の拠点」として児童館、児童センターを位置づけるのなら当然直営を守るべきである。あわせて、休日の開館や、地域偏在の解消、増館についても検討すること。

  13. 子どもの貧困について、厚生労働省が実施した国民生活基礎調査によると、2015年の子どもの貧困率は13・9%で、前回調査(12年)より2・4ポイント低下したものの、子どもの7人に1人がまだ貧困状態にあり、ひきつづいて深刻な状態にある。とくに、ひとり親世帯の貧困率は相変わらず5割を超え、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で依然として最低水準にある。国において、2013年、「子どもの貧困対策法」が成立し、2014年に具体的な対策を定めた大綱が決定された。西宮市においても「子育て世帯の経済状況と生活実態に関する調査」が行われ、支援体制の整備計画が策定され、今後、具体的な支援計画の策定が予定されている。計画が、真に実効ある子どもの貧困対策となるよう計画を具体的に充実させること。

  14. 市内の3か所ですでに運営されている「子ども食堂」が、子どもとともに、親や地域の人たちの居場所づくりとしても期待され、発展している。運営している民間各団体の自主性を尊重しつつ、関係者の意見も聞いて必要な支援を行うこと。