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杉山たかのりの賛成討論
2018年09月19日

議員提出議案第9号口利き防止条例の改正に対する賛成討論


 ただ今上程されている議員提出議案第9号西宮市職員の公正な職務の執行の確保に関する条例の一部を改正する条例制定の件について、日本共産党西宮市会議員団は、5名全員が提出者でもあり、賛成の立場から意見を申し述べます。
 この議案は、6月定例会において議員提出議案として上程され、賛成多数で採択された西宮市職員の公正な職務の執行の確保に関する条例、(以下条例と呼ぶ)について、条例中の録音に関する規定を削除し、市民への周知期間として施行日を来年2019年4月1日に改める条例改正案です。
 条例は、いわゆる口利き防止条例と呼ばれており、市民や政治家などによる不当要求から市職員をまもるため、やり取りを記録するというもので、全国的にも多数の自治体が条例化をしています。趣旨という点では条例の必要性は認識しています。
 しかし、西宮市の条例は、他の自治体では採用されていない、記録のために録音することができるとしています。これは、市職員を守るという口実で、市民に対して抑止力を生じさせる、市民敵視の条例となっています。この条例の運用については、市当局に委ねられることになっていますが、施行日は10月1日で、条例制定から約2か月半ほどしかなく、運用のための準備期間、市役所内での徹底、市民への周知などができる時間的な余裕もない状況となっています。そのため、条例改正は最低限必要だと言わなければなりません。
 9月13日の総務常任委員会では、議案の審査と条例に関する施行規則及び録音要領等についての所管事務報告が行われました。
 常任委員会で市当局は、これまで運用でしていたものが制度化された。実務的には変わりがない。条例化され、より適切な対応ができる。公正職務審査会ができ態勢が強化された。新しい事務が生じたわけではなく、実務上問題はない。録音についても、必要に応じて録音してきた、これまでと変わらない。録音するケースは不当要求のケース、正確な記録をするため、全ては想定していない。市民全体に影響を及ぼすことではなく、特定の人に対してのこと。周知は考えていない。などと説明しています。
 問題のある説明もありますが、簡単に言えば、これまでとあまり変わりがないので問題はないということでしょう。
 審議の中で、その他明らかになったことがあります。
 録音については要領で、「要望等を行おうとする者に対して、あらかじめ告知するよう努める。ただし、緊急の場合はこの限りでない。」としています。記録装置、データ及び外部記録媒体の管理は、管理責任者が責任を負い、課長等を充てるとしていますが、市所有のICレコーダーは308台、その他のテープレコーダーもあり、それらを原則として使うが、すべての課にはなく、部内で融通するとしており、管理責任者の課長は責任を負えないという準備状況です。個人所有のスマートホンなどは緊急時に使うことを認めるとのことですが、要領に記載はありません。
 録音するケースは不当要求のケース、正確な記録をするため、全ては想定していないと説明していますが、その後、録音は正確な記録のためのツールだ、記録は文書で残すことが原則で録音は補完だ、と答弁。最後に副市長は「メモはしても何でもかんでも録音はしない。ポイントは不当要求について録音する。根本は不当要求。」と所管する総務局と副市長でも見解が違います。
 市内部で明確な考え方、いまだ方針は定まっていないというのが実情といえます。
 法的位置づけのないものが要綱で、条例は法的位置づけがされることになります。この違いは、大きいと思います。
 これまで内部運用で行ってきたことが、条例化によって法的根拠を持ち、きっちりやらなければならないと当局も言っています。市長に義務付けられた運用状況の公表は、要望等、不当要求行為、内部公益通報のそれぞれの件数等であり、正確な記録と把握が求められます。これまでとは比べ物にならない事務量になるでしょう。
 そうなれば、録音は不当要求に対して、特定の人に対してだと言っても、条例の対象はすべての市民になります。その市民を最終的には、録音という証拠によって告発まですることになるわけですから、市民への周知は当然必要になります。しかも、録音という抑止力の行使、おどしを前提とするわけですから、市民と市職員の間で信頼関係は揺らぐことになります。
 ところが、市当局はこの変化に対する認識がなく、従来の要綱による内部運用というと同じだとの認識ですから、条例制定からわずか2ヶ月半という短期間で規則と録音に関する要領、審査会設置はにわか仕立てでできたとしても、市内部の意思統一、市民への周知はまともにできるはずもありません。当初は議会に対しても所管事務報告の予定もはっきりしていないという状況です。
 きっちり条例をスタートさせようと思えば、録音はやめ、施行日を半年ほど遅らせ、周知を含めた準備をすることがどうしても必要です。
 以上、議員提出議案第9号に対する、日本共産党西宮市会議員団の賛成討論とします。