2019年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書/* --項目挿入-- */?>
2018年09月03日
健康福祉局
- 家族の介護のために仕事をやめる「介護離職」が十年間で105万人を超えるなど、介護をめぐる問題が、高齢者はもちろん現役世代にとって重大な不安要因となっている。こうした事態を受け、安倍政権は「介護離職ゼロ」などといいだしたが、同政権が実際にやったことは、公的給付の削減や利用料の引き上げなど、“介護を受けにくくする制度改悪”の連打であった。2017年の法改定では、各自治体に自立支援や重度化防止の名目で介護度軽減や給付費低減を図らせ、実施した自治体にはインセンティブ(財政優遇)を与える制度導入や、利用料2割負担導入に続き、2018年8月からは3割負担導入などが進められた。
このままでは、介護をめぐる危機的事態は深刻化するばかりである。介護切り捨ての改悪を許さず、現役世代も高齢者も安心できる公的介護制度に転換させるため、以下の項目に取り組むこと。- 「自立支援」の名目で要介護度軽減の目標を設定し、「卒業」という名のサービス停止や、介護認定を受けさせないなどの給付抑制はいっさいおこなわないこと。
- 介護保険料に対する国庫負担は20%と調整交付金の5%に分けられているが、調整交付金は満額支給となっていない。これを満額支給することと合わせ、国庫負担金を30%に引き上げるよう国に求めること。
- 高齢者にとって大変重い負担となっている介護保険料を、市の一般財源を投入して引き下げること。県に対しては県基金の活用も求めること。
- 市独自の保険料減免を行なっているが、対象はわずかである。一般会計からの繰り入れで、減免を拡充すること。
- 介護保険料は原則年金天引きで収納率は98%と高いが、年金が月1万5千円以下の年金天引きでない保険料滞納者に対して、差し押さえ処分を行っている。こうした処分をやめること。また、厳しい保険給付制限をやめるよう国に求めること。
- 制度発足時には1割であった利用料負担に、2割、3割負担が導入され、サービスの利用控えが進んでいる。原則2割負担導入が狙われているとも言われている。市民のくらしへの影響や利用控えの状況などを具体的に把握し、撤回を国に求めること。
- 利用料減免制度の創設を国に求めること。
- 低所得者への利用料減免制度を市独自で創設すること。
- 介護認定に1か月以上かかっている実態がある。認定更新時期が原則1年から2年に一度となり、2019年1月からは認定調査の一部を民間委託することになっているが、必要な介護保険サービスが早期に利用できるようさらに認定審査について改善すること。また、申請者には認定が下りていなくても暫定で介護保険が利用可能なことをくりかえし知らせること。
- 市内の特別養護老人ホーム待機者は依然多く、同施設の不足は引き続き深刻な事態である。市として特養をさらに増設すること。また、入所資格の制限は見かけ上の待機者数を減らし、「介護難民」を放置しただけであり、国に対し、入所資格の制限撤回を求めること。
- 市内には介護付き有料老人ホームやサービス付高齢者専用賃貸住宅など高齢者を対象にした施設が増えている。施設運営者に対し、適正なサービスが提供されているかの指導・監督を強化すること。市民に対し施設等の的確な情報を提供すること。
- 介護現場では、労働条件の悪さや賃金の低さ等で人材不足が続いている。特別養護老人ホームでは職員が足りず定員まで入所者を受け入れられない事態があるときく。国は、人材不足を補い、安上がりにすることを目的として研修時間の短い生活支援に限定した担い手をつくろうとしているが、そんなことで人材不足は解消できない。国が責任をもって賃金など労働条件の改善をおこなうよう、市として要望すること。
- 介護現場において利用者や家族から介護職員へのパワハラやセクハラの例があると聞く。実態を調査し、対策を講じること。
- 地域包括支援センターの役割は引き続き重要である。市独自で一般財源を投入し、センター増設や職員増等、充実させること。
- 2017年4月に創設された、「介護予防・日常生活支援総合事業」は、現行サービスの8割程度と報酬が低いことの影響が、ヘルパーの待遇や、事業所の存続等にどのように表れるかが懸念される。また、なにより、家事に限定する介護サービスが高齢者の自立支援に真に役立つのか、疑問である。また、前項でも述べたとおり、生活支援に限定した担い手をつくり、総合事業に要介護1、2を組み込もうとしている。
よって、要支援1、2の高齢者への総合事業については中止し、元通りの保険給付事業に戻すこと、要介護1、2を総合事業の対象としないことを国に求めること。
- 高齢者福祉施策について
- 高齢者の2人に1人が認知症などという報告もある。市では、認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らせる地域づくりを目指すとして、認知症サポーター養成講座や交流会・講演会開催など認知症地域ケア推進事業、認知症SOSメールの登録・配信、徘徊高齢者家族支援サービスなどをおこなっているが、引き続き認知症に対する理解を広げ、対策を進めるため、これら事業を拡充すること。
