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まつお正秀の決算討論
2019年10月04日

認定第5号、2018年度一般会計及び特別会計歳入歳出決算認定の件について


 ただいま上程中の諸議案のうち、認定第5号、2018年度一般会計及び特別会計歳入歳出決算認定の件について、日本共産党西宮市会議員団は反対いたします。
 以下理由を述べます。
 2018年度の西宮市決算は、一般会計、特別会計合わせ、歳入では2611億2004万円、歳出は2587億3263万円で23億7740万円の黒字、一般会計のみでは、歳入1736億5914万円、歳出1726億7534万円で、翌年度に繰り越すべき財源2億7173万円を差し引き、実質収支額は7億1206万円となり、実に40年連続の黒字決算となりました。
 基金についても財政基金225億円、減債基金35億円、公共施設保全積立基金33億円となり、アサヒビール跡地購入の為に西宮市都市開発公社に貸し付けている55億円を合わせると、資金余裕は348億円にもなっています。一方、市債残高は1425億円と、借金が大きく膨らんだ阪神淡路大震災以前の水準に戻り、そのうちの半分近い46パーセントは国から後年度に交付税措置をされる臨時財政対策債ですから、こちらも懸念材料になる規模ではありません。
 このことからも、無駄遣いさえしなければ様々な市民要求を実現する財政力は十分あるという事ができます。

 また、前年度の予算は、今村市長が記者に対する暴言を発端として辞職に追い込まれたため、市長不在の中で骨格予算として提案され、その後、昨年4月の市長選で当選された石井市長によってさまざまな肉付けが試みられた年度でもありました。
 私たち共産党西宮市会議員団は石井市長就任後の5月7日、一つ目に第二庁舎建設についての見直し、二つ目が市立中央体育館整備の見直しについて、三つ目にUR借り上げ市営住宅問題について住民サイドに立った対応の三点に絞っての申し入れ並びに懇談を行ないました。いずれもその要望が現時点では実ることはなく推移していますが、特に市立中央体育館については西宮ストークスがホームアリーナとしないという申し入れによって、ストークス誘致の前提が崩れたことから、あとでも述べますが体育館整備の早急な見直しを求めておきます。

 この決算については市政における多岐にわたる分野についての決算であり、我々はすべての施策に反対するものでなく、たとえば平和施策において、前々年度に引き続いて被爆者が呼びかけた核兵器をなくすための署名の着払いという形での取り組み、前々年度よりも入場者が多かったと聞いているアクタ西宮で開催された原爆展。さらに前年度には新たに芦の湯で平和パネル展が行われるなど、こうした施策などは評価をするものです。もちろん、市長任期は4年ですから、その中でまだまだ今後実現される施策もあるのかもしれませんが、この後でも述べますが、掲げられた多くの公約が遅々として進んでいないという問題に加え、国の悪政暴政に対して防波堤となる姿勢に欠けた一年だったといわざるを得ず、地方自治体の本旨である住民福祉の向上を図るという点で、我々は石井市長に対し今後も是々非々で対応していくことを初めに申し上げます。

 具体的な反対箇所です。
 一つ目は、マイナンバーカード普及の推進です。国は制度導入から3年半経過する中で、カードの普及がいまだ約1700万枚にとどまっていることから、3年後には1億枚の普及をめざし、政府がすでに購入した2910万枚のカードがまだ1000万枚以上余っているにもかかわらず、目標の一億枚に符合するように新たに5500万枚のカード発注入札公告を政府は出しています。カードが普及しない理由は個人情報の漏えいの懸念に加え、身分証としては別のもので対応できるなど、国民の多くが必要と感じていないからに他なりません。それなのに健康保険証として使えるような法整備がすでに行われ、2021年4月から医療機関で保険証として使えるようになりました。しかし、医療機関はあらたにカード読み取り機器の購入を迫られますし、保険者は保険証をすべての被保険者に発行し続けなければいけません。行政の効率が良くなるどころか手間が逆に増えることにもつながることも考えられます。さらに9月3日に開催された内閣府のデジタルガバメント会議では、今後の景気対策として、例えば、マイナンバーカードを持っている人に限り、スマホ決済をする場合に20000円チャージした時、国費、すなわち税金で5000円還元、あるいは上乗せをする案などが検討されており、今回の消費税増税対策のポイント還元と同じように、多額の税金を使い、銀行やカード会社のキャッスレス化の意向に沿って、また、政府としては社会保障の切り捨てに活用しようという思惑があり、国のやり方に従う姿勢は問題だと考えます。

