HOMEへ
野口あけみの反対討論
2018年04月23日

第416号 西宮市介護保険条例の一部を改正する条例制定の件


 ただいま上程中の諸議案のうち、議案第416号 西宮市介護保険条例の一部を改正する条例制定の件、議案第418号 西宮市援護資金設置条例及び西宮市援護資金条例を廃止する条例制定の件、議案第419号 西宮市旅館業法施行条例等の一部を改正する条例制定の件、および議案第458号 西宮市国民健康保険条例の一部を改正する条例制定の件、以上4件について日本共産党西宮市会議員団は、反対をいたします。
 私からは、458号を除く3件について討論を行います。

 まず、
 議案第416号 西宮市介護保険条例の一部を改正する条例制定の件についてです。
 同議案は、新年度、2018年度から2020年度までの3年間の、いわゆる第7期西宮市高齢者福祉計画・介護保険事業計画に基づいて、65歳以上の第1号被保険者の保険料を定めようとするものです。同計画は昨年12月に素案が示され、パブリックコメントを経て、この4月には策定されようとしています。

 第7期第1号被保険者の介護保険料基準額は第6期の5200円から第7期は5600円に、7.7パーセント値上げとなります。年額で言うと62400円が67200円に4800円のアップ。国のよる軽減が適用される最も低い段階の人で28100円が30200円に2100円アップ。最も高い段階の人では143500円から154600円に11100円アップします。
 介護保険料上昇の理由として、市は、要介護認定者数の増加に伴う介護サービス給付費増に加えて、介護報酬が平均0.54%増額改定されたこと、また、保険給付費に対する1号被保険者の負担割合が、22%から23%となったことをあげました。
 特に注目したいのが、負担割合の変更です。ご承知の通り、介護保険では、原則として保険給付に対する費用の約半分を公費で負担することになっています。残り半分を65歳以上の1号被保険者と、40歳から64歳までの2号被保険者で負担し、1号と2号の負担割合は、全国ベースで被保険者の比率に基づいて政令で定められます。1号の負担割合は、1期17%から始まり、毎期1ポイントずつ引き上げられ、第7期で23%にまで増えています。
 また、国負担分の25%のうち5%相当分は保険者ごとに全国で調整され、本市の場合は、4.1%。差し引き、0.9%は1号被保険者に上乗せされています。
 こうしたしくみにより、1号被保険者の負担は高齢化の進展によって増え続けることになります。
 高齢者にとっては、年金が目減りしている中での負担増です。
 3月9日号の週刊ポストに年金者のくらしについての次のような記事があります。現在80歳の人が年金生活にはいった20年前、夫の年金270万円のモデル世帯は、住民税非課税で手取りが265万円もあったが、現在は同じ年金額でも手取りは、約233万円と、32万円も減っている。高齢者狙い撃ちで、「老年者控除」「配偶者特別控除」「年金控除」が廃止、縮小され「課税最低ライン」が年収304万円から196万円へと大きく引き下げられたためだ。課税世帯になったためにそれに伴って
健康保険料、介護保険料の負担も増え、真綿で首を絞められるように支給額を減らされている、とこんな記事です。
 これ以上の高齢者の負担増は到底看過できません。国県市の公費負担分を思い切って増やすべきです。少なくとも国は25%全部を負担すべきです。そして、市も一般会計からの繰り入れ等で保険料引き下げに舵を切るべきです。一般会計からの繰り入れは国からの指導、技術的助言として行うべきではないとされていますが、禁止する法規定も罰則もありません。これも百歩譲って、少なくとも国の調整交付金の不足分だけでも繰り入れて、1号被保険者の保険料を下げることを求めます。

 第7期計画は、2017年5月に成立した「介護保険法改定」を前提にし、その内容を盛り込んだものです。制度の持続可能性の確保として、第6期では利用料負担に2割が導入されましたが、さらに7期では3割負担が導入されました。また、介護納付金への総報酬割導入で、2号被保険者の保険料も被用者保険の種類によっては負担増となります。
 その他、介護保険法改定の内容に即して、以下5点、指摘します。

 1点目。法改定によって国は、自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化等の取り組みを推進するとして、第7期計画において、保険者=市が地域課題を分析し、その課題に応じた目標を設定することを義務づけ、保険者がこの目標に沿った取り組みを進めることに対し、要介護状態の維持、改善の度合いなど、実績を評価し、結果を公表。財政的インセンティブを付与する(報奨金を与える)としています。
 財政的インセンティブの詳細は、先月2月28日に、通知が届いたところで、詳細はこれからとのことでしたが、新聞報道によりますと、国が設定した61項目の指標について自治体が自己採点、評価を10月までに報告。その点数等に応じて約200億円が全国で按分交付されるとのことです。
 要介護状態の維持、改善を進めること自体を間違いとは思いませんが、介護費用の抑制が目的となるような行き過ぎがあれば、これまで以上に必要な人が必要なサービスを受けられない状態を生み出します。
 市は、「自立支援・重度化防止の取り組みは基本理念である『すべての高齢者が、住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らせるまち西宮』を実現させるための1つの施策」だとしています。その立場を堅持し、間違ってもこのことから逸脱して、インセンティブ獲得を目標にするなどと言うことのないよう、質疑でも申し上げましたが、再度申し上げます。

