まつお正秀の一般質問/* --項目挿入-- */?>
2019年06月26日
UR借り上げ市営住宅問題について日本共産党西宮市会議員団を代表いたしまして、私、まつお正秀が二つのテーマで一般質問を行ないます。傍聴の皆様ありがとうございます。 一つ目テーマはUR借り上げ市営住宅問題についてです。この問題について多くの議員の方はご存知かと思いますが、新しく議員になられた方もおられますので、この問題の概要をまず紹介しておきます。 1995年1月に起きた阪神淡路大震災では多くの人たちが住宅を失いました。自然災害で住宅を失った方たちに対して、それまでは自治体が復興住宅を建設して住民に提供するという仕組みしかなかったものが、あまりにも対象が多かったことから、国は自治体が民間から借り上げて市営住宅にしてもよいという制度をつくりました。今は国として期限をなくしましたが当時は20年が期限でした。県下では兵庫県、神戸市、西宮市、尼崎市、伊丹市、宝塚市がその住宅を提供しました。震災直後、西宮市ではちょうど青木町に現在のURが建設していた完成間近の住宅があったため、それを市が借り上げ、兵庫県下で最も早い震災の年10月1日からの借り上げ住宅として入居が始まりました。その後約二年〜二年半後の間に、URが建設をした住宅4棟も借り上げ、5棟で合計447戸が借り上げられました。それから20年間の自治体の借り上げ期限が迫る中、期限3年くらい前の2012年ころ各自治体は期限後の方針を順次発表していきます。その中で宝塚市と伊丹市は全世帯条件なしの継続入居とし、兵庫県と神戸市、尼崎市は一定の年齢以上の方がいる世帯と、障害や介護度の重い人のいる世帯を継続入居とする方針を打ち出します。兵庫県と神戸市では継続入居の要件が違うという問題がありますが、すべての世帯が転居という方針は打ち出しませんでした。尼崎市は県とほぼ同じ基準です。 ところが西宮市のみが全員退去という最も冷たい方針を打ち出しました。ここからボタンのかけ違いがおきたと言っても過言ではないと思います。 そして、西宮市の方針によって県下で最も早く期限が来たシティハイツ西宮北口では、継続入居を求める被災住民7世帯10人に対し、2015年12月議会で退去を求める訴え議案を市が提出しますが、議会としては話し合いによる解決を求め継続審査としました。続く翌年の2016年3月議会で再度同じ訴え議案が提案されて共産党議員団は反対いたしましたが賛成多数で可決されました。 ただ議会としてこの時、引き続き代理人による協議を継続するよう求める付帯決議を全会一致で可決した上で、その後5月、西宮市が裁判に訴え、2019年、今年の4月24日に神戸地裁尼崎支部において第一審判決で住民に退去を求めるとともに、市の借り上げ期限後の賃料相当を求める判決が下されました。 ちなみに継続入居されている皆さんは、それまで払っていた市営住宅としての賃料を法務局に供託という形で支払われていることを付け加えておきます。以上がこの間の簡単な経過です。 そしてこの判決後、住民側弁護団の声明、以下、読み上げます「現在、疾病のため転居困難な入居者を公営住宅から追い出し、健康を大きく損なうことになる無慈悲な判決」「不当な判決」を発表し、5月8日、大阪高等裁判所での審理を求め、控訴しました。 一方、一審で勝訴した西宮市は、判決当日に「UR借り上げ市営住宅訴訟の4月24日判決についての西宮市長コメント」を発表。極めて短いものですから、全文を読み上げます。 「司法の判断を真摯に受けとめて参りたいと思います。 これからもすべての借り上げ住宅の入居者に対し、丁寧できめ細やかな対応を行っていきます。 平成31年4月24日 西宮市長 石井登志郎」 以上です。 判決文では被告と原告の主張が真っ向から対決している訴訟の争点は4点に整理され、裁判長はすべて原告=市側の主張を支持しました。それぞれの争点にはここでは立ち入らず、一点についてのみ述べたいと思います。 それは、借り上げ期間満了時に明け渡さなければならない義務があることを、市は入居者に事前に通知していたかどうかについてです。 判決では要旨として、次のように述べています。「確かに、被告らの市営住宅入居承認書には、入居承認年月日の記載はあるが、契約の期間に関する記載はない。名義承継承認書にも、契約の期間に関する記載をしていなかった。しかし、市は、入居申し込み案内書に、「借り上げ契約の期間は20年」と記載したうえ、「市と公団との契約期間終了後も引き続き入居される場合は、@公団と入居者との新たな入居契約、A公団家賃の負担をしていただくことになります」と記載しており、契約が借り上げ期間の満了により終了することが明記されていた。よって入居者は借り上げ期間の満了時に公営住宅を明け渡す義務を負うことを予定できる。市は、入居者らとの間で借り上げ期間満了時に明け渡し義務を負うものとして契約を締結したということができる」(判決文P41) ここまでが判決の要旨です。 果たしてそうでしょうか? 入居承認書や名義承継承認書には入居期限は書いていなかったが、申し込み案内書には借り上げ期間が書いてあったから、事前通知をしていたものとみなされる、というこの判決の主張は、全く行政の言い分を丸のみしたものです。 