 二つ目は「西宮市立総合教育センター付属西宮浜義務教育学校」の推進についてです。この義務教育学校の計画は、2018年6月に石井市長の所信表明で初めて明らかにされました。そもそもこの計画が打ち出されたのは、少子化の進む西宮浜の学校を何とかして存続させたいという理由からでした。しかし、よく考えれば、地域の学校を存続させるための手段は「義務教育学校の開校」以外にもいくらでもあったはずですが、そういった議論はなされることがなく、最初から“義務教育学校ありき”で進められてきたことには納得がいきません。
 また、今議会9月18日の本会議討論でひぐち議員が指摘したように、この義務教育学校のそもそもの大きな狙いは「学校の統廃合」であり、「経費の削減」です。決して子どもたちの成長を出発点にして考え出された施策とは言えないのではないでしょうか。このような施策を文教住宅都市の西宮に拡げていくわけにはいかないため、我々日本共産党市会議員団はこの施策に反対いたします。
 さらに、国は義務教育学校を全国に拡げていくため、義務教育学校を新設する場合には「建設費の2分の1の費用を助成する」という財政誘導を行っています。この財政誘導に乗って、本市においても義務教育学校を拡げていくことが危惧されます。このような行政主導の安易な施策に便乗することなく、少人数学級の実現を推進するなど、真に子どもたちの視点に立った施策を進めていくことをあわせて強く要望しておきます。

 三つ目は、名神湾岸連絡線についての姿勢についてです。先日この計画におけるルート案が示され、その内容の住民説明会が4か所で行われました。私は出席できませんでしたが、出席した同僚議員の話を伺いますと、反対意見が圧倒的だったと聞いています。市長は今回のような住民説明会を待つことなく、2019年度、今年度ですが、その施政方針において、「地元自治体として協力をする」とのべられていますが、住民の意向を聞かないまま、国が進める無駄な公共工事である高速道路網整備の一端を担う今回の計画に前のめりの姿勢は、市長が訴えられてきた「シチズンシップの醸成」にも反するものであり、我々は反対するものです。

 四つ目は、UR借り上げ市営住宅問題で、特に市が裁判で退去を求める7世帯の方たちについて、依然としてお互いの主張が平行線のまま推移している問題です。石井市長は選挙前にはこの問題で継続入居という考えを示されていましたが、当選後は被告となっている住民の方たちと会われたものの解決の方針を持たないままの対話となりました。高齢化が進むこの7世帯について、あくまで転居を求める無慈悲なやり方を改め、まずは訴えを取り下げ和解の話し合いを進めることを求めます。

 五つ目は、食肉センター特別会計についてです。
 県への移管か民営化、もしくはそれが無理なら廃止という、過去に出された第3者委員会、食肉センター検討委員会からの提言に基づいた対応を我々は求めてきたにもかかわらず、今日まで指定管理という仕組みで市の税金を湯水のようにつぎ込んでいる食肉センター特別会計にも反対をするものです。また、今年の2月に出された平成30年度、2018年度包括外部監査報告でも、現在の指定管理期間が終わる2023年度、令和5年度以降の方針が決まっていないことについて、長期的運営のメリットデメリットを比較・考慮した上で今後の在り方を早急に検討するようにこの報告は求めています。この三月の予算分科会では、新年度、すなわち今年度からその検討をすると当時の掛田副市長は表明されており、早急な見直しの協議を求めておきます。

 次に市政への要望ならびに指摘事項を7点申し上げます。

 まず一点目ですが、今議会ではわが党議員団が提案した、「国民健康保険の安定運営に係る財政基盤の強化を求める意見書」が全会一致で可決されました。この意見書の中では全国知事会、全国市長会、全国町村会が定率国庫負担増額、さらに保険料の均等割の廃止を求めていることが紹介され、国に対し、国民の負担が今後大幅に上昇することのないよう、国民健康保険の財政基盤を強化し、安定運営を図るため、必要な財源の確保を求めています。特に子どもの数が増えるほど均等割りの合計額が増える問題解決は喫緊の課題であり、第3子目以降の均等割を廃止する自治体も増えつつあります。まずは市として、早急に第3子以降の均等割を廃止するよう求めます。