- 家庭内だけでなく高齢者介護施設での虐待や死亡事故・事件が頻繁に報道されている。高齢者虐待相談窓口が設置され対応が進んできているが、今後も重要である。窓口の存在を周知し、いっそう充実を図ること。
- 高齢者の社会参加を促進する唯一の施策である高齢者交通助成制度は、2016年、2017年度に利用者アンケートや利用状況の専門家による分析の結果、現行制度の維持が決定された。高齢者に喜ばれ、心待ちにされている同制度をいっそう改善し額の増額も検討すること。改善策の一つとして、芦屋市や尼崎市で実施しているバス運賃半額助成制度(敬老パス制度)を創設し、現制度との選択制とすることを検討すること。
- 福祉タクシー制度は障がいのある人や高齢者の外出支援策として有効な施策であり、ますます充実が図られるべきものである。2016年10月からは重度在宅精神障害者も適用対象となったが、さらなる対象者の拡大や助成額の増額、予約制と初乗り制の選択制をやめて柔軟に対応できるよう、制度の改善をはかること。
- 老人クラブに対する市の補助金は削減しないこと。
- ことぶき号バスについては2013年から段階的に利用者負担が増やされてきたが、市も「利用者負担増は限度である」との認識を示している(2017年度事務事業評価)。補助金を増やすこと。
- 障がい者(児)施策について
障害者施策では、憲法と2014年に批准された障害者権利条約の理念を地域の隅々に広げ、だれもが安心できるインクルーシブ(排除しない)な社会の実現をめざすことが求められている。ここ数年日本でも障害関連予算は毎年増えているが、国際的にみればGDP比でドイツの3分の1、スウェーデンの4分の1など、まだまだ水準は低い。これらを踏まえ、以下、障がい者施策の充実を求める。- 障害者総合支援法で、国は応益負担の問題は解決済みとの立場であるが、1割の定率負担は残され、低所得者は無料になったとはいえ、負担上限額は変わらない。「応益負担」制度を廃止し、速やかに無料化するよう国に求めること。またそれまでの間、配偶者の収入認定はやめて本人所得のみの収入認定とすることを国に求めること。
- 障害者総合支援法に基づく障がい福祉サービス等は、各自治体で基準を設け支給している。たとえば、社会参加の促進のために、視覚障がい者に対して支給している同行援護(ガイドヘルパー)は月60時間だが、とても足りないと聞いている。月80時間支給している市もあり、他市の状況も調査し、「障害の有無にかかわらず」「ともに生き、ともに支えあう、共生のまち西宮」にふさわしい内容とすること。
- 障がいのある人が65歳になると総合支援法から介護保険が優先される仕組みになっている。このたびの障害者総合支援法改定で、一定の条件を満たした障害者が介護保険に移行した場合、利用料を軽減する制度が創設されたが、要支援1、2相当の障がい者は除外されるなど不十分な内容である。介護保険優先原則の廃止を市として国に要望すること。
- 国の基本指針では障がい者入所施設から地域生活への移行を進めるとしているが、地域における居住の場であるグループホームは圧倒的に少ない。また、障害の状況などによっては入所施設の役割も重要である。どちらも計画的に増やすこと。
- 事業所に対する報酬の日額払いを月額払いに戻し、正規職員の配置を中心とした雇用とし、また報酬の底上げを行うよう、国に求めること。
- 障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳所持者、または難病患者が利用することができる補装具・日常生活用具給付等の各種事業は、自治体間で違いがある。
市内視覚障がい者団体から、音声血圧計を日常生活用具に加えることや、点字ディスプレーを現在の「視覚聴覚障害2級以上」から他市のように「視覚障害単一」を対象とすること、障害者手帳を持たない軽・中度難聴児への補聴器購入補助を成人視覚障害者にも適用することなどの要望の出ていると聞いている。
こうした当事者からの要望に応えるよう、他市の動向などを常に把握し、事業の拡充に努めること。 - 障がい者施設や自宅で家族による暴言、暴力等の虐待がある。虐待については生活支援課が相談窓口となっていることを広く市民に知らせること。また、障がいのある人の人権を守るため職員の研修等スキルアップを図ること。
- すでにいくつかの自治体で制定している「障がい者差別解消条例」を、市でも制定することとなっている。その際には、障害者の参画によって進めること。
- 障害者の労働の保障
国の基本指針では、障害者の福祉施設から一般就労への移行を進めるとともに、個人の特性や本人の意思に対応した福祉的就労も重視して取り組むとしている。以下についてとりくむこと。- 障害者雇用を増やすために、引き続き企業への啓発活動を強めること。そのステップとなる市における障がい者臨時雇用を推進すること。
- 福祉的就労である就労継続支援(A型)、同(B型)が多様に展開されるよう市としての支援を強めること。
