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まつお正秀の賛成討論
2018年12月19日

請願第18号治安維持法犠牲者国家賠償法(仮称)の制定を求める請願について


 只今上程中の請願のうち、請願第18号治安維持法犠牲者国家賠償法(仮称)の制定を求める請願について、日本共産党西宮市会議員団は賛成いたします。以下理由を述べます。
 この請願は、1925年に制定された治安維持法によって被害を受けた方たちに対し、その責任を認めてその被害者に賠償する国家賠償法制定を国が行うよう、西宮市議会として国に意見書の提出を求めるものです。
 治安維持法は稀代の悪法といわれ、今では当たり前となった国民主権を否定した当時の天皇制の変革や私有財産制を否定する結社の組織や加入した人などを罰するものでした。その後、二度の改悪が行われ、その恐れがあるという事だけで取締りの対象にされ、国体の変革、すなわち天皇制の変革や廃止については懲役10年から死刑へと刑が重くされました。終戦までの20年間に数十万人が逮捕され、日本国内で6万人、朝鮮半島を中心に当時の植民地で33000人、合わせて10万人以上が検挙され、拷問での虐殺93人、獄死者は400人以上にのぼったとされています。この法律は日本共産党などの取り締まりを謳いながら、その検挙者のうちわずか3,4パーセントが共産党関係者で、それ以外は共産党とは関係のない人たちだったという事が、今年8月に放映されたNHKのETV特集「自由はこうして奪われた」でも紹介されました。このことからもこの法律が共産党を取り締まるだけでなく、それを見せしめにしながら戦争反対の国民の声を抑え込み、戦争に国民を総動員させるためのものであったことは明白です。併せて日本共産党がこれまで私有財産制の否定を主張したことがないという事も付け加えておきます。だからこそ、日本のポツダム宣言の受諾に伴い、戦後日本を占領したGHQによって人権侵害の法律だとして治安維持法は廃止されました。しかし、この法律で弾圧された方たちに対しては、「将来に向かってその刑の言い渡しを受けなかったものとする」とされただけで、なんの謝罪も損害補償をされませんでしたし、今もその状態が続いています。
 第二次大戦を進める中心となった3国、すなわちドイツ、イタリア、日本のうちドイツやイタリアでは、国によって弾圧された方たちには賠償がいまなお行われており、日本だけが当時の政府の責任も認めず賠償金も支払っていないという事も、日本が国際的な後進国であることを示しているのではないでしょうか。
 この請願が審査をされた総務常任委員会では、この請願に反対する議員からは、その被害の実態などをまず調査をすべきとか、この問題について政府の見解を問われた2017年6月に行われた衆議院法務委員会で、当時の金田法務大臣がこの法は適切に制定され、拘留や拘禁も適法だったと答弁していることなどを理由にあげられました。しかし、これまで戦後そのような調査が政府によって行われなかったこと自身が、先の大戦における日本の加害責任を真摯に認めないという態度と表裏一体のものだと思います。また、この法律で逮捕された人たちが拷問を受けたことも多くの人たちが知るところであり、その反省からも現在の日本国憲法36条では拷問の禁止を謳っていますが、明治憲法のもとでも拷問は禁止されていたことからも、金田法務大臣の答弁がいかに時代錯誤であるかということが分かると思います。1976年9月の国会における衆議院予算委員会で日本共産党の正森成二議員の質問に対し、当時の三木武夫首相が治安維持法について「当時は一つの法体系だった」と述べつつも、すでにその時(戦前戦中のこと)でも批判があり、今日から考えればこういう民主的憲法(現在の日本国憲法のこと)のもとに考えれば我々としても非常な批判をすべき法律であることは申すまでもない」との答弁があったことからも、治安維持法の不当性は明らかです。
 すでに安倍内閣によって特定秘密保護法や共謀罪の強行可決などが行われ、戦前戦中の時代に引き戻そうとする動きが強まっている今こそ、さきの大戦を反省する立場に立ち、当時の悪法である治安維持法犠牲被害者に対して、その責任を政府が認めて謝罪をすべきだという立場を表明し、この請願に対する賛成討論といたします。