 2点目。国によるインセンティブは、保険者に対するものだけでなく、事業者に対してもあります。自立支援に向けた介護サービス事業者に対するインセンティブ付与は、2018年度の介護報酬改定の中で行われました。
 例えば、デイサービスでは、リハビリの専門家との連携で介護報酬のリハビリ加算、さらに成果(アウトカム)評価が導入され、リハビリをして食事や歩行等の日常生活動作(ADL)指数が施設全体で改善されればさらに加算を得られる仕組みですが、認知症ケアの成果は評価項目にはありません。事業所からは、「高齢者が普通に暮らし、職員と人間関係を深め、生きる喜びを感じる。生活の質を上げることこそが、介護サービスの目標ではないのか。リハビリだけが目標ではない」そんな声が寄せられています。
 今後、本市の事業所において展開されるサービスが、市が掲げている基本理念『すべての高齢者が、住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らせるまち西宮』にふさわしいものになるよう、保険者としてしっかり指導監督していただきたい、指摘しておきます。

 3点目、生活支援、家事援助についてです。介護報酬をめぐる議論の中で財務省は、生活援助の回数が平均利用回数より多い例があるとして、報酬の上限を設けるよう要求しました。厚労省はこれを受け、生活援助がおおむね1日1回を超えるケアプランを設定する場合、ケアマネージャーの市へのプラン届出を義務付け、市は医師や看護師など専門家も入る地域ケア会議でプランを検証、助言を与えるしくみを導入しました。そもそも生活援助の利用回数は1日3回の服薬管理が必要な例など、高齢者の実態に応じたものであって、問題視されるべきものではありませんでしたが、財務省の介護費用抑制方針の前に押し切られたものといえます。
 しかし、プランの届け出、ケア会議での検証について厚労省は、「ケアマネージャーが地域ケア会議での検証を受けたくないために、利用者の状況を考慮せず利用回数に制限をかけるのは、逆に指導・監査の対象」「会議では必要に応じて助言するもので、ケアプラン修正の強制でも行政処分でもない」としています。この趣旨を踏まえ、適切に対処することを求めます。

 4点目。法改定では生活援助での人材不足に対応するためとして、国家資格であるホームヘルパー、研修時間は130時間ですが、その4割以下、59時間の時間で研修を終える新たな「担い手」を作るとしています。詳細は未定とのことですが、すでに要支援者に対する生活援助は、第6期において介護予防・生活支援員(研修は12時間)が担えることとなりました。今回の新たな担い手づくりは将来、要介護1、2の生活援助も新総合事業に移行させる地ならしともいえるものです。
 本来、訪問サービスにおいて身体介護と生活援助は分けられるものではなく、ヘルパーの仕事は、利用者の生活全体を支えるプロの仕事です。人材不足への対応は、さらに専門性を確立し賃金引き上げなどの処遇改善こそが求められています。現場からは、「安倍首相が『非正規』をなくすと述べているのに、賃金の低い新たな非正規をつくる。働き方改革にも逆行する」との厳しい声が出ています。この点についても今後の推移を見ていきたいと思います。

 5点目。法改定では高齢者と障害者が同一事業所でサービスを受けやすくするため、介護保険と障がい福祉制度にあらたに共生型サービスを位置づけることになりました。このこと自体は問題ありませんが、障害者総合支援法が65歳以上の障害者に対し、介護保険の適用を優先する原則を規定していることには問題ありといわなければなりません。
 2013年、岡山市の浅田達雄さんは65歳を境に障害者総合支援法の給付による無償のサービスを機械的に打ち切られ、翌月、浅田さんはやむなく介護保険法に基づく給付を申請。最も重い要介護度5の認定を受けましたが、月1万5千円を負担せざるを得なくなりました。これらが不当な差別で憲法違反だとして、岡山市に決定の取り消しなどを求めて岡山地裁に提訴、今年3月14日、岡山地方裁判所は「法律の解釈や適用を誤った違法な決定だ」として、岡山市に決定の取り消しなどを命じる判決を言い渡しました。
 本市では機械的な介護保険への移行はしていないとのことですが、障害者総合支援法の改正が必要です。

 最後に、高齢者の自立支援では、第7期計画にも記述がある通り、健康づくり、生きがいづくり、社会参加の促進が何より大切です。65歳以上のすべての高齢者が介護保険料を負担しているものの、要介護認定者の割合は18%。利用はさらに低く12〜3%です。そういう点で全高齢者を対象にした健康づくり、生きがいづくり、社会参加の促進に資する一般施策が不十分だと思います。その方策の一つとして、これまでも提案してきましたが、あらためて、バス運賃半額助成制度を創設し、高齢者交通助成制度との選択制とすることを提案します。
 以上、議案第416号の意見とします。