- 市内の障害者就労支援事業所の指定を受けたNPO法人のいわゆる「脱税問題」発覚で、「西宮市障害者支援施設等からの物品等の調達に関する取扱方針」(以下、取扱方針)が、2017年度に抜本改定された。不当な外圧に屈することなく、福祉的就労の充実を図ること。
- 生活保護について
生活保護制度は憲法第25条に基づく、最低生活保障の最後のセーフティーネットである。しかし、給付水準の相次ぐ切り下げでその役割が十分果たせているとはいえない状況がある。さらに医療扶助においての償還払いや窓口負担の導入まで検討されている。生活に困窮する市民が権利として適切に活用できるよう、市は以下のことに取り組むこと。- 2018年10月にはまたぞろ生活扶助費が最高5%、総額で160億円削減される。「健康で文化的な生活保障」の観点に立った制度となるよう、老齢加算の復活、生活扶助費、住宅扶助費など保護基準(最低生活費)を引き下げるのではなく、引き上げを国に求めること。
- 生活上経済上の悩みを抱える市民に心を寄せ、問題解決をはかっていくのが面接相談員や、ケースワーカーの役割である。国基準(被保護世帯80世帯に1人)に比べて少ないケースワーカーの増員が一定はかられたが、引き続き増やすこと。また、質を高める研修をすすめること。
- 扶養義務について、「扶養は従来通り生活保護受給の要件ではない」「家族の問題に行政が踏み込んでいくことは相当慎重にしなければならない」との国会答弁がある。この点を踏まえ、申請を躊躇させるような、従来以上の扶養義務照会を行わないこと。
- 生活困窮者自立支援法の下、稼働能力を有する要保護者に就労支援や指導を行っているが、一人一人の実情や条件に応じた丁寧な支援を行うこと。また、保護の辞退を誘導するような指導はいっさい行わないこと。
- 生活保護の手引きは一定改善されたが、まだまだ改善の余地はある。他自治体の例も参考に、一層改善すること。
- 近年の酷暑でエアコンの使用は不可欠だ。厚労省は、2018年6月に、同年4月以降の申請者に条件付きながらエアコン購入費を支給することを通知している。3月以前の利用者にもエアコン購入費及び修理費を支給すること。また、電気料金の負担から使用を躊躇している受給者も多い。電気料金への補助を検討すること。
- 市の一般財源による、夏季・冬季見舞金および上下水道料金の基本料金免除を復活すること。
- 厚生課及び生活支援課の相談室は、間仕切りのみでプライバシーが全く保たれていない。抜本的に改善すること。
- 社会福祉法人・施設指導監査について
本来公共が責任を負うべき福祉サービスの多くが、民間事業者より提供されている状況の下で、福祉サービスの質を確保するために社会福祉法人・施設指導監査の役割は大きい。
2018年度には党議員団の要望どおり、保育所の指導監査がこども支援局で行われることになったが、監査対象は依然1300か所近くにも上り、新たに児童デイサービスの指導監査も加わるなど、体制の強化は不可欠急務である。必要な人員を配置し、福祉サービスの適正な質を確保するために、よりいっそう厳しい姿勢で臨むこと。
- 災害援護資金貸付金の償還免除要件が2015年度に拡大され、県下統一基準によって本市でも相当数の免除を行ったが、内閣府より、無資力状態の認定等に疑義ありとされ、現在もなお県と国の間で調整中である。他の被災自治体や県とも連携し、県下統一基準による免除が認められるよう強く求めること。
その際、神戸市が連帯保証人に対する債権を放棄する方針を示したが、同様の措置を認めるよう国に求めること。
また、接触が困難な行方不明者も免除対象とすることや、償還指導事務にかかる経費について国庫補助対象とするよう国に求めること。
- 妊婦健康診査助成は2015年度に回数14回、上限82,000円に増額されたものの、なお全国・県平均下回っている。増額すること。
- 乳幼児健康診査や訪問指導事業など母子保健事業は、乳幼児の発達支援や虐待予防にとって重要な事業である。特に孤立しがちな母子をきめ細かくフォローできるよう、保健師など専門家の人員増を図ること。
- 健康増進を図るため、がん検診や歯周病疾患健診等を実施しているが、受診率はまだまだ低い水準にとどまっている。受診者を増やすためにいっそうの努力を行うこと。
また、乳がんなど、り患年齢が低いがんについては対象年齢を引き下げ、対象者を拡大すること。
- 内科、小児科の第1次救急医療をになう応急診療所は、順次診療時間も拡大され、市民の命を守っているが、特に子どもの救急への対応は、多くの子育て世代の要望である。休日、夜間(午後11時から朝方)の診療時間を拡大すること。
また、救急協力病院を引き続き増やすこと。
- 難病患者の見舞金について2016年度に廃止された。難病患者へのアンケート調査では見舞金の継続を希望する意見が多数寄せられている。復活すること。
- 県の「受動喫煙防止条例」では飲食店等の「禁煙」「分煙」は努力義務にとどまっている。受動喫煙の健康被害がとりざたされており、分煙をしていない飲食店については、禁煙を含め指導を強化すること。