入居承認書あるいは名義承継承認書こそが、正式の契約書ではないでしょうか。契約書に肝心の契約の期間に関する記載をせず、入居申し込み案内書、いわば広告パンフレットのようなものに書いているからいいんだと、こんなことがたとえば民間賃貸契約で通用するでしょうか。私はしないと思います。 判決では、この入居申し込み案内書(パンフレット)に記載されているから通知はされたとみてもよいという趣旨の内容が繰り返し出てきます。(P52)(P54)(P56)(P57)(P58)(P59)(P60) 数えましたら全部で8か所です。まさに「錦の御旗」になっています。 またこの「錦の御旗」、入居申し込み案内書に記載されているという内容と解釈にも大きな問題があります。資料2‐@をご覧ください。これは当時の入居申し込み案内書の抜粋です。17ページの上段部分を読み上げます。 「この住宅は、住宅・都市整備公団が建設した賃貸住宅を、市が借り上げ災害復興公営住宅として提供するものです。借り上げ契約の期間は20年ですが、この間は、公団家賃と当住宅家賃との差額を補助しますので、毎年、この家賃補助を受けるための手続きが必要になります。 また、市と公団との契約期間終了後(平成27[2015]年9月以降)も、引き続き入居される場合は、@公団と入居者との新たな入居契約 A公団家賃の負担をしていただくことになります」とあります。 ところが、判決ではこの記述が、「入居申し込み案内書にはシティハイツ西宮北口の借り上げ期間と借り上げ期間満了時の明け渡し義務を記載しており、これらを理解したうえで入居の申し込みができるように配慮していた」と、いつの間にか明け渡し義務があることが記載されているかのようにすり替わっています。 この申込み案内書は32ページ立てですが今読み上げたところは初めの方に書かれておらずに17ページ目です。 被災をされた方たちがワラをもすがる思いで住宅を探されている中でそこまで詳細に読まれた方は少ないと私は思います。 また、これを読んだとしても「20年たったら出ていかねばならない」とか「明け渡し義務がある」とは、誰も思わないのではないでしょうか。 このことについて、5月8日に発せられた、借り上げ復興住宅弁護団の控訴にあたっての声明でも触れておりますので、こちらも次に紹介しておきます。 「借り上げ期間を確認すれば、入居者が借り上げ期間満了時の転居を予測できたという結論は全く承服できない。 阪神淡路大震災の当時、入居者らは、車中生活や避難所などでの生活を余儀なくされていた。また、借上げ復興住宅とは、阪神淡路大震災において初めて導入したものであり、当時の被災者らからすれば、西宮市職員から丁寧に説明されなければ、期限付きの復興住宅があろうことなど夢にも思わなかったのである。そのような入居者らが、避難所などでの復興住宅の間取り部分以外の入居申し込み案内書の全てのページをくまなく精読し、借り上げ期間があるとの記載から借り上げ期間満了時の転居義務を法律家と同じように容易に想像できたと3名の裁判官が考えられたのであれば、それはあまりにも、当時の震災の実態を知らないものと言わざるを得ず、当時の状況について思いを致さなかった点については猛省を促したい」。 以上が弁護団の声明です 一刻も早い解決を願いつつも、こんな不当な判決を確定させることはできないと控訴した、被告=入居者や弁護団の思いに我々は同感するものです。 そこで質問です。 一点目、市長は判決当日に「司法の判断を真摯に受けとめる」というコメントを発表しました。私は、結果は市側の完全勝訴なのに、そぐわないコメントだなと違和感を持ちましたが、このコメントについてその意味をお聞きしたいと思います。また、判決からおよそ2カ月がたち、この間に控訴がなされ、弁護団のコメントも読まれているとは思いますが、あらためてこの判決についての感想をお聞きします。 二点目、神戸市の同様の裁判では市に訴えられた81歳の女性は一審、二審とも退去を命じられ上告しましたがこの3月19日に棄却されたために判決が確定しました。このことの意味するところは、市が申請をすれば、執行官が住宅に出向き、鍵を取り換え、強制的に退去させることが可能という事です。ただ、退去の強制執行をしないようにという要望書が市民から神戸市長あて提出されており、今後どうなるのか、予断を許さない状況ではあります。 西宮市においては、市の退去命令が正当か不当かは、ひきつづき高裁で争われることになります。裁判ではいずれ何らかの結論が出るでしょう。しかし裁判で白黒の決着がついたとしても、入居者の皆さんにどう対処するのかはまた別問題です。神戸市と同様に仮に西宮市が最終的に勝訴したとしたらどう対処するのか、伺います。 三点目、訴訟を取りさげることは現時点で可能とお聞きしています。私は市が訴訟を取り下げて、話し合いで解決すべきと考えます。訴訟の取り下げについて裁判のすべての過程でできるのかどうか、その取り下げの仕組みについてお聞かせください。 四点目、改めて早急に訴えを取り下げる考えはないか聞いておきます。 |