野口あけみの一般質問/* --項目挿入-- */?>
2018年06月26日
高齢障がい者の「介護保険優先原則」について65歳になった障害者、および40歳から64歳の介護保険2号被保険者の障害者でも特定疾病により障害が重くなった障害者(以下、高齢障害者という)は、障害福祉制度から介護保険制度への移行が求められます。これは、障害者総合支援法第7条に規定された、いわゆる介護保険優先原則によるものです。 今年3月14日には、この介護保険優先原則に関連した岡山での裁判で、高齢障害者である原告の浅田達雄さんが一審勝訴する判決がありました。このことにもふれながら、障害者にとって介護保険優先原則はどんな問題を生じさせているかを明らかにし、その改善を求めることが今回の私の質問の趣旨です。その前にまず、障害者の福祉制度について簡単に変遷を見ておきたいと思います。 2006年、障害者自立支援法が施行されました。障がい福祉サービスを受ける際には、応益負担とされ、1割の利用料負担が生じ、障害が重いほど自己負担も重くなるなど生存権を侵害する憲法違反の法律だと、大問題となりました。またこのときからすでに介護保険優先原則がありました。 全国で障害者自立支援法違憲訴訟が提起され、その結果、2010年(H22年)1月7日に、原告団・弁護団と国・厚生労働省との間で、国はすみやかに応益負担、定率負担を廃止し、遅くとも2013年8月までに自立支援法を廃止、新しい福祉法制を実施する。また、国は障害者の意見を十分に踏まえることなく拙速に制度を施行し、応益負担の導入等で、障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、反省の意を表明。この反省を踏まえ、今後の施策の立案・実施に当たるとしたうえで、新法制定にあたっては、@少なくとも市民税非課税世帯の障害者には自己負担を生じさせないこと、A収入認定は障害児者本人のみで認定すること。B介護保険優先原則を廃止し、障がいの特性を配慮した選択制等の導入を図ることなどを内容とする「基本合意」が成立しました。 この基本合意と前後して、障害当事者らも加わった政府の「総合福祉部会」が、自立支援法廃止後の新法制定に向けた「骨格提言」を取りまとめましたが、当時の政権与党民主党と、自民、公明3党の合意で、2012年6月、一部の手直しのみで自立支援法の根幹を残した障害者総合支援法が成立しました。総合支援法では、住民税非課税世帯の障害者の自己負担はなくなったものの、収入認定は本人のみではなく世帯全体のまま、また、介護保険優先原則についての改正もありませんでした。 しかし、非課税世帯の障害者が、障害福祉サービスを自己負担なしで受けられるようになったことは、裁判を含めた全国の運動と世論の大きな成果です。ところが、65歳になったとたん介護保険制度への移行が求められ、介護保険利用部分については1割負担が求められる、「1割負担の復活」や、サービス支援量の低下、質の低下などの問題が生じることになりました。 さて、介護保険優先原則については当初から問題が多く、2007年、厚労省は「障害者自立支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との運用関係等について」という通知を出し、@サービス利用の理由はさまざまであるため、介護保険サービスを一律に優先しないこと、A介護保険に移行してサービス支給量が減った場合は、不足分を障害福祉サービスから支給できること(上乗せ)、B介護保険にない障害福祉固有のサービスは継続支給できること(横出し)、C介護保険制度への移行に同意しない障害者には継続的に勧奨を行うこと を自治体に周知、さらに2015年にもこの通知を徹底するための事務連絡を出しています。 しかし、この通知は地方自治法に基づく技術的助言という位置づけであり、拘束力をもつものではなく、「高齢障害者」が介護保険制度に移行しない場合、障がい福祉サービスを一方的に打ち切る自治体があり、前述の岡山市の浅田さんや千葉市の天海(あまがい)さんが裁判に訴えました。 岡山市の浅田さんは、生まれつき手足に重度の障害があり、食事、排せつ、入浴など生きるために必要なあらゆることに援助が必要です。そのため、65歳になるまで障害者支援法にもとづき、1カ月当たり249時間の障害福祉サービスを受けて生活していました。 浅田さんは65歳になる数か月前から岡山市に対し、そもそも障害福祉サービスと質的に異なる介護保険サービスへの変更は困難であり、利用料1割負担が生じることから、従前からの障がいサービス支給の継続を要望し続け、介護保険の申請をしませんでした。ところが、岡山市は、支援法7条の介護保険優先原則を四角四面に解釈運用し、2013年2月13日、支援法による障がい福祉サービスをすべて打ち切りました。その処分は、手足に重度の障害がある浅田さんにとって、「死ね」といわれたのに等しいものでした。この理不尽な処分に岡山地方裁判所は、冒頭述べたとおり5年後の今年3月、岡山市の不支給決定の取り消し、損害賠償や慰謝料の支払いなどを内容とする原告勝利の判定を下しました。 浅田さんが障害福祉サービスの継続を希望し、介護保険申請を行わなかったことには理由があり、岡山市は、自立支援給付を行ったうえで、原告の納得が得られるよう介護保険の申請勧奨や具体的説明を行うべきだったのに、自立支援給付を一切行わない処分を行ったのは、自立支援法7条の解釈・適用を誤っており、違法だという判決です。 この裁判は、介護保険優先原則の是非については争点としておらず、市町村が介護保険制度への強制移行を目的に障がい福祉サービスを打ち切ることの違法性や同原則の運用のあり方を問うているものですが、介護保険優先原則の矛盾に、あらためて光を当てる画期的な判決です。日本共産党は、今こそ2010年1月の「介護保険優先原則の廃止」等の基本合意や骨格提言に立ち返り、現在の障害者総合支援法を廃止し、障害者権利条約と日本国憲法の理念に基づいた新たな「障害者総合福祉法」を制定することを求めています。 具体的な質問です。
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