 二点目は生活保護行政についてです。明石市の職員が担当する生活保護受給者と一度も面談をしていないのに、家庭訪問や電話でやりとりとしたと「ケース記録」を捏造していたことが新聞報道されました。理由は「忙しくて手が回らなかった」との事です。決算審査の中では、ケースワーカー配置の国基準は1人で80世態となっているにもかかわらず、本市では国基準を大きく上回る110人〜125人を受け持ち、ケースワーカーが25人不足していて訪問もままならない状態であることが明らかになりました。このような状態をいつまでも放置しておくことはできません。来年度は不足しているケースワーカーを充足させるよう要望いたします。

 三点目は乳幼児等医療費の所得制限見直しがいまだに行われていない問題です。西宮市は県下に先駆けて二番目に中学校までの子ども医療費無料としましたが、残念ながら所得制限があります。決算審査では、現在無料化対象の中学生までの子どもは72312人ですが、所得制限で3割負担となっている子どもが約17000人にも上っているという事が明らかとなりました。今日では所得制限をなくす自治体は増え、対象も高校生までに広げる自治体も3割にまでなっています。早急に公約通りの所得制限見直しを行なうよう求めます。

 四点目は、待機児童対策についてです。
 市は3年間で1500人の待機児童解消を掲げて取り組んできましたが、実際には1211人しか受け入れ確保できなかったとの報告がなされています。その待機児童対策の目玉とされたのが送迎ステーション保育とパーク&ライド型の保育所整備でした。
 決算審査の中では,前年度までに整備された阪神西宮駅構内のステーション保育、さらにその保育と連動した高須東小学校跡地に整備されたパーク&ライド型の保育園が今年度から開所し、すでに利用もされておりますが、阪神西宮駅からの送迎については定数30人に対して12人しか利用されていない事。パーク&ライド型の高須の森保育園は定数120人に対して74人の利用しかなく、駐車場に至っては60台の駐車が可能ですが利用されているのはわずか4台にとどまっていることが明らかとなりました。こうした現状は、市民ニーズを充分把握しないままに他市がやっている、あるいは一部議員からの要望に応えるという形で導入したことがその背景にあるのではないかと考えます。入所を希望し落選した利用保留児も含めた待機児童の解消にはまだまだほど遠い状況にあり、今後は幼児教育無償化の影響もあってさらに保育ニーズが高まる可能性もあります。待機児童の多い地域での対策を強めるように求めるものです。

 五点目は、市長が公約としてきた子ども食堂を全市に広げるという課題も遅々として進んでおらず、まだ一か所も開設されていないという点です。市がイニシアチブをとって早急に進めていただくように要望しておきます。

 六点目は市立中央体育館整備についてです。この8月20日付で西宮ストークスから中央体育館をホームアリーナにしないとの申し入れがあり、今後の整備ではB1リーグ基準に盛り込まれていた250人が入れる規模のスイート・ラウンジルーム、最大観客数の3%の数のトイレ、すなわち150基ものトイレ整備などの見直しをする方向は示されましたが、見るスポーツに大きく偏重した体育館整備でなく、市民からの要望の強い温水プールの整備など、市民利用を中心とした新たな整備へと、再度早急に計画を検討し直すように求めておきます。
  
 七点目は、職員の逮捕がこの間8人と続いていることも指摘をしておかなければいけません。特に直近に起きた勤労福祉課の職員による有印私文書偽造事件は、前渡し金の在り方も含めた事務処理の見直しが必要であることを示した事件となりましたが、このような一連の職員の不祥事が起きないように、石井市長が言われている「市役所改革」を進めていただきますようにお願いいたします。
 以上が要望・指摘事項です。

 最後になりますが、この10月1日から消費税の増税が行われました。今回の増税は、働く人たちの賃金が下がり続け、個人消費も大きく落ち込んでいる中での増税となります。それは複雑怪奇な、「軽減税率」や還元率がいくつもあるポイント還元などを実施しなければいけなくなっている事にも表れています。
 安倍内閣になってから貧富の格差がますます広がり、二年前には、日本の高額所得者40人の資産が、所得の低いほうから数えた人口の半分の資産と同じとの報道もありました。まさにこれがアベノミクスの実態ではないでしょうか。
 こうした中で、国の悪政の防波堤となって、市民の暮らしを守る市政運営に努められるよう求め、認定第5号についての反対討